インタビュー
「バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」監督&キャストインタビュー。原作愛溢れる映画作品のテーマや撮影エピソードを聞いた
本映画の監督を務めるのは,パニック・ホラー映画「海底47m」などで知られるヨハネス・ロバーツ氏。キャスト陣には,クレア・レッドフィールド役にカヤ・スコデラリオさん,クリス・レッドフィールド役にロビー・アメルさん,レオン・S・ケネディ役にアヴァン・ジョーギアさん,アルバート・ウェスカー役にトム・ホッパーさんなどが名を連ねている。
今回4Gamerは,他媒体との合同で監督&キャスト陣へのメールインタビューをする機会を得た。原作愛溢れる本映画のテーマや撮影エピソード,見どころなどが語られているので,ぜひ読み進めてほしい。
「バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」公式サイト
監督:
ヨハネス・ロバーツ氏
――これまでの「バイオハザード」の映像化作品と比べて,ゲームをプレイした人をかなり意識されているように感じました。やはり,原作ファンを楽しませることがコンセプトのひとつなのでしょうか。
ヨハネス・ロバーツ氏(以下,ヨハネス氏):
いつ,どこで,どのようにゲームをプレイしたかによって,ゲームと人のつながりはそれぞれ違っていて,誰もが自身のイメージを持っているので,みんなを喜ばせるのはとても難しいことです。だからファンを喜ばせようとするといつも緊張します。
今回は,多くの方を喜ばせる最善の方法が,「バイオハザード」の愛好家――25年間愛し続けている人間として,自分自身が観てみたいものを映像化することだと考えました。私の持つ「バイオハザード」への情熱が映画を通して皆さんに届くことを願っています。
――隠し扉を開けるシーンなどは,1作目の「バイオハザード」を彷彿とさせました。
ヨハネス氏:
あのシーンは撮りたかったシーンですね。自分は原作が大好きなので,映画にも多くのゲーム要素を持たせたかった。問題はそれをどのように映画に取り入れるかでした。イースターエッグは必要な要素ですが,ストーリーテリングを完全に支配することは望んでいません。トリッキーなジグソーパズルのようでした。映画がうまくいくためにはストーリーテリングとキャラクターが主要でなくてはなりません。
――簡単なようで難しい質問ですが,映画全体のテーマを聞かせてください。
ヨハネス氏:
それはとても難しい質問です。「過去は葬れない」,または「過去を葬っても戻ってくる」といった感じでしょうか。クレアが過去に立ち向かうために戻ってくる。どのキャラクターも過去の何かに悩まされている。ラクーンシティ自体が秘密に満ちていて,みんなが自分の秘密を明らかにし,過去に向き合っていく。映画へのアプローチとして,“隠された秘密”が1つのテーマになっていました。
――本作からは原作へのリスペクトを強く感じました。監督と「バイオハザード」の出会い,印象的な思い出があれば教えてください。
ヨハネス氏:
ホラージャンルが低迷しているときに,自分は「バイオハザード」と出会いました。それは1990年代で,スティーヴン・キングやジョン・カーペンターのようなヒーローは立ち位置を見つけられず,もはや人気もありませんでした。ホラー映画は,カメラに向かって光がまばたき,悲鳴を上げるだけのものになっていました。
そして「バイオハザード」が登場したのです。そこにはロメロやゾンビなど,愛しているすべてのものが含まれていました。このゲームを通じて,ホラーに対して同じような感情を抱いている人が多くいることを知ることができ,すごくうれしかったですね。当時は自分でプレイせず,映画のようにほかの人が遊ぶのを見ていましたが,「バイオハザード」の背後に見えるホラージャンルへの情熱を強く感じていました。「バイオハザード」は常に自分の身体の一部でした。この映画を作ることができて本当にうれしく思っています。
クレア・レッドフィールド役:
カヤ・スコデラリオさん
――キャスティングに抜擢されたときの心境を聞かせてください。
カヤ・スコデラリオさん(以下,カヤさん):
本当にワクワクしました。私はアクション映画やスタントが本当に好きなので,撮影がとても楽しみでした。バイオハザードに根強いファンがいるのはすばらしいことですし,何世代にもわたってキャラクターを見たいと思ってくれている人がいることに興奮します。大きな責任も伴いますが,そんなキャラクターに命を吹き込めることはすばらしい経験だと感じています。
――バイクで走ったり,銃を撃ったりと,派手なアクションが多いキャラクターですが,撮影時はやはり苦労されましたか。
カヤさん:
一番厳しかったのは気候で,マイナス22度のなかで撮影したこともありました。バイクのシーンはレインタワーとレインマシンを使って撮影に臨んだんですが,非常に寒かったこともあり,水がすぐに凍ってオートバイのスタントをするのがとても危険でした。ただ,映像の仕上がりはすごくよかったので,指示通りにやれてよかったと思いました。
――クレアを演じる上で,もっとも重要だった準備は何になりますか。バイオハザードの世界を理解するためにゲームをプレイしましたか,それとも脚本にこだわりましたか。
カヤさん:
そのどちらもですね。キャラクターが多くの人に愛されている場合,とくに勉強することが重要だと思います。私はゲームの歴史を可能な限り研究し,インターネットの深い場所から,人々がクレアについてどう思っているか,そして彼女に何を期待しているかを調べました。
また,ホラー映画として,監督が作りたかったトーンと雰囲気を確実に理解する必要がありました。そのために必要だったのは肉体的な準備ではなく,観客に恐怖をどのように感じさせるかを勉強することでした。ゲームをプレイするときの恐怖感を再現したかったのです。
――象徴的な赤いジャケットを着た時どのような気分でしたか。
カヤさん:
赤いジャケットは彼女の鎧であり,大切なアイコンなので完ぺきに着こなしたい気持ちが強かったです。撮影中に雨で凍って革が割れたので,何着も使用しました。
――クレアはとても勇敢で強い女性であり,映画史に残る女性キャラクターの一人だと思います。カヤさんがクレアのどんな部分に惹かれるかを教えてください。
カヤさん:
過去を忘れて人生を歩むほうが楽なのに,住人と兄を救うためにラクーンシティへ戻ってくるところです。故郷を救いたいという思いは素敵だと感じます。たとえ危険に晒されることになっても,彼女が一度決断したら,誰も彼女を止めることはできません。
――クリスと接するときと,レオンと会話するときでは演技を使い分けていると感じました。こだわりがあれば聞かせてください。
カヤさん:
兄妹の間にはいつもたくさんの愛とトラウマがあります。ロビーと私の再会は,簡単な安っぽいものでなく,そうした複雑な関係を描きたかったんです。彼らの間にはまだ解決されていない問題がたくさんあるけど,血縁関係もあるし,子供のころに一緒にトラウマを経験しているので絆もあります。
――映画の見どころやお気に入りのシーンがあれば,ネタバレにならない程度で聞かせてください。
カヤさん:
孤児院で撮影するのはとても不気味でした。セットはゲームと同じくらいリアルになるように作成されており,とても怖かったし,細部までとてもよくできていました。ゲームに忠実な雰囲気の中で演じられたことが楽しかったです。
クリス・レッドフィールド役:
ロビー・アメルさん
――ロビーさんと「バイオハザード」の出会いについて聞かせてください。
ロビー・アメルさん(以下,ロビーさん):
年齢的には「バイオハザード」を遊ぶには早すぎるころから遊んでいました。これはビデオゲームに関する自分の一番古い記憶なんですが,真っ暗な家の地下室でバイオハザードを遊んでいたとき,外にいた犬が窓から飛び込んできたんです。これには死ぬほど驚きましたし,その恐ろしさは25年経った今でも忘れられません。
――ロビーさんの見た目が原作のクリスにそっくりで驚きました。髪型や立ち振る舞いなど,原作を意識して研究したのでしょうか。
ロビーさん:
それは幸運にも自分の見た目が,たまたまクリスに似ているからですね(笑)。ただ,もし制作陣がクリスの見た目も重視しているなら,自分がこの役を得られるチャンスはあるんじゃないかって思っていました。衣装合わせで初めてベトナム・フラップジャケットを着たときは「OK,すごくいい感じだ!」って思いましたね。衣装を着た写真は全員分カプコンに送ったんですが,自分の分については「とくに要望なし。クリスそのものだ!」とだけコメントが書いてありました(笑)。
――原作のファンだと伺いましたが,この役が決まったとき,どう感じましたか。
ロビーさん:
キャスティング候補に挙がった時点で脚本が送られてきたんですが,バイオハザード「1」「2」を再現したすばらしい脚本で,すごく興奮したことを覚えています。その後,監督とZoomで会い,1時間ほどゲーム談議に花を咲かせ,さらに監督と本作の構想,雰囲気,カメラワーク,イースターエッグなどについて,さまざまな話をしました。本当に夢のような時間でしたね。
面談が終わるときに監督から「OK,君とぜひこの映画を撮りたい。連絡するよ」という言葉をもらいましたが,「今何が起きたんだろう? Zoomの面談で役を得られた?」って少し呆然としてしまいました。そばにいた妻に「役が決まった」と伝えたら大喜びしてくれましたよ(笑)。
――ロビーさんがクリスを演じるにあたってとくに気を使ったポイントはどこですか。また,監督から何かアドバイスをいただきましたか。
ロビーさん:
今回一番よかったことは監督とキャラクターについて深く話し合えたことです。クリスは一見するとタフで強いスーパーヒーローですが,短所も持ち合わせています。自分はクリスとクレアの子供時代のバックストーリーがすごく好きなんですが,彼は子供時代にしたクレアへの言動を後悔しています。それが原因で彼はうまく交友関係が築けずにいますし,クレアと再会したときにも心を開くことができませんでした。彼の現実的で人間的な部分を表現することが物語の深みにつながりますし,自分が気を使ったポイントになります。
――映画では大量のゾンビと戦うシーンがありました。アクションで苦労した部分があれば聞かせてください。
ロビーさん:
苦労したことは何もありませんでした。10人のゾンビ(スタントマン)と戦闘シーンの撮影に臨みましたが,ほとんどはワンテイクで終わりました。撮影時間は長く,体力的にきつい部分はありましたが,それが大変なんて言えませんよ。とにかく楽しかったです。スタントチームがとにかくすばらしく,彼らがひどい倒れ方や落ち方をしてくれるから,クリスがよりタフで強い男に見えるんです。
――仮の話になりますが,今後映画の続編が制作されるとしたら,どの作品を演じてみたいですか。
ロビーさん:
昨日監督と話していて,あるインタビューで彼は「バイオハザード CODE: Veronica」と「バイオハザード4」を映画化する構想を持っていると語ったそうです。実現したらスケールが一気に広がりますし,本当にすばらしいと思います。自分はクリスを演じることが大好きですし,監督のこともとても信頼しています。彼が次にまた撮影に臨むのであれば喜んで参加したいですね。
――以前の実写映画「バイオハザードIV アフターライフ」ではウェントワース・ミラーさんがクリスを演じていました。今回ロビーさんがクリスを演じる際,違うものにしようと意識しましたか。
ロビーさん:
自分はウェントワースのファンで,彼はすばらしい役者だと思っているし,何よりすばらしい人物です。ただ,今回の映画は以前の映画シリーズとは雰囲気や世界観が異なるため,インスピレーションを得ようとすることはありませんでした。
――今回の映画はバイオハザード「1」「2」をベースに制作されていますが,クリスはほかのシリーズ作品にも多く登場しています。ロビーさんはどのタイトルのクリスがお気に入りですか。
ロビーさん:
「CODE: Veronica」がいいですね。映画化が実現されたらとても楽しいと思います。「バイオハザード ヴィレッジ」のクリスも,ほかの作品と違う雰囲気で悪くありませんが,仮に自分がその役を演じるのなら,もう少し年齢を重ねる必要がありますね。
――ネタバレなしでお気に入りシーンがあれば教えてください。
ロビーさん:
ダイニングホールでのアクションシーンはすごくワイルドな経験で気に入っていますが,そのほかでとくにどのシーンが,というのはありませんね。ただ,お気に入りの瞬間はあって,初めて洋館に足を踏み入れたときはすごく興奮しました。なんといっても小さいころからたくさん遊んだゲームの世界そのものでしたから。
あと,自分が最初に撮影したのは,クリスが自宅でクレアと再会するシーンなんですが,そのセットを見ながら「これは現実なんだ。僕はバイオハザードの映画に出演するという夢を叶えたんだ」と感慨深いものを感じました。これは本当にスペシャルな体験で,あの日のことは一生忘れないでしょう。
――本作は原作に忠実に作られていますが,シリーズのファンだけでなく,原作ゲームを遊んだことがない人でも楽しめるでしょうか。
ロビーさん:
もちろんです。原作でもとくに人気のストーリーですし,この世界へのいいイントロダクションになるはずです。映画を観て気に入ってもらえたら,その先にはゲームなどいろいろな世界が広がっています。この映画が新しいファンを作り出してくれることを願っています。
レオン・S・ケネディ役
アヴァン・ジョーギアさん
アルバート・ウェスカー役
トム・ホッパーさん
――アヴァンさんがレオンを演じるうえで意識したポイントを聞かせてください。
アヴァン・ジョーギアさん(以下,アヴァンさん):
レオンはアイコニックで愛されているキャラクターです。これは自分にとってもそうで,彼を演じることに対し,とても大きな責任を感じました。これまで自分はプレイヤーとして何百時間もレオンに触れてきましたが,今回の撮影に臨むにあたり,あらためて彼の行動を観察することから始めました。そうして見えてきたイメージと,監督が脚本内で表現したレオン像を組み合わせて,キャラクターを作り上げていったんです。
――監督からはどのような指示がありましたか。
アヴァンさん:
重要なことは物語のすべてを理解しているのが監督だということです。ただ,人と協力して何かを作り上げるのは共同作業で,指示やアドバイスというよりはコラボレーションに近いんです。監督と自分はレオンの最悪な初日がどういったものだったかをあらためて考察しました。彼がどのような人物で,どういった心境であの日あそこに現れたのか。
我々はキャラクターに人間性を持たせ,彼らがどのようにして成り立っているのかを作り上げなければなりません。監督はハッキリとおっしゃっていました,「君のキャラクターは道を辿っていくキャラクターだ。最初から完成形のキャラクターを演じるな。みんなが知っているレオンになりきるのは映画の最後だ」と。
――過去に何百時間もプレイしてきたとのことですが,子供の頃のアヴァンさんにとって,「バイオハザード」はどのような存在でしたか。
アヴァンさん:
「バイオハザード」は自分にとって最初にプレイしたホラーゲームでした。1つのジャンルを築き上げたタイトルで,そのような“オリジナル”なゲームは数が少ない。12歳の頃の自分は友達と集まって,夜中にコーヒーを飲んで,興奮状態のなかで「バイオハザード」をプレイしていました。それは友人と共有できたすばらしい体験で,しかもいろいろな世代の人が似たような経験をしたはずです。
――「バイオハザード」シリーズの魅力はどういった部分にあると思いますか。また,IPが何年経っても色褪せないのはなぜだと思いますか。
アヴァンさん:
まず恐怖を体験することが純粋に楽しく,さらにそのような恐ろしい状況で自分の運命をコントロールできることがすばらしいですね。ホラー映画は監督の思うように恐怖のシーンに突入させられますが,ゲームでは常に自分で判断をしないといけない。それこそが「バイオハザード」シリーズの醍醐味であり,世代を超えて愛される魅力なんだと思います。そしてこの先もそれはきっと続いていくでしょう。
――トムさんがウェスカー役に決まった時,どのような心境でしたか。
トム・ホッパーさん(以下,トムさん):
一番初めに感じたのは責任の重さです。自分は「バイオハザード」初期のファンでしたが,今回の仕事に対するリサーチを始めてから「バイオハザード」ブランドがどれほど巨大なものかを知りました。最初のリアクションは「よし,仕事を始めるぞ!」って感じだったんですけどね(笑)。
それからまずゲームをプレイしたり,ビデオを見たりすることを始めました。これは監督に助言を求めたところ,まずはゲームをプレイし,攻略ビデオを見ることだ,と伝えられたからです。お題としては楽でしたね。ただ「バイオハザード」をプレイするだけでいいんですから(笑)。
――ウェスカーのトレードマークとも言えるサングラスですが本作では外されています。表情が見えてしまう分,演技も難しそうです。
トムさん:
表情が見えるから演技が難しいということはなかったです。ゲームにおけるウェスカーは悪役で堅い人物でした。自分はウェスカーの人間性を引き出したいがために「典型的なサングラスを掛けた悪役は演じたくない」と伝え,監督もそれに同意してくれました。サングラスを掛けないことで演技はよりしやすくなりましたね。あとは,彼がなぜ友人を裏切ったのか,なぜそのようなことをしてしまったのか,そういったモラルの部分からキャラクターを組み上げていきました。
――映画の見どころやお気に入りのシーンがあればネタバレにならない程度で聞かせてください。
トムさん:
ゲームでもアイコニックだったシーンで,みんなで洋館に入って目の前に階段があるところですね。あのシーンは特別印象に残っています。トレイラーにも映っているし,ネタバレじゃないですよ(笑)。チームの全員が揃っているのもあって,あの撮影はすごくよかった。
アヴァンさん:
自分にとってはさまざまなさりげない部分が印象に残りました。警察署のロビーにセーブポイントのタイプライターが置いてある。もうそれだけでファン魂がくすぐられました。自分が考えるバイオハザードのイメージとピッタリ合致した瞬間がたまらなかったですね。このシーンはファンが喜んでくれるぞって。
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