プレイレポート
「DEATHLOOP」プレイレポート。1日で8人の暗殺に挑むステルスアクションは,“ループによる成長”が存分に味わえる意欲作
プレイヤーは暗殺者の「コルト」となり,“ある1日”が無限に繰り返される謎の島から抜け出すため,8人のターゲットをたった一人で始末するという,極めて困難なミッションに挑む。
4Gamerは発売に先駆けて,PS5の製品版とほぼ同じバーションを短時間ながらプレイする機会を得たので,そのインプレッションをお届けしよう。Arkane Studiosお得意の一人称視点ステルスアクションに“ループし続ける1日”というエッセンスがうまく融合し,非常に興味深いプレイフィールとなっている。
時間経過で次々と姿を変えるが
朝になれば“元通り”のブラックリーフ島
本作の舞台は「ブラックリーフ」と呼ばれる謎の島だ。一見,自然豊かなリゾート地に思えるこの島は,なぜか「ある一日がひたすらループし,何があっても朝には元に戻ってしまう」という現象が起こっている。
主人公のコルトもまさにその影響下にあり,朝に海岸で目を覚ますと,その日に“何が起ころうと”同じ場所でまた朝を迎える日々を繰り返している。この「何が起ころうと」というのは,「どんな死に方をしても」と言い換えてもいい。
コルトの目的は,何とかこの現象にケリをつけ,島を脱出して元の生活に戻ることだ。そのためには「ヴィジョナリー」と呼ばれている,島の有力者8人全員を始末しなくてはならない。
だが前述のように,ブラックリーフ島では同じ1日がループしているため,1人や2人殺したところで,時間が経過してその日が終われば,“何事もなく”元の日の朝に戻ってしまう。つまりコルトはたった1日のうちに8人を殺すという,途方もない仕事を完了しなければならないのだ。
とはいえ,時間や機会は無制限にあるといっていい。何せ“この日”は無限に続いているのだから……。
さて冒頭でも少し触れたが,本作は一人称視点のステルスアクションだ。プレイヤーはコルトを操作し,待ち伏せや正面突破,罠など,あらゆる手段を使ってヴィジョナリーたちを追い詰めていく。とはいえフィールドは島のエリアごとに分かれており,さらに時間経過ごとに「朝」「昼」「午後」「夜」と様相を変えていくため,その全貌を掴むのは容易ではない。さらに島内にいる者は,みなコルトを狙っているらしく,出てくるのはほぼすべてが敵。常に多勢に無勢状態というわけだ。
ただ,一度エリアに入ってしまえば勝手に時間が経過することはないので,思う存分試行錯誤できる。時間はエリアから自分で脱出した時点で次に進むか,あるいはコルトがやられて朝に戻ることで変化する仕組みだ。
今回はブラックリーフのエリアのひとつである,「カールスベイ」の朝と夜のマップで暗殺に挑んでみたので,その様子をネタバレしない範囲で紹介しよう。
朝のカールスベイには,ターゲットの1人である「ハリエット」がいる。彼女は新興宗教の教祖らしく,なにやら特殊なイベントのようなことを行っており,そこを襲撃すれば倒せそうな雰囲気だ。ミニマップも含め,島内の地図ようなものはチェックできないが,クエストマーカーは表示されるので,目的地の方向と距離は分かる。カールスベイは文字通り港町なので,街中より警備が薄そうな海岸を進むことにした。
とはいえ目的地に進むのは,そう容易ではなかった。前述のように動き回る人間はすべてコルトを狙う敵だし,要所にはセンサーやタレットが用意されていて,不用意に歩き回るとあっという間に戦闘状態になってしまう。敵自体の感知能力はそこまで高くないようで,とくに上方向への注意は非常に散漫なため,彼らを見下ろせる場所にいればバレることはほとんどない。もちろん常にそういったポジションを取れるとは限らないので,きっちりと屈んでステルス状態を維持していたい。この手のゲームの例に漏れず,バレずに敵へ忍び寄れば一撃で始末できる。
なお,マップや建物は四方八方にかなり入り組んだ形になっており,建物へは天井近くから忍び込んだり,逆に床下の通気口のような所から入り込めたりと,正面突破以外の選択肢はかなり多い感じだった。
夜のカールスベイは前述のように基本的な構造こそ同じだが,敵やタレットなどの配置が変わり,難度は高くなっているように感じた。さらにある場所で(朝とは別の)イベントが行われているらしく,多くの人が昼と違うところでたむろしていたり,花火がどんどん上がったりと,まったく違った風景を見ることができた。
また,日中使えたルートが物理的に閉鎖されていたり,逆に難しいルートが手薄になって楽々通れるようになったりといったことに遭遇した。朝のマップの経験は無駄にはならないが,時間が変われば“別のマップ”と考えたほうがいいだろう。
時間帯ごとに攻略方法が変わるのは厄介だが,コルトは何度でもやり直しが効く身で,しかもこの島は一日経てばすべてが“元通り”になる。失敗を恐れずに繰り返し経験を積めば,それだけ楽に進めるようになるはずだ。
武器やガジェットに加え
死すらキャンセルできる特殊能力を駆使して進む
前述のとおり孤軍奮闘状態のコルトだが,暗殺を有利にこなすための強い味方がいくつも存在する。ゲームを進めるうえでのキモとなるので,一通り説明しておこう。
一番多用するのが,一般的な遠距離武器だ。ハンドガンやライフルといったお馴染みの種類が揃っているが,入手方法は敵が落とす物を拾うか,特定の場所から回収するかのどちらかになる。
侵入が難しいエリアや,ボスでもあるヴィジョナリーからは,レア度が高い強力な装備を入手できることが多い。低レアの装備は性能が低いだけでなく,いざという時に弾詰まりして撃てなくなることもあるので,できるだけいいものを携行したい。
同じく序盤から大活躍するのが,ガジェットの「ハッカマジグ」と敵のタグ付けだ。前者はハッキングデバイスで,アンテナが付いている電子デバイスを,一定時間[L1]ボタンを押し続けることで,コルトの味方にできる。
これは単に誤作動を起こして人を呼び寄せるレベルから,タレットを起動して周りの敵を抹殺するといったことまで,できることは幅広い。ただし使用可能な距離は短く,見えているターゲットにしか使えない。物陰に隠れながら使うなどしないと,ハッキングが終わる前にこっちがミンチになる可能性が高い点は注意しよう。
後者のタグ付けは,敵に視点を合わせて十字キーの下で実行可能だ。チョンと押すだけで敵の武器が判明し,離れた場所や壁越しでも居場所が分かるようになるほか,ボタンを長押しすればフォーカスして性格や現在の情報まで表示される優れもの。
例えば進入予定場所に入る前に高所からタグ付けしておいて,入ったらそれを目安に敵を避けたり暗殺したりする……といったことが可能なので,ステルス戦の大きな味方だ。ミニマップがない本作では,敵の居場所を把握するだけで難度が大きく変わるので,使わない手はない。
またゲームを少し進めると使えるようになるのが,「トリンケット」と「スラブ」だ。両方とも本作固有の名称だが,トリンケットはいわゆる強化パーツで,スラグはコルトが使用できる特殊能力だ。
トリンケットは,武器に使用するウェポン・トリンケットと,コルト自身に装着するパーソナル・トリンケットに分かれており,前者は武器の安定性を高めたり,有効射程を伸ばしたりといった効果がある。後者はコルトのステルス性やライフといったパラメーターのアップのほか,2段ジャンプなどのアクションが可能になるものも用意されているようだ。
コルト用のトリンケットは4つまで装備可能で,武器用のものは武器のレア度に応じて,装備可能数が増えるようになっている。トリンケットにもレアリティが設定されており,希少価値が高いものほど入手しづらく,効果も高くなっている。
スラブは本作で一番重要なパワーアップ要素といってもいい。ひとたび発動すれば超常的な力を発揮し,常識ではあり得ないような立ち回りが可能になる。例えばコルトが序盤に入手する「リプライズ」は,例え殺されても自動で一定時間を巻き戻し“なかったこと”にする能力だ。ただし,後述する「注入前のレジドゥム」はその場に落としてしまう。
リプライズはコルトの死亡と同時に発動し,動画を高速で逆再生するが如く元来た道を戻りながら,死んだ場所から一定の距離を取って復活する。どれぐらい“巻き戻る”かは自動で決まるようで,感覚としては「チェックポイントから再スタート」といった感じに近い。
これによってコルトは2回までならどんな死にも耐えて(また朝になることなく),繰り返し困難に立ち向かうことができる。たった一度のうっかりミスで最初からやり直し……といったことにはならないのだ。
また,やられて使用回数が減っても,朝から昼といった時間の経過を挟むと回復するため,リプライズの残り回数は常に把握したうえで行動したい。
リプライズ以外のスラブは,基本的にターゲットのヴィジョナリーが所有しており,彼らを倒し回収することによってコルトの物になる。つまりヴィジョナリーを倒すことはゲーム全体の目的であるが,それと同時にコルトを強化する非常に重要な手段というわけだ。
例えば前述のカールスベイのハリエットは,「ネクサス」というスラブを所有している。彼女を始末すると入手できるこの能力は,「一定範囲の敵をリンクする」という力を持ち,例えば敵の密集地点で発動して誰か一人を倒せば,まとめて全員が死ぬことになるのだ。うまく使えば,敵の集団を瞬時に壊滅させることも夢ではない。
また「敵集団と少し離れた敵をリンクする」という形で使用すれば,隠れて孤立した敵を暗殺するだけでまとまった敵を一網打尽にするなど,工夫次第でとても便利な使い方ができる。今回はプレイ時間の関係でほかのスラブは入手できなかったが,スラブ同士のさまざまな連携も考えられそうだ。
スラブはパワーというMPのようなものを消費して発動するが,パワー自体は自動回復するので,ケチって使う必要はない。どのスラブを選択し,どのように活用するかは,本作の攻略の根幹となるのは間違いなさそうだ。
なお,ハッカマジグなどのガジェットを除く,武器やトリンケットやスラブは,入手しても一日がループして朝に戻されると,すべて失なわれてしまう。
だが,本作には「レジドゥム」というループに干渉する物質があり,これを装備やスラブに「注入」することによって,持ち越せるようになる。レジドゥムはマップ上の各所にオブジェクトに宿る形で存在しているほか,装備の分解やヴィジョナリーなどの強力な敵を倒すことによっても入手できる。
ただしコルトがやられると,注入前のレジドゥムはすべて失ってしまうので,リプライズで復活した場合は,“(自分自身の)死体の回収”を最優先で行いたい。
“ループによる2つの成長”を駆使して進む意欲作
本作は「ループ」という概念が,物語とゲームシステムの両方で大きなテーマとなっている。死ぬと同じ日の朝に戻り,すべてがリセットされてまた繰り返す……というのはその最たるものだが,スラブのリプライズによっても,ごく短い時間のループが何度も発生する。
基本的にゲーム内のキャラは,ループによって“白紙”の状態に戻ってしまう。だがプレイヤーは別だ。1日を繰り返すことによってマップの構成,暗殺対象の動き,そしてアイテムの場所といったことが把握できる。こういったプレイヤーの知識の蓄積が,第一の成長要素だ。またゲーム内で発見した情報はきっちりと保存され,後から閲覧できるので,多少忘れてしまっても問題になることはない。
また,リプライズのスラブを使えば,突発的な死が起こったとしても帳消しにできる。レジドゥムを使えば,コルトもさまざまな物を持ち越せるようになる。最初は頼りにならないサブマシンガンのみで敵に立ち向かうコルトだが,やがて強力な武器とトリンケット,そしてスラブを駆使して戦う戦士として朝を迎えるのだ。本作には経験値やレベルといった概念はないが,これは明確な成長だろう。
本作はこの“2つの成長”を駆使して進んでいく,意欲的な作品だと感じた。通常の作品ではゲームオーバーからのコンティニューになるのだが,それ自体をゲームシステムに組み込んだ……とも言えるだろう。それだけにクリアまでのハードルはかなり高そうで,今回プレイした範囲では,8人全員をどうやって一日で倒せばいいのか,見当もつかなかった。
なお,今回のバージョンではプレイできなかったが,本作にはヴィジョナリーの一人である「ジュリアナ」として,コルトと戦うマルチプレイモードも存在する。これもマルチプレイモードが別に用意されるのではなく,シングルプレイ中にほかのプレイヤーが操作するコルトとやり合うという,ユニークなマルチプレイとなるとのことだ。
これはオフにもできるが,その場合はAIが操作するジュリアナが乱入してくる。ただし今回プレイしたカールスベイの中では,ジュリアナが襲ってくることはなかったので,何かしらの発生条件があるのかもしれない。
前述のようにプレイの時間と範囲が限られていたため,まだ本作の全貌を掴んだとはとても言えないが,謎めいたストーリーはもちろん,「コルトがどこまでパワーアップできるのか」「どんなスラブを入手して暴れられるのか」と気になる部分は非常に多かった。本作の基本はステルスだが,コルトの能力次第では,小細工なしに真っ正面から敵をなぎ倒していく姿も見られるのかもしれない。
未来のコルトやブラックリーフ島の正体に思いを馳せながら,製品版のリリースを楽しみに待ちたい。
「DEATHLOOP」公式サイト
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