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「パルワールド」でアートに困ったときは社内投票。ポケットペアのゲーム開発のポイントを溝部社長が語った[G-STAR 2024]
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印刷2024/11/17 13:36

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「パルワールド」でアートに困ったときは社内投票。ポケットペアのゲーム開発のポイントを溝部社長が語った[G-STAR 2024]

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「パルワールド」でアートに困ったときは社内投票。ポケットペアのゲーム開発のポイントを溝部社長が語った[G-STAR 2024]
 韓国で2024年11月14日から17日まで開催されているG-STAR 2024で,ポケットペアの代表取締役社長である溝部拓郎氏による講演「Palworld: Past, Present and Future(パルワールド:過去,現在,そして未来)」が行われた。「Palworld / パルワールド」PC / PS5 / Xbox Series X|S / Xbox One)でなにかと話題になる同社だが,どういったゲーム開発を行っているかが語られた。


ポケットペアが創立されるまで


 今回は韓国での講演となったが,ポケットペアを作った溝部氏は,韓国のMMORPGに思い入れがあるという。
 5歳の頃,父の都合でインドネシアに住むことになった溝部氏は,当時治安がよくなかったことから,家の中で時間をつぶすためにずっとゲームをしていたそうだ。当時のハードはスーパーファミコンで,小学生の時点でゲームにのめり込んでいたという。
 小学5年生の頃に父からPCを与えられ,フリーゲームを遊ぶようになったが,最終的にいきついたのが韓国のMMORPGだ。最初に遊んだのは「ラグナロクオンライン」で,中学3年生までずっと遊んでいたが,月額料金を払うお金がなくなってやめたという。
 その後は,「RED STONE」「シールオンライン」「アラド戦記」「テイルズウィーバー」「マビノギ」などを遊んだそうで,MMORPGが好きすぎて,高校受験も一度失敗したそうだ。

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 そんな溝部氏だが,経歴を見ると新卒で2012年にJ.P. Morganに入社している。溝部氏は,任天堂のインターンシップのようなものに参加していたが,優秀なほかのプログラマーを見て自信をなくし,ゲーム業界とは別の道に進むことを選んだという。
 ところが,J.P. Morganに入ったはいいものの,新しいチャレンジがしたくなりすぐ辞めてしまう。学生の頃からプログラミングを学んでいた溝部氏は,Webサービスの会社を立ち上げ,「STORYS.JP」を展開することになる。ただ,このサービスは映画「ビリギャル」で少し有名になったが,大きな成功を収めることはできず,うまくいかなかった。

 そこで次に行ったのが,ビットコインの流行から思いついた,暗号資産の取引所の立ち上げだ。幸い,暗号資産の市場は成長し,溝部氏の立ち上げたCoincheckは,日本最大級の暗号資産取引所となるわけだが,ここでまた氏は悩みだす。当時のビットコインは,まだまだテクノロジードリヴンの技術で未来があったが,周辺の人たちを怪しいと感じてしまい,この業界に人生を捧げていいのかを考えたのだとか。
 その結果,自分が好きなゲーム開発に改めて携わりたいと,2015年にポケットペアを創立したわけである。

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 さて,現在のポケットペアは従業員が70人,業務委託が20人の規模という組織だ。
 1作目の「Overdungeon」を作ったときは,従業員は3人,開発チームも5人ほどの小さなものだったという。同作は幸い,10万本のヒットとなり,そのうち海外売り上げは75%あった。
 この結果から,もう少し規模の大きなゲームを作ろうと着手したのが,これでポケットペアの名前を知った人も多いであろう100万本のヒット作「クラフトピア」である。
 そして,クラフトピアで得た経験とお金つぎこんで作り上げたのが,3作目のパルワールドだ。

 現在は新たなタイトルとして,「Never Grave: The Witch and The Curse」を開発している。ジャンルとしてはメトロイドヴァニアとローグライクを組み合わせたもので,かつマルチプレイにも対応し,ユニークな体験が楽しめると溝部氏は説明していた。

 ポケットペアをいろいろな意味で有名にしたパルワールドは,オープンワールドサバイバルクラフトとモンスター育成を掛け合わしたゲームだ。プレイヤーは,パルと呼ばれる生き物を捕まえて育て,資源を集めて,一緒に冒険できる。トゥーンレンダリングとフォトリアルな背景を組み合わせたグラフィックスや,拠点にパルを配置して働かせることができるシステムなどが特徴だ。

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 2024年1月19日に発売され,1か月でプレイヤー数は2500万人を突破した。そのうち,Steam版が1500万人,Xbox版がGame Passも合わせて1000万人。Steamでの同時接続者数は,「PUBG: BATTLEGROUNDS」に続く2位だったが,現在は「黒神話:悟空」に抜かれて3位となっている。開発チームの規模を考えると,とんでもないアクセス数だ。

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ポケットペアのゲーム開発における4つのポイント


 続いて,ポケットペアがゲーム開発において大切にしていることが語られた。大きく分けて4つあり,

1.ジャンルの選定,組み合わせ
2.カオスの誘発
3.人気投票の文化
4.ファンに届ける


であるという。

 まず「ジャンルの選定,組み合わせ」について,インディーゲームメーカーであるポケットペアは,発展している最中の新しいジャンルに取り組むようにしているそうだ。
 日本には多くのゲーム企業があり,それらは面白いゲームを作るためのさまざまなノウハウを抱えている。しかし,新しいジャンルであれば,そうした企業も詳しくはないので,同じ立場で競争できるというのが,溝部氏の考えだ。
 その一例として,パルワールドで「Factorio」を参考にオートメーション要素を取り入れたことを挙げていた。

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 また,ポケットペアでは,発展途上のジャンルを攻略するために,ジャンルの掛け合わせを行い,独自性を生み出すという。
 1作目のOverdungeonはローグライク,タワーディフェンス,カードバトルを組み合わせたものだ。具体的なタイトルを挙げると,「Slay the Spire」と「クラッシュ・ロワイヤル」の掛け合わせである。

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 クラフトピアは,もっと組み合わせれば面白いのではないかと安直な考えでスタートした企画だそうで,最初はバトルロイヤルになる予定だったという。ただ,当時は社員数が4,5人しかおらず,流行りのバトルロイヤルは難しいということを作り出してから気付いたそうで,そこからシングルプレイでもマルチプレイでも遊べるオープンワールドサバイバルへと舵を切っていった。

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 オートメーションの要素は,クラフトピアの時点で入っている。これを表す,牛がベルトコンベアで鍋に投入されている画像がネットで話題になり,「この自動化を生き物にさせれば,楽しいのではないか」と思いついたことがパルワールドにつながった,クラフトピアがなかったら到達できななかったと,溝部氏は説明していた。

 パルワールドでは,オープンワールドクラフトジャンルを発展させて,モンスター育成の要素を加えた。パルがどのように活動するかは,それぞれの人間が違った活動をする「RimWorld」から着想を得ているそうだ。ただ,RimWorldは2Dのゲームであり,届けられるプレイヤー層が限られると考え,3Dのかわいいパルに置き換えたという。

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 続いて「カオスの誘発」について。溝部氏は,クラフトピアで「プレイヤーは開発者の想像を越えてくる」と実感したという。プレイヤーは開発者よりもはるかにうまくプレイするし,想像もしていなかったことをやってくれる。
 そこで,プレイヤーが自由に発想し,自由に行動し,自由に自分たちの遊びを作れるゲームになるよう心がけているそうだ。プレイヤーがどんなカオスを生み出すかは想定していないが,カオスが起きるようなパーツを丁寧に作るようにしている。

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 「人気投票の文化」は,ゲームデザインではなくアート面の話だ。
 ポケットペアでは,アートに困ったら社内での人気投票を行うことにしている。「このパルは必要あるのか」「どちらのデザインがいいか」「カラーはどれがいいか」「かっこいいデザインとかわいいデザインのどちらにすべきか」など,簡単には決められない事態に直面すると,投票を行い,どの案を採用するか決定するそうだ。

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 最後は「ファンに届ける」。パルワールドは,各SNSで大きな反響があった。公式YouTubeの再生数などは非常に大きなものとなり,さらにインフルエンサーがいろいろな動画を投稿してくれたおかげで,最終的に17万本ものパルワールドの動画が投稿されたという。その総再生数は20億にもおよぶ。

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 溝部氏が「忘れてはいけない存在」と説明したのが,中国の動画サイトBiliBiliだ。BiliBiliは中国でしか展開されていないにも関わらず,公式動画の再生数だけでも3000万,関連動画になると12億と,YouTubeの半分以上の数字を叩き出している。
 パルワールドのプレイヤー数も,3割はアメリカだが,それに迫る数が中国であり,この非常に大きな市場は無視できる存在ではない。ポケットペアは,YouTubeで展開するのと同じ重要性をBiliBiliに感じているそうだ。

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 また,公式側から一方的に情報を発信するのではなく,プレイヤーとコミュニケーションを直接行えるよう,コミュニティマネージャーがDiscordを活用している。


パルワールドの今後


 パルワールドの今後にも言及された。6月に大型アップデートを行った同作だが,12月にもアップデートを予定している。将来的にはクロスプレイやパルのワールド間移動,さまざまな新しい島,新しいパルやフィールドボスなどを追加予定であるという。

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 また,韓国のKRAFTONとモバイル版を展開する予定だ。開発を手がけるのは傘下の「PUBG STUDIOS」であり,オリジナル版の要素を再解釈してモバイル版に詰め込むことになるようだ(関連記事)。

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 パルワールドのIP化のために,ソニーミュージックエンタテインメント,アニプレックス,ポケットペアの3社でパルワールドエンタテインメントが7月に創立されている(関連記事)。パルワールドは,今後積極的に,グッズ展開などライセンス事業を行っていく予定とのことだ。

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