連載
「Slay the Spire」のボードゲームがあまりに面白くて,友達に遊ばせてもらったのに自分も買ってしまった。4万円!(「買い物Surfer」第23回)
近年,さまざまなタイトルが出るようになってきたデッキ構築型ローグライク。挑戦のたびに構造が変化するマップに挑み,ランダムで得られるカードやアイテムを得ながらデッキを強化して,強大な敵の撃破を目指す,じっくり取り組みたい奥深さと,ついつい遊び続けてしまう中毒性をあわせ持つジャンルだ。
その火付け役となったのが,MEGA CRIT GAMESの「Slay the Spire」(PC / PS4 / Switch / Xbox Series X|S / Xbox One /iOS / Android /Mac)であり,インディーゲームにアンテナを張っているゲーマーなら,遊んだことのある人も大勢いるだろう。あまりの面白さに,多大な時間を溶かせる名作だ。
今さらだけど「Slay the Spire」を通じて“デッキ構築ローグライク”の死ぬほどおもしろい魅力を伝えたい
皆さんは“人生が変わるゲーム”に出会ったことがあるだろうか? 私にとってのそれは「Slay the Spire」だった。本稿では今さらながらStSを紹介しつつ,“デッキ構築ローグライク”というジャンルの魅力を伝えたいと思う。
そんなSlay the Spireをボードゲーム化した作品が,今回紹介する「Slay the Spire: The Board Game」である。もともとはクラウドファンディングが行われていたが,ケンビルから3月29日に日本語の一般販売がスタート。この記事の公開時点でも,再販されたコレクターズ・エディションがケンビルの公式通販サイトで購入できる。税込3万9600円するけど。現在は売り切れの通常版も税込2万7500円するので,だいぶいいお値段のボードゲームである。
さて,Slay the Spire: The Board Gameと言われても,原作の経験者であれば「もともとソロでじっくり遊ぶゲームなのに,どうやって複数で遊ぶの?」と,頭に疑問符が浮かんでめまい状態ではないだろうか。筆者もボードゲーム化にピンとこなかったクチで,お値段も高いので,日本語版発売時にはスルーしてしまったのだが,クラウドファンディングで購入していた友人に遊ばせてもらう機会があった。
あの,すいません,なめてました。これめっちゃ面白いよ!!
買わなかった筆者が愚かだった。なんならクラウドファンディングしておくべきだった。なんてこった。
そう後悔していたところ,再販でコレクターズ・エディションがまだ購入できるではないか。急いでポチって自分の家にも導入した筆者は,1人でも多くのSlay the Spireファンにこの面白さを届けねばなるまいと,本稿の執筆を始めたわけである。
というわけで,編集部員が購入したモノを紹介する連載「買い物Surfer」第23回は,Slay the Spire: The Board Gameのお話だ。
カード総数は800枚越え!
ざっとコンポーネントを見てみよう。
まずは4人のプレイヤーキャラクターである「アイアンクラッド」「サイレント」「ディフェクト」「ウォッチャー」のボードとミニチュア,それぞれが使うカード類。コレクターズ・エディションの場合,各キャラクター用の布製プレイマットまでついてくるので,だいぶ豪華だ。
もちろん,各キャラクターには専用のカードが用意されている。初期デッキと,ランダムで手に入るデッキ強化用の大量のカードが4キャラクターぶんあるため,このゲームに含まれるカード類はめちゃくちゃ多い。なにせ,付属のカードスリーブだけで450枚ある。
ちなみに,本作は遊ぶのにカードスリーブが必須だ。キャラクター用のカードは両面仕様で,カードを強化すると裏面を使う形になっている。そのため,普段は背面が隠れるタイプのカードスリーブを使わないと,山札に何のカードがあるか分かってしまう。
あとは原作で見慣れた,マップを示すボード。もちろんランダム生成(何と遭遇するかはチップを置いて決める)で,ルート分岐もある。
そして探索中に遭遇するザコ敵やエリート,ボスを示すカード類や,それらを撃破したときに手に入るレリック,ポーションなどのアイテム類。さらに各種リソースを管理するためのトークン類といったところだ。
全体的にカードで表現されているものが多く,スリーブに入れない(キャラクターのデッキ構築と関係ない)ものも含めると,総数は800枚以上もある。もとがデッキ構築型ローグライクなのだから,そりゃ現物のカードが大量に生み出されるだろうという気はするが,それにしたってボリュームありすぎだ。箱はデカイし重い。間違いなく,気軽に持ち出せるようなボードゲームではない。もし「やりたいから持ってきてよ」と言われたら,寝言は寝て言えと即答するだろう。
ただ,ボリュームのぶん,入っているものは割と原作どおりというか,「Slay the Spireをボードゲームにしたら,こういう実物になるだろうな」という感じなので,雰囲気はばっちりだ。この物量ならこのお値段も致し方なし,と納得できたりする。
割とそのままSlay the Spire
コンポーネントから予想できるとおり,本作のゲームプレイの流れは,ほぼそのままSlay the Spireである。マップを進んで遭遇した敵を倒したり,ランダムイベントを解決したりしながら,弱いカードしか入っていない初期デッキに少しずつ強力なカードを入れて強化していく。
カードを入れるだけでは,どんどんデッキが分厚くなって,お目当てのカードを戦闘中に引ける可能性が下がっていくため,マップ上の商人に立ち寄ってカードの除去サービスを利用することも重要だ。
また,雑魚ばかりと戦うのではなく,余裕があるときはあえて強力なエリートとの遭遇マスに入り,パッシブ効果が得られるアイテムのレリックを入手したい。
そうこうして準備を整え,マップの最上部まで到達するとボス戦だ。マップはレベル1から3まであり,レベルごとにボスが用意されている。つまり,一度ゲームクリアするまでに,3体のボスを倒さなければならない。もちろん,高レベルになるほど,出現する敵は強力になっていく。
戦闘では,ダメージを与える「アタック」,戦闘をサポートする「スキル」,一度使うと場に残って効果を発揮し続ける「パワー」という,3種類のカテゴリのカードを使用する。毎ターン,5枚の手札が配られ,さらに3エナジーが与えられる。エナジーは,カードのコストを支払うためのリソースだ。余らせた手札は捨てなければいけないし,余ったエナジーも次のターンには持ち越せないので,できるだけ手札とエナジーは使い切るように動く。
戦闘の基本は,ダメージと「ブロック」の数値管理だ。本作では,HPを回復する手段は非常に限られている。とくに,戦闘中に回復する手段はほとんどない。そのため,主にスキルから得られるブロックが重要になる。これは,得たターン限定で,同じ数値ぶんのダメージを軽減してくれる効果を持つ。
戦闘中,敵がどんな行動をしてくるかは常に公開されているため,例えば「このターンは2ダメージ飛んでくるから,2ブロックを得て,残りのエナジーでダメージを与えにいく」といった戦略が立てられるのだ。
ちなみに,「2ダメージ」というのは間違いではなく,ボードゲーム版は原作よりも全体的に数値が小さい。初期デッキのアタック「ストライク」は1ダメージ(原作は6)だし,「防御」は1ブロック(原作は5)だ。最大HPもかなり調整されていて,原作で80あるアイアンクラッドが10しかない。
また,本作に登場するカード自体は原作のとおりなのだが,数値だけでなく,効果もいろいろといじられている。その最たる影響を受けているのがウォッチャーだ。ウォッチャーは,原作では「憤怒」「平静」「神聖」というスタンスを切り替えて戦う。とくに神聖は,「マントラ」と呼ばれるリソースを10貯めると,1ターンだけ超強化されるスタンスで,この爆発力を生かしたデッキを構築できるキャラクターである。
ところが本作においては,そもそも神聖のスタンスが存在しない。ただ,神聖やマントラ関連のカードは,効果が変わって存在している。マントラも消滅しているが,代わりに「奇跡」というリソースが登場。これは,消費すればエナジーの代わりになるが,貯めることで効果が強力になるカードもあるので,奇跡集めを軸にしたデッキを組むことが可能だ。
要は,「マントラ貯めて強力な神聖」ではないが,「奇跡貯めて強力な追加効果」ができるので,ギミックは変わっても,やりたいことはほぼ一緒という感じ。このように,調整自体は入っているが,原作で組んでいたさまざまなデッキは,だいたい再現できると考えていい。
協力プレイで遊べるのがめちゃくちゃ楽しい
ここまでの説明だと「デジタル版でよくない?」という感想になると思う。実際,1人でプレイ(可能ではある)するならデジタル版のほうがいいだろう。本作の魅力は,なんといっても「Slay the Spireほぼそのまま」なゲームを,原作にはない2〜4人の協力プレイで遊べることにある。
本作では,キャラクター達でパーティを組んでいる扱いになるのだが,通常の戦闘では全員の前にそれぞれ異なる敵が出現する。それぞれの敵は,基本的に目の前のキャラクターを攻撃対象にしてくるので,被弾を抑えるにはとりあえずそいつをさっさと倒さなければならない。
出現する敵の数は,1列につき最大3体。つまり,4人プレイの場合は,下手すると12体の敵が一斉に襲ってくる。
ちなみに,仮に12体の敵がいたとして,アタックの対象はこの12体すべてから選べる。中には1列すべてを攻撃するアタックもあり,これも好きな列を選んでいい。つまり,自分を殴ってこない相手を倒してもOKだ。
そして,ここで重要になるのが,パーティのうち誰か1人でも倒されるとゲームオーバーということである。
原作プレイヤーならご存じのとおり,Slay the Spireというゲームは,HP回復手段が限られているから適時ブロックを張りたいのに,敵が強力な攻撃をしかけてくるとき,適切なブロックのカードを引けるとは限らない。ということは,「あ,このターンやべえわ!」という仲間が出てくるので,ゲームオーバーを避けるには協力して攻撃対象を選択していかないと,誰かしらあっさり死ぬのである。
敵によっては,早く倒さないとどんどん攻撃力が増加していくやつや,チャージ後に強烈な攻撃を仕掛けてくるやつなど,厄介な行動を取ってくることも。また,敵は基本的に目の前の相手だけを攻撃してくるのだが,全体攻撃の能力を持っていることもあるので,放置すればパーティに甚大な被害が出てしまう。
また,エリートやボスの場合は,さすがにプレイヤー1人1人の前に出現したりはしないが,そのぶんHPが非常に高く,全体攻撃しかしてこない。全員がヒドイ目にあうので,総力戦になる。
そんなやつらをどうにかするために,倒す敵の優先順位を考えたり,デバフを駆使して耐えたり,HPに余裕のある仲間があえてダメージを受けたりと,ああでもないこうでもないと言いながら進めていくのが,最高に楽しいのである。
先ほど,カードの効果に調整が入っていることは説明したが,こうした戦闘ルールが採用されたことで,新たなデッキの方向性も生まれている。例えばディフェクトのカードには,味方にブロックを与えられる効果を持つものがいくつか存在する。自分は仲間の被弾を減らすことを念頭に動いて,そのぶん仲間にはダメージを出してもらうなんていう,協力プレイならではの役割分担も可能だ。
デッキ構築型のアナログゲームでちょっとした問題になるのが,いわゆる“ソリティア”な状態だ。誰かがカードを何枚も使ってコンボを成立させ,その計算に時間がかかり,それを待っている間はほかの人がゲームに介入しようがないので暇,というアレである。
その点,本作は「とりあえずそれぞれが目の前の敵を片づければいい」おかげで,この問題をある程度解消している。担当する敵が明確なので,ターンが始まったら,各プレイヤーが同時進行でカードをプレイして進められるからだ。
もし手札を引いた段階で大変なことになりそうだったら,「俺,このターン死にまーす」と相談を始めればいいわけで,このトラブルもまた楽しい。慣れてくると
「このターン3ダメージ余ってるけど,助けてほしい人ー?」
「俺はブロック足りてるから不要」
「こっちは自力で全部倒せるー」
「ブロック0枚!!!」
といった会話が,サクサクできるようになる。もとはシングルプレイゲームなので処理は複雑だが,それでもスムーズにゲームが進むのは好印象だ。
攻略難度は,原作よりもやや簡単だと思う。プレイヤーが複数いる関係で,仮に自分の手札がイマイチでピンチになるターンがあっても,仲間がどうにかしてくれるからだ。ただ,長時間にわたるアナログゲームで,攻略失敗になっても悲しいので,「みんなでピンチになりながらクリアできる」ぐらいがちょうどいいと思う。やや簡単といっても,ボス戦となると綱渡りなターンは出てくるので,大いに盛り上がれるだろう。
プレイ時間はスムーズに進めても,1レベルにつき60〜90分程度。昼からスタートして,レベル3まで一気に遊ぶ場合,最後のボスを倒す頃には「夕飯食いに行くか」みたいなことになると思う。もう1周となると,下手すれば終電コースだろう。一応,レベルごとにセーブ(という名の,デッキや所持品をそのままボックスに戻す中断)は可能だが,それはそれで面倒なので,できれば一気に遊ぶのがオススメだ。
アンロックもアセンションも完備,何度も遊ぼう!
本作は,Slay the Spireほぼそのままなのに,ボードゲームでしか味わえない楽しさが確かにある。原作が名作なだけに,完全に初見でも楽しめるのは間違いないが,できることなら,ぜひSlay the Spireプレイヤーを集めて遊んでほしい。ゲームのルール説明が非常に短く済むし,デッキの組み方も分かっているため,すぐに本作の魅力にハマれると思う。解散したあとで「今度はあのデッキで遊びてえ〜」と,次に集まる予定を組みたくなるはずだ。
そうそう,「次」の話もしなければなるまい。本作はSlay the Spireなのだから,当然,周回要素が用意されている。本作のコンポーネントには「ストップ」と書かれた,開封を禁じるカード類があるのだ。
これは,条件を満たすと初めて開封が許可される。ボスを倒した数に応じて,新たなカードをアンロックしたり,新イベントが解禁されたり,さらにはレベル4への挑戦が可能になったりするのだ。
さらには,原作にも存在する高難度要素「アセンション」もしっかり用意されている。通常のゲームよりも,13段階もさらに難しくできるので,苦しい戦いを楽しみたい熟練パーティは,こちらも挑戦してみよう。
ただでさえ,何度も遊びたいゲーム性なのに,アンロックにアセンションと,リプレイ性もばっちりだ。税込3万9600円のお値段に見合った豪華さと面白さはありまっせ!
ケンビル公式通販サイト
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