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11 bit studiosの新作「The Invincible」は,ポーランドの巨匠による哲学的SF小説をゲーム化。GDC会場でデモをチェックしてきた
「The Invincible」公式サイト
ポーランドのクラクフに本拠を置くStarward Industriesが開発する「The Invincible」は,「ソラリスの陽のもとに」などで有名なポーランドの小説家,スタニスワフ・レム氏が1964年に上梓したSF小説「砂漠の惑星」を原作にした作品だ。小さな宇宙船で未知の惑星レギスIIIに降り立った女性宇宙生物学者ヤスナが,不時着によってバラバラになってしまった,ほかの乗組員を捜索するというオリジナルストーリーが描かれる。
ゲームタイトルでもある無敵号(The Invincible)とは敵の母艦の名前だ。それがレギスIIIに向かっているという情報を得たために,冷凍睡眠から目覚めたヤスナらが,この星に降りることになったという。ドブロヴォウスキ氏によると,「我々にとってはレム氏は人間国宝であり,彼のストーリーをそのままゲームにするなど畏れ多い」とのことで,ヤスナを含めた主要キャラクターはStarward Industriesのオリジナルとなっているが,小説で描かれたキャラクターや設定も登場し,「小説とゲームが相互に補完するような関係になってほしい」と話す。
「The Invincible」の世界設定は,冷戦下の1960年代に激化した米ソ宇宙競争をそのままあてはめたような雰囲気で,反目する別の勢力も登場する。コンピュータはまだ開発されておらず,通信機器やセンサー,半透明のタブレット,アンドロイド,ローバーなどは,「フューチャーパンク」と称する,アナログらしさを残した独特のデザインで描かれている。
デモはゲーム開始から40〜50分程度のところから始まっており,ヤスナは部分的に記憶を失っているらしい。手にした赤いトランシーバーのようなデバイスは「トラッカー」と呼ばれ,小さなライトが多く点滅する方向から信号が発せられているという。
無線での話相手となるノヴィックはなにやら横柄で,脱出ポッドを一刻も早く見つけろという指示を出してくる。仲間を残していけないヤスナは,全員の消息を明らかにすると主張し,ちょっとした対立が起こる。生死をかけた緊急時にもかかわらず,マニュアルどおりの平然とした対応をするノヴィックの態度は奇妙で,信用できない人物という印象を受ける。
ドブロヴォウスキ氏は,このシステムについて,同じように無線でのみ交信するキャラクターたちを描いた2016年の「Firewatch」を例に挙げいてた。そんなノヴィックや,敵対勢力との関係をどのようなものにしてくか。こうした選択次第で物語は分岐し,実に11種類ものエンディングが用意されているのも本作の大きな特徴だろう。
デモでは,最初に発見した放心状態のゴースキー博士の近くにいた,ARTIと呼ばれるロボットを重要なメンバーとして修理し,ほかの仲間たちと共に帰還すべきか,それとも脱出ポッドを見つけてすぐに乗り込むかという判断を迫られ,筆者の「修復する」に対して,ノヴィックは不服な様子だった。
その後は,樹木がほとんど生えていない山岳地帯で仲間を探すことになるが,マップには,遠くからでも良く目立つ奇岩がいくつか存在しており,プレイヤーはそれに名前を付けることが可能だ。今回の取材では,なぜそうした些細なゲームシステムが紹介されたのかは教えてもらえなかったが,ゲーム中に方角を知るうえで重要な役目を担うのかもしれない。
デモ終了後,ドブロヴォウスキ氏は「すべてのもの,すべての場所が人間のためにあるわけではない」というのが本作の哲学的な側面だと語った。「ソラリスの陽のもとに」のように,人智のおよばない大きな力をこの惑星が秘めていることが,本作のテーマの1つになっているようだ。
グラフィックスにもゲームシステムにも,かなりの作り込みが伝わってくる「The Invincible」だが,開発が発表されたのは2018年のこと。当初は2020年に発売される予定だったが,2022年後半に延期され,現在は2023年第3四半期となっている。開発メンバーとしては,CD PROJEKT REDやTechlandなど,ポーランドの有名デベロッパに所属していたクリエイターたちが集っているとのこと。
今回のデモでは練り込まれた物語や独特のアートワーク,そして緊張感のある探索要素などが確認できたが,以前に公開されたトレイラーには円盤型宇宙船が飛行する場面や,クモ型ロボットと戦うアクションシーンも収められていた。現段階では語られていない部分は多そうだ。
気になる人は,公開されているSteamのストアページでウィッシュリストに登録しておこう。
※2023年4月6日10:20,マチェイ・ドブロヴォウスキ氏の名前を誤って記載していたため,該当箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします
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