プレイレポート
「聖剣伝説 Legend of Mana」プレイレポート。独特の世界観とディープなやり込みのRPGが現代に蘇る
PlayStation時代はさまざまなRPGが発売されたが,「聖剣伝説 Legend of Mana」という印象的な作品があったことを覚えている人も多いだろう。ドット絵のキャラクターと手描きイラストを組み合わせた独特の画面。ワールドマップに町やダンジョンを自由に配置でき,プレイヤー毎に違った世界が生まれる「ランドメイクシステム」。武具やゴーレムの作成といったやり込み要素。宝石の核を胸に持つ「珠魅」や,草の塊に手足が生えたような「草人」,独特の言葉で喋る「アナグマ」,ポットのような魔法生物といった種族が入り交じる不思議な世界観。そして,世界のあちこちで起こる事件に関わっていく,連作短編小説を読むかのようなプレイ感など,さまざまな点で個性的なゲームだった。
そんな「聖剣伝説 Legend of Mana」が,今回22年ぶりに復活したわけである。どこでもセーブやエンカウントのON/OFFといった便利機能が追加され,より遊びやすくなった本作。今回事前にプレイする機会を得たので,プレイレポートをお届けしていこう。
冒険の舞台となる「ファ・ディール」は,見る人のイメージによって姿を変えていく不思議な世界だ。ゲームを始めた段階では,何もない土地が広がっているだけだが,「マナ」の力を秘めた遺物「アーティファクト」を置くと,人々が集う町や,ジャングルや塔といった「ランド」が出現する。これが「ランドメイクシステム」だ。
アーティファクトは「陸にしか置けない」「海にだけ置ける」といった制限があるが,そこさえクリアしていればどこに置くのも自由。つまり,世界のありようはプレイヤーごとに違ったものになる。ランドの配置は敵の強さや店の品揃えに影響を及ぼし,アーティファクト毎に定められた「マナレベル」によっては特別なイベントが発生し……とかなり奥深いが,初心者はまず好きなようにプレイしてみて,2周目以降にこれらの要素を意識してみるのがいいだろう。最初は荒涼とした土地も,ゲームが進むといろいろなランドが並んで賑やかになっていく。オリジナルであるPlyaStationの時代とは違い,今はゲーム機側でスクリーンショットを撮れるため,ゲーム開始直後と終了直前の世界を比べてみるのも面白いだろう。
そして,ランドには個性豊かなキャラクターたちがいて,プレイヤーは彼らが巻き起こす事件(イベント)に関わっていく。ガッツリと戦闘を楽しめるダンジョン探検をはじめ,戦闘なしに人々に話を聞いて回る幽霊騒動や,異種族の町で彼らの言語を解読しつつのセールス行脚など,イベントの種類や長さもさまざま。連作の短編小説を読んだり,テーブルトークRPGを遊ぶような感覚で楽しめる。
キャラクターたちの台詞がまた秀逸で,ウインドウ1つ約40文字という限られたスペースで個性が表現されているのは見事としかいいようがない。どこかユーモアが漂うテキストと,台詞がない主人公という組み合わせは,ファミコンやスーパーファミコン時代のRPGらしさもあり,2021年の現在ではかえって新鮮に感じられる。
個人的には,とあるシナリオで別れる恋人たちがそれぞれ愛を歌うシーンが印象深い。わずか数文字で男女の恋愛観の違いが表現されており,実に巧みだ。
戦闘は2Dのフィールドに敵味方が入り乱れる,アクション性が強いシステムだ。プレイヤーが使える武器は「グラブ」「短剣」「片手剣」「片手斧」「大剣」「バトルアックス」「バトルハンマー」「槍」「ヌンチャク」「ロッド」「弓矢」という11種。大剣は攻撃速度こそ遅いが範囲が広く,弓矢は遠くまで飛ぶが攻撃判定は小さいのでしっかり狙わなければいけないなど,それぞれ個性的だ。
これらの武器と,キャラクターが装備できる「ジャンプ」や「前転」などの特殊アクション「アビリティ」を組み合わせて戦っていくと,新たなアビリティや,武器それぞれの「必殺技」を覚えていく。これらは自由に付け替えができるため,動きのバリエーションがどんどん豊富になる。
例えば,「ガード」と「ダッシュ」のアビリティを組み合わせれば,ガード体勢で突進する「ガードダッシュ」を習得する。これを,敵を掴んで投げる「グラップル」とあわせて装備すれば,身を守りつつ間合いを詰めて一気に投げ飛ばせる……といった感じで,組み合わせを考えるのが面白い。戦うたびに「今度はどんなアビリティや必殺技を覚えるだろうか?」という期待感があり,「このアビリティはどの武器と組み合わせるのが効果的だろうか?」と試行錯誤する楽しさも味わえるのだ。
本作の戦闘はベルトスクロールアクションのように,縦方向に動いて敵の攻撃を回避するのがポイントとなる。つまりは操作テクニックも重要になり,ボス戦などでうまく立ち回れれば爽快だ。
今回のHDリマスター版では,さまざまな点に変更が加えられている。まず目を引くのが,背景の高解像度化だろう。本作はイラスト的な背景にドット絵のキャラクターを重ね合わせる手法が用いられているが,HDリマスター版では背景が高解像度になった。手描きのタッチがより引き立っているのに加え,3Dゲームのように視点を動かせないからこその大胆なアングルもあり,思わず見入ってしまう。ここに繊細なドット絵が乗せられることにより,絵本を思わせる不思議なゲーム画面が生まれている。
エンカウントのON/OFFや,どこでもセーブといった補助機能の追加も見逃せない。本作のダンジョンは,繰り返し通る場所に敵が配置されているうえ,試行錯誤を要するパズル的なギミックもあるため,探索に集中できないこともあった。そんなときも,エンカウントをOFFにすれば,敵と出会っても戦闘せずに素通りできるため,ゲームがスムーズに進められる。ボス戦や「敵を全滅させることでドアが開く」といった戦闘絡みのギミックがある場合は,エンカウントをOFFにしていても戦闘が始まるため,ゲーム進行に支障がないのがありがたい。
あわせて便利なのが,どこでもセーブ機能だ。オリジナル版では,マップのあちこちにあるポポイ像でしかセーブできなかったが,今回はどこでもセーブできる。
また,BGMについてはオリジナル版とアレンジ版を選択できるほか,ミュージックモードで視聴することも可能。当時のイラストがギャラリーとして収録されているのも嬉しいところだ。
新たな補助機能が追加されている一方で,オリジナル版の当時,ポケットステーションでプレイできたすごろく風ミニゲーム「リング・りんぐ・ランド」や,2P側コントローラでNPCや異なるデータの主人公を操作して協力プレイできるシステムなど,印象的だったフィーチャーはキッチリ再現されている。外出先で「リング・りんぐ・ランド」を遊んだり,友達の家にメモリーカードやコントローラを持ち込んで2Pプレイしたりといった思い出がある人は,こうした再現は嬉しいのではないだろうか。
1999年の発売以降,リメイクやリマスターといった機会に恵まれなかったものの,独特の雰囲気とやり込み要素で根強いファンを持つ本作。それだけに,今回のHDリマスターは,後年になってから本作の評判を聞いた人にとっても改めて手に取るチャンスといえるだろう。
「聖剣伝説 Legend of Mana」公式サイト
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聖剣伝説 Legend of Mana
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(C)1999, 2021 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.
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