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BitSummitのイベント「吉田修平のインディーズゲーム紹介」レポート。「ソルクレスタ」の誕生秘話とプラチナゲームズの展望が披露された
この配信では,ソニー・インタラクティブエンタテインメント インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏が聞き手となり,プラチナゲームズのスタジオヘッド 稲葉敦志氏および,チーフゲームデザイナー 神谷英樹氏とともに,新作STG「ソルクレスタ」(PC / PS4 / Nintendo Switch)に関するトークを披露した。本稿ではイベントの模様をお届けしていく。
「ソルクレスタ」公式サイト
「ソルクレスタ」は,往年のシューティングゲーム「ムーンクレスタ」および「テラクレスタ」の続編として開発が進められている新作タイトルだ。その初出情報が公開されたのは,2020年4月1日のこと。エイプリルフールということで,多くの人はこの時点ではプラチナゲームズのネタだろうと思っていたわけだが,神谷氏によるとすでに開発に着手していたという。ただ,「ムーンクレスタ」と「テラクレスタ」の権利を持つHAMSTERから許可は得ていたものの,プラチナゲームズ内で正式に承認されたプロジェクトではなかったそうだ。
神谷氏が稲葉氏に「ソルクレスタ」の企画をプレゼンしたのは,2018年頃だった。それ以前から神谷氏は,ぼんやりと3機の戦闘機を合体させたり組み替えたりする新作STGの構想を描いていたとのこと。合体と言えば1980年の「ムーンクレスタ」と1985年の「テラクレスタ」だと思い至ったとき,それらとうまく絡めることができたら,新作STGの世界観もより広がるのではないかと妄想を始めたら止まらなくなったそうだ。とくに「テラクレスタ」にはストーリーがあり,その最後を考えていったところ「クレスタ・サーガ」構想ができあがっていったという。
稲葉氏は,神谷氏のプレゼンを受けて,他社のIPを使った企画であることに驚いたそうだ。ふだんなら「面倒なことを言い始めたな」と思うところだが,稲葉氏にとっても「ムーンクレスタ」と「テラクレスタ」はリアルタイムでプレイしていたSTGであることから,「面白そうな企画だな」という気持ちのほうが勝ったという。
なお,神谷氏は「ソルクレスタ」を「クレスタ」シリーズとして開発することだけでなく,プラチナゲームズのオリジナルIPとして開発することも選択肢に入れて検討していたとのこと。稲葉氏が「こっちのほうが面白い」と判断したことにより,「クレスタ」シリーズでいくことに決定したそうだ。
その後,HAMSTERに許可を取りにいくことになるのだが,HAMSTERの社長である濱田 倫氏と旧知の仲である神谷氏は,すごく緊張したという。それは,勝手に「クレスタ」の名前を使って,「こんなものを作りました」と言うことが失礼に当たるのではないかと考えたからだ。そうなると,これまで築いてきた濱田氏との関係もこじれてしまいかねないと,神谷氏は前日の夜に眠れなかったことを明かした。
実際には,濱田氏はその場でOKを出してくれたとのこと。稲葉氏は「このプロジェクトは濱田さんの優しさでできているようなもの」とし,「ぼくらが作ったIPに対して,誰かが『続編の企画を作りました』と言ってきたら,おそらくいい気はしない」と話していた。
3Dグラフィックスのアクションが得意というイメージのプラチナゲームズが,なぜ2DグラフィックスのSTGにチャレンジするのかと問われた神谷氏は,「憧れだったから」と回答。初代PlayStationが発売された1994年にカプコンに入社した神谷氏は,それまでずっと8bitや16bitのゲームで遊んできたにもかかわらず,「バイオハザード」のプロジェクトに配属されてしまい,以降ずっと3Dのゲームに携わることとなった。2Dのゲームを手がけることは長年の夢だったという。
また吉田氏が,「今のインディーズゲームで楽しいのは,当時の8bitや16bitのゲームがそのまま進化していったらこんなゲームができていたかもと思わせてくれるところ。『ソルクレスタ』にも,少しそういう匂いがする」と話すと,神谷氏は「今の技術を使って2Dのゲームを作っている人達にはすごく刺激を受ける」と答えていた。
「ソルクレスタ」における合体は,「ムーンクレスタ」の1号機,2号機,3号機と合体していくとアグレッシブに攻撃力が増していくところと,「テレクレスタ」の合体から再分離することでフォーメーション攻撃が可能になるというゲームデザインを継承しつつ,より有機的な遊びを提供することを目指したと神谷氏は話す。
具体的には合体時の機体同士の組み替えで攻撃性能が変わるそうで,「組み替えが加わり,考えることが増えてしまったが,繰り返し遊ぶことで新しい遊びを追求できるゲームになった」と説明していた。
さらに本作においては,追加コンテンツ「ソルクレスタ ドラマティックDLC」をインストールすることで,神谷氏が執筆したストーリーが楽しめる「ドラマティックモード」がプレイ可能となる。
配信では,ボイス付きでキャラクターが掛け合いをするプレイ映像も披露された。神谷氏は,「なぜ戦っているのか,どんな敵なのかを考えながらプレイするのも,STGの楽しみ方の1つ」と語った。難度も「Very Easy」を用意しているので,ストーリーを最後まで進めたいという人も楽しめるとのこと。
話題は,稲葉氏がずっとBitSummitに参加していることや,プラチナゲームズが「ソルクレスタ」で自社パブリッシングに初チャレンジすることにもおよんだ。稲葉氏は同社が「新しい,面白いと思ったら,それを世に出したいという気持ちが強い。インディーズゲームはその一番ピュアな部分だと捉えているので,応援していきたい」「僕らはデベロッパとしてやってきたが,自分達のオリジナルIPを作りたいという思いは会社設立当初からあった。ようやくそれが実現できた」と語った。
なおプラチナゲームズで本来,自社IP第1弾になるはずだったのは,先日発表された「プロジェクト G.G.」だったそうだ。このプロジェクトは神谷氏が監督を務めることが明かされているが,実は社内コンペで選出されたものだという。トレイラーにはヒーローものであることが示されているが,神谷氏は「自分のやりたいもの,好きなものに素直に作家性を出すことがいいと考えている。社内でもほかのクリエイターにそう言っている」と持論を披露した。
「ソルクレスタ」の話はそのあと持ち上がったとのことで,社内のさまざまな事情からパブリッシングの順序が前後したとのことだ。
また稲葉氏は,自社IPのゲームを作るアプローチについて,これまでと変わらないとし,「プレイヤーに楽しんでもらえるものが一番で,自分達のエゴ100%ではやらない。ただ自分達のメッセージを自分達自身で伝えられるので,違う楽しさがある」と語った。
神谷氏も「僕達はすごくこだわってゲームを作っているので,それがアーティスト肌のようなものとして伝わっているかもしれない。でも僕自身は常々エンターテイナーでありたいと思っていて,これをやったらプレイヤーは楽しんでくれるだろうか,喜んでくれるだろうかと想像しながらゲームを作っている」と話していた。
一方,自社パブリッシングの大変さも実感しているという。今回のBitSummitへの出展もわずか数名のスタッフで準備したとのことで,稲葉氏と神谷氏は「大変だけど,充実している」と感想を述べていた。
「ソルクレスタ」公式サイト
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SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.
SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.
SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.