紹介記事
日本語版「チルドレン・オブ・モルタ」を紹介。日本のアート作品の影響も受けた,独特のストーリー演出や美麗なアニメーションが特徴
本作は,アメリカのインディーズスタジオ・Dead Mageが開発し,海外向けには2019年に11 Bit StudiosからPC版とコンシューマ版がリリースされた「Children of Morta」の日本語版だ。“家族が主人公”という一風変わったテーマをはじめ,ローグライク要素のあるダンジョン探索,美しく滑らかに動くピクセルアート,朗読劇のようなストーリー表現などが特徴となっている。
そんな本作のPS4版を一足先にプレイできたので,本稿にてどのようなゲームかを紹介したい。開発チームリーダーであるDead MageのAmir Fassihi氏にメールでインタビューをしたので,その内容と共にお届けしよう。
「チルドレン・オブ・モルタ〜家族の絆の物語〜」公式サイト
世界を守るため悪しき存在と戦う“家族”の物語
プレイヤーが操作する「ベルグソン一家」は,代々,悪しき存在<堕落>と戦い,この世界を守ってきた一族の末裔だ。闇に立ち向かう一家は,偉大なる女神・レアの祭壇から力を授かり,邪悪をな存在と戦うためモルタ山の山頂を目指す。朗読劇のようなナレーションが印象的で,日本語版では俳優 / 声優の土師孝也さんが担当している。
スタート時に選択できるのは,父親のジョンか長女のリンダのみだが,ゲームを進めていくうちに選択できる家族が増えていく。剣に弓,武術など,それぞれ異なる攻撃方法を持つ彼らで,多彩なアクションのスタイルを楽しもう。オフラインでの協力プレイに対応しているので,ベルグソン一家と同じく家族と一緒に試練に立ち向かっていくのも盛り上がるはずだ。
ジョンは打たれ強いうえに,敵の攻撃を軽減する盾を持つ。足を止めての殴り合いは彼にお任せ |
長女リンダは弓を使うキャラクター。遠くの敵を一方的に倒すことができるが,HPが低いため,近寄られると脆い |
次男のケヴィンはアサシンや忍者のような戦闘スタイルで,敵を倒すと攻撃のスピードが上昇する |
自分が扱いやすいと感じたキャラクターを使ってプレイするのもアリだが,いろいろなキャラクターを使って遊ぶと,家族をテーマにした本作の“らしさ”が感じられるのでオススメだ。
キャラクターのスキルの中には,個人を強くするだけではなく家族全員を強化するものも含まれている。「戦いで得たノウハウを家族に伝えている」ということか,一人ひとりがそれぞれが成長することで家族全体が強くなるので,ゲームを有利に進められるだけではなく絆の深まりも感じられるのだ。
ダンジョンは,入場するたびに構造が変わり,入手したアイテムによってその後の展開が大きく影響を受けるといったローグライク要素がある。キャラクターの体力回復の手段が限られており,敵はかなりの数で押し寄せてくることも多く,体力は消耗していきやすい。
とはいえ,ダンジョン内で倒れても経験値やお金(モルヴ)の減少といったペナルティはなく,家に戻されてしまうだけ。敵の攻撃は激しいが,必要以上に慎重になる必要はない。ほどよい緊張感を持ちながら気軽にチャレンジできるのが本作の特徴の一つだろう。
ダンジョン内では「聖遺物」「聖なる恵み」などのアイテムが見つかることがある。これらは探索中,敵から人々を助けたり,遺跡の仕掛けを解いたり,シャード(鍵のようなもの)を使って宝箱を開けるなど,さまざまな方法で入手可能だ。
聖遺物には,敵に大きなダメージを与える「天罰」やHP回復に使える「ジンのポーション」など,攻撃やサポートなどさまざまな種類がある。チャージ時間があるため連続して使えないが,ここぞというときに使うと強力なアイテムばかりだ。
持っているだけで効果を発揮するのが聖なる恵み。メイン攻撃のダメージが上昇する「キーンエッジ」のようにキャラクター自身を強化するものや,キャラクターの周囲を旋回する火球で敵にダメージを与える「グリムの軌跡」といった敵との戦いが有利になるものなど,さまざまな効果を持つアイテムがある。
聖遺物や聖なる恵みは家に持ち帰ることができない点には要注意。強力なアイテムが手に入ったときはキャラクターのレベル上げをしたり,ちょっと無理して先の階層に進んで敵の強さを調べておいたりするなどしておこう。
ダンジョン探索の助けとなってくれるのが「オベリスク」というスポットだ。立ち寄ることで,獲得できる経験値がアップする,クリティカル確率がアップする,受けるダメージが減少するといった恩恵を一定時間だけ受けられる。聖遺物や聖なる恵みとともに,ダンジョン探索やレベル上げに役立てよう。
ダンジョンは2〜4つの階層に分かれており,最深部では強力なボスが待っている。これがなかなか手強く,ただレベルを上げて正面から挑むだけでは苦戦は必須。相手の動きをしっかり覚えて,プレイヤーキャラクターの特徴や攻撃方法を活かして戦おう。
経験値を溜め,レベルを上げることで新たなスキルが習得でき,お金が貯まれば家にある「工房」や「レアの書」で家族全体の戦闘能力をアップできる。どうしても勝てないという敵に出会っても,しっかりキャラクターの強化を行えばその難関を乗り越えられるはずだ。
巨大なクモの王は,地面をクモの巣だらけにして移動を邪魔しつつ,中型のクモを呼び出す。中クモはさらに小クモを生むため,確実に倒して数を減らさないとキリがない |
こちらはゴブリンの群れを率いるボス。兄弟だという噂を聞いていたが,一体しかいない……? |
一体目の体力を減らすと無事(?)もう一体が登場。兄弟で猛攻をしかけてくる |
<堕落>と戦う家族たちの物語に,ランダム形成により何度も新鮮な気持ちで挑めるダンジョン。手ごわい敵との戦いや家族の成長要素など,魅力的なポイントはたくさん。シンプルで遊びやすいため,ローグライクや育成要素と聞いて難しそうと感じた人でも気軽に楽しめるだろう。
語りによる物語の展開,滑らかに動くピクセルアートのキャラクターは一見の価値があるので,本稿やプロモーションムービーなどを見て気になったら,ぜひゲームをチェックしてみてほしい。
開発リーダー Amir Fassihi氏メールインタビュー
最後に,開発チームリーダーであるDead MageのAmir Fassihi氏のメールインタビューをお届けしよう。かつて日本に住んでいたことがあり,本作を制作するうえでさまざまな日本の作品から影響を受けたというAmir Fassihi氏から,日本のゲームファンに向けたメッセージももらっているので,ぜひ読み進めてほしい。
4Gamer:
パーティが“家族”という点は,これまでのゲームでありそうで意外となかったものだと思います。この発想はどこからきているのでしょうか。
Amir Fassihi氏:
このアイデアは,本作の最初の会議で,ブレーンストーミングをしていた段階で出てきたものです。かなり変わったアイデアだとは思いましたが,同時に興味深いものでもありました。
アーティスト達はすぐに作業に取り掛かり,家族とその外見,彼らのふるまいなど,いくつかのスケッチやアイデアを考案しました。それらがチームの中で共感を呼び,あがってきたアイデアを活かしたゲームを作ることになったのです。
私は当初,「このアイデアがプレイヤーに歓迎されないのではないか」という心配が少しあったのですが,最初のトレイラーが公開された際に多くのポジティブな意見を見て安心しました。
4Gamer:
ピクセルアートのゲームグラフィックス,イメージイラスト,ロゴデザインなどのアーティスティックな表現や世界観が目を引きます。映画や漫画,アニメ,ゲームなど,本作を作るうえで影響を受けた作品があれば教えてください。
Amir Fassihi氏:
まず,私たちのチームは皆,日本の素晴らしいアート作品に影響を受けています。
その中でも一番大きいものだと言えるのがスタジオジブリの作品ですね。どの作品も非常に美しくエモーショナルで,素晴らしい作品ばかりです。「ONE PIECE」ファンのアーティストもいますし,我々は本当に多くの日本の漫画やアニメを好んでいます。
日本の作品以外にも,ゲームで言えば「Binding of Isaac」(邦題:アイザックの伝説)と「Nuclear throne」というインディーゲームからインスピレーションを得ています。
4Gamer:
今あげていただいた作品からは,それぞれどこのどういった部分に影響を受けたのでしょう。
Amir Fassihi氏:
スタジオジブリの作品からは,ファンタジー感溢れる世界観と感情的な部分に強く訴える部分に影響を受けました。
ONE PIECEからはアニメーションスタイル,Binding of Isaacからはファンタジー要素とゲームループですね。Nuclear Throneからは,視覚的に非常に興味深いピクセルアートで作られたゲームスタイルに刺激を受けました。
4Gamer:
本作を制作するうえで苦労した点,ここはうまくいったという達成感があった点があれば教えてください。
Amir Fassihi氏:
本作の開発スタート時は5人ほどの少人数でしたが,時間とともにプロジェクトが徐々に大きくなり,チームの規模は20人近くとなりました。この,関わる人が増えたことは,私たちが直面した大きな課題の1つでしたね。コミュニケーションが適切に行われているか確認をして,大規模なチームに必要なツールの選定を行うのは容易なことではなかったのです。
ゲームデザインの面では,ストーリー性のあるものとローグライクの融合を目標としていました。これが非常に大きなチャレンジであり,「ストーリー」と「リピータブルでノーコンティニューなローグライク」の絶妙なバランスをとるために,多くのプロトタイプを制作し,同時に多くのアイデアがお蔵入りとなりました。
私たちが抱えていたもう1つの主な課題は,ストーリーとゲームプレイ要素が“常に家族に関するものになっているかどうか”を確認することでした。
単なる「ヒーローゲーム」ではなく,「家族の物語」を作りたかったのです。つまり,ストーリーとゲームプレイの特徴は,家族を表現するものである必要がありました。これが非常に困難で,多くのデザインのディスカッションを繰り返し行い,何よりもチームのハードワークが必要でした。
4Gamer:
英語版は1年前にリリースされました。ここまでゲームファンからどのような感想がきていますか。好評を受けている箇所,逆に課題と感じている点を教えてください。
Amir Fassihi氏:
一般的なレビューとしては好評をいただいております。ユーザーのみなさんからは,ゲームが家族を題材としていること,感情的な側面が描かれていること,そして「物語」と「ダンジョンクローラー」の融合をとても気に入っていただけているよう,私たちが主に目標としてきた部分で成功できたことを嬉しく思っています。
課題についてですが,一部のユーザーから,リプレイ性と多様性を求める声が届いていますね。それに応えられるようリリース後からこれまで積極的にゲームにコンテンツを追加しています。次の2つのアップデートでは,エンドレスモードと,繰り返し楽しめるインターネットベースのオンライン協力プレイが追加される予定です。
4Gamer:
日本のプレイヤーに楽しんでほしいところ,ゲームのおすすめのポイントはどこですか。
Amir Fassihi氏:
本作は“守護者の家族の物語”です。使命を果たすために互いに支え合うことや,家族愛の大切さを表現しました。これは,本作の目的であり,日本のプレイヤーの皆さんにもぜひ楽しんでほしい部分ですね。
4Gamer:
日本語版リリースを迎えた今の気持ちと,日本のゲームファンへのメッセージをお願いします。
Amir Fassihi氏:
日本でリリースされることを非常に嬉しく思っております。
日本は常に,私たちに大きな文化的影響を与えてくれた国です。私は80年代に日本の小学校に通っていましたが,ゲーム開発者になることを決意した理由は,日本での経験と,ファミコンの台頭を目の当たりにしたことです。私自身が非常に刺激を受けた国で,本作を販売できることを大変光栄に思っています。日本語版は,英語以外では唯一となるフルボイス対応となっているので,その点でも心が躍ります。
日本のみなさんが私たちのゲームを楽しんでくれることを心から願っています。感謝のしるしとして,日本にほんの少しでも恩返しができればと思っています。どうもありがとうございます。
- 関連タイトル:
チルドレン・オブ・モルタ〜家族の絆の物語〜
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Published in Japan by EXNOA LLC. (C) 11 bit studios S.A. and Dead Mage Inc. Children of Morta, the Children of Morta logo, the 11 bit studios logo and the Dead Mage logo are trademarks of 11 bit studios S.A. and/or Dead Mage Inc. All rights reserved.
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