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レトロ調ゲームの開発を成功させる五つの心得とは? BitSummit Driftのセッション「The Sabotage Way:レトロスタイルゲームの開発」レポート
「The Sabotage Way:レトロスタイルゲームの開発」と題し,同スタジオがどのように「過去のゲームから感じた『面白さ』を現代のプレイヤーに伝わる形にしているのか」が5つのポイントで語られたセッションをレポートしよう。
レトロスタイルのゲームで人気のスタジオによる“レトロ調ゲーム開発者五ヶ条”
冒頭で同スタジオが2016年にカナダのケベックに設立されたこと,メンバーはそれ以前から週末などにゲーム開発を行っていたこと,ファミコンの「忍者龍剣伝」(海外でのタイトル名は「NINJA GAIDEN」)や「メトロイド」にインスパイアされた「The Messenger」,スーパーファミコンの名作RPG群へのオマージュと言える「Sea of Stars」を制作したスタジオであることなどが簡潔に語られたあと,話は本題へ移った。
1. EXPECTING THAT EVERYTHING GETS REDONE 8 TIMES
「すべてを8回やり直すことを覚悟しろ」
ゲーム開発歴は17年というBoulanger氏は,すべてのゲームは何回ものリテイクや再構築が必要だと話す。
このプロセスは,自分たちが本当は何を作ろうとしているのかを導き出すために必要なのだそうだ。といっても,リテイクが必要だと分かっているから,1回目を適当に作っていいということではない。あくまで面白いと思えるものをまず作り,それを見ながら方向性が正しいか,アイデアが正しいかを考える。そして次の段階に進むときは,絶対に前のバージョンを超えるよう心がけるという。
その際,メンバー間のコンセンサスを形成することも大切である。それがないとゲームが迷走してしまうためだ。
2. NEVER MAKING ANYTHING PRETTY IT HAS BEEN MADE FUN
「楽しくなるまでは美しく作ろうとするな」
これはつまり,ゲームの楽しさを固めるのが先で,アートワークはあとから綺麗にしようということ。ダミーのキャラでプレイして面白くなければ,それはゲームの面白さが不十分である。人は優れたアートワークに魅力を感じるものだが,作り手側がそれで正しい判断ができなくなってしまうのは問題なのだ。
3. REFRAINING FROM EMULATING DIRECTLY,AIMING INSTEAD TO MAKE GAMES THAT ARE"AS GOOD AS OUR MEMORIES"
「そのまま真似るな,思い出の中の楽しさを狙え」
レトロスタイルのゲームを作るときにありがちな失敗は,インスパイアしたゲームを「再現」しようとすること。そうではなく「美しい思い出の中のゲーム」すら超えるような楽しさを作らなくてはいけない──というのが氏の考えだ。
カエルに剣を持たせたキャラクターがいれば「クロノ・トリガー」の面白さが再現されるわけではない。時を越えるワクワク感,素晴らしいストーリーで楽しんだことを思い出しつつ,新しい何かを拡張しなくてはならない。
4.SHOOTING FOR THE UNIQUE FEEL THAT EMERGES FROM STRONG LIMITATIONS
「強い制約が生む,唯一の感覚を射貫け」
レトロスタイルなゲームを作るとき,ターゲットとなるハードの制約を忘れてはいけない。
現代なら画面を埋め尽くすほどのキャラクター数を出すことは簡単だが,イメージ元にあるゲームの現役時代,作り手たちはハードの制約と戦いながらゲームを開発していたはず。だからSabotage Studioもまた「The Messenger」の開発時,ファミコン(正確にはその北米版のNintendo Entertainment System)と同じ制約の中でユニークな作品を目指したという。
一方で操作性やシステムについては,現在のプレイヤーに合わせて近代化することが大切だと説明した。
5. LETTING THE INNER CHILD CALL THE SHOTS
「内なる童心に耳を傾けて撃て!」
最後に大事なこととして語られたのが,童心を持ち続けること。当然ながらSabotage Studioのメンバーは,プロフェッショナルな働き方をしている大人である。しかし,自分の内なる童心が何かを叫んでいるとき,その声に耳を傾けることは忘れない。仲間たちとのディスカッションの場でも,自分の中の童心がちゃんと喜んでいるか,意識しつつそのバランスを取る必要があると語った。
セッションは,「Sea of Stars」のDLCの予定や,Sabotage Studioの3本目の作品に関するヒントとなる1枚の写真によって締めくくられた。
終了後の質疑応答で,レトロスタイルゲームのマーケティング方法について質問された氏は,「現代はマーケティングもゲーム作りの一部。いつでもマーケテイングの部署が,アニメーションや音楽の部署と相談し,協力できるようにしている」と回答。そして,「世の中でバズった話題に乗っかったりはせず,自分たちのゲームを届けるべき人々を考えながらそれを行っている」とも話した。
氏やSabotage Studioが大切していることが凝縮されたこのプレゼンは,レトロ調のゲームを作ろうとする人だけでなく,すべての開発者にとって興味深く,また役立つものであることは間違いない。
大変興味深いその内容には筆者もだいぶ感化され,クラシックな作品の楽しさを現代に蘇らせるテーマや,Boulanger氏の言葉選びにイメージが膨らみ,気がつけばベテランガンマンが若者を導く映画「怒りの荒野」に登場する“ガンマン十ヶ条”のように受け止めていた。いわば“レトロ調ゲーム開発者五ヶ条”といったところだ(ちなみに本稿はそれになぞらえたまとめ方している。この遊び心に気がついてくれると嬉しい)。
そんな本セッションは,Bitsummit公式YouTubeチャンネルで公開されている動画「【DAY3 後半】BitSummit DRIFT (ビットサミット ドリフト) 公式配信!」で視聴できる。インディーゲーム開発者には,これをぜひ「ゲーム開発の荒野」を生き抜く糧としてほしい。
BitSummit Drift公式サイト
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- ライター:高橋祐介
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