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「マフィア コンプリート・エディション」プレイレポート。あの欲望と暴力と裏切りに満ちたマフィア生活が完全リメイクで帰ってきた
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印刷2020/10/12 17:20

プレイレポート

「マフィア コンプリート・エディション」プレイレポート。あの欲望と暴力と裏切りに満ちたマフィア生活が完全リメイクで帰ってきた

 2KとHanger 13は2020年9月25日,クライムアクションゲーム「マフィア コンプリート・エディション」PC / PS4 / Xbox One)を発売した。本作は国内では2003年にリリースされ,その後シリーズ化もされた「マフィア」(原題:Mafia: The City of Lost Heaven)を現代の技術を使い完全リメイクしたものだ。
 現在発売中の「マフィア トリロジーパック」に含まれる一作でもあり,このトリロジーパックを入手すれば,「マフィアII コンプリート・エディション」PC / PS4 / Xbox One「マフィアIII コンプリート・エディション」PC / PS4 / Xbox One)と共に,マフィアシリーズをすべて楽しむことができる。

画像集#001のサムネイル/「マフィア コンプリート・エディション」プレイレポート。あの欲望と暴力と裏切りに満ちたマフィア生活が完全リメイクで帰ってきた

 元々“初代マフィア”は国内ではPC版しか発売されておらず,さらに海外のオリジナル版も一時期はSteamなどでの配信が中止されていたといった状況にあり,その入手性が問題になっていたこともある。その中でも日本語版はプレミアが付くなど,特に触れることが難しかった環境にあり,「マフィアシリーズは知っているが,原点には触れたことがない」というゲーマーは少なくなかったのではなかろうか。何を隠そう,筆者もそのひとりだ。
 今回はコンプリート・エディションのPC版をプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けしたい。多くのゲーマーに支持されたシリーズの原点ながら,国内では“幻の名作”となっていた初代マフィア。17年を経て,今どういう作品として甦ったのだろうか。

「マフィア コンプリート・エディション」公式サイト


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舞台はアメリカの架空の年「ロスト・ヘヴン」。禁酒法時代まっただ中の大都会で,平凡なひとりの男が暴力と裏切りに満ちた暗黒街へと踏み出す


 時は第二次世界大戦が迫る1938年。シカゴとサンフランシスコをモチーフにしたアメリカの架空の都市「ロスト・ヘヴン」のとあるカフェで,ふたりの男が真剣な面持ちで向かい合っていた。ひとりはロスト・ヘヴンを牛耳るマフィア組織,サリエリ・ファミリーの構成員「トーマス・アンジェロ」,通称“トミー”。もうひとりは長年ある事件の捜査を続けている,刑事のノーマン
 周囲を警戒し焦燥を隠しきれないトミーだったが,落ち着いた口調でノーマンに要件を切り出す。「家族を守って欲しい。そのためにボスを破滅させる資料を渡す用意がある」と……。

主人公の元タクシードライバー,トミー(右)と,彼の独白を聞くノーマン刑事(左)。物語はトミーが過去の事件をノーマンに語る形で進む
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左からボスのドン・サリエリ,相棒のポーリーとサム,そして主人公のトミー。元々組織の規模が大きくなかったこともあり,中心人物はまさに“ファミリー”のような仲だ
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 時代はさかのぼり1930年,禁酒法時代まっただ中のロスト・ヘヴン。“タクシー運転手のトミー”はとあるトラブルに巻き込まれていた。銃を突きつけられながら,深夜の街を愛車で暴走するハメになっていたからだ。原因はサリエリ・ファミリーの構成員のポーリーとサム。仕事に失敗した彼らは無理やりトミーのタクシーに乗り込み,逃走の手助けを命令する。

逃走を手助けして多額の報酬を得たトミーだったが,最初はマフィアになるつもりなどなかった。だが一度関わった以上は裏社会に無関係になりきることも出来ず,平凡な日常に別れを告げる
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 何とか追っ手を振り切り,サリエリから報酬をもらうことに成功するトミーだったが,それはサリエリと敵対するマフィアに目をつけられることを意味していた。自分のタクシーをボロボロにされたうえに殺されかけたトミーは,後戻りができないことを理解し,日々の報われない生活に見切りをつけることを決意する。一寸先には裏切りと破滅が待つ,裏社会の本当の恐ろしさを知らないままに。


 さて,改めて本作の特徴を紹介すると,基本システムは三人称視点のクライムアクションだ。プレイヤーは前述のトミーを操り,1930年代のアメリカ合衆国でマフィアとして活動していくことになる。
 舞台となるロスト・ヘヴンはオープンワールドで構成されており,中心部の大都市から郊外の田舎まで,当時の雰囲気を再現して作り込まれている。特に都市部は当時の風俗を反映したファッションの人々や,今でいうクラシックカーが所狭しと動き回り,雰囲気は抜群。カーラジオから流れるオールディーズや,世相を反映したニュースなどサウンド面でも,もちろん手抜きはない。

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新聞には誰もが知る歴史上の有名人の顔も。収集要素には雑誌もあり,当時の雰囲気が垣間見える表紙だ
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 グラフィックスは完全に作り直されているため,都市や人物のモデリングは現行機種のレベルにふさわしいものにアップグレードされているが,その中でも特に力が入っていると感じたのが自動車だ。
 安価な大衆車のような「いかにもレトロで非力」といったものから,現代でも十分通用するような流線型のボディと性能を持つもの,そして記録映画で見るようなレーシングカーなどの多彩なモデルが美しいグラフィックスで再現されており,これだけでも見応えがある。ゲームによっては“無かったもの”にされがちな二輪車だが,本作ではレトロなバイクを自由に乗り回すことができるのも個人的には嬉しいところだ。
 車自体は特殊なタイプを除き,“一回乗る”だけでガレージに登録され,いつでも搭乗できるようになる。また本編では乗れない車両も,ゲームのスタートメニューから「カー・サイクロベディア」を選べば,自由に眺めたりテストドライブも可能だ。レアな車もあるようなので,コンプリートを目指すのも面白いだろう。

車に比べて小回りが効き,狭い場所も楽に通れるのがバイクの強み。ただし衝突には弱いので,カーチェイスには不向きな場合も
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ガレージに登録された車は,無料でいつでも利用可能。とはいえミッションなどに登場する特殊な車は出てこないので,気になる場合はカー・サイクロペディアでチェックしよう。個人的には,車の説明などもあると良かったと思う
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 物語は章立てになっており,順次指定されたミッションをクリアするとインターバルが挟まり,次の章に進む。シリーズでいえば,続編のマフィアIIにかなり近いシステムだ。進行に応じて時代は徐々に進んでいくことになるが,本作は「トミーがノーマン刑事に過去の出来事を告白する」という形式で進むため,たびたび1938年のシーンが挟まる。これがまた,本作のストーリーをグッと説得力があるものにしていると思う。
 その反面,ストーリーやミッションはリニアに展開するため,自由度に関しては今ひとつという印象だ。章が開始された時点でミッションは始まっており,街中にもほとんどアクティビティや立ち寄れる場所もないので,できることは少ない。前述の自動車以外では当時の雑誌が収集要素になっていたり,時代を感じさせるメモ書きや新聞などが各所に設置されているが,現在のボリューム満点なオープンワールド作品と比べると,相当にシンプルと言える。

禁酒法時代なので酒類の販売は禁止されており,それによる警告も出ているのだが,平然と大量の泥酔者がいるのは一種の皮肉だろう。この混乱を利用し,マフィアのような裏社会の組織は大もうけしたと言われる
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 したがって自由にロスト・ヘヴンを回りたいなら,スタートメニューから「フリーライド」を選ぼう。こちらは文字通り,一切ストーリーに関係なく街を出歩けるモードで,拠点の武器庫から好きな装備を持ち出し,ミッションで着用したことがあるコスチュームに着替え,ガレージから好きな車を持ち出せる。
 さらにこちらには,任意で引き受けられるミッションも用意されている。具体的には拠点に用意されたメモを読んで,指定の公衆電話を探しだし,指示されたことをこなすというもの。本編には関係ないおまけ的なミッションだが,クリアすれば新しい車がアンロックされたりと報酬もあったりするので,気軽にプレイしてみるといいだろう。

フリーライドでは自由に服装や武器,ガレージにある車を選んでロスト・ヘヴンを散策して回れる。拠点には謎のミッションメモがあるので,興味があるなら受けてみよう。個人的には「このメッセージは自動的に消滅する」にニヤリとしてしまった
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戦闘はシンプルなカバーアクションながら,オプションが充実してより本編がプレイしやすく。一番の見どころのストーリーは圧巻の出来だ


 ゲーム中に展開されるミッションは,裏社会での活動に合わせて多彩なものが用意されている。銃撃戦やカーチェイスといった定番のものから,尾行や暗殺,ステルス状態での窃盗や果ては臨時でレーサーまでやることになったりと,飽きさせない展開が続く。
 全体のボリュームとしてはサブ的なミッションがほぼないこともあり,かなりテンポ良く進んでしまう印象だが,それゆえにマンネリ感もなく,印象に残るミッションも多い。お金やショップという概念すらないので,管理すべきリソースがなく,展開される物語に集中できるという側面もあるかもしれない。

前半の見どころの一つであるレースシーン。多数のライバルカーが登場する結構本格的な出来で,時代を感じさせるレーシングカーもカッコイイのだ
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 戦闘はカバーアクションありのシューター。物陰に隠れつつ拳銃やショットガンなどで敵を始末していくことになるが,シンプルな分だけ難度は結構歯ごたえがある印象で,無理に身体を出したまま戦っていると,あっという間にライフを削られてしまう。待っていればライフが自動でぐんぐん回復していくようなこともなく,治療には道中に設置された救急箱の回収が必要なため,それなりに慎重な進め方が必要だ。
 とはいえ,やられても直前のチェックポイントからすぐやり直せるので,そこまで神経質にならなくても大丈夫なのだが。

 また難度が自分に合っていないと感じた場合は,オプションから変更が可能だ。これは基本的な戦闘の難しさを調節する項目のほか,警察を交通違反などには反応させなくしたり,敵のマーカー表示のON/OFFを切り換えたりと,結構細かく設定できる。マフィアのオリジナル版はかなりの高難度で知られ,クリアが難しかったといわれているが,リメイクされた本作では時代にあわせた,ユーザーフレンドリーなシステムになっている。
 なお最高難度の「クラシック」は,警察と車の挙動もオリジナル版を元にした設定に固定されるため,腕に自信があるプレイヤーはこれに挑戦するのも面白いだろう。

トミーはスーパーマンではないので,敵が撃ってくるときはしっかり隠れないと,あっという間に瀕死になってしまう。火炎瓶を投げつけてくる嫌な敵は,その前に制圧しておかないと危険だ
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オプションでは戦闘の難度や警察の挙動以外にも,UIの調節など意外と細かく設定できる。あえて色々な表示を消して不便にし,昔の雰囲気を味わうのもありだ
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 以上のようにいろいろと魅力のある本作だが,やはり一番の見どころはそのストーリーと映画顔負けの演出だ。しがないタクシーの運転手だった主人公が,裏社会の魅力にとりつかれ道を踏み外し,その中で成功を掴むものの,最後は破滅へ突き進んでいく。その結末がどうなるかはゲーム開始直後から判明しているが,そこに至る道を知るには実際にトミーの人生を追体験するしかなく,失敗と成功,そして裏切りの連続だったことが徐々に明らかになっていく。
 マフィアのような犯罪組織をテーマにした作品としては奇をてらった展開はないが,オリジナルのストーリーを知らない筆者は,先が気になりついつい予定をオーバーしてプレイしてしまうこともあるほど楽しめた。

 またトミーは元々一般人であったことも関係しているのだろうが,裏社会に属する身としては情にもろく詰めが甘い性格で,肝心なところで冷徹になりきれない妙に人間くさいところが魅力的だ。本編は定められた展開に基づいて進むため,プレイヤーが何かを決定する選択肢はないが,それゆえに本人のキャラクターがぶれることなくしっかりと定まり,より深みのある物語に繋がっていると思う。自由度の低さが結果として,物語に集中できる環境を作っている,とも言えるだろう。

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登場人物は決して多くないが,それだけに印象に残るクセのある奴らばかり。心を許した相手がいつ豹変するのか,常に油断ならない
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筆者も含め,マフィアと言えば「ドラムマガジンのトミーガン」という人も多いことだろう。敵味方の両方の武器として,存分にその存在感をアピールしてくれる
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 前述のように,オープンワールドはあくまで物語を展開させるための装置であり,アクティビティなどのメインと外れた楽しみは少なく,メインミッションも現在の基準から見るとボリューム満点とは言いがたい。今風の満漢全席ような作品を期待すると,肩すかしを食らうと思う。
 また,戦闘などのシステムもモダンな形に改められてはいるが,それ以上の目を引くような珍しい仕組みなどはなく,正直平凡と言ってしまってもいい。字幕の区切りが適切な部分になく,妙に一文が長く読みにくい場面が何度かあったのも,少し気になった。

 だがグラフィックスやオーディオ,そしてムービーシーンは現在の基準でも見劣りする部分はない。オリジナルをベースに完全に作り直されているため,クリアしたときには「一本の映画を最後までプレイした」感覚になった。本作はまさに“トミーの人生を映画のように追体験する”ために作られており,あえて多彩なアクティビティなどは追加されなかったのだろう。結果として,その目論みは成功していると感じる。

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 人により好みが分かれる部分はあると思うが,作品としての完成度は非常に高く,個人的にはかなりお気に入りの一作だ。新たに触れる人はもちろん,ほかのシリーズ作をプレイしたことがあるなら,「マフィアシリーズ」の原点をぜひ多くの人にプレイしてもらいたいと思う。

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「マフィア コンプリート・エディション」公式サイト

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