プレイレポート
探索ADV「ミクと水没都市」プレイレポート。少女は弟の命を救うため,水没した廃墟をさまよう
ゲーム画面やタイトルを見れば分かる通り,本作の舞台は水没した都市だ。生い茂る植物の様子から見るに,海に没してからそれなりの歳月が経っているようである。
主人公のミクと弟のタクは,ボートに乗ってどこからともなく水没都市にたどり着く。タクはおなかにケガをしており,このまま手をこまねいていれば長くはもたなさそうだ。
ミクは弟を救うため,この緑に覆われた都市を探索することを決める(もしかしたら,ミクは弟のためにこの場所を目指していたのかもしれない)。
本作は,そんな決意を背負った少女・ミクを操作し,フィールドを探索していくアクションアドベンチャー。複雑な謎解きや戦闘などはないが,魅力的な世界に浸りつつ,あちこち見て回るのが楽しいタイプの作品だ。
ゲームが始まったら,まずはボートで周囲の様子を調べていくことになる。ほどなく,映画の看板や彫像といったランドマークや,クジラやペリカンといった生物たちが見つかるだろう。また,手持ちのマップには探索した範囲が自動的に記されていく。これらのランドマークやマップを頼りに,少しずつ探索の範囲を広げていくわけだ。
ときおりボートの残骸が見つかることもあり,調べると船のブースト時間(速度がアップする)を延ばせる。
なんとなく船を走らせているだけでも,期せずして廃墟に迷い込んでしまったかのような,静かで,どこかワクワクする感覚を味わえるのが楽しい。とはいえ,弟を救うという目的も忘れてはいけない。
弟のタクを救うには,街の各所で見つかる救助物資が必要になる。目印となるのは物資投下用のパラシュートだ。
パラシュートのある建物では,外壁をよじ登って救助物資のある場所に向かうことになる。建物を発見したら,すぐによじ登るもよし。望遠鏡で壁をよく観察し,物資までの経路を探してから登るもよしだ。
壁の突起や生い茂るツタは移動に使え,よじ登ったり,ぶら下がって降りたりできる。
ぶら下がれるが上には乗れない突起,登ったり降りたりできるパイプ,斜め下の方向に移動できるジップラインなど,移動に使えるものはいろいろとある。落ち着いてよく観察すれば,救援物資のコンテナにたどりつくのは難しくないはず。
時間の経過によりゲーム内の時刻や天候は刻々と移ろうが,とくにクリアまでの時間制限などは存在しない。気が向いたら寄り道して「ヒストリー」を集めてみるのもいいだろう。ヒストリーのひとつひとつは断片的な,謎めいた絵のようだが,集めるうちにこの都市が廃墟となってしまった理由を推測することができる。
無事,救援物資を手に入れることができれば,そこで一区切り。弟の待つ時計塔まで戻ると,少しずつストーリーが進んでいく。
弟の手当てをして,つかの間の眠りにつくたびに,ミクは夢の中でこの都市に来た経緯を思い出していく。こちらも前述したヒストリーと同様,テキストがない映像のみの演出となっており,プレイヤーそれぞれが想像をめぐらせる余地が存在する。
救援物資のある建物は全部で10か所。順番などは特に決まっていないので,自由に探索を進めていける。とはいえ,拠点となる時計塔から遠い建物ほど難しい傾向があるので,無難に進めていくなら近い建物からチャレンジしていくといいだろう。
そしてお話を進めていくうちに,タクの容態は少しずつ変化を見せていく。さらに,気になることも増えていき……。
元々は6年ほど前に発売されたゲームということもあり,建物や植物のテクスチャに時代を感じるものの,澄んだ空とうねる海,そして緑に覆われた廃墟の取り合わせが美しい。
探索中に心に残る風景を見つけたときは,「ポストカードを作る」モードでアングルやズームの具合などを変えて撮影することが可能だ。Nintendo Switchの本体機能を使い,SNSなどで共有してみるのもいいだろう。
本作はオープニングからラストまで“極力テキストやセリフで語らない”スタイルを貫いており,その物語はプレイしたひとりひとりの中で,各自の解釈が加わって完成していく。これはゲームならではの体験,楽しさといえるだろう。
ピアノの旋律が印象に残る静かで情感ある楽曲を手掛けるのは,英国アカデミー賞を受賞したこともある作曲家Jeff van Dyck氏。氏は「ALIEN: ISOLATION -エイリアン アイソレーション-」や「トータルウォー:ショーグン」シリーズなどの曲も手掛けてきたベテランで,本作でも音楽の力でゲーム体験を大いに盛り上げてくれる。
救助物資を集めるだけなら数時間ほどで終わる本作だが,すべての収集要素を集め,全体像を知るには,その数倍の時間を要するだろう。できれば時間をかけて,ゆっくりと味わってほしい作品だ。
「ミクと水没都市」公式サイト
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