インタビュー
「トライアングルストラテジー」インタビュー。単純な“正義”と“悪”に割り切れない,“大人な物語”を描いていく
舞台は,戦乱の大地「ノゼリア」。ノゼリアには,鉄を産出する鉱山を持つ雪国「エスフロスト公国」,ノゼリアで唯一の塩田を持つ砂漠の国「聖ハイサンド大教国」,大河を用いた交易路で繁栄する「グリンブルク王国」の三大国家が存在する。
本作では,そんなノゼリアでの利権を巡る3国の戦乱が描かれる。3つの国ではさまざまな思惑を持つ人物たちが入り乱れるが,誰にも皆,言い分と正義があり,単純に“正義”と“悪”では割り切れない,。そんな中,プレイヤーは「グリンブルク王国」に所属する主人公・セレノアとして,己の信念をかけて選択を繰り返していくのだ。
「オクトパストラベラー」(OCTOPATH TRAVELER)に続く「HD-2D」シリーズ作品の第2弾であり,限りある資源を巡る国家間の争いという大人向けな物語が話題となっている本作は,どのようにして生まれたのか。今回4Gamerでは,プロデューサーの浅野智也氏と新井靖明氏にオンラインインタビューを実施し,開発の経緯やこだわり,本作におけるHD-2Dという表現方法のあり方などについて聞いた。
「トライアングルストラテジー」製品版プレイレポート。硬派なシステムながら,随所に遊びやすい工夫が詰まったタクティクスRPG
スクウェア・エニックスは2022年3月4日,Nintendo Switch用ソフト「トライアングルストラテジー」を発売する。最新技術で美しく描き出されたドット絵と,往年のタクティクスRPGを思わせる歯ごたえを併せ持つ,“HD-2D”シリーズ第2弾の製品版プレイレポートをお届けしよう。
「トライアングルストラテジー」公式サイト
単純に“正義”と“悪”では割り切れない,“大人な物語”と,人々が息づくリアルな世界を作り上げる
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは「トライアングルストラテジー」が立ち上がったきっかけを教えてください。純粋なRPGだった前作「オクトパストラベラー」とは違い,今回はタクティクスRPGとなりますが。
浅野智也氏(以下,浅野氏):
ジャンルをタクティクスRPGにした理由は,人間ドラマや群像劇を描くのにそれが適していたという点が大きいです。「オクトパストラベラー」を制作していた際に感じたことなんですが,RPGに限りませんが,ゲームフォーマットによって,語る物語に,向きと不向きがあるんです。
スタンダードなRPGは,いろいろなところを旅して行く中で事件が起き,ダンジョンに潜り,魔物やボスと戦って問題を解決する……ということを繰り返す構造なので。
4Gamer:
“旅”が前提になることが多いので,国の情勢やそこで暮らす多くの人を描くには不向きということでしょうか。
浅野氏:
はい,そのように考えました。もっと人々の日常に根差した物語を描いてみたいと思い,2019年には未踏の大陸の移植民を描く「バリアスデイライフ」を作ったんですが,この方向性をさらに推し進めたのが「トライアングルストラテジー」です。
多くの人と人が,信念のために生死をかけてぶつかりあう,大人も楽しめる物語として,戦禍群像劇にトライしようということで,タクティクスRPGに決まりました。
4Gamer:
タクティクスRPGなら登場人物として扱える人数も多いですしね。
浅野氏:
「オクトパストラベラー」発売後にユーザーさんから「HD-2DはタクティクスRPGと相性が良さそうだし,遊んでみたい」という声が上がったこともHD-2Dを採用したタクティクスRPGが生まれる1つの要因になりました。
4Gamer:
体験版への反応について教えてください。2021年2月に本作が発表された直後には,第6話に相当する「Project TRIANGLE STRATEGY Debut Demo」(以下,Debut Demo)を,そして,2022年2月10日には,第1〜3話が収録された「TRIANGLE STRATEGY Prologue Demo」(以下,Prologue Demo)が配信されています。
新井靖明氏(以下,新井氏):
「Prologue Demo」については,「大人な物語だ」という反応が多かったので,安心しました。一方で「話の部分が長い」「もっと早くバトルしたかった」というお声があったことも認識しています。
浅野氏:
話が長いという点については,こういう反応があるだろうな……とは思ってはいましたが,必要な長さではあったと思っています。昨年配信した「Debut Demo」は「お話は分からないかもしれないけれど,雰囲気を楽しんでほしい」旨の注釈をつけて配信しました。いきなり6話というゲームの途中から始まるので,「ストーリーは,まあ分からないだろうな……」と思っていたんですが,反響を見ると,思いのほか雰囲気以上に,物語を楽しんでいただけた,という印象でした。
4Gamer:
第1〜3話を収録した「Prologue Demo」より,第6話を収録した「Debut Demo」を先に配信されたのは,何故でしょうか。
新井氏:
第6〜7話の方が物語的に大きな選択と分岐を行うことになるのと,マップのギミックとユニットが揃っていることによる遊び応えが主な理由になりますね。
浅野氏:
「体験版でどこを切り出すべきか」については,いつも悩みます。冒頭だと導入部分の話が長いですし,「ブレイブリーデフォルト」におけるジョブチェンジのような目玉機能も揃っていないので,バトルを楽しんでもらえないかもしれない。
新井氏:
かといって,途中だとバトルは楽しんでいただけるけど,ストーリーを楽しんでいただくのは難しいですよね……。そこはいろいろと考えたうえで,配信しています。「Debut Demo」はユーザーさんにアンケートを実施して,主にゲームの手触りについてのご意見をいただきたかったので,ストーリーについては「途中からでごめんなさい,雰囲気だけでもお楽しみいただければ」という注意書きをつけて配信することにしたんです。
4Gamer:
なるほど。体験版をプレイした国内外ユーザーでの反応の違いなどありましたか。
浅野氏:
基本的には変わらないのですが,あえて差を言うなら,ヒロインのウケは海外の方が良いですね。これは「オクトパストラベラー」「ブレイブリーデフォルト」もそうなんですが,私たちが作る作品に共通の傾向です。芯が強そうだったり,デザインだったり,戦うヒロインとしての納得感があるそうで。
新井氏:
アンナは海外で人気が高かったですね。キャラクター性はもちろん,バトルでも性能が良いと評判でした。
4Gamer:
「Debut Demo」では,「大国と戦争になるのを承知で,主人公の親友であり,主家筋にあたるロラン王子をかくまうか否か?」という選択肢が壮絶でしたね。
大国にロラン王子を差し出せば,ひとまず戦争は回避できる。けれど彼は主人公の親友だし,見捨てるようで気が引ける。自分が良かれと思って判断した選択が,思わぬ事態を招く……といったように,もうこれが物語のクライマックスでもいいくらいに感じられました。
新井氏:
もちろんあれがクライマックスというわけではなく,序盤の山場にあたる部分になります。選んだ甲斐があるような選択も今後多く待ち構えていますよ。
4Gamer:
楽しみにしています。3つの国の人々がそれぞれの思惑で絡み合う複雑な話であり,各国の象徴となる塩,鉄,水運という産業が物語のカギを握っているというのも,リアルな設定ですよね。ゲームで勢力が対抗する話を扱うとなると,剣の国と魔法の国が戦う……みたいなものをイメージしてしまいますが,そうではない。
浅野氏:
できるだけユーザーさんを置きざりにしないように,“この世界では鉄と塩が貴重で,これを巡っての争いが絶えず起きている”という基本設定は,かなり分かりやすく配慮しています。また,3つの国に住む人々も,一目見てどの国の人か分かるように色付けしています。ややもするとリアリティを損なう可能性もあるんですが,そこは分かりやすさを重視しました。
新井氏:
最初は,「(戦争の)火種は鉄かねぇ……」なんて浅野さんと話してたんですよね。「鉄かなぁ…」と考えながら,個人的に週末「塩とたばこの博物館」に行ったりもしました(笑)。
浅野氏:
ベーシックなところだと土地・領土なんでしょうけど,実際に奪い合うモノがあった方が良いだろうと。
新井氏:
そうして鉄と塩という,現実世界の我々にとっても説明不要なほど重要であるモノが争いの火種に決まりました。そこで「塩鉄大戦」というワードを打ちだしたんですが,ユーザーさんにはちゃんと響いたようで,喜んでいただけたのも幸いでした。
4Gamer:
特定の歴史を参考にしたわけではないんですね。
浅野氏:
特定な場所の特定な時代というわけではないですが,いろいろな歴史を参考にはしています。シナリオを作るうえで1つのポイントとなる「戦争を終わらせる方法」というテーマについては,歴史学者の方が語ったことなどを意識していますし。
4Gamer:
現実世界にもある,資源が火種となった戦争というリアル寄りの物語でありながら,魔法が登場するのも印象的でした。魔法を登場させると,リアリティレベルの設定が難しくなりますよね。物語を動かすために何か障害を登場させても,見ている側としては「魔法でなんとかならないの?」と考えてしまいますし。
浅野氏:
魔法は登場させるべきだと思いました。そのうえで「大人である僕らがイメージする社会を変容させないレベルで,魔法を共存させるにはどうすればいいか」を考えていきました。これは「トライアングルストラテジー」に限らず,「オクトパストラベラー」でも行った取り組みではあるんですが。
4Gamer:
では「トライアングルストラテジー」における魔法とはどういったものなのでしょう。
浅野氏:
「学問」です。血や特別な資格や才能ではなく,高度な知識に基づいたものです。簡単に例えるなら,我々が言うところの微分積分みたいなもので,「疲れるから,普段はあんまりやりたくないよね」というものだと捉えていただければと。
新井氏:
本作にも「魔法が使えるなら,塩を作っちゃえばいいじゃん」というご意見をいただきますが,「魔法」を含めた本作の文明水準として,難しい,なかなかできないことなんです。
浅野氏:
リアルの追及をやり過ぎると「魔法なんて,ない方がリアルだよね」となりますけれど,バトルするゲームとしては,魔法はあった方が良い。リアリティとゲームとしてのバランスはよく考えさせられます。
4Gamer:
今回,キャラクターたちの信念に応じて物語が分岐していくそうですが,どれくらいの分岐があるのでしょう。
浅野氏:
今お話しできるのは「エンディングは1つだけではない」ということだけですね。まったく異なる結末が用意されていますし,そこに至るまでの過程も異なっています。1回のプレイで満足していただけますが,ストーリーが気になる方には複数回プレイしていただけます。
4Gamer:
過程がまったく異なるということは,仲間になるキャラクターや敵対するキャラクターも違ってくるのでしょうか。
浅野氏:
そういうことですね。最初のプレイは攻略情報などを見ずに,自分の心のままに選択することをオススメします。
4Gamer:
選択を変えて遊ぶのも面白そうですが,周回プレイをサポートする仕組みはありますか。
新井氏:
詳しくは言えませんが,「周回プレイって,面倒なんじゃないの」という方に向けて,遊びやすく楽しんでいただける仕組みも用意してありますので,ご安心いただければと思います。
4Gamer:
難度についてはどうでしょうか。タクティクスRPGというと,難しめのジャンルだと思う人も少なくないと思います。
浅野氏:
難度は「ベリーイージー」「イージー」「ノーマル」「ハード」を用意しています。難度は途中で変更できますので,タクティクスRPGが初めての方は低い難度からスタートし,慣れるにしたがって上げていくという遊び方も可能です。
4Gamer:
難度を低くすると特定のルートに行けないとか,特定のキャラクターが仲間にならないといったような制限はありますか。
浅野氏:
一切ないのでご安心ください。具体的にはまだ言えないんですが,高難度をクリアするとある“名誉”のようなものがついてくるくらいですね。
4Gamer:
難度を下げるとどれくらい簡単になるのでしょう。
浅野氏:
相当に簡単になりますよ。お話を楽しみたい,バトルで詰みたくないというユーザーさんに,難しくて物語の先が見られないというイジワルをしたところで意味ないですから。
我々としては“物語を楽しみつつ,敵の脅威を感じてほしい”難度として「イージー」を設定しましたが,そのうえで“お話だけを楽しみたい人もいるんじゃないだろうか”ということで,「ベリーイージー」を加えています。ここから始めた方もいくつかのエンディングを見るころには,ゲームにも慣れた「いっぱしのタクティクスゲーマー」になっているんじゃないでしょうか。
新井氏:
「ベリーイージー」なら絶対にクリアできますから,タクティスジャンルは初めてで不安……という方にもぜひお勧めしたいですね。「オクトパストラベラー」でHD-2Dの良さを知り,こうした表現のゲームをもっと遊びたいと考えた方には「絶対に大丈夫ですよ」とお伝えしておきます。
4Gamer:
1周するのに何時間くらいかかりそうですか。
浅野氏:
プレイ時間は人それぞれだと思いますが,私がチェックのために通しプレイをした際は,30時間弱かかりました。
4Gamer:
慣れた浅野さんで1周それくらいだと,かなりのボリュームですね。そのうえでルートは1つだけでないとなると。なかなか遊び応えがありそうです。
HD-2Dというノウハウを共有し,新たな手法へと進化させる
4Gamer:
今回は開発に1980年代からシミュレーションゲームを手がけている老舗・アートディンクが参加していますね。
浅野氏:
アートディンクさんはシミュレーションゲームへの造詣も深いですし,スタッフのモチベーションもめちゃくちゃ高くて,いちプレイヤーとして意見をもらえることも多かったですね。例えば「やっぱり,ユニットの向きは自分で決めたい!」とか(笑)。
4Gamer:
ああ,分かります(笑)。
新井氏:
「信念」も当初は4つあったんですが,「ユーザーさんに分かりやすく遊んでいただけるだろうか」「その違いを甲斐のあるものとして表現しきれるだろうか」などをアートディンクさんと議論していった結果,3つに絞るという決断に至りました。そうした中で「今風のタクティクスRPG」をキーワードとした議論も進めていきましたね。
4Gamer:
「今風のタクティクスRPG」ですか。
浅野氏:
弊社のタクティクスRPGと言えば,「タクティクスオウガ」や「ファイナルファンタジータクティクス」といった作品があります。これらはの疑いようのない名作ですが,それらとまったく同じで良いとは思いませんでした。
4Gamer:
では,差別化を意識した部分はどこでしょうか。
新井氏:
「モンスターが登場せず,常に人間と人間の戦いである」ということが1つ挙げられます。それを描くに際して,「ジョブチェンジ」のシステムもずいぶん検討しましたが,あえて採用せず「登場キャラすべてをユニークな固有ジョブにする」という方向に舵を切りました。
その理由として,数十人以上のキャラクターすべてをジョブチェンジしつつ育成すると,バトルバランス調整が難しくなるだろう,というのがありました。また「誰でも何にでもなれる」ことが「どうすればいいかわからない」と捉えられるのも懸念していました。ここが,「大人向け」や「今風のタクティクスRPG」というキーワードで重視した,今のゲームユーザーさんにとっての「遊びやすさ」の部分です。
シナリオの観点で言うと,大人向けの人間ドラマを描こうとすると,全キャラに戦う理由や目的をきちんと据える必要があります。「なぜこのキャラはこのジョブなのか」が定まっていると,その背景や言動に一貫性を持たせやすかった,というのはメリットだったかもしれません。
浅野氏:
メインストーリーのほかに,キャラクターを育てられる「想定バトル」というものがありますので,そちらでぜひお気に入りのキャラクターを育成してみてください。
4Gamer:
特徴の1つでもあるHD-2Dについても聞かせてください。「オクトパストラベラー」に続き,タクティクスRPGである「トライアングルストラテジー」でもHD-2Dの手法が使われていますが,ジャンルが違うことで絵作りに違いはあったのでしょうか。
浅野氏:
「オクトパストラベラー」のカメラは固定でしたが,タクティクスRPGであれば,戦場マップを360度見渡せないといけません。「トライアングルストラテジー」のマップは,どの方向から見ても良いように作らなければなりませんでした。
新井氏:
すべての向きから見たマップのパーツを作らなければいけないので,物量も多いんですよ。制作初期には,“マップの端をどうするか”をずいぶん議論した記憶があります。素敵なワールドマップのアイデアと合わせて,アートディンクさんのアートチームがたくさんのロケーションをうまくなじませてくれました。ぜひマップを隅々まで探索して,戦乱のノゼリアの臨場感を感じていただけたらと思います。
4Gamer:
HD-2Dは,デフォルメされた感じとリアルな感じがブレンドされていて,両者のバランスが絶妙であるように感じられます。デフォルメされたキャラクターたちがいるところにリアルな照明が当たるのが面白いですし,ジオラマというかヴィネット的なものを見ている気分にもなります。その分,制作も難しそうですが。
浅野氏:
デフォルメについては,ちょうどいいラインを探っていきました。ドットのキャラクターはドット絵として魅力的でないといけません。しかし,リアルになって頭身が上がり,解像度が高精細になってドット1個が小さくなっていくと,それはもはやドット絵というよりは“イラスト”になってしまうんです。確かにそれは単体のイラストとしては魅力的ですが,HD-2Dとして積み上げてきたのとは別物になってしまうわけですね。
4Gamer:
これまでのゲームの進化だと,ドット絵にしろ,ポリゴンに貼るテクスチャにしろ,解像度を高めてドットが見えないようにしていく取り組みが行われてきましたが,HD-2Dでは逆にドット感を出さないといけないわけですね。
浅野氏:
「トライアングルストラテジー」の制作初期段階では,複数の開発会社様にHD-2Dの映像デモを競作していただき,それぞれを私と「オクトパストラベラー」を開発したアクワイアさんで拝見したうえで,アートディンクさんにお願いしたという経緯があります。
ほかのデベロッパが“フォトリアルなものを作ってから,減らす絵作り”という手法だったのに対し,アートディンクさんだけは“正しいHD-2Dのビジュアル”とアクワイアさんからも評されていました。
4Gamer:
“正しいHD-2D”というのはどういうことでしょう。
浅野氏:
素材レベルでデフォルメされたものを用意して,そこにリアルな効果を足して,“積み上げてゆく”ということです。正しく作られたHD-2Dの画面は,ドットのキャラクターと背景のマッチングがちゃんとしているんです。正しく作られたHD-2Dの画面は,ドットのキャラクターと背景のマッチングがちゃんとしているんです。
逆に“フォトリアルなものを作ってから,減らす絵作り”だと,ただ解像度を下げたように見えてしまう,「綺麗なままにしておいた方がいいんじゃないか」という絵になってしまいます。
4Gamer:
HD-2Dは新しい手法ではあるけれど,デベロッパが変わっても質は安定していると感じられますが,実際の開発に入る前にしっかりとチェックが行われていたんですね。「ドラゴンクエスト III」や「ライブアライブ」など,HD-2Dを使用した作品が発表されていますが,タイトル間でノウハウの共有などは行われているんでしょうか。
浅野氏:
はい。後発のタイトルを作っているチームには,先に出るタイトルの情報を開示していいし,有用そうな情報があれば,開発会社をまたいで情報交換することを推奨しています。そのため,先に出たタイトルで使われた表現方法なら,後発タイトルに取り入れることが可能です。
4Gamer:
先ほど「正しいHD-2D」というお話がありましたが,ノウハウを共有するうえで,HD-2Dらしさを定義するバイブルのようなものはあるのでしょうか。
浅野氏:
そうしたものはありません。タイトルごとに表現しなければならないものが変わりますので,微妙にHD-2Dとしてのテイストは変わってくると思います。例えば「ライブアライブ」では,原始やSFといった雰囲気の違う世界を描きますが,いろいろと工夫していただいたおかげで表現の幅も増えました。
4Gamer:
1点疑問に思っていることなのですが,“HD-2Dフォロワー”的なものが出てこないのはなぜなんでしょうか。インディーズゲームの隆盛に伴ってドット絵のゲームも増えていますし,そこに応用できそうな手法だとは思うんですが。
浅野氏:
思ったよりもコストがかかるという点が挙げられるかと。その点,スクウェア・エニックスに期待するタイトルとの相性が良いので。他社さんがマネするメリットがあまりないのかもしれません。
4Gamer:
あと,浅野さんがプロデュースされる作品は,「オクトパストラベラー」や「トライアングルストラテジー」など,タイトルがゲーム内容を端的に表すものになっているのも特徴的ですが,タイトルを考える際に意識していることはありますか。
浅野氏:
新作にタイトルを付けるときって怖いんですよ。タイトルでどんなゲームなのか連想できないとダメだし,それでいて色気がないとダメだし,ロゴにした際にかっこ悪くてもダメなので,その辺りをすべて意識しながら考えています。
「オクトパストラベラー」は「オクト(8)のパス(道)を辿るトラベラー(旅人)」,「トライアングルストラテジー」は「トライ(3)アングル(視点)のストラテジー(戦略)」ということで名付けました。
タイトルを付ける際に,海外のスタッフにヘンじゃないか見てもらうネイティブチェックも行いますが,その結果がすべて正しいとも限りません。実は,新規タイトルを発表する際に「プロジェクト」を頭に付けた仮題として発表しているのは,ユーザーさんの反応を確かめているからなんですよ。
4Gamer:
新規タイトルを次々立ち上げているがゆえの苦労ということですね。まだまだ伺いたいところですが,そろそろお時間が迫ってきたようです。最後に読者へメッセージをお願いできますか。
新井氏:
HD-2Dシリーズ第2弾,完全新作のタクティクスRPGとして,1人でも多くの方に興味を持ってもらえるように,多くのトレーラーを作ってきましたが,そこで聴ける千住 明先生の音楽もとても素敵なので,ここで改めてアピールさせてください。ファイナルトレーラーで使わせていただいた「Song of TRIANGLE STRATEGY」を聴くと,今でも胸が熱くなります。ぜひゲーム本編でも楽しんでいただけたら幸いです。
浅野氏:
HD-2Dのゲームを遊んだことのない方は,体験版もありますので,ぜひチェックして欲しいです。このユニークな絵作りを実際に体験してみて下さい。1〜3話が収録された「Prologue Demo」は5〜6時間楽しんでいただける,満足のいくボリュームになっていますので,Switchをお持ちでしたら遊ばないと損ですよ……!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「トライアングルストラテジー」公式サイト
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