「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」プレイレポート。“他人の感情を読み取る力”に翻弄される主人公を待ち受ける運命とは

　スクウェア・エニックスが2022年2月25日に発売する「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」（PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X / Xbox One / Nintendo Switch。以下，トゥルーカラーズ）のプレイレポートをお届けする。


　本作は「ライフ イズ ストレンジ」シリーズの最新作で，他人の感情を読み取る特殊な能力を持つ主人公が，大きな困難に巻き込まれながらも事態の解決を目指すアドベンチャーゲーム。海外では2021年9月にリリースされていたが，今回はボイスも含めた完全日本語版として，満を持しての登場となる。

　本稿には，トゥルーカラーズのエピソード1のネタバレが含まれている。物語の導入部分であり，クリティカルな情報は伏せているが，気になる人は注意していただきたい。

　なお，試遊にはPS4版を使用しており，記事中にあるスクリーンショットもPS4版ものとなっている。

主人公が“呪い”と呼ぶ，感情の読み取り能力

　本作の主人公は，アジア系の少女，アレックス。とある家庭の事情から8年間も養護施設や里親のもとを転々とし，不幸な生活を送っていた彼女だったが，離ればなれになっていた兄のゲイブと連絡が取れ，一緒に暮らせることになった。
　ゲイブが住むのは，コロラド州の山奥の街ヘイブン・スプリングス。荒れた生活を続けていたアレックスだったが，新たな地で心機一転，この“チャンス”を逃すまいと決意していた。

主人公のアレックス（左）と兄のゲイブ（右）。長年離ればなれだった兄妹は，田舎町で新たな生活を始めようとしていた

　ヘイブン・スプリングスは想像どおりの田舎であったものの，久しぶりに顔を合わせた兄を含め誠実で親切な人が多く，アレックスの新生活はうまくスタートを切ったように思えた。だがアレックスは，ある能力と引き替えに感情の制御ができなくなる“持病”を抱えていて，早々にトラブルを引き起こし，とんでもない事件に巻き込まれてしまう。
　不可解な事件の経緯に納得できないアレックスは，その真相を探るため，制御できない不完全なものであることを理解しつつも，能力を使うことを決意する。
　だがその先には，一見平和でのどかな町に隠された裏の顔が待ち構えていた……というのが，エピソード1（導入）部分の物語となっている。

ヘイブン・スプリングスは近くに鉱山がある田舎の町。自然豊かな，一見平穏そのものの土地だ

　トゥルーカラーズは既存のシリーズ作品と同じように，ポイント＆クリック型のアドベンチャーゲームになっている。場面ごとに一定の範囲で動ける場所から，アクセスできるポイントを探し，アイテムを入手したり，設備を動作させたりといったフラグを立てながら物語を進めていく。

　いわゆる“当たり”のオブジェクトを探すのがメインとなるのだが，アクセスできるものにアレックスや周囲の人間が固有の反応をしたり，物語の補足になるような情報が眠っていたりする。本筋にはあまり関係ないが，「ついつい全部調べたくなる」ようになっており，作業感がないのが嬉しい。
　ちょっとした謎解き要素が含まれていることもあるが，オブジェクト自体は遠くからでもハイライトされるようになっており，見つけられずにイライラ……といったことは少ないはずだ。

オブジェクトを調べたり，人と話したりしながらフラグを立て，物語を進めていくシリーズおなじみのシステム

　「ライフ イズ ストレンジ」シリーズの主人公は，さまざまな特殊能力を持っているが，アレックスの能力は「相手の思考・感情を読み取る力」，いわゆるテレパシーや読心術に近いものだ。具体的には，何らかの強い感情を持つ相手に近づくと，その感情が青や赤などのオーラとして周囲に現れ，さらに近づけばその思考自体を読むことができる。その感情がアレックスに向いているかどうかは関係なく，その人の感情が高まっていれば見ず知らずの人間であっても読み取れるのだ。

　強い感情であれば人間を直接見る必要すらなく，例えば（ある人の）書類や手帳といったアイテムからでも，時間を遡ってその時の思考や会話を読み取れる。シリーズ1作目の主人公，マックスの「時間を操作する」ほど直接的な能力ではないが，うらやましく思う人も多いのではないだろうか。


　だが当のアレックスは，この能力を喜ぶどころか，ある種の“呪い”のようなものだと感じている。というのも，単に感情を読み取るだけでなく，自分自身もその感情に取り込まれてしまうからだ。例えば，恐怖を感じている人に近づけば同じように怯えて動けなくなってしまうし，同様に激怒している人がいれば，怒りが爆発し暴力衝動が止められなくなってしまう。これはアレックス自身では制御できないのだ。

　兄のゲイブと離れている8年間，アレックスは問題行動を繰り返すトラブルメーカーとして，施設や里親から冷たい扱いを受けていたが，それもこの“能力”のせいだったようだ。実際，町に来た当日，アレックスはある住人の喧嘩に巻き込まれるが，怒りで暴走した結果，相手の男をボコボコに叩きのめしてしまう。

強すぎる感情に“飲み込まれてしまう”のが，この能力の弱点。アレックスの手帳には，それまでの暴走の記録が何件か残されている

　本作では，主人公の特殊能力が“諸刃の剣”として描かれている印象だ。エピソード1の範囲では発動自体にデメリットはなかったが，初っぱなからトラブル発生では，簡単に“便利な能力”とは言いづらい。プレイを進めていくと，この“副作用”が物語の展開に影響を与えるといったシチュエーションがあるかもしれない。

先が読めないからこそ，“別の選択”が面白くなる

　ライフ イズ ストレンジシリーズで，主人公の能力と同じくらい重要なのが，道中で求められる，さまざまな選択だろう。後で会話がちょっとだけ変わるといったお遊びに近いものもあれば，人の運命や未来自体が大幅に書き換えられてしまう重大なものもあり，物語を深く楽しむための大きな要素となっている。その時は良かれと思って取った行動が，後で思ってもみない問題を引き起こす……といったことも珍しくなく，やり直して別の選択を試してみたくなる。

　本作においてもこれは健在で，エピソード1でも数多くの選択肢が出てくる。その選択が，物語に何らかの影響を与える場合は選んだ後に左上にアイコンが表示され，非常に重要な選択である場合は，選ぶ前に画面がモノクロになる演出が挿入される。
　ストーリー序盤とはいえ，重要な選択は悩ましいものが多く，さらにその結果がすぐに分からないことが多いので，実にもどかしい。ただその中で1つ，分かりやすく印象的な選択があったので，紹介しておこう。

選択がどんな影響を生むのかは，当然ながら事前には分からない。熟考するのも，直感で選ぶのもいい

重大な選択は，大概の場合「どちらかが正しい」ということはない印象なので，自分に正直になって選ぶのがいいかもしれない

　エピソード1の中盤，アレックスとゲイブが2人っきりで，自分たちの過去を語り合う場面がある。そこでアレックスは，兄と離れていた期間の出来事を吐露するのだが，ここで「自分の暗い過去の出来事」か「隠していた自分の能力」のどちらかを選択して語ることになる。筆者の場合，能力の方が秘密の度合いが高いと思ったので，最初はそちらを選択して物語を進めた。

　能力の話を聞いたゲイブは驚くものの，ちゃんとアレックスを受け止めて告白を聞いてくれる。ゲイブは能力をうらやましがるが，アレックス自身はこの力に嫌悪感を抱いていることも分かる。特別なことは起こらないが，離れていた兄妹の仲がグッと近づいたことが感じられ，とても印象的だった。

ゲイブは，アレックスの信じがたい能力の話をしっかりと聞いてくれる

　一方，能力を隠したままで過去を語ると，ゲイブも自身の過去を明かしてくれる。アレックスに負けず劣らず劣悪な環境で過ごすことになったゲイブは，学校を中退して罪を犯し，少年院で過ごしていた。今でこそ，職場や周囲の人々に恵まれた生活を送っているゲイブだが，本人曰く“地獄”のような環境で過ごしていたのだという。そしてその過去を忘れないために，少年院で手に入れたマッチを，今も大切に持ち歩いている。

　そして，アレックスはそのマッチを渡される。アイテムとしてはたった一本のマッチで，今回のプレイでは役立てる機会もなかったが，今後何らかの“キー”になりそうな気がしてしかたがない。

一本のマッチに，兄の強い信念が宿っている。これによって，アレックスにどんな変化が起こるのだろうか

　この会話に限らず，本作には序盤から重要そうな選択肢が次々出てくる。エピソード1の段階では明確な変化が描かれるものは少なかったが，マッチを含め，自分の選んだ行動の結果で未来に何が起こるのか，実に楽しみだ。

　そのため，何度もプレイして選択肢ごとの結果を確認したくなるのだが，本作は選択肢が多いだけあってナビゲートも充実しており，プレイ済みの範囲であれば任意のシーンだけを再プレイしたり，そこからやり直したりできる。また，2回目以降のプレイでは演出をスキップできるので，繰り返しのプレイもスムーズに進められるだろう。


　今回はプレイの範囲や時間が限られていたが，美しいビジュアルやグッと引き込まれるストーリー，そして超能力や自分の選択の“答え合わせ”など，これから先の展開が非常に気になった。
　シリーズファンはもちろんのことだが，本作ではほかのシリーズ作品とは直接つながりがない物語が展開されるようなので，「シリーズ名は知っていたが手を出すタイミングを失っていた」という人も問題なく楽しめるはずだ。興味があればぜひ，発売日を楽しみに待っていてほしい。

「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」公式サイト