プレイレポート
「冤罪執行遊戯ユルキル」体験版のプレイレポートを掲載。アドベンチャーと弾幕シューティングが融合した個性派タイトルだ
そんな本作の体験版が配信されるということで,今回事前にプレイできたのだが,結論から言うなら“物語におけるクライマックス,感情的に盛り上がるところで弾幕シューティングが挿入された,独特のカタルシスを味わえる作品”だったのだ。
本作に登場するのは,罪を犯したとされる「囚人」と,その被害者である「執行人」たち。囚人と執行人がチームを組み,謎の遊園地「ユルキルランド」で「ユルキルゲーム」のアトラクションに挑む。
アトラクションは危険で,囚人の命に危険が及ぶものばかりだが,勝ち抜けば囚人は無罪放免,執行人は何でも願いを叶えられるという。だからといって,囚人と執行人が互いに協力するとも限らないのが,本作におけるポイントの1つだ。当然だが,執行人は囚人が起こした事件の被害者であり,協力してやる義理もないからだ。執行人はボタン一押しでいつでも囚人を処刑することができ,罪に問われることもない。執行人は囚人を“赦して”もいいし,復讐のために囚人を処刑で殺してもいい。赦ス or 殺ス(KILL),つまり“ユルキル”というわけで,執行人がどうするのかも見どころとなるのである。
体験版で遊べる第一章では,爆弾魔の囚人・春秋千石と,彼が起こしたマンション爆破事件の被害者である執行人・莇リナが組んだ「大量殺人チーム」が登場。プレイヤーは千石の視点から物語を体験していくことになる。
千石が殺したのはなんと21人。どれだけ邪悪な男なのかと思いきや,本人はあくまで冤罪を主張し続けている。いわく「眠らされているうち,犯人に仕立て上げられていた」そうで,いつも他人を思いやる性格の良さを見ると,嘘をついているようにも思えない。しかしながら,リナは千石を犯人と信じて疑わない。子供のころに爆破事件で両親を奪われ,その後はひたすらに犯人を憎み続けてきた少女なのだ。
そんな大量殺人チームに課せられるのは,爆破事件を模したアトラクションで,千石もリナも苦しむことになる。千石はリナに無実を訴え続けるが,その心はやがて変化していく……。
21人を爆弾で殺した囚人・春秋千石(CV:江口拓也さん)。第一章は彼の視点で物語が進む。ボードゲーム好きの優しい青年で,とても爆弾魔には見えない。終始無実を主張する |
執行人の莇リナ(CV:早見沙織さん)。千石が起こした事件に巻き込まれ,両親を失う。その後,犯人への恨みを糧に生きてきた |
アドベンチャーパートではカーソルを動かして怪しいところを調べ,手がかりを得て謎(パズル)を解いていく。アトラクションだけに,いわゆる謎解きゲームに似た雰囲気が漂っており,物探しあり,計算問題ありとパズルの種類も多彩だ。パズルにはヒント機能があり,繰り返し使っていくことで,ほぼ解答に近いようなところまで教えてもらえる。使用回数に制限がないうえ,ヒントを聞いてもペナルティはないようなので,難しそうなら頼ってしまうのも手だろう。謎解きを誤ると千石が死んでゲームオーバーになることもあるが,コンティニューはできるのでいろいろと試してみよう。
こうしてパズルを解いていくと,執行人が激昂して囚人に詰め寄る「マジキルタイム」が発動。囚人となって会話の選択肢を選び,なんとか生き残らなければならない。ここでは執行人の殺意が「殺意ゲージ」として表現されており,100%になると処刑されてしまう。この殺意ゲージの上がり方が独特で,間違った選択肢を選ぶと即座に100%となって殺され,正しい選択肢を選んでもジワジワと上昇していく。まさに一触即発のアドベンチャー系死にゲーというわけで,結構スリリングだ。
マジキルタイムを突破できれば,仮想空間でのシューティングパートに突入する。囚人は戦闘機「ユルキルファイター」に乗って敵を倒しつつ進撃。ステージの最後では,ボスに乗り込んだ執行人と戦い,お互いの思いをぶつけ合うのだ。シューティングが苦手という人も,難度は自由に設定できるので心配ご無用。加えて,スタート時には何問かのクイズを通して事件のおさらいをするのだが,ここで正答を出すごとに残機が景気よく増えていく。難度ノーマルで全問正解すると20機の残機を持った状態でスタートできた。アドベンチャーパートをしっかりとプレイしておくことで,シューティングパートでの立ち回りも変わってくることになりそうだ。
囚人のユルキルファイターには「オプション」が付いてきて,ともに攻撃してくれる。ボタン押しっぱなしの「ホールドショット」でオプションが固定されるなど機体ごとの特殊効果が発生するため,使いこなしていきたい。この辺りは近年のシューティングではお馴染みのシステムなので,シューティング経験者ならすぐに馴染めるだろう。
敵を撃墜すると,パワーアップアイテムや「マテリアル」が出現。とくに重要なのがマテリアルで,集めていくことで「アウトバーストゲージ」が上昇し,特殊ショット「アウトバーストショット」や,緊急回避の「アウトバーストボム」を使えるようになる。アウトバーストショットとアウトバーストボムはともに強力だがアウトバーストゲージを消費するため,どちらの装備をどのタイミングで使うか,リソース管理が重要なのだ。
アウトバーストショットはメインショットと併用可能な特殊攻撃で,着弾時の爆風はダメージを与えるだけでなく,弾消し効果もある。
千石の場合はホーミングレーザーで,メインショットが届かない敵も狙うことが可能なうえ,爆風も大きい。自機と敵,爆風と弾の位置関係を意識しつつうまく立ち回れば,バトルを有利にできるというわけだ。発射時のゲージ消費も少なく,サブショットとして普段使いしていけるだろう。
アウトバーストボムはいわゆる弾消しのボムで,アウトバーストゲージの量で特性が変わる。20%以上で敵弾を食らった際に自動発動する「オートボム」となり,100%の状態で使うと,大ダメージの「EXボム」となる。つまり,アウトバーストゲージを溜めるほどアウトバーストボムも強力になるわけだが,前述のとおり,ゲージはアウトバーストショットにも使うため,ゲージ管理が必要になる。ゲージを溜め込んでEXボムで大ダメージを与えるか,こまめなアウトバーストボムで安全に進めるか,アウトバーストショットの弾消しでクレバーに戦うか,さまざまな立ち回りができそうだ。
体験版では千石以外の機体は選択できなかったため,ほかの機体がどんな性能を持っているのか気になるところである。
ステージの要所では,ボスに搭乗した執行人が登場し,恨みの念をぶちまけつつ,激しい戦いを展開する。ストーリーとシューティングがともにクライマックスを迎えるわけだ。リナが乗り込んだボスは,千石に倒される度にパワーアップして再登場し,その攻撃もエスカレートしていく。こうした演出はシューティングにおける定番であると同時に,リナの恨みの深さも表現しているかのようだ。最終段階では,特定の場所を覆うバリア「ココロファンネル」を破壊しなければならず,部位破壊狙いがメインになるのが面白い。
シューティングの合間にも選択肢が挟まってくるのが本作らしいところで,ボスを倒すと,執行人の偏見を可視化した「ヘンケンシナプス」が出現。事件に関する問題が出題されるが,誤った選択肢を選ぶと自機が3機も減る。下手をすると一気に追い込まれてしまうわけで,とくに注意したい。ステージの最後にも,これからの行動を選択肢で選ぶ「ココロメイズ」という選択肢が登場し,こちらも間違うたびに自機が3機減らされる。クリアするためには物語の理解度も問われるわけで,こちらも本作らしいシステムと言えるだろう。
アドベンチャーと弾幕シューティングという組み合わせは異質である。しかし,アドベンチャーパートで語られるリナの恨みの深さが,シューティングパートにおける激しい攻撃の理由として表現されているなど,両者を融合させる演出や工夫がなされているという印象だ。ヘンケンシナプスやココロメイズも,記事だけ見ていたのでは面食らうかもしれないが,アドベンチャーパートにも関連する演出として,意外と抵抗なく受け入れることができた。
なお,とくに印象深かったのが,ユルキルゲームを取り仕切る謎の女・びん子だ。彼女は,バラエティ番組の司会者のようなハイテンションで,曲者揃いの囚人と執行人を手玉に取る濃いキャラクターとなり,CVを担当する小林ゆうさんの演技力と熱演が光る。小林さんのファンなら必見と言えるだろう。
体験版のプレイ時間は3時間ほどで,結構なボリュームがあるが,語られたのは大量殺人チームの序章のみ。残るチームは「双子殺人」「謀略殺人」「ストーカー殺人」「覗き魔」の4つ。中にはアイドルが囚人,そのオタクが執行人という奇妙な組み合わせもあり,彼らのユルキルファイターの性能と合わせて,どんな物語になるのかが楽しみだ。製品版ではシューティングのみを楽しめるモードも存在するそうで,シューティングファンにとってはこちらも要チェックだろう。
体験版のデータは,2022年5月26日に配信される製品版に引き継げるため,気になる人はプレイしてみよう。
「冤罪執行遊戯ユルキル」公式サイト
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