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    [CEDEC 2023]あの話題作はいかにして売れたのか。「インディーゲームが100万本売れるまで:『NEEDY GIRL OVERDOSE』の販売データから」聴講レポート
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    印刷2023/08/26 15:21

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    [CEDEC 2023]あの話題作はいかにして売れたのか。「インディーゲームが100万本売れるまで:『NEEDY GIRL OVERDOSE』の販売データから」聴講レポート

     「CEDEC 2023」の最終日となる2023年8月25日に「インディーゲームが100万本売れるまで:『NEEDY GIRL OVERDOSE』の販売データから」と題したセッションが行われた。ここではリュウズオフィスの小沼竜太氏が,「NEEDY GIRL OVERDOSE」PC / Mac / Nintendo Switch)の販売データを元に,どのような施策を行ったのかを解説した。

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     小沼氏は「NEEDY GIRL OVERDOSE」における自社の役割として,販売本数の最大化をミッションとし,パブリッシャであるWSS playgroundに対してパブリッシングサポートを提供。主な内容としては,日本,中国,北米,欧州におけるマーケティングやプロモーション,SteamやNintendo Switchといったプラットフォーマーとの窓口,そしてセールス戦略の設計を行っていたという。

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     インディーゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」は,2022年1月にSteamで発売されたマルチエンディングアドベンチャーゲームで,ゲーム内では最強のインターネットエンジェル(配信者)を目指す承認欲求強めな女の子(超絶最かわてんしちゃん)との生活を描いている。なお,「日本ゲーム大賞2022 ゲームデザイナーズ大賞」の候補作にも選出されていた。

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     小沼氏は発売前の段階では,本作は日本が主な市場となるのではないかと予想していたそうだが,発売後の結果(2023年7月27日時点)を見ると,中国での販売本数が50%以上を占めたという。

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     なお小沼氏は,本作の売上100万本を達成するべく,情報の初出から発売直後のユーザーの反応を観察し,動向を見たうえで中国語圏へ注力する戦略を定めたそうだ。もちろん中国語圏以外の動向も注視し,必要に応じて注力の提案を行い,実行してきた。
     また,全体の販売数を最大化するために,Steamの季節セールに加え,パブリッシャ独自のセールを提案し,それに付随する様々なプロモーション施策を実施してきたとのことだ。

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     小沼氏は本作の初出として,インディーゲーム情報番組「INDEIE Live Expo」を選択し,ここで情報を初公開した。「INDEIE Live Expo」は日本語・英語・中国語で同時に全世界へ情報を発信するインターネット番組であるため,スムーズに世界へアピールできたようだ。
     また,初出と同時にSteam上でストアを公開。1日で4000件程度のウィッシュリストを集めたという。ここで小沼氏は,初出と同時にストアを公開することはとても重要なポイントだと話した。これは,Steamのヘビーユーザーであれば,初出後すぐにSteamのストアページからウィッシュリストに登録してくれる可能性が高いからだという。

    情報初出と同時にストアページを公開することの大きなメリットがこのウィッシュリスト。初出時の勢いや興味などでウィッシュリストに登録してもらうだけでもユーザーへの通知が可能になるため,購入機会の増加にもつなげられる
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     本作の情報初出から発売日までのウィッシュリスト数を見ると,販売本数でトップだった中国は日本よりも少ないウィッシュリスト数であることが分かる。日本のウィッシュリスト数が多いことは,日本が主戦場になるだろうという小沼氏の当初の想定の裏付けにもなるが,この時点ではまだ中国での注目度は(販売本数と比較すると)それほどでもなかったようだ。

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     ところが発売の翌日になると,中国のウィッシュリスト数が日本を上回って1位になっている。さらにここから発売1か月後になると,中国のウィッシュリスト数は日本の倍以上に増加。その数は14万件を超えている。

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     また,本作の主題歌「INTERNET OVERDOSE」をYouTube,Bilibiliで配信すると,Bilibiliで860万再生を記録し,YouTubeの700万再生を上回る結果となった。そこで小沼氏は,先程のウィッシュリスト数の増加や主題歌のヒットなどを参考に,中国向けの施策を充実させることにしたという。

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     その結果,中国での反響はより大きくなり,Bilibiliに投稿された本作の関連動画の再生数は累計6000万回以上にものぼっているとのこと。

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     発売日以降のデータを見ると,毎週数千~1万程度ウィッシュリストの追加数が継続的に増えており,Nintendo Switch版の発売日に加え,Steam版で初の20%OFFセールを行ったタイミングや,多言語対応とSteam版で初の50%OFFセールを行ったタイミングでは,ウィッシュリスト数の増加が突出しているのが分かる。

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     Steam版の販売本数の推移を見ると,発売後も2~3か月に1度程度の頻度で販売本数増加の山ができており,瞬間的に最も多く販売数を伸ばしたタイミングは,先ほどのウィッシュリスト数増加と同じく多言語対応とSteam版の50%オフセールが実施された時期だ。

    ウィッシュリストと販売本数の推移を重ねると正の相関があり,Steam主催のセールや独自のセール実施など,セール時期に販売本数が伸びていることが分かる
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    Steamで年4回開催されている「季節の大型セール」にはすべて参加しており,グラフを見るとセール時に販売本数がしっかり伸びており,内訳を見るとどのセールでも中国での販売本数が最多となっている
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    独自セールでも販売本数を伸ばしているのは大きなポイントで,明確に中国を意識して実施した「旧正月セール」では中国での販売本数が7割以上に。また,多言語対応時に実施した初の50%OFFセールでは「季節の大型セール」を上回る数字となり,独自セールも販売本数を伸ばすうえで重要だと話す
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     「季節の大型セール」と「独自のセール」の販売本数の比率をから見てみると,「季節の大型セール」期間中は,これまで26万本を売り上げており,独自のセールでは38.3万本。そしてセールを行っていない時期では57.3万本。これらを合わせて現在121万本を販売している。
     Steamにおいて,セール時期に販売本数が伸びるということはよく言われているが,実際そのとおりだと小沼氏は断言。結果を見ても過半数の53%はセールのタイミングで購入されている。

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     しかしここでの注目ポイントは,「季節の大型セール」より「独自セール」での販売本数が多い点。小沼氏は,「季節の大型セール」と違い,「独自セール」ではその「独自セール」に注目してもらうためのプロモーション施策をセットで行うことが必須であると述べた。その言葉どおり,本作では「独自セール」のタイミングで必ず何らかのプロモーションを実施しているとのこと。

    「独自セール」を実施する際にこういった施策を行うことで,実際の販売数増加に結びつけている
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    さらに,「独自セール」中に「INDIE Live Expo」への追加出展や新PVの公開といった施策も実施したことにより,ウィッシュリスト,販売数の増加に結び付けられたという
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    Nintendo Switch版の発売に合わせてネットミームをパロディしたWeb CMを公開するという施策も実施。このCMは日本向けに制作したものだが,実際には中国を始め諸外国でも販売数の増加に寄与したという
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     小沼氏はセッションのまとめとして,インディーゲームにおける海外市場の重要さを強調した。しかし,どの地域・言語圏のユーザーから大きな反応があるのかは,実際に販売してみないと分からないという。
     これは小沼氏が実際に「NEEDY GIRL OVERDOSE」において予測していなかった中国語圏からの強い反応があったことでも実証されているとおりだ。また,中国語圏ほどではないが韓国語圏でも反響が大きく,急きょ韓国語への対応を決定して実施したという経緯もあると明かした。

     実際にウィッシュリストや販売数などのデータを確認・分析することで次に注力すべき言語圏も見えてくると話す小沼氏。とはいえ,インディーゲームで最初からあらゆる言語に対応し,あらゆる地域で大規模なプロモーションを行うことは非常に難しいのも確かだ。
     ここで大切なのは,ユーザーの反応をつぶさに見ること。これを行っていくことで,注力すべきエリアや必要な施策が見えてくることが多いという。

    Steam上のタイトル数は右肩上がりで増加している。これは日々競合タイトルが増えていくことと同義だ。そのためセール戦略の設計やセールに合わせた適切なプロモーションはさらに重要度を増していく
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     また,「季節の大型セール」に参加することはもちろんだが「独自セール」も軽視できない要素であり,「独自セール」はとくにセールタイミングに合わせたプロモーションが重要だと解説。最後に小沼氏は,インディーという,ある種柔軟に動ける組織体であればこそ,状況に合わせた柔軟な方針転換が必要不可欠な要素でもあると語り,セッションを締めくくった。

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