プレイレポート
スマホ版「ワールズエンドクラブ」のレビューをお届け。デスゲームはなくなった? どういうゲームになったの?
「ダンガンロンパ」シリーズの小高和剛氏がクリエイティブディレクターを務め,シナリオ・ディレクションを「Ever17」,「極限脱出」シリーズの打越鋼太郎氏が務めることもあって,発表当初から注目を集めていた。
当初のキャッチコピーは「12人を殺す? 12歳による,12のデスゲーム」というデスゲームを予想させるものだったが,果たしてどんなゲームになっているのか? 本作のプレイレビューをお届けしよう。
なお,本稿は少なからずネタバレを含むので,その点には注意してほしい。
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ガンバレ組が向かった修学旅行は,デスゲーム?
舞台は,1995年7月。主人公のれいちょをはじめとしたガンバレ組の11名は,東京から修学旅行先の鎌倉へバスで向かっていた。車内では「ノルマゲーム」と呼ばれる,いわゆるデスゲームが展開するテレビ番組が放送されていた。
番組を見ていた一行は,その直後,謎の隕石が落下するところを目撃する。突如,車内は閃光に包まれ,目を覚ましたれいちょが外に出てみると,そこは全く知らない謎の場所だった。
目を覚ました全員の腕には,見覚えのあるバングルが。そして,ガンバレ組の前に現れたのは,ノルマゲームに登場していた謎のキャラクター「ピエロピ」だった。
ピエロピは一行にノルマゲームのルール説明と,勝者にはご褒美として「どんな扉の鍵でも一回だけ開けられる魔法の鍵を渡す」と告げる。その鍵を使えば,ここから脱出することができるのだ。
制限時間は1時間。負けが確定した者は,その時点で「処理」されてしまう。また1時間以内に勝者が出なかった場合は,全員が負けとなる。
こうして一行は,テレビと同じノルマゲームという名のデスゲームに強制的に参加させられることとなる。
このノルマゲームの行方自体は,実際にプレイして自分の目で確かめてほしい。
ノルマの内容自体は「マシュマロを食べる」「誰かと●●をする」といった,凄惨さを感じるような内容ではないが,まるで鬼のような形相で他のクラスメイトたちを蹴落として,自分が勝ち上がろうとするガンバレ組の姿には,胸が痛くなる。
――このゲームの真の物語は,このノルマゲームの後から始まることになる。
魅力的なキャラクターを紹介
話を進める前に,本作に登場する“ガンバレ組”のメンバーを紹介しておこう。なお,本作のキャラクターたちはみんな,あだ名のような名前となっている。
デスゲームは中止です! 物語もゲーム内容も急展開
突然のデスゲーム中止宣言。
「えっ!?」と思う人もいるかもしれないが,公式生放送時の小高氏によれば,そもそもの企画がデスゲーム主軸と見せかけて実はデスゲームではなく,2章からゲームのタイトルが「ワールズエンドクラブ」に変わるという構想だったらしい。しかし,それだとユーザーがどのタイトルで呼べばいいのかわからなくなってしまいそう,ということで,タイトル変更となったそうだ。
ではデスゲームはまったくの無駄だったのか……?
いえいえ,そんなことはありません。ここまでに起こる出来事も,きちんと物語の軸となっている。でもそれは,実際にプレイしてみてのお楽しみ。
そんなこんなで無事にゲーム会場である海底遊園地から脱出したれいちょたちが見たのは,到底信じられない光景だった。
一行は鎌倉に向かっていたはずなのに,なんと抜け出た場所は東京から直線距離で950kmも離れた鹿児島県だった。
それに,商店街は荒れ果て,人っ子ひとりおらず,電気などのライフラインもすべて止まっている。もちろん電車が動いているわけもない。
まずは人がいないか,ガンバレ組は鹿児島の街を探索することに。
こうしてガンバレ組の11名は,人を探しながら,東京を目指すことになるが,11名の意見はなかなかまとまらない。ただでさえ歩く距離が長いのだから,できるだけ短い距離を取るべきだとするメンバーもいれば,少しでも人がいる可能性のある大都市をまず目指すべき,という意見も出てくる。意見が割れるのはルート取りだけとは限らない。中には仲間の命に関わりそうな選択も……?
なお,本作ではれいちょが選んだルートに全員がついてくるわけではなく,選ばなかったグループは分かれて別の道を進むことになる。
分岐はフローチャートで確認できるようになっていて,後からチャプターセレクトもできるので,まずは自分の思った通りに進んで見るのがよさそうだ。
途中,喧嘩をしたり,衝撃の事実があったり,謎の少女・雪と出会ったり,色々な出来事が起こるが,果たしてガンバレ組は無事に東京に帰れるのだろうか。そもそも世界に一体何が起こったのか。東京は無事なのか。
見た目に反してかなり難しい!
横スクロールのアクションパート
ゲームは,前述のようなストーリーが進んでいくアドベンチャーパートと,横スクロールのアクションパートがあり,新しい都市での探索は基本的に横スクロールアクションとなっている。
可愛らしい見た目に騙されてはいけない。この横スクロールアクションでは,穴に落ちたり,敵の攻撃を食らうと,即,死亡なのだ。
おそらく,初めて訪れるマップでは軽い死にゲーくらいには死ぬと思う。死んでも直前からのやり直しになるのが大半なので,そこはとても有り難い。
ただ,本作は自分で任意にセーブを行うことはできないので,どこからやり直しになるかは,システムの良心に頼るしかない。筆者にとってアクションパートはかなり難しく,リスポーンした時に倒した敵が一体復活しているだけでも,気持ちとしてはかなり落ち込む……。
操作は,移動,ジャンプ,特殊能力,アクションの4つなので,難度の高いアクションを要求されているわけではないのだが,左右へのスワイプ移動と上フリックでのジャンプなど,スマホではやや操作しにくいと感じた。
個人的におすすめしたいのは,iPad+PS4コントローラ(DUALSHOCK 4)だ。ただ,鈍くさい筆者でもiPhone+フリック操作でちゃんとクリアはできた(5〜30秒ごとに死んではいたが)。
また,マップによっては謎解きが必要な場面もある。謎解きには,れいちょの能力や,そのマップで共に行動するメンバーの能力が必要となってくる。
ちょっと話が前後してしまうが,各キャラクターはストーリー中の出来事がきっかけで特殊能力に目覚めていく。れいちょもいきなり物を投げられるわけではなく,ストーリーの比較的序盤で投擲スキルに目覚める。
れいちょ以外のキャラクターも徐々に,さまざまな能力に目覚めていく。例えば,全身を硬化したり,激しい炎を吹いたり,敵を痺れさせる電撃を放ったり,爆弾を作ったり。それらをれいちょの投擲スキルなどと組み合わせて使うことも可能だ。
アクションパートはまさにデスゲーム(死にゲー)だった
アクションは,筆者の腕前だと死にゲー以外の何物でもなかった。理不尽さを感じる反面,トライ&エラーを繰り返しやすいゲーム設計なので,心さえ折れなければ先には進めるはず。
ただ,一部のボスキャラは,あと1回攻撃を当てたら倒せる,というところまで削っても,死ぬとフェーズの冒頭まで巻き戻るので(ボスの残りHPが半分でフェーズが切り替わる場合はそこまで巻き戻る,といった風),ここだけは死ぬと,割と,ガチに,マジで,心が折れる……。
また,謎解き自体も結構難しめで,筆者は10分くらいウロウロと試行錯誤するような場面もあった。考えている間も敵は現れるので,もういろいろと必死だ。
時には,他のキャラクターがヒントをくれたりするのだが,「おまえの能力を使って突破口を開いてくれ」程度のことしか言ってくれないので,どこでどう使えばいいのか全くわからない。
ストーリーは全体を通して,12名の少年少女の青春が織り交ざった冒険活劇,といった具合で,楽しいこともあり,悲しいこともあり,思わずうるっとくる感動のシーンもあり,初々しいコイバナもあり,ギャグもあり,小高氏と打越氏のいいところ取り,といった豪華な内容だと感じた。
覚醒に関した出来事も,各キャラクターごとにさまざまなシチュエーションがあって,じーんと胸に響く。
デスゲームそのものは冒頭の1章で終わるとあって,「ダンガンロンパ」的なゲームを期待していた人にはちょっと残念かもしれないが,謎のちりばめ方や事実が明かされるまでの流れはさすがの一言で,アドベンチャー初心者にもオススメな内容になっている。
このゲームは日本を縦断していくため,観光名所めぐりもできる。ルートによって訪れる地域が変わるので,日本観光をするつもりでルート分岐を回収していくのもオススメだ。
Apple Arcadeで配信された今回のバージョンでは,2種類のエンディングが遊べる。
ただ,この2種類のエンディングでは,残念ながら全ての謎は解き明かせず,特殊能力を覚醒させていないキャラクターもいたりと,余韻を残したエンディングとなっている。
以降の物語は2021年発売予定のSwitch版を待つことになってしまうが,ここまででもSwitch版への期待が高まる内容となっている。Apple Arcadeは初月無料で,加入さえしていればアプリは無料でダウンロードできるので,まずはぜひ遊んでみてほしい。
また,今回は関東までしかたどり着けなかったが,エリアマップとしては北海道以外の46都府県が描かれていたので,Switch版では関東よりも北へと赴くことになるのか,それも楽しみだ。
今回は,どちらかというとたっぷり遊べる先行体験版のような位置付けだと思うが,作品を楽しみにしている人には「ワールズエンドクラブ」の温度感を計れる最高の機会となるだろう。じっくり10時間以上は楽しめるので,ぜひプレイしてみてほしい。
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