プレイレポート
「NINJA GAIDEN: マスターコレクション」プレイレポート。伝説の超忍アクション3作品がまとめて楽しめる
※本稿には「欠損」などのバイオレンス表現が含まれています。
「NINJA GAIDEN」は,テクモが1988年から展開した2Dアクション「忍者龍剣伝」が,2004年に3Dアクションとして再始動したシリーズだ。孤高の「超忍」リュウ・ハヤブサの活躍。狡猾な敵を相手にした1対多のハイスピードバトル。難しいが上達を実感できるゲームデザイン。そして,リュウが刀を振るえば血しぶきが舞い,敵の手足が切り落とされる迫力の描写……そうした数々の魅力を持つシリーズだった。
特に初期作「NINJA GAIDEN」と「NINJA GAIDEN 2」は難度が非常に高く,腕自慢のゲーマーたちも返り討ちにあったものだ。
今回の「NINJA GAIDEN マスターコレクション」には,PS3向けに発売された3作品が収録されている。「NINJA GAIDEN」を調整した「NINJA GAIDEN Black」を,さらに改良した「NINJA GAIDEN Σ」。「NINJA GAIDEN2」に新キャラクターや巨大ボスを追加した「NINJA GAIDEN Σ2」。そして「NINJA GAIDEN 3」を進化させた「NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge」をプレイできるのだ。
「NINJA GAIDEN Σ2」 |
「NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge」 |
「NINJA GAIDEN Σ」:伝説はここから始まった
リュウは,故郷・隼の里を「神聖ヴィゴル帝国」に襲われてしまい,忍者の仲間を殺されたばかりか,里で守っていた魔刀「黒龍丸」をも奪われてしまう。黒龍丸を取り戻すべく,リュウは戦いの旅へ赴く。
高い難度とハイスピードなアクションという「NINJA GAIDEN」シリーズの魅力が凝縮されているが,初めてプレイする人にとっては「マスターコレクション」収録作の中で最も難しく手ごわい作品と言える。元々の難度が高いうえに,システムからの支援が最小限に留められているからだ。手持ちの薬(使用型回復アイテム)は有限で,道中でもそうふんだんに手に入るわけではない。薬を惜しむあまりにやられてしまったり,ペース配分が分からずに使い切ってしまうのは初心者あるあるだ。
加えて「飯綱落とし」や「首切り投げ」といった強力な技が,ゲームを少し進めないと手に入らない。これらの技には全身無敵の時間があり,攻略においても役立つのだが,初心者のうちはこれに頼れない。このように,越えなければならない壁がいくつか存在するのだ。
加えて,敵が非常に賢く,容赦がない。数に任せてリュウを取り囲み,隙を見せると後ろから一撃して体力を削ってくる。こちらがガードを固めていれば投げ技やガード崩し技で揺さぶりをかけてくる。飛び道具を持つ者は躊躇なく間合いを離し,画面外からすら攻撃をしてくるが,これがボスでなく雑魚敵の話なのだから凄まじい。最初のうちは為す術もなく袋叩きにされてしまうこと間違いなしだ。
しかし,繰り返し遊んでいるうちに少しずつ立ち回り方が分かってくる。攻撃の際は,今斬り付けている敵に集中しがちだが,背後にこそ気を配る。敵の動きに集中し,投げ技の前兆を見逃さずに対処する。ガード中も一息つかず,高速移動「裏風」や,特殊反撃「捌き」のタイミングを狙う。まずは周囲を見回し,壁があるならば無敵時間を持つ三角跳びからの攻撃を仕掛ける。神経を研ぎ澄ませ,敵のあらゆる動きを見逃さずに反応するという,ピリピリとした緊張感を味わえるのだ。
初心者のうちは「ヒーローモード」を使うという手もある。これはPS Vita用「NINJA GAIDEN Σ PLUS」で追加された初心者救済システムだ。体力が一定値以下になると,オートガード&オート回避が発動し,気力に関係なく忍術が使い放題になる。特にオートガード&オート回避が強烈で,単にくらい判定が消えた無敵モードでは“ない”のがポイント。ひとたび発動すると,打撃は防ぎ,ガード不能攻撃は回避する……と,リュウがあらゆる攻撃に的確に対応する。その雄姿はまさに伝説の超忍。危機に陥って真の力が覚醒したかのようで,「いつか自分もこうなりたい!」と憧れること請け合いだ。
ただし,ヒーローモードは制限付き。発動から一定の時間が過ぎるか,体力が回復すると終了してしまう。逆に言えば,体力が減ってもヒーローモードで多少無理ができるわけで,初心者はもちろん,本作を機にリハビリを考えている超忍諸兄にもオススメだ。
「マスターコレクション」からシリーズに入門する人は,おそらく本作を最初にプレイして,その難しさに本当にビックリすると思う。しかし,ひとまずヒーローモードを使ったり,ほかの作品を遊んでみたり,今回は最初から選択できる「ミッションモード」で操作を練習するなりしてみよう。先人たちも叩きのめされたのだから大丈夫だ。
もちろん,筆者もフルボッコにされた口である。オリジナルであるXbox版の発売日に「アクションゲームにはちょいとウルサイぜ?」なんて粋がって遊んだところ,15分後にはほうほうの体で許しを請うていたことが思い出される。まあ,そういうゲームではあるので,じっくり取り組む気持ちで遊んでみて欲しい。まずは飯綱落としが手に入るチャプター3を目指してみよう。
謎の鎧武者との戦い。Xbox版ではムービーで見ているだけだったが,PS3では戦えるようになった |
リュウは危険な魔神とも戦わなければならない |
「NINJA GAIDEN Σ2」:より派手に,より遊びやすく
リュウは,邪神を復活させようとする企みを阻止すべく,新たな戦いに身を投じる。その前に立ちふさがるのは,リュウたち隼一門を恨む忍者である地蜘蛛一族,そしてリュウの祖先が封じた魔神どもと,これを統べる四殺重鬼王。血で血を洗う,凄絶な戦いが幕を開ける。
Xbox360の「NINJA GAIDEN 2」をアレンジしたのが,PS3版「NINJA GAIDEN Σ2」だ。今回収録されているのは,PS3版そのままの移植ではなく,PS Vita版の新要素である「TAG MISSIONS」「NINJA RACE」「ヒーローモード」が追加されたもの。
「NINJA GAIDEN 2」から「NINJA GAIDEN Σ2」へのアレンジの中で目を引くのが,難度を下げる調整と巨大ボスの存在である。「NINJA GAIDEN Σ2」の時点で難度が抑えられているのに加え,「マスターコレクション」版では「NINJA GAIDEN Σ」同様のヒーローモードも実装されているため,アクションゲームが苦手な人でも安心して遊べることだろう。ゲームの要所では,大仏や自由の女神といった「NINJA GAIDEN 2」には存在しなかった巨大ボスが登場し,リュウに襲いかかる。デカい拳や怪光線をかいくぐりつつ,現用兵器ではなく刀や弓で対抗する……とアクション映画的な派手さが強調されており,新たな「NINJA GAIDEN」を象徴するシーンとも言えるだろう。
「NINJA RACE」は制限時間内にクリアを目指す。残りタイムは,緑に輝く専用アイテム「グリーンエッセンス」を取ると増える |
「TAG MISSIONS」はCPUキャラクターと組んで戦う。忍法も2人で発動すれば「究極忍法」となってパワーアップする |
そして,「NINJA GAIDEN 2」でフィーチャーされた新要素「欠損」と「滅却」は,プレイヤーに強い印象を残す。欠損は,文字通りに敵の手足が失われるシステムで,敵を攻撃すると,使った技に応じた確率で敵の手足が欠損し,その後の行動に影響を及ぼす。要するに,地面を薙ぐような技なら足,袈裟切りにするような技なら手が切り落とされ,敵が歩けなくなったり,攻撃手段が減ったりするということだ。とはいえ,欠損した敵も侮ってはならない。彼らはリュウに飛びついて自爆し,大ダメージを与えてくるからだ。欠損した敵を一撃で倒すのが滅却で,一瞬にしてトドメを刺すため,バトルがテンポ良く進む。つまり,欠損させることは単なる残虐描写ではなく,ゲームシステムとして意味を持っているのである。
四肢が欠損した敵は,リュウに組み付いて自爆しようとする |
欠損した敵には「滅却」が発動し,一撃でトドメを刺せる |
リュウが刀を振るうと敵の手が飛び,足が飛び,そして地面では欠損した敵が這いずり回る。まさに地獄絵図で,特に自爆する敵には恐怖と哀れみがわき上がってくる。それでいて,欠損と滅却には爽快感が伴う。技の特性を理解して欠損させ,上手く滅却を発動させられれば,楽しさが感じられるのだ。
戦いはある種の業であり,殺す者は自らが殺される覚悟を決めなければならない。こうした側面は,次回作「NINJA GAIDEN 3」および「NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge」でよりフォーカスされていくことになる。
「NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge」:「殺戮の凶手」がリュウを責めさいなむ
リュウは仮面の導師から「殺戮の凶手」という呪いをかけられてしまう。これまでリュウが殺してきた敵の恨みが右腕を腐らせ,やがては命をも奪ってしまうという。リュウは命が尽きるまでに仮面の導師を倒すことができるのだろうか?
今回の物語は,リュウが背負う業に迫るもの。異様に変化した右腕は,リュウが犯してきた罪を具現化したかのようだ。アクションものではあまり見られないテーマであり,呪いの影響で苦しむリュウの姿はプレイヤーの心を揺さぶる。殺戮の凶手は,ゲーム的には「体力が減り続ける中で戦う」という形で表現され,敵を倒すたびに体力が回復するのだが,リュウの苦しみを考えると複雑な気分だ。
「NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge」のシステム面は,「NINJA GAIDEN 3」から大きく変更されている。一度はオミットされた欠損と滅却が復活し,武器の数も増え,後述する「断骨」システムが確率発動から任意での発動に変わるなど,ほとんど別ゲームと言っていい。「NINJA GAIDEN 3」は「マスターコレクション」に収録されていないが,気になった人はソフトを買ってみるのもいいかもしれない。
今回のバトルも凄絶だ。斬られた敵は真っ赤な血しぶきを吹き,例え手足が欠損してもリュウに組み付いて自爆しようとする。欠損した敵を一撃で葬る滅却も健在で,システムを理解すればバトルがテンポ良く進んでいく。
敵の中には大技を繰り出してくる者もいるが,ここは新システムである断骨の出番だ。断骨は一種のカウンター技。敵が自爆などの大技を仕掛ける際には身体が赤く光るが,ここでタイミング良く強攻撃を入れると断骨が発動し,一撃で倒せる。武器のレベルを上げれば,周囲の敵にも断骨を決める「連鎖断骨」を発動させられ,実に爽快だ。断骨を決めるには,敵を注視して反応しなければならないわけで,集中力重視の「NINJA GAIDEN」らしいシステムといえるだろう。
加えて,断骨には“リュウの体力がわずかに回復する”というメリットがある。使用型回復アイテムがなくなっている本作では貴重な回復手段であり,集中してしっかり断骨を決めるほどに有利になっていくのである。
敵を斬ると,前作のような紫のオーラではなく赤い血が飛び,キャラクターが血まみれに |
足を斬り落とされた敵がこちらに這いずってくる。まさに地獄絵図だ |
滅却も断骨も,敵を一撃で倒すという点では同じだが,滅却は敵が欠損すれば即座にトドメを刺せるのに対し,断骨は大技を出すまで待たなければならない。確実に滅却して安全を取るか,断骨で回復と連鎖断骨を狙うか。ハイスピードなバトルの中で,状況に応じて適切に判断する必要がある。もちろんヒーローモードは今回も使用可能なので,初心者でも安心だ。
世界観は前作よりもさらに派手になっている。歩行戦車やヘリ,そして恐竜といった敵と戦う様は迫力満点だ。
今回「マスターコレクション」で3作品をプレイし,操作感の良さと滑らかな動き,歯ごたえのある難度や,上達することで高度なプレイを楽しめるゲームバランスなど,「NINJA GAIDEN」シリーズの魅力を再確認できた。高難度かつやりがいのあるゲームが「死にゲー」として注目される現在であれば,挑戦したくなるゲーマーも増えているのではないだろうか。
スピンオフとして発売された「YAIBA NINJA GAIDEN Z」からシリーズは7年間途絶えているが,これを機に復活を願いたいところだ。
「NINJA GAIDEN: マスターコレクション」公式サイト
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