企画記事
「ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説」を“1989年のGame & Watch ZELDA”とともに遊ぶ。新世代G&Wは,時計としての使いやすさにも満足
「ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説」は,ファミリーコンピュータの発売以前の1980年に登場した時計内蔵型の携帯ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」を現代の技術で再構築し,40年のときを経て復活した新商品だ。2020年11月に期間限定生産で発売された「ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ」(以下,G&Wスーパーマリオ)に続く第2弾で,初代「ゼルダの伝説」と「リンクの冒険」,「ゼルダの伝説 夢をみる島」の3作品に「バーミン」のゼルダの伝説バージョンを収録。さらに遊び心満載の時計やタイマーといった機能が備わっている。
令和に復活したゲーム&ウオッチの第2弾は果たしてどんな仕上がりになっているのか。商品の特徴や魅力を,かつて海外向けに発売された「Game & Watch ZELDA」にも触れつつ紹介しよう。
任天堂公式サイト「ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説」商品ページ
第1弾のスーパーマリオからさらに遊びやすく,時計としても使いやすくなった
まずはパッケージや内容物を紹介していこう。パッケージはG&Wスーパーマリオと同じ仕様で,箱には「ゼルダの伝説」のキャラクターやゲーム画面がプリントされた透明のプラカバーが付けられている。これを取り外すと,“オリジナル”のパッケージを模した,ワイドスクリーン版ゲーム&ウオッチ風のゴールドの箱が現れる仕組みだ。
プラカバーを取り外すと,本体イラストにはゲーム&ウオッチ風内蔵ゲームの「バーミン」の画面が入っている |
裏面の右下にはこんな仕掛けも |
G&Wスーパーマリオにもあったメッセージ |
内容物は本体と充電用のUSBケーブル,セーフティーガイド,マイニンテンドーゴールドポイント番号のカードとなっている。特筆すべきは,トライフォースが描かれた黒い内箱。背面に折り畳み式のスタンドがあり,そのままディスプレイ用のケースとしても使用できることだ。
今回,本体の仕様としてオートスリープ機能をオフにする設定があり,充電時でなくても常時画面表示ができるようになったことで,時計としての使い勝手もよくなった。つまり,市販のスタンドなどを用意しなくても,内箱を利用すれば置き時計としても使えるのである。これはけっこう嬉しいポイントだ。
内容物一式。充電には別売りの「ニンテンドーUSB ACアダプター」が必要だ。他社のACアダプターも使えるが,メーカー保証外となるので要注意 |
内箱を使い,置時計として設置したところ。本体にスタンドなどがないので,飾っておきたいときはこのスタイルがベストだ |
スタンドとして使用しているときの内箱の裏はこんな感じ |
オリジナルのゲーム&ウオッチにはなかった明るいグリーンの発色が印象的な本体は,公式サイトによると,サイズはG&Wスーパーマリオと同じ縦67mm×横112mm×厚さ12.5mm,重量は約68gとなっている。リチウムイオン電池内蔵で,3時間ほどの充電で約8時間ゲームが遊べるというのも一緒だ。
本体。鮮やかライトグリーンのカラーは,オリジナルのゲーム&ウオッチにはなかったので新鮮だ |
背面にはトライフォースの刻印が入っている。実はこれには“秘密”が……詳しくは後ほど |
G&Wスーパーマリオと大きく違うのは,[A]と[B]のボタンの上に[START]と[SELECT]のボタンがあるということ。収録された3タイトルはメニューやマップを開くためのボタンが必要となるので,今回新たに備わったのだろう。
本体右側には電源ボタンと充電用USB Type-C端子。電源ボタンを軽く押すとスリープのオン / オフができる |
本体左側にある小さな穴はスピーカー。小さい割にけっこう大きな音が出る |
最初の起動時は画面に「ゼルダの伝説」のイラストが表示され,[TIME]ボタンを押すと12:00から時計がスタート。[PAUSE / SET]ボタンで時刻の他,各種設定が可能だ。
時計モードは通常,時計画面の表示とともに秒単位のチック音が鳴っている。画面はオートスリープの設定で3分で消えるが,前述したとおり,これをオフにして常時表示することも可能だ。なお,オートスリープをオンにした状態で3分が経過すると,G&Wスーパーマリオと同様に,ちょっとした仕掛けが発生する。購入した人は,画面を見ながら3分間じっと待ってみよう。
G&Wスーパーマリオでは,常時画面表示はUSBケーブルからの給電中にしか行えなかったが,今回は通常時も可能となったのが嬉しい。しかもこの画面の点灯時,本体裏面にあしらわれたトライフォースのマークも連動して点灯するようになっている。画面側を下側にして置いたときにも,画面が点灯していることがわかるという,実に粋な仕様だ。
[PAUSE / SET]ボタンで,音量,画面の輝度,時刻設定,オートスリープ設定ができる。カレンダー機能はない |
先ほどの“背面の秘密”とはこちら。本体のオン / オフがどちらの裏返しでも分かるだけではなく,シンプルにかっこよくニヤリとしてしまう |
時計モードは初代「ゼルダの伝説」がモチーフだ。フィールドに時刻が表示され,12時間かけてリンクがガノンを倒すまでの道のりが描かれるという,なかなかに凝った設計となっている。
数分ごとに場面が変わってリンクが少しずつ強くなっていき,ゾロ目の時刻にはちょっとしたイベントが発生。そして午前午後の11時台後半にはラストダンジョンのレベル9へと突入し,12時と0時にはちゃんと結末が描かれる。それらは,実際に手を取って,その目で確認していただきたいと思える内容だ。
ちなみにこの時計モード,[A]ボタンを5秒間押すと,チック音とBGMを切り替えられ,さらに[B]ボタンを押すと画面のリンクをプレイヤーが動かせるようになっている。動かしたからといって画面がスクロールして場面が変わるといったことはないが,なんとなく動かしたくなるような,ゲームファンには嬉しい仕様だ。
時刻は通常フィールドやダンジョン上に表示されている。時間帯によってフィールドが昼と夜になるのも,元のゼルダの伝説に昼夜の表現はないだけに新鮮なものがある |
特別な場面では,時刻は左上に。画面周囲に見える点は,秒数を表している |
初代,リンクの冒険,夢をみる島の海外版も遊べる! 収録タイトル紹介
ここからは,本体の「GAME」ボタンを押すと選択できる,4種類のゲームと「ショートタイマー」を紹介しよう。
収録ゲームの特徴となっているのが,「ゼルダの伝説」「リンクの冒険」「ゼルダの伝説 夢をみる島」は海外版も遊べるところ。それぞれ原語以外にも仕様が異なる箇所があり,とくに「リンクの冒険」は,主人公リンクのドット絵や経験値の仕様,一部のボスなど,違うところがかなりあるのでぜひ試してみてほしい。
ゲーム進行は各タイトル国内外のバージョンごとにセーブファイルが作られ,さらにモードを切り替えたときの状態で再開もされるので,長い道中も一安心だ。セーブは特定の画面で[A]+[B]+[START]+[SELECT]を押すとゲームがその場で終了し,セーブ画面に切り替わる。ゲームごとにセーブできる画面や再開する状態が異なるので,公式サポートページにある説明をチェックしておこう。
また,ゲームのファイル選択時や「GAME OVER」でのゲーム再開時に[A]ボタンを5秒間長押しすると,リンクが強くなった状態でゲームを始められるという“裏技”が公式発表されている。ゲームが難しいと感じたら,試してみるといいだろう。
収録されている初代と2作目はNintendo Switch Onlineのサービスで遊べるが,それぞれSwitchでプレイするのとは違った趣きがある。また,夢をみる島は,2019年にリリースされたSwitch向けリメイク版と比較してみるのもの面白いだろう。
「ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説」のサポートページ
■ゼルダの伝説(1986年発売)
ファミコンのディスクシステム専用タイトルとしてハードウェアと同時発売され,のちにロムカセット版「ゼルダの伝説1」もリリースされた記念すべきシリーズ第1作。主人公のリンクが大魔王ガノンを倒すために,ハイラル地方に隠された「知恵のトライフォース」のかけらを探す冒険が描かれるアクションアドベンチャーだ。
見下ろし型のゲーム画面で,マップは画面端に移動するとスクロールするスタイル。4方向に移動するリンクは通常,盾を前方に構えていて,攻撃時はその方向に剣を突き出すという,単純ながら敵との攻防を味わえるゲームデザインが施されていた。
経験値のようなポイントで育成するのではなく,ハイラルの大地やダンジョンのあちこちで入手できるハートやソード,弓矢などのさまざまなアイテムを見つけることでリンクが強くなっていく。緻密なアクションを必要としないため,このゲーム&ウオッチでもプレイしやすいのが嬉しい。
■リンクの冒険(1987年発売)
「ゼルダの伝説」の翌年に発売された続編。舞台設定は前作のガノン討伐後の世界で,3つめの「勇気のトライフォース」を巡る物語が描かれる。ガノン自体は登場しないが,ゲームオーバーになると「RETURN OF GANNON」と,ガノン復活を意味するメッセージが表示される演出が入る。
ゲームシステムは前作からガラッと変わり,フィールドはシンボルエンカウント式となり,敵と触れると画面が変わってバトルシーンへと切り替わる。戦闘やダンジョンはサイドビューのアクションとなり,剣と盾での攻防に,ジャンプと魔法の要素が加わっている。立っているときは上段,しゃがんでいるときは下段という操作のもとに展開する敵との攻防は実に戦略性が高い。
シンプルな2Dフィールドとオバケのような敵シンボル,そして戦闘やダンジョンなどのサイドビューは,1作目からは想像できない変化があり,初代のあとに初めてプレイするとちょっと驚くかもしれない。
経験値の概念があり,レベルアップ時に3つの能力のいずれかをプレイヤーが任意に上げるシステムで,ゲームオーバーになるとこれらの値が一番低いところに揃えられてしまうという独自のルールがある。HPが0になるだけでなく穴に落ちてもミスとなり,さらに残機制で,すべて失うとスタート地点からやり直しとなるので,その緊張感はかなりのものだった。
シリーズの中でもとくに異端のゲームシステムを備えた本作だが,筆者個人としてはシリーズのベスト5に入るぐらい遊んでいるタイトルで,Wiiやニンテンドー3DSのバーチャルコンソール,Nintendo Switch Onlineのすべてでエンディングを見ている。アクションがかなりハードなので,ボタンが小さいゲーム&ウオッチでのプレイは操作が少々大変だが,一度はエンディングを見るために挑むつもりだ。
■ゼルダの伝説 夢を見る島(1993年発売)
携帯ゲーム機で初めてリリースされたシリーズ作品で,全体では4作目となる。初代や1991年にスーパーファミコン向けに発売された3作目「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」と同じくトップビューのスタイルだが,画面構成はゲームボーイの画面に最適化されている。
漂流したリンクが流れ着く不思議な島を舞台に,ゼルダ姫ではないヒロイン「マリン」が登場するなど独自の設定が特徴の作品で,2000年にはゲームボーイカラー対応の「ゼルダの伝説 夢をみる島DX」が発売された。2019年にはSwitch向けリメイク作品がリリースされたので,記憶に残っている人も多いだろう。
Switch版「ゼルダの伝説 夢をみる島」プレイレポート。初めてでも久しぶりでも楽しめる,新鮮さと懐かしさの両方が詰まった作品の魅力を紹介
任天堂から本日発売となる「ゼルダの伝説 夢をみる島」は,1993年に発売された同名ゲームボーイ作品のSwitch版だ。初めての人に「夢をみる島」で楽しんでほしい点を紹介しつつ,かつてGB版をプレイした人には“あのころの気持ちが蘇る”本作の魅力をお伝えしよう。
企画に遊び心が見える作品で,スーパーマリオシリーズでもおなじみワンワンがゲーム進行に関わる重要キャラとして強い存在感を見せていたり,「カエルのために鐘が鳴る」の主人公リチャード王子や,スーパーファミコン版「シムシティ」のDr.ライト,「スーパーマリオUSA」のマムーなども物語に絡むキャラクターとして出演していたりと,ところどころに任天堂のゲームキャラクターがゲストとして登場しているのも楽しい。
元々が携帯ゲーム機向けのタイトルなので,このゲーム&ウオッチでもそれほど違和感なくゲームが楽しめた。なお,本作のみ画面サイズの設定が可能で,ゲームボーイの少し横が狭い画面比率でもプレイが可能だ。
■バーミン(リンクバージョン)
もととなったのが,「ゲーム&ウオッチ」シリーズ第3弾として発売された1980年の同名ゲーム。バーミン(Vermin / 害獣)というタイトル名のとおり,畑(?)を荒らすモグラを退治するという内容で,手の長いプレイヤーキャラクターを左右に動かし,穴から頭を出したモグラのところにハンマーが当たるようにすると自動で叩いてくれるという,シンプルながらクセになるゲームだ。
このバーミンをゼルダの伝説シリーズのキャラクターに置き換え,プレイヤーキャラがリンクに,モグラがオクタロックになったのがこの「バーミン(リンクバージョン)」。オリジナルは本体の左右にある1つずつ配置されたボタンで操作したが,こちらは十字ボタンの左右で操作ができる。
■ショートタイマー
本製品のオリジナルモードで,「リンクの冒険」をモチーフとしたカウントダウンタイマー機能だ。1分単位で最大10分まで設定可能で,さらに背景となるステージも選択できる。
カウントダウン中はリンクを操作でき,出現する敵を倒した数がカウントされ,画面下の左右には記録が表示される。トライフォースで表示された時間が楽しく,リンクのアクションの練習にもいいかもしれない。
かつて海外でリリースされた“1989年の「ゼルダの伝説」ゲーム&ウオッチ”にも触れたい
ここからは余談となるのだが,実はオリジナルのゲーム&ウオッチにも「ゼルダの伝説」が存在していたことをご存じだろうか。
[こちら]の公式サイトのヒストリーページにあるとおり,ゲーム&ウオッチは国内展開が終わったのちもいくつかの作品が海外でリリースされており,なんとその中に「ゼルダの伝説」があったのである。
それは,1989年に発売された「Game & Watch ZELDA」。これは,ゼルダの伝説のゲーム&ウオッチが新たに発売された今取りあげないわけにはいかない(!?)。ということで,“Game & Watch ZELDAはどんな作品か”を紹介しよう。
国内では「ゲーム&ウオッチドンキーコング」などで知られる,2画面開閉式の「マルチスクリーン」シリーズで発売となったGame & Watch ZELDAのゲーム内容は“完全オリジナル”だ。
下画面のゴブリンを倒すと階段が出現して次の部屋へと移動し,最深部まで進むとボスのドラゴンが登場。これを倒すとトライフォースのかけらが手に入り,次のステージへと進んでいく。最終的にトライフォースを8枚集めると,ゼルダ姫を救出できる。
実は筆者,ゼルダの伝説のゲーム&ウオッチが発売されると聞いて,「マリオのときの『ボール』のような感じで,『ZELDA』が収録されないかなあ」と期待していたのだが,「バーミン」が収録されることとなり,「たしかに2画面のゲームを移植するのは難しいか」と独りごちたということがあった。この“1989年のゼルダ ゲーム&ウオッチ”も,何らかの形で多くの人がプレイできる日はこないものか……。
ボタンで剣を出すと盾を後ろに向けるのがポイントで,後方からの攻撃はこれで防ぐというゲームデザインになっている |
ドラゴンは道中で手に入れた斧を使って戦う。倒せばトライフォースが手に入り,次のステージに |
持っていて楽しい,触って楽しい。シリーズ化に期待が高まる新世代のゲーム&ウオッチ
思っていたより余談が長くなってしまったが,個人的に思い入れが深い「ゼルダの伝説」の初期シリーズ3作品が,子供のころにあこがれたゲーム&ウオッチとなって自分の手元にあることに心が躍る。
時計機能は前作のマリオから改良され,さらに海外版のゲームが楽しめるなど,懐かしさだけではなく“新商品”としてのクオリティも上がっているところも嬉しい。リアルタイムでゲーム&ウオッチ世代だった人はもちろん,クラシカルで遊び心の詰まった携帯ゲーム機として,当時を知らない人たちにも刺さるところはたくさんあるはずだ。
スーパーマリオ,ゼルダの伝説と2年続けて発売された“新世代のゲーム&ウオッチ”は,今回の完成度を見て,さらに第3弾,第4弾とシリーズ化にも期待が高まった。……任天堂さん,そのあたりのご予定はいかがでしょう?
「ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説」公式サイト
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ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説
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