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LA開催「Forza Motorsport」プレビューイベントに参加してきた。レースゲームの常識を塗り替えるかもしれない快作
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印刷2023/09/12 01:00

プレイレポート

LA開催「Forza Motorsport」プレビューイベントに参加してきた。レースゲームの常識を塗り替えるかもしれない快作

 2023年8月25日,アメリカ・ロサンゼルスにてTurn 10 StudiosおよびXbox主催の「Forza Motorsport」PC / Xbox Series X|Sプレビューイベントが開催された。同作は10月10日の発売が予定されている「Forza」シリーズ最新作であり,世界中のレーシングゲームファンから注目を集めている。

 プレビューイベントの会場となったのはPetersen Automotive Museum。雑誌「Hot Rod」を創刊したロバート・E・ピーターゼン氏によって設立されたこの施設は,世界的にも最大規模の自動車博物館であり,フォードやゼネラルモーターズといった「アメ車」を中心に100台以上のコレクションが展示されている。多くのゲームイベントはビジネス用コンベンション施設で開かれるが,あえてこの博物館を会場に選んだTurn 10 Studiosの「エンスー」ぶりに好感を抱かずにいられない。

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 ここで,あらためて「Forza」シリーズと最新作「Forza Motorsport」について振り返っておこう。

 「Forza」シリーズはXboxコンソールおよびPC向けに展開されているレーシングゲームで,その原点は2005年の「Forza Motorsport」まで遡る。美しい映像表現と豊富なカスタマイゼーションは,初代Xboxの作品群においても高く評価され,その後,2017年発売の「Forza Motorsport 7」まで続く長寿シリーズとなった。さらに,Playground Gamesによるオープンワールドを舞台とした「Forza Horizon」シリーズも生まれ,これまで5作品を世に送り出している。
 「Forza」シリーズはシミュレーション的な「Motorsport」と,アーケード的な「Horizon」の二大看板によって,Xboxを代表するレーシングフランチャイズとして認知されている。

 さて,今年10月に発売を控える「Forza Motorsport」だが,なんと「7」まで続いたナンバリングを一旦リセットし,まったく新しいゲームとして作り直したという。長寿シリーズをリブートすることになった詳しい経緯については,同日に行ったクリエイティブ・ディレクターのChris Esaki氏へのインタビュー(※リンク)をご覧いただくとして,本稿では最新作のプレイインプレッションをお伝えしたい。


プレビューセッション


 プレビューイベントには,Turn 10 Studiosの創設者であるDan Greenawalt氏が登壇した。Dan氏は「Motorsport」をリブートするにあたって,自分たちがするべきことは車という芸術,「レース」というスポーツをより知ってもらうこと,何より,思うがまま車を乗りこなす喜びこそ同シリーズの原点であると語る。この原点に立ち返り,一から作り直した最新作について,「Forza」ファンはもちろん,レースゲームをプレイしたことのない人にも楽しめると熱弁した。

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 続いて,「Forza Motorsport」クリエイティブディレクターを務めるChris Esaki氏によると,実際にゲームを開発するにあたり,車を乗りこなす喜びを体験してもらうために必要なものを列挙し,それぞれ再構築にあたったという。中でも重視したのが物理演算とAI,そしてゲームデザインとカスタマイゼーションであり,こうした変更点を実際にプレイする中で知ってもらいたいとアピールした。

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 プレビューセッションはXbox Series Xで行われた。セッティング等を除けば1時間ほどのプレイ時間だったが,それでも新生「Forza Motorsport」の魅力は十分味わうことができた。

 ゲームを起動すると,ゲームのパフォーマンスの設定を以下の3つから選べる。

  • Performance……4K上での60fps
  • Performance RT……レイトレーシングかつ可変解像度(おそらくFHD〜2K)での60fps
  • Visuals…4Kかつ上質なレイトレーシングでの30fps

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 本作の映像表現として,最も注目されているのがレイトレーシングだろう。前作「Forza Motorsport 7」では4Kかつ60fpsでの動作が魅力だったが,Xbox Series X|Sの環境を前提に開発された本作では,さらにリアルタイムレイトレーシングに対応する。これにより,反射光やマシンに写り込んだ環境などのリアルな描写を楽しめる。ただ,今回は推奨された「Performance」を選択することにした。

 ゲームを始めると,まずはシリーズ定番の操作練習を兼ねたデモンストレーション的なレースが行われる。次にプレイヤーの分身となるアバターのカスタマイズ,そして最初の車を選ぶというお決まりの流れだ。提示されたのは「SUBARU STI S209 2019」「Honda Civic Type R 2018」「Ford Mustang GT 2018」の3台。シビックかS209か……日本人にはある意味で苦渋の決断だが,ここはS209を選択。

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 続いて,セッティングに移る。ここで興味深いのはあらかじめ難度とセッティング,報酬がそれぞれセットになっていることだろう。つまり,リアルな設定を選び,AIドライバーを賢くすれば,それだけ報酬が多くもらえるということだ。
 この仕様は「Forza」シリーズに存在していたものだが,最初にすべてひとまとめにセッティングできるのは,ゲームデザインとしてかなり合理的に思える。もちろん,このセッティングはレース中以外であれば変更できるため,最初は簡単なセッティングにしておいて,「ぬるい」と感じたらAIを強化したり,挙動をよりリアルにしたりできる。

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 さっそく入手したS209を用いてレースに挑むことになるのだが,本作ではレース前にフリープラクティス(いわゆるFP)に挑む。これはF1などのモータースポーツで実際に行われる,順位を競う本番前にマシンの性能を調整したり,トラックの状態を確認したりするためのテスト走行のこと。ゲーム内でも,このFPでマシンのパーツやチューニングを調整しろということだろう。

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 次はいよいよ,本番となるレースだ。舞台は,本作のオリジナルコース「GRAND OAK RACEWAY」。比較的フラットで走りやすいコースだが,随所に険しいカーブがあり,油断していると足をすくわれそうだ。完走後は順位に応じてクレジットと,プレイヤーと車それぞれに経験値が加算され,次回のレースに活かせる……ようだが,このあたりで時間が来てしまったため,プレビューセッションは終了した。




プレイインプレッション


 ここからは,筆者なりのインプレッションをお伝えしたい。

 まず映像表現に関しては,まったく文句のつけどころがない。静止画でずっと眺めていたいマシンのディテール,空気感まではっきりと伝わるコースの雰囲気,美しいライティング。何から何まで見事というほかなく,「Forza」シリーズ最新作の名に恥じない出来と言える。

 グラフィックスは無論,驚いたのはサウンドの表現だ。今回試乗したSUBARU S209 STIは,スバル車を象徴する水平対向エンジン(通称,ボクサーエンジン)のドロドロとした音が特徴だが,ゲームでは「ドロドロ」感のあるサウンドが見事に反映されている。とくにドライバー視点で聞こえる車内のエンジン音に関しては,現実とほとんど区別がつかないかもしれない。現代のレースゲームはどれも実車から録音するのが当たり前になっているが,とりわけ本作のサウンドのレベルは高い。

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 このように,グラフィックスやサウンドは「安心のForzaクオリティ」を更新することに成功したと言っていいだろう。一方,ゲームプレイは「新生Forza Motorsport」にふさわしく,大きく手が加えられている。

 まず,クリエイティブディレクターのChirs氏が掲げる「CARPG」(CAR+RPG)のコンセプト通り,本作は本格的なレーシングシミュレーションでありながら「RPG」のように楽しめる設計になっている。とくに印象的なのが「CAR LEVEL」という概念だ。同じマシンに乗り続けることで,マシンに経験値が蓄積し,これによってカスタマイズできるパーツの種類が増えていくというものである。

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 つまり,多くのレースゲームでは高性能なマシンが手に入り次第,「乗り換え」るところ,本作では同じマシンに「乗り続け」ることを促している。これにより,マシンの長所や短所をよく理解し,自分のドライビングでそれを補ったり,あるいはカスタマイズによって自分好みに調整したり……まさにRPGにおける「成長」をレースゲームで再現するという試みが成されているのだ。
 実際,筆者は短いプレビューセッションだったが,早くもS209に愛着が湧いてきて,もう少し遊んであのパーツを解除したい……という思いに駆られた。

 ただ,「同じ車に乗り続けるだけでは飽きるのではないか」という疑問も湧く。これは製品版をプレイしなければ分からないところだが,本作の大きな改善点である物理演算の精度向上の結果,同じ車に乗り続けるモチベーションが増したのは確実だ。例えば,従来はタイヤ1つにつき1点しか接点がなかったところ,本作はタイヤ1つにつき8つの接点を設定し,さらに360fpsで計測しているという。この結果,本作はシミュレータ的なリアリズムが強調され,マシンの操縦が難しくなっている。

 この変化を強く実感したのが,コースの縁石(ゼブラゾーン)に乗り上げた時だ。大抵のレースゲームにおいて縁石はほぼ背景のようなものだが,本作では片輪が縁石に乗り上げただけで一気にハンドルが奪われ,コントロールを取り戻すのに手間取ったことに驚かされた。もちろん,そのまま芝生までコースアウトしてしまうとタイヤが完全に空転し,もはやドライバーにはどうすることもできなくなるほどだ。

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 そのほかにも些細なハンドリングのミスでオーバーステアになったりする。仮にセッティングをイージーにしても,マシンのコントロールは従来の「Forza」シリーズと比べて格段に難しい。低い難度であればリワインド(ミスしても時間を巻き戻せる機能)でリカバーは可能だが,高い難度では一度のミスが絶望的になるだろう。
 ただ,それは決して理不尽なものではなく,むしろリアリティのある物理演算によって自分のドライビングとマシンの挙動,そして路面の接地の一体感が得られ,繰り返し練習したいという気持ちにさせられた。

 実際のサーキットにおける走行をどれほどリアルに再現できているのか(とくにフォーミュラカーなど)を,サーキット経験が豊富なプロレーサーに聞いてみたいところだが,素人の感想としては,物理演算を見直したことによって実際にレーシングカーを乗りこなしている実在感は明らかに増している。それが前述の優れた映像や音と相まって,新生Forza Motorsportにふさわしい新次元のレース体験を実現できていると感じた。

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 本作の非常に興味深い点は,ブランドをリブートするにあたって流行のジャンルを安易に融合するわけでも,あるいは旧態依然に甘んじるわけでもなく,「Forza」本来のドライブを楽しむというピュアなレーシングを物理演算を中心に磨きつつ,それを引き立てる形でRPG要素を盛り込んでいる点だろう。既存のファンの期待に応えながら,同時に新しいゲーマーも迎え入れようという懐の広さが見られる。


 10月10日の発売が迫ってきた「Forza Motorsport」は,Microsoftのサブスクリプションサービス,Xbox Game Passに加入すればローンチと同時にプレイできる。推奨環境のWindows PCやXbox Series X|Sを持っている人は,まずはXbox Game Passで試してみるのもいいだろう。

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