紹介記事
「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』〜おわらない七日間の旅〜」で,しんのすけの“ちょっと不思議な7日間”を体験。在りし日の日本の夏を感じさせる描写にも注目
しんのすけたちのちょっと不思議な夏休みを描く“オラ夏”こと本作。ゲームファンであればそのタイトル名や夏休みというテーマ,そしてグラフィックスの雰囲気から,“ぼくなつ”でおなじみのゲームシリーズ「ぼくのなつやすみ」をイメージする人も少なくないはず。実際に本作は,ぼくのなつやすみシリーズの監督である綾部 和氏が制作に関わっており,クレヨンしんちゃんのファンはもちろん,ぼくなつ好きの人たちにも注目してほしい作品なのだ。
そんなオラ夏を発売前にプレイできたので,実際に遊んだ感想を交えながらゲームを紹介しよう。
「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』〜おわらない七日間の旅〜」公式サイト
懐かしい雰囲気漂う田舎町で始まる,
しんのすけの“ちょっと不思議な7日間”
ひろしの九州出張に合わせて,家族みんなでみさえの友人・ヨヨコが住む熊本のアッソーに行くことになったしんのすけは,アッソーへ向かう途中の熊本駅で,謎のおじいさんからカメラを渡される。それはおじいさんが発明したという,撮影した写真が絵日記の絵のような仕上がりになる不思議なカメラで,モニターとなってこれを使ってほしいというのだ。
依頼内容は,1週間カメラを使ってその感想を伝えるだけという簡単なもので,なんだか怪しい話ではあるが,しんのすけがモニターとなってそのカメラを使うことに。そんなこともありながらたどり着いたアッソーで,ヨヨコやその家族,そして“どこかで見たことがあるような”町の人たちと出会ったしんのすけたちは,アッソーでの“特別で,ちょっと(?)不思議な1週間”を過ごすことになるのだ。
本作の魅力となっているのが,しんのすけを操作し,夏休み気分を満喫できるところだ。
蝉の声が鳴り響く山道や,小川のせせらぎ。青々とした空に真っ白な雲。子どもたちのひみつ基地……しんのすけの小さな冒険の舞台となるアッソーは,どこか懐かしさを感じさせる“或る日の日本の夏”といった雰囲気がある。それらの情景は,子どものころ実際にそんな夏休みを体験した人たちはもちろん,世代を超えてその心に響くものがあるだろう。
虫がいたら虫取り網を使ってキャッチし,川辺で魚影を見つけたら釣り竿で魚釣りをするといったように,自由きままに日本の夏を楽しもう。
さて,しんのすけは幼稚園児。「もっとたくさん遊びたい!」と思っても,夜が更けると眠くなるし,腹へりメーター(スタミナゲージ)がゼロになるとお腹が空いて動けなくなる。なにより,夜遅くまで遠くで遊んでいてはいけない。しかし,時間を忘れて日が落ちるまで遊んでいてもご安心。町の誰かがお迎えに来てくれるので,一緒にひのやま家まで戻って休み,また翌日の朝からたっぷり遊ぼう。
誰が迎えに来るかはランダム。シロが迎えに来ることも | |
お腹が空いて倒れてしまい,目が覚めると不安そうな表情のみさえが。かあちゃん,心配かけてゴメン……。なお,お菓子などを食べると少し回復するので,「もうちょっとだけ遊びたいぞ」というときに食べよう |
そんな夏休みを楽しめる本作のもう一つの魅力となっているのが,さまざまな場面や細かいしぐさなどからも感じられる“クレヨンしんちゃんらしさ”。例えば,早く移動したいときはおなじみ「ケツだけ星人」の動きとなるのだが,アニメ版と変わらないおしりの躍動感(?)と,操作していて見失いそうになるほどの素早さがあった。キャラクターモデルだけではない細かな部分でも“らしさ”が表現されているので,クレヨンしんちゃんのファンはそれらを見つけるのも楽しいだろう。
美人な“おねいさん”を見かけたときの台詞,家族との会話など,ファンならニヤリとするような要素が盛りだくさんだ |
メニュー画面にも,チョコビやアクション仮面,パジャマといったおなじみの品々が。手書き風の町の地図も可愛らしい |
朝食や夕食,お風呂,就寝といったさまざまな場面で感じられる“家族の温かさ”も,本作の大きな魅力の一つ。食卓に並ぶ大皿の料理やみんなでワイワイとにぎやかに会話する様子は大家族のようで見ていて楽しく,お風呂で談笑するところや,添い寝されながら遊び疲れたように寝ている姿は微笑ましくてたまらない。
1日の始まりに必ず挿入される朝の体操も,日本の夏を感じさせる,筆者お気に入りのシーンだ。町の人たちがひのやま食堂前に集まって体操をするのだが,登場人物が増えれば増えるほど参加人数が増えていくところが,小さな町での人と人とのつながりが感じられる,心温まるものとなっていたのだ。
そして,絵日記。いろいろな出来事や見つけた生き物を書き記していく絵日記は,不思議なカメラが映し出す写真が添えられ,子どものころを思い出させるかのようなノスタルジックな雰囲気がある。
面白いのが,その日の出来事をつづる文章を,「直球」と「変化球」のどちらかを選べること。直球は見たそのままを真っ直ぐ書くイメージだが,変化球はその名のとおりちょっとクセがあるものとなっており,“しんちゃんらしさ”ある日記を残したいなら後者がオススメだ。
しんのすけとなって自由に夏休みを過ごすだけではなく,もちろん物語もしっかり楽しめる。アッソーでの体験を描くエピソード「夏のおもいで」は,町の人たちと交流を重ね,さまざまなお願いごとやお手伝いなどの「目標」を達成することで展開していく。ときには,それまで行けなかった場所に進めるようになることもあるので,夏休みをより満喫するためにも進めておきたい。
物語の進行で重要となるのが,キャップの新聞社。とあるきっかけで「子ども記者」に任命されたしんのすけは,新聞の記事のために町のさまざまな出来事を新聞社に報告することになる。しんのすけが関わった記事は町の掲示板に張り出され,また購買者数が増えると新聞社が成長していく。しんのすけの活躍によって新聞社が大きくなっていくのはなかなか面白い。キャップの新聞社の成長を見届けつつ物語を進めよう。
こうして増えていく“ゲーム中にできること”には,ちょっとしたミニゲーム感覚で楽しめるものも。一つは,近所の子どもたちと顔見知りになると遊べるようになる「恐竜バトル」。ジャンケンの要素のあるコマンドバトルで,シンプルなルールながらなかなか熱い戦いが楽しめる。
カフェ&バー「ダンシングジロ〜」のお兄さんと仲良くなれば「DJあそび」が開放。ゲームのBGMの中から選んだ曲を,カットイン,ノーマル,ロングミックスの3種類といったつなぎ方でプレイヤー好みにミックスできる。DJ気分で好きな楽曲をつなげて,お店で流してみよう。
あいこの場合はルーレットによる判定に。大会もあるので,強いカードを集めて優勝を目指そう | |
クラシックなデザインのレコードプレイヤーとミキサーもかわいい「DJあそび」 |
さて,これまでの写真に,アッソーの人々や風景とともに,恐竜が写っているものがあったのに気付いたであろうか。ここで深くは伝えられないが,本作はただ単に,しんのすけとなってノンビリした夏休みを体験するゲームではない。アッソーでの夏休みは,7日というその日数以上に長く,そして濃厚な時間を感じさせてくれる展開が待っているのだ。
それは「映画クレヨンしんちゃん」シリーズかのような驚きの展開となっているので,とくにクレヨンしんちゃんファンには,ゲームをプレイしてその瞬間を迎えてほしい。それは期待を裏切らないものとなっているはずだ。
ぼくのなつやすみシリーズのような“懐かしい日本の夏”の情景,クレヨンしんちゃんならではの雰囲気ある物語やグラフィックスなど,クレヨンしんちゃんファン,ゲームファンの両方に向けた魅力がたくさんのオラ夏。しんのすけになりきる楽しさがあるのはもちろんだが,少し離れた位置からそっと見守り,サポートしてあげるような感覚も絶妙だ。いつも元気なしんのすけの姿を見て,心底愛おしい気持ちになれた点も強調しておこう。
アッソーでの“ちょっぴり不思議な夏の1週間”を,ぜひしんのすけとともに体験してほしい。
「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』〜おわらない七日間の旅〜」公式サイト
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