プレイレポート
モノクロの世界に自由に色を塗る。絵本のようなグラフィックスが可愛い「Chicory: A Colorful Tale」のインプレッションをお届け
「Chicory: A Colorful Tale」を手がけるFinjiは,アメリカ・ミシガン州グランドラピッズに拠点を置くデベロッパだ。大学を中退して故郷に戻った女性(猫)が不思議な失踪事件に巻き込まれる物語を描いた個性派アドベンチャー「Night in the Woods」(ナイト・イン・ザ・ウッズ)を,Infinite Fallと共同開発したことでも知られている。
そんなFinjiの新作となる「Chicory: A Colorful Tale」は,主人公の犬が魔法の筆とともに冒険するというPC/Mac用のタイトルだ。
モノクロの世界に色を付ける力を持つ魔法の筆(ブラシ)。現在の継承者は「チコリ」というウサギだが,ある日,彼女は姿を消してしまった。チコリの館で掃除をしていた主人公は,残された魔法の筆を手に,チコリを探す旅に出る。
グラフィックスは手描き風のスタイルを採っており,まるで絵本のようだ。魔法の筆は右スティックやマウスで自由に動かすことができ,モノクロの世界へ自由に筆を振るうことができる。
感情の赴くままにぐりぐりと曲線を描いてもいいし,「木の葉を緑に,地面を茶色に……」というように色を塗ってもいい。草むらを真っ赤にするといった,現実にはありえないような色を使っても,何のペナルティもない。また,塗った色を消すことも可能だ。世界は大きなキャンバスというわけで,この辺りはディスプレイが塗り絵や自由帳になったかのように感じられる。
魔法の筆は謎解きにも役立つ。草むらの中に何かが隠れているなら,筆でくすぐってやると,隠れていた動物が飛び出してくることがあるのだ。
また,木々の中には色を塗ると花を開いたり,成長したりするものがある。一見すると先へ進めないようなガケがあっても,色を塗って成長させた木々を足場にすることで渡れるようになる。筆を自由に使って,進むルートが作れるというわけだ。
フィールドを筆で塗りたくりつつ仕掛けを探すのは,いたずらとビデオゲームの中間っぽくて面白い。一見すると行けないような場所にも,その先には帽子や服といったコスチュームが隠されていることがある。着替えをすると,もちろん主人公の見た目も変わる。コスチュームに筆を使えば主人公自身に色を塗れるので,気分転換に変えてみるのも良さそうだ。
一見すると平和な世界だが,その裏では何かが起こっているらしく,周囲からインクがにじむように暗闇が侵食してくる。暗闇の中には不気味な目玉の怪物がいて,主人公にビームや弾を浴びせてくるのだ。
怪物に立ち向かう手段も,もちろん筆。まぶたが開いているときに目玉を筆で塗ってやれば,ダメージを与えられるのだ。左スティックで主人公を動かして攻撃を避けつつ,右スティックで筆を動かし,まぶたを開けた目玉を狙わなければならない。この忙しさは独特だ。
筆やお絵かきをテーマとしているゲームは多いが,本作ではモノクロの世界がテーマとなっており,自由に色を塗っていくのは理屈抜きで面白い。また,主人公たちをはじめとする動物たちの可愛らしさと,忍び寄る暗闇やそこに潜む怪物たちの不気味さがコントラストとなり,独特の世界観が構築されていると感じた。ゲーム開始時に自分の好きな食べ物の名前を入力したり,実家に電話するシーンがあったりと,どことなく「MOTHER」の影響が見られるのも興味深い。
なお,本作は2人プレイ可能だ。1人は主人公と筆,そしてもう1人は筆を操る。つまり筆が2本になるわけで,それこそ子供のころに友達と自由帳で遊んだときのように,童心に帰った塗り絵遊びができそうだ。
「Chicory: A Colorful Tale」Steamストアページ
「Chicory: A Colorful Tale」公式サイト
- 関連タイトル:
チコリー 色とりどりの物語
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