インタビュー
「新すばらしきこのせかい」のキャラクターは“今の渋谷”にいる。個性を引き立たせるために意識したポイントとは
すばらしきこのせかいと言えば,強い輪郭線で描かれるキャラクターデザインが特徴的だ。本作でもそれは引き継がれており,彼らのデザインは本作のクリエイティブプロデューサーである野村哲也氏,キャラクターデザイナーの小林 元氏,山下美樹氏の3名が手がけている。
今回は,本作のキャラクターデザインにフォーカスし,主人公リンドウをはじめとする登場人物のデザインのポイントについて聞いてみた。
前作から14年が経過し,デザインの傾向も変わった
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は「新すばらしきこのせかい」のキャラクターデザインについてうかがえればと思うのですが,まずは本作のキャラクターをデザインするにあたっての全体的なコンセプトを教えてください。
野村哲也氏(以下,野村氏):
コンセプトとしては“現代の渋谷”ということです。今回の舞台となる(現実の)渋谷の街自体が,前作からかなり変貌していて,そこの住人であるキャラクター達はある意味“生もの”ですからね。
4Gamer:
ということは,前作のキャラクターデザインとはまた別の感覚で作られているのでしょうか。
野村氏:
当時の感覚としては“現代の日本の若者”ぐらいだったんですよね。しかし,今回はグラフィックスが3Dとなって世界の臨場感が増して,全体的に情報量も増えていますから,キャラクター作りにおいても“現代の日本の渋谷にいておかしくない若者達”でなければいけなくなったんです。
自分だけでなく小林と山下の2人が参加してくれたことによって,そのあたりはより濃く描けたのかなと思っています。
キャラクターそれぞれにもコンセプトがあると思うのですが,例えば主人公のリンドウは,どのように作られたのでしょうか。
野村氏:
主人公に関しては,前作のネクの印象が強く,“すばせか=ネク”というのが14年間かけて根付いてしまったので,悩みました。本作がもっと早く出ていればそれほどハードルが高くはならなかったと思うんですが,「ネクじゃないから嫌だ」と言われないように,悩みながらようやく今の姿にたどり着いたという感じです。
4Gamer:
ネクを超えるために,リンドウに据えたポイントはどこでしょう。
野村氏:
あまり奇抜にし過ぎないところですね。奇抜にするとポイントが狭まってしまって,狭く刺さるキャラになってしまうので,なるべく広く刺さって好かれるようなデザインにしました。
4Gamer:
確かに見た目だけではなく,性格も周りに比べるとだいぶ常識人ですよね。
野村氏:
そうなんですよ。ほかがみんな個性的な中で,ある意味普通なので主人公的ではあります。しかし,その「普通でありながら魅力的」なバランスが難しいんです。
キャラクターをデザインするうえで意識したのは“今っぽさ”
4Gamer:
キャラクターは,開発のどの段階で作られているのでしょうか。
野村氏:
最近は,シナリオが先にあって,そこから発注して作り始めるのがほとんどですね。昔はキャラクターを先行して作ることもあり,前作でも最初に私がネクとシキを描いて,「この主人公とヒロインでいくから」という作り方だったんですが,今はストーリーや設定が先で,それに沿って作っていきます。
4Gamer:
それぞれが担当されるキャラクターはどう決められたのでしょうか。
野村氏:
担当を詳しく話すとネタバレになってしまうんですよね。私が担当しているのがだいたいそういうキャラクターなので(笑)。
山下美樹氏(以下,山下氏):
原画を小林が描いて,衣装は私が担当する形でデザインしたキャラクターもいましたね。
キャラごとに“好みの系統”みたいなものが設定してあって,それに沿ってキャラクター性を深めるような衣装やアクセサリーのデザインを考えました。
4Gamer:
小林さんと山下さんは,本作のキャラクターを作るにあたって,どんなところに気を配りましたか?
小林 元氏(以下,小林氏):
設定上の各キャラクターの個性が表れるデザインは常に意識していました。最初に企画側からキャラクターの系統が共有されるんですが,そこからキャラクターに合うようなブランドや小物のリサーチをすることで,それぞれに個性を出すことができたのではないかと思います。
山下氏:
私もほぼ同じで,キャラクター性が表れるようにすることは強く意識して,そこに必ず“今っぽさ”を感じられるポイントを入れるようにしました。例えばオーバーサイズの衣装や,性別に左右されないジェンダーレスのデザインとかですね。
小林氏:
前作の時代にはあまり見られなかったK-POP風のデザインなども,今風のトレンドです。設定上は前作から3年後の世界なんですが,現実では14年が経っているので,そこはできるだけ今の渋谷のファッションという部分を意識しました。
4Gamer:
ミナミモトや渋谷死神の3人など,前作から引き続き登場しているキャラクターのデザインはどのように対応されたのでしょうか。
山下氏:
前作のキャラクターはファンにも愛されているので,そのキャラクター性を壊さないことには気を付けました。
ココはずいぶん変わっていますけどね。
山下氏:
前作でココは原宿系だったのに対して,今の流行りを考えると前作とは違う格好をするのではないかということで,いろいろと模索した結果,本作ではお姫様ファッションになっています。
野村氏:
前のココみたいな格好をしている人を,今は見ませんからね。前作から登場している中だと,変化がわかりやすいキャラクターです。
4Gamer:
皆さんのお気に入りのキャラクターは誰ですか?
小林氏:
自分でデザインしたキャラクターではフレットでしょうか。あとはナギはすごくインパクトがあって,表情豊かで,見ていて楽しく,ある意味新しいキャラクターだと思います。
山下氏:
私もナギは一番最初にデザインさせてもらったメインパーティのキャラクターなので,思い入れが深いです。あと見た目に関しては,ショウカちゃんが私の好みのどストライクですね。黒髪パッツン猫耳パーカーは本当に好きな格好でした(笑)。
野村氏:
結構どのキャラも個性的に仕上がったと思っていますが,その中でもやっぱりナギの存在は大きいかもしれません。音声収録にも立ち会ったんですが,ナギがものすごい早口でしゃべるシーンがあって,そういう部分も合わせて個性的で好きですね。
個人的にミナミモトも好きなんですが,ネタバレになるのであまり触れないでおきます(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。それにしてもナギ人気が高いですね。
野村氏:
ナギは海外のユーザーからも推す声が大きかったですね。
体験版を配信した後の反応を見た感じでは,フレットの人気も出そうでした。相棒としていいキャラクターに仕上がったと思います。
デザインを3人で手がけたことで,キャラクターの個性はさらに深まった
4Gamer:
「すばせか」のデザインは全体的にかなり個性的ですが,「すばせか」だからこそ絵作りが難しい部分はありますか?
小林氏:
大変ですね,クセが強いので。
野村氏:
もともと前作の絵柄がああなったのは,当時自分が「FF」や「キングダムハーツ」と同じ方向性は嫌だなと考えて,かなりデフォルメの効いたデザインにしたのがきっかけです。自分がやったのは元のデザインだけで,完成形は小林が作り上げました。
今回,14年ぶりに小林に「すばせか」を描いてもらったんですが,その間にやっていた仕事の影響がもろに出て,絵柄が変わっていたんですよね。小林には,もとの絵柄に戻すためのリハビリから始めてもらいました(笑)。
小林氏:
描き続けていないと絵柄が変わってしまうんですよ。逆に「すばせか」に慣れすぎると,ほかを描けなくなってしまうんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ところでキャラクターの名前はどのようにして決めたのでしょうか。誰もかれも難読で面白いです。
野村氏:
キャラクターの名前に関しては,ほとんどのキャラクターはシナリオライターが付けています。実はある法則に基づいていて,まだ秘密なんですが,ユーザーの中には気がついた方もいたようです。
4Gamer:
キャラクターを演じるキャストについては,どういった基準で起用されましたか?
野村氏:
基本的には自分が決めています。キャラクターの個性が強いので,それに見合うキャストを選んでいますが,できるだけ自分のほかの作品で起用していない方を採用しています。
体験版でも話題になっていましたが,花江夏樹さんがススキチを演じるのは,ご本人も最初は少し戸惑っていたようです。しかし,収録時にはきちんと役を仕上げてから来ていただけて,改めてすごい方だと思いましたね。
4Gamer:
体験版ですと,リンドウとフレットの,普通すぎる会話も印象深いです。あまりに日常感のあるしゃべり方と言いますか。
野村氏:
普通はあんなセリフ収録しないですよね(笑)。ああいう日常感も「すばせか」らしいところではあると思います。
4Gamer:
最後に,発売に向けて野村さんから一言いただけますますか。
野村氏:
前作からの私と小林に,今回山下も加わってもらって,デザイン的な面もかなりパワーアップしたと思っています。パーティメンバーを3人で振り分けて描くのも初めての試みで,それによりキャラクターの個性もかなり際立ちましたので,ぜひお気に入りのキャラクターを見つけてください。私もどのキャラが人気になるのか,今から楽しみです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「新すばらしきこのせかい」公式サイト
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CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA & GEN KOBAYASHI & MIKI YAMASHITA
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