プレイレポート
ビーバーによる都市づくりシム「Timberborn」プレイレポート。厳しい自然に向き合いながら,ビーバーのための世界を築いていこう
「シムシティ」シリーズや「シティーズ:スカイライン」など,街づくりをテーマにしたゲーム作品は枚挙にいとまがないが,本作の主人公はあの(水辺に住んでいる)ビーバーであり,ビーバーとなって,の街をビーバー自らが作り上げるという,極めてユニークな特徴を持っている。アーリーアクセスから1年が経過し,大型アップデートも実装されたタイミングで,本作のプレイレポートをお届けしよう。
なお念のため先に述べておくと,本作を楽しむためにビーバーへの愛着や知識は必要ない。純粋に都市開発ゲームに興味がある人も安心して読み進めてほしい。
人類は滅亡しました→そしてビーバーの時代へ
人類が滅亡したあとに誰が地球を支配するのか,というテーマにはいろいろな説があるが,本作においてはビーバーだったようだ。人類は滅びて久しいようで,陸地には何もない平野が広がり,かつての文明の名残は遺跡として残っているだけとなっている。プレイヤーは,この新たな世界の主であるビーバーのため,より巨大で快適な街をつくるために活動していく。
本作は,リアルタイムで進行するタイプのシミュレーションゲームだ。ゲームを始めると自由に開拓できる土地と街の中心施設,そして若干の資源と住人たるビーバーが10名(匹?)程度与えられ,都市を開発していく。ビーバーは住人かつ労働者の立場であるので,彼らの数を増やして生活の質を高めることが,基本的に街の発展につながると考えれば間違いない。
最初に何をするかだが,本作には丁寧なチュートリアルが実装されており,この通りに動いていけば,少なくとも序盤で詰むようなことはない。具体的には,木こりの基点(伐採所)を作って丸太を確保し,次に水を確保するために水辺に汲水ポンプを設置。次に食料を確保するために,採取者の基点(採取場)を食料であるベリーの近くに配置し,あとは採取した資源を保存するため,貯水槽と小型の倉庫と丸太置き場を設置する……という感じで進めていく。
設置場所はプレイヤーが選ぶことになるが,基本的に労働力は勝手に割り当てられるため,一度施設が動き出せば放置でも構わない。ただし本作は「道」(道路)が非常に重要で,地区の中心施設と道でつながっていない施設は稼働しない。道の建設コストはゼロであり,いつでも設置と撤去ができるので,道路整備は忘れないようにしよう。
本作のビーバーは人間に劣らない知性を有している。「ビーバーの街」というのは比喩的な表現ではなく,彼らは労働し,生産し,学問もおこなうため,各種施設は人間の文明と変わらないものもある。現代人のような生活をおこなうビーバーを見ると,可愛くもあり風刺的でもあって,それが一層ユニークに映る。
人間の街と大差ないということは,当然ビーバーたちの求めるものも人類と同じようなものになる。つまり安定した食料提供に,安心して休める住宅,そして適度な娯楽や息抜きを要求してくる。これらを適切に提供するとビーバーたちの幸福度が上がり,作業効率や寿命などが向上する。街を大きくするにはビーバーの数を増やすことも重要なのだが,そこはげっ歯類らしく住宅に空きスペースを作っておくと勝手に増えていくので,そこまで気にする必要はない。
というか先行投資のつもりで余計に住宅を作っておくと,勝手に増えて食料や水といった資源を食いつぶして飢餓に陥る可能性もあるので,むしろ適度にコントロールした方がいい。
前述のビーバーの幸福度を高める一番確実な手段は,新たな施設を建設することだ。農地を作ることによってニンジンや小麦といった農産物を作成できるようになり,農産物を加工すればパンやビスケットといった新たな食料が入手できる。基本的にビーバーは新たな欲求を満たすほど満足するので,食料の種類の幅を広げ,集会所やシャワーといった娯楽施設を増やし,さらには怪我などを負ったときに治療できる場所があれば完璧だ。
新たな施設のアンロックには「科学ポイント」が必要で,これは建物を作って発明家としてビーバーを雇用したり,天文台を作ったりすることで徐々に増えていく。ただ,作るべきものは多いし,何より無理をして高度なものをアンロックしても建設や稼働のために必要な資源がなければ意味がない。例えば,パンを作りたくてパン屋をアンロックしても,先に小麦を引いて小麦粉にするための製粉所がなければ宝の持ち腐れで終わってしまう。基本は手近なものから順次開発していくことになるだろう。
そうやって身近なニーズを満たしているうちに,ビーバーの集落はいずれ「街」と呼べる規模になっていくはずだ。ただし遅かれ早かれ,ビーバーたち(とプレイヤー)は大きな危機に見舞われる。それは生命の源である「水」の危機だ。
水を制するものが,ビーバーの街を制する。水なき世界では誰も生きられない
ビーバーは漢字で“海狸”と書いたりもするそうで,生態としては水辺や湿地帯に生息している。知性を持った本作のビーバーもそれは同じで,毛皮が濡れていれば幸福度が上がるし,橋がなくても水の中を普通に渡ったり,移動したりできる。
また施設の一部には,現実世界と同じく動力が必要になるが,これにはマップに流れている河川に水車を建築するのが手っ取り早く,一度設置すれば自然の力で無尽蔵に働いてくれる。本作は基本的な資源である板材の作成にも動力が必要なので,再生可能エネルギーの恩恵を受けなければ,ほぼ何も作れないに等しい。
ただ,そういった自然の恩恵が常に得られるとは限らない。本作は一定の周期で,干ばつが発生するようになっているからだ。この干ばつは冗談抜きで本当に厳しいもので,川の水位は下がるどころか放って置けば完全に干上がり,ただの陸地になってしまう。こうなってしまえば水車は動くわけもなく,動力は完全に止まる。
もちろん動力を得る方法はほかにもあり,例えば人力の回し車を使ったり,風車を設置するという手もある。ただそれより問題なのは,水がなければ地上のほぼあらゆるものがカラカラに乾燥してしまうことだ。
本作のマップには緑のある部分も多いが,それは川沿いか,あるいは水をたたえている部分の周囲のみで,そこから離れると荒涼とした土地が広がっている。
実はまともに植物が育つのは限られた水の周囲のみであり,乾燥した土地の上では農作物はもちろん樹木も枯れる一方だ。そうなれば当然,食べるものはもちろん飲み水も取得できなくなるわけで,水源は文字通り“命の水”という存在になっている。
川の水が干上がっても貯水槽に多めに水を溜めておいたり,食料を倉庫に備蓄しておけば,短期間の干ばつなら耐えられる。しかし新たに取得できる資源がなくなる以上,長期間耐えるのは無理であり,せっかく植えた作物や樹木も一定時間で駄目になってしまう。そこで重要なのは水をコントロールすること,つまり利水(治水)だ。
本作は水の流れがかなりリアルにシミュレートされていて,水は高所から低所にちゃんと流れるようになっている。逆に言えば流れないようにせき止めてしまえば,水はそこにとどまり続け,流れて失われることもない。要するにこれは「ダム」であり,現実のビーバーたちも泥や枝などで住処の水を大規模にせき止めることがあると知られているので,それに着想を得たものなのだろう。
実際に建設するにはかなりの量の木材が必要になるが,ある程度上部から放水がおこなわれるダムと,完全に水をせき止める堤防を作り分けることも可能。これは最初期から作れる施設でもあり,ビーバーの習性と利水要素がうまく噛み合ってゲームシステムに組み込まれているのは,非常に面白い。
とはいえダムの存在も完璧ではない。水は,上流(水源)から流れて来ない状態ならいずれは枯渇してしまうし,逆に干ばつ期以外の状態でも,単にせき止めているだけだと水流に変化が起こり,水車はかなり回りにくくなる。この問題の解決には堤防で川の幅を変更したり,あるいは水門を複数設置して水量を調節したりするといった試行錯誤が必要だ。現実のように水の扱いはそう容易ではないことを実感させられる。
なおビーバーは汲んだ水を運ぶことができるので,その気になれば高所に放水所を設置し,序盤から人力で水の流れを作り出すこともできる。ただし,ちゃんとした川の流れを作るには堤防を量産したり,ダイナマイトを作成したりして地形を変更する必要があるので,最初は既存の川を利用することだけを考えよう。単に内陸部に農地や森林を作りたいだけなら,給水塔を作れば解決できる。
水のありがたみを感じながら,ビーバーの世界を築いていこう
本作は「地区の中心」という施設を起点にした街づくりが可能で,そこから一定以上離れるとビーバーは作業も移動もしてくれなくなる。つまり都市を広げるには,複数の地区の中心を作る必要があるのだが,この地区をいったん分けてしまうと住民も物資も完全に別扱いという,一種の独立採算制になっている。
つまり何も考えずに地区を増設すると,人流も物流も途絶えたあげく,隣の地区には物資が溢れているのにこちらは餓死者が生まれる,なんてことすら起こりかねない。これを避けるためには事前に,単独の地区として動けるだけの施設を作っておくか,あるいは物流拠点を作って個別に物資を融通しなければならず,個人的には少々面倒に感じた。
本作は建物の多層化が可能になっていて,構造が盤石で屋上が平らの施設には,そのまま別の施設が建てられる。入り口が道路に面している必要があるため,足場の用意などからコスト的には高く付くことが多いが,狭い土地を有効利用したり,人類に負けない高層建築を目指したいなら,活用してみるのも面白い。金属を手に入れる方法が“人類の遺跡を解体する”ことなのも,何となく皮肉が効いているようだ。
最初はロックされているが,本作ではデフォルトのビーバーであるフォークテイル以外に,アイアン・ティースという別の種族も使うことができる。こちらは色が黒いという見た目以外に,作れる施設に違いがあり,丸太置き場を高層化できたり,深いところの水を汲んだりできる。繁殖方法がなぜか水とベリーで動く繁殖ポッドを用いて行う点もユニークだ。
フォークテイルでプレイしていれば比較的簡単にアンロックできるので,プレイに慣れたらこちらも試してみると面白いだろう。
前述のように本作は,住宅の数(アイアン・ティースの場合はポッドの稼働)さえ気をつければ勝手に人口が増えることはないので,一度軌道に乗ればすぐに詰んでしまうことは少ない。リソースの消費量は人口に比例するので,そこさえ管理していれば,物資に余裕を持たせることは難しくないからだ。
資源も多くは周囲の自然から入手できるようになっているので,成長を待てばいずれは手に入る。人間と違い,税金どころか貨幣経済という概念もないので,市政が破綻してプレイヤーが辞職するハメになるなんてことも当然ない。
ただしそれを一変させるのが,前述した干ばつの存在だ。水はすべての源であり,それがなければビーバーの生活は途端に行き詰まる。それゆえに何らかの利水は必須の作業であり,これが本作の独自性となっている。一般的な都市開発シムでも水道や下水といった水の管理は存在するが,ここまで住民の生活(生命)に直結している作品はそう多くないだろう。
ビーバーが主役という,一見ほのぼのとした牧歌的な作品なのだが,実際はシビアな要素も十分に含んだ興味深い仕上がりとなっている。一種の環境問題の教材的にも使えそうでもあるが,一切説教臭くないのもまた,好感が持てる。
また9月に実装された大型アップデートについても,簡単にまとめておこう。
まず大きな追加要素となっているのは,ゴーレムと地形の造成システムだ。前者はいわゆる“ビーバーのロボット”を作成し,労働者として働かせることができる。見た目こそコミカルだが存外に優秀で,一部を除き科学ポイントを消費することで数多くの仕事に従事させることが可能だ。
メリットとしてあげられるのは,稼働に必要なのが燃料だけで,福利厚生はもちろん水や食料も必要としないこと。燃料も施設さえあれば,水と食料から比較的簡単に作れるのもあって,運用自体はそこまで難しくない。
反面,製造に至るまでに複数の工場と大量の資源,そして高出力の動力が必要となるので,数を揃えるためのハードルは,少々高めという印象だ。後述の地形の造成以外の仕事は,ゴーレムでなくてもできるので,始めたばかりなら余裕があれば開発を進めるぐらいでいいかもしれない。
もう1つの「造成」は,地形をさらに自由に変形できるシステムだ。基本的には削ることしかできなかった地形だが,地形のブロックを作り設置することによって,地面を作り出すことができるようになる。
ただしこの仕事をおこなえるのは前述のゴーレムだけであり,作業施設自体もさらに複数建設する必要があるので,利用するためのハードルはゴーレムよりもさらに高い。どちらかといえば十分に開発が進んだあとに,こだわった街づくりをさらに進めるための一手,といった感じだろうか。
さらに細かい要素として,すでに少し触れたがビーバーたちに怪我や歯の損傷といった,マイナスの効果が追加された。また動力面ではバッテリーが追加されるなど,かゆいところに手が届く変更もおこなわれている。
日本語ローカライズは丁寧で,アーリーアクセスの現時点でも高いクオリティを誇っている。都市開発シムだけあって腰を落ち着けてのプレイが必要であり,さらに本作特有の仕様も多いため,時期的に秋の夜長に色々と試行錯誤しながら進めるのにピッタリな一作だろう。興味があればぜひ手に取って,ビーバーたちと水と都市の問題に取り組んでみてほしい。
「Timberborn」公式サイト
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