バンダイカード事業部は「
機動戦士ガンダム アーセナルベース」の稼働を
本日(2022年2月24日)から全国のアミューズメント施設にて開始する。
2021年5月には,開発中の本作のプレイレポートを掲載したが,その後3度に渡るロケテストが行われ,さまざまな新要素の追加やゲームテンポの改善といったブラッシュアップが図られてきた。
今回は,稼働直前のバージョンをプレイしたインプレッション,そしてプロデューサーをはじめとした3人のキーマンへのミニインタビューをお届けしよう。
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本作は,指揮官となって5機編成のモビルスーツ小隊に指示を出し,敵小隊の打倒と母艦撃破を目指す
リアルタイムストラテジー(RTS)だ。「機動戦士ガンダム」や「機動戦士ガンダムSEED」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」など,さまざまなシリーズからモビルスーツやパイロットが参戦し,これらがカード化された
「MS(モビルスーツ)カード」「PL(パイロット)カード」を組み合わせてデッキを作って戦う。
筐体にMSカードとPLカードをセットすると,カード情報が読み込まれ,モビルスーツとパイロットがゲーム内に登場する。また,アーケードにある多くのカード系のRTSと違い,本作は,味方を動かすのに画面をタッチするだけでいい。画面上で現物のカードを滑らせるという操作が存在しないため,カードを綺麗に保ちたい人にも嬉しいところだ。
ゲームの目的は味方母艦を守りつつ,敵母艦を撃沈することだ。攻めるにも守るにもモビルスーツを使う必要があり,敵モビルスーツを倒して敵母艦への道を拓き,そこにうまく攻撃役を投入して母艦を狙う。そのためには,その途中にある拠点を攻略するのも重要で,落とした拠点からは,味方を出撃させられるようになるのだ。
モビルスーツは時間の経過とともに溜まる
「コスト」を支払って出撃させる。必要となるコストは強い機体やパイロットほど高いため,高コストから低コストまで,バランスよく編成する必要がある。
また,本作は一度出撃場所を選択した後,モビルスーツを自分で動かせない。これは,プレイヤーはあくまで指揮官であり,パイロットではないという設定に基づいている。
そして,モビルスーツがどう戦うかは,パイロットの
タイプで決まる。
「殲滅」は敵モビルスーツを優先,
「防衛」は味方拠点/戦艦を守り,
「制圧」は敵拠点/戦艦のみを攻撃する……といった具合だ。敵母艦ががら空きになっているところに「制圧」タイプを突っ込ませて勝負を決めたり,敵の「制圧」タイプにタイミング良くこちらの「防衛」タイプをぶつけて迎撃したりするなど,状況に合わせた戦術がうまく決まると気持ちいい。
しかし,展開次第では,この逆も起こる。母艦に迫る敵モビルスーツを倒したいのに,手元に出撃可能なユニットがモビルスーツを狙わない「制圧」タイプしかなかったり,「殲滅」タイプが敵母艦を無視してモビルスーツに釣られたり……と,もどかしいことになる場合もある。この辺りの駆け引きをどうしていくかが,指揮官の腕の見せどころだ。
戦闘終了後には,低確率で強力なNPCが乱入してくるEXバトルが発生することも
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とここまでは,2021年5月の先行プレイでも紹介した基本的な情報だが,稼働直前のタイミングで触れた今回のバージョンは,ロケテストを繰り返してさまざまな改善が行われたことにより,ゲームのプレイアビリティが向上していた。
時間経過で増える「SPゲージ」を使うと発動できる,モビルスーツの
「戦術技」は,発動時に戦場の時間が止まり,カットインが挿入されるのだが、演出の時間が以前のバージョンより短くなっている。次の一手を考える余裕はありつつも,良い意味でテンポアップしていると感じられた。
また,2021年5月の先行プレイとはボタンの配置や役割が異なっており,正式稼働版では戦術技を発動すると,「動くゲージをタイミング良くボタンを押して止める」というアーケードカードゲームでお馴染みのミニゲームが導入されている。
新たに“戦場すべてを見渡せる,引きのカメラ”も導入されている。出撃させたモビルスーツを直接操作しないだけに状況把握は重要で,プレイのしやすさに大きく貢献していると感じられた。
さらに,「防衛」タイプが守るラインを変えられる追加機能も面白い。以前のバージョンでは,一度防衛タイプの出撃場所を決めてしまうと,守るラインを変えられなかったため,拠点を守るために「防衛」タイプを出撃させたはいいが,敵が逆サイドから攻めてきて,「防衛」タイプの機体が棒立ちになってしまうことがあった。
稼働直前のバージョンでは,コストを支払うことで,防衛対象とする拠点を変えることができるようになり,戦力が無駄にならなくなった。しかし,コストはモビルスーツの出撃に要する大事なリソースだ。敵からすれば,変更させることでコストを消耗させられるわけで,ここに新たな駆け引きが生まれていると感じた。
ある程度ゲームを進めると使えるようになる
「作戦カード」も,戦局に大きな影響を及ぼす。作戦カードは実体のないデジタルのカードで,試合中に1度だけ,味方全体に強力なパワーアップ効果などを付与できたり,味方のパイロットタイプを変えたりするものがある。作戦カードも以前のバージョンでは,存在しなかった要素で,これにより戦術に大きな幅が出ている。
さらにやり込み要素も追加されていた。キャラクターやモビルスーツは使い込むことで能力値が少しずつ上がっていくのに加え,キャラクターの場合は戦術技使用時などの新たなボイスもアンロックされる。こういったコレクション要素はアーケードゲームだと定番ではあるが,プレイのモチベーションを上げてくれる。
そして,本作は払い出される
カードの美しさにも注目したい。前回の先行プレイ時からレアリティがさらに増え,現在では「コモン」「レア」「マスターレア」「パーフェクトレア」「アルティメットレア」「アーセナルレア」「パラレルレア」の7種類が存在している。
カードは筐体内でのオンデマンド印刷ではなく,あらかじめ印刷されたものということもあり,カードの加工が非常に豪華だ。コモンの時点で既にカードが光っており,レアリティが上がると箔押しが多用されるなど,どんどん豪華になっていく。
特に,アルティメットレアやパラレルレアにはカードに特殊な印刷加工が施されており,モビルスーツの装甲板にある継ぎ目やメンテナンスハッチといったラインが,手で触れると分かる凹凸で表現されている。
こちらがアルティメットレア。画像をクリック/タップすると高画質の拡大画像が見られる(ファイルサイズが大きいので注意)
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アルティメットレアに寄った画像。装甲板の継ぎ目やステータスに凹凸の加工がなされていることが分かる
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さらにゲーム内で手に入る「アーセナルチケット」を20枚消費+200円投入することで特別な「アーセナルレア」のカードと「経験値チケット」が手に入る。アーセナルレアは,大河原邦男氏が描き下ろした「ガンダム」のカードや,ときた洸一氏による「アストレイ レッドフレーム」と「ロウ・ギュール」(2枚を横に並べると1枚つのイラストになる)のカードなど,ファン必見のイラストになっている。
特別なレアリティであるアーセナルレアのカード。大河原邦男氏やときた洸一氏などのイラストが採用されている
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最後に,「機動戦士ガンダム アーセナルベース」の開発チームである
中井宏輔氏,
礒邉恭平氏,
西村悠紀氏へのミニインタビューを本稿の締めとてお伝えしよう。ロケテストを受けての反響や改善点,リアルなカードへのこだわりなどを話してもらった。
礒邉恭平氏(ゲーム担当,上段写真の左),西村悠紀氏(カード/商品担当,上段写真の右),中井宏輔氏(プロデューサー,下段写真)中井氏はオンラインでの参加
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。正式稼働までに3回のロケテストが行われましたが,ユーザーの声を受けて変わったところを教えてください。
中井宏輔氏(以下,中井氏):
正式稼働まで,お待たせしてしまいすみませんでした。ロケテストでは実際にユーザーから意見をいただき,ゲームのテンポアップを始めとする改善を行い,回を追うごとに評価が高くなっていったことを実感しておりました。
ロケテストを受けて追加した要素といえば,デジタルカードである「作戦カード」の追加が大きいです。いわゆる切り札的な存在で,すべてのモビルスーツを回復したり,「防衛」のパイロットを「制圧」に変更したりできるなど,戦いに大きなの影響を及ぼします。
ユーザーのレベルに応じて,バトルに持っていける枠が増えていくんですが,使えるのはカード1枚につき1ゲーム中1回限りなので,タイミングが重要になります。使うタイミングを見計らう駆け引きも楽しくなっています。
礒邉恭平氏(以下,礒邉氏):
あと「防衛」タイプが守るラインを変えられる機能などは,ユーザーのお声で変わった良い例だと思います。当初我々は,「防衛」タイプを左右どちらのラインに出して守らせるかというのも読み合いの1つとして想定していました。ただ,これだと読みが外れた場合,機体が敵が来ることもないラインで手持ちぶさたにしている状況が起きていました。
ロケテストではこれを何とかしてほしいという声があったので,重要なリソースであるコストの支払いでラインを変えられるようにし,高い評価をいただきました。ほかにも,モビルスーツの後出しが有利になりすぎないよう,先に出撃させた側にボーナスのコストを与えるなど,細かな点も変更しています。
中井氏:
演出のテンポアップも,ロケテストでのご意見を受けての取り組みです。RTSのスマホアプリはスキルの使用時に演出を伴わないものが多いのですが,本作では「機動戦士ガンダム」シリーズのキャラゲームということで,演出を長く見せていました。ただ,ユーザーからは「長すぎる」という声もあり,プレイの尺感や演出の間,カメラワークなどにも細かく調整を加えたんです。
礒邉氏:
当初はカメラを寄せて,文字を出して……とスキル1つ使うごとに2〜4秒止めていたんですよね。ただ,それでは周囲の状況も分かりづらく,RTSとしての体験も損なわれる。そこで,ストレスのないゲームの止め方を模索したうえで,現在は1〜2秒の演出としています。
また,想定プレイ時間は最初のロケテストと比較すると,ゲームのテンポアップにより全体的に短くなっています。
4Gamer:
想定プレイ時間を短くするというのは意外です。アーケードのゲームというのは,少しでも長く遊べる方がプレイヤーは嬉しいのではないかと考えてしまうのですが,そうではなかったのですか。
礒邉氏:
満足度は現在の方が高い印象です。多くのユーザーはただ長く遊べることより,テンポ感やサイクルを大事にしているのだと分かりました。“同じ金額を使うなら,システムのいいゲームをテンポ良く遊べる方が楽しめる”と考えられているようです。
その分,ゲーム性にはシビアな方が多く,ここ数年で最低限求められるクオリティのラインが急激に上がっている印象です。RTSであれば,ほかのアプリゲームにあるようなシステムや機能は当たり前で,そのうえで本作ならではの要素がほしいといった要望を多くいただいています。
4Gamer:
本作は,カードによる編成の構築とゲーム中のプレイスキルの2つが求められますが,それぞれの重要性はどれくらいの比率を想定しておられますか。
礒邉氏:
デッキ構築6割,プレイスキル4割くらいの比重を目指していきたいです。ゲーム中の操作量自体は多くないですが,「作戦カード」も含めると,頭をひねって考えるところは非常に多いと思います。例えば,「今戦術技を撃ちたいけれど,敵には回復の作戦カードがあったらダメージを与えても無駄になってしまう,さあどうしよう」という感じで,遊べば遊ぶほど,考えることがどんどん増えていくと思います。
4Gamer:
作戦カードをあえて出さないのが重要であると。“手元にカードはあるけれど,あえて使わない”という駆け引きがアナログのカードゲーム的ですよね。
礒邉氏:
PvPの楽しさは駆け引きに尽きますからね。開発チームにもカードゲーム好きが多いんです。
4Gamer:
先ほど礒邉さんがおっしゃられた通り,ゲーム中の操作はそれほど忙しくない印象をプレイして受けました。アーケードゲームは忙しく手を動かすようなゲームも多いですが,こういった操作性にした理由を教えてください。
中井氏:
本作は,“指揮官体験”がウリになっているという点が大きく,手よりも頭を動かすゲームにしようということで、このような形になりました。我々はカード事業部の人間なので,カードゲーム的な戦略性を持たせようという狙いもあります。
現在アーケードでは,「機動戦士ガンダム 戦場の絆II」や「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト」といったパイロット体験ができるものが稼働していますが,そういったタイトルと両立して遊んでいただければと思います。
ゲームセンターの良さはコミュニティにありますから,色々なガンダムゲームを遊ぶことができる,良いサイクルができればいいなと思います。
4Gamer:
筐体から払い出されるカードについてもかなり豪華な加工がなされていますが,こちらのこだわりについて教えてください。
中井氏:
「ガンダムトライエイジ」より対象年齢を上げた商品のため,黒いフレームで引き締まった印象のスポーティなイメージにするなど,いろいろと工夫をしています。裏面のフレーバーテキストも,モビルスーツの図鑑的説明文やキャラクター本人が喋るものだけではなく,メカマンや技術者といった第三者が語る形式も取り入れています。
西村悠紀氏(以下,西村氏):
ゲームとしての情報を分かりやすく掲載するのはもちろんのこと,印刷加工にもこだわっています。例えば「アルティメットレア」だと,ホロ加工で光る紙に対して光を部分的に留める印刷をしたうえで,4色印刷でモビルスーツを描写し,その上に凹凸を表現する透明な加工をしつつ金色の箔を乗せ,さらにホロ箔を押し……と何段階もの加工をしているんです。
4Gamer:
こういった複雑な加工もオンデマンド印刷ではなく,あらかじめ印刷したものならではということなのでしょうか。
西村氏:
加工の工程が増えると,傷ついたり曲がったりといったエラーカードを出さないための生産管理も慎重に行う必要があります。アーセナルベースのカードでは,「カードの品質」という面でもかなりのチャレンジをしています。筐体の中でオンデマンド印刷するやり方では,ここまでの加工はできません。最新のガンダムカードゲームとして,カードコレクションも含めて楽しんでいただきたかったので,あらかじめ印刷したものを提供する今回の形式がいいのではないか,という結論になりました。
中井氏:
僕たちはやはり玩具会社ですから,モノへのこだわりも強いんです。本作のカードは現状我々ができる加工技術の中でも最高峰のモノを使用しています。
4Gamer:
プレイごとにどのカードが出てくるか,これまで以上に楽しみになりそうですね。最後に読者へのメッセージをお願いできますか。
中井氏:
稼働をお待たせしてしまった分,調査を重ねてクオリティの高いものができたと思います。こだわり抜いて作ったカードを実際に筐体に読み込ませて戦うという,今までのガンダムゲームとは違った体験ができるタイトルですので,ぜひ楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。