プレイレポート
宇宙的恐怖×ディストピアSF×ローポリのサバイバルホラー「SIGNALIS」。10月27日の発売が決定した本作のデモ版を紹介
本作は,地球外惑星が開拓されている遠未来を舞台にした,サバイバルホラー系のタイトルだ。本稿では,6月3日にリリースされたデモ版のプレイレポートをお届けしよう。
なおゲーム本編は日本語に対応する予定だが,デモは英語およびドイツ語のみ対応している。
De ekster op de galg
主人公はエルスターという名前の,宇宙船の技術者を担当している女性型レプリカ(簡単に言えばアンドロイド。英字の綴りはReplika)だ。何者かの呼びかけを受けて極低温カプセルから目覚めたエルスターは,乗機のペンネローズ型宇宙船が衛星軌道から惑星上に落着し,異常事態に見舞われていることを知る。
基本的な操作は,ゲームパッドだと左スティックで移動・右スティックで向き指定,キーボード+マウスだと[W/A/S/D] で移動・マウスカーソルで向き指定となっている。ツインスティックシューター的な操作ルールだが,射撃武器を使うときは構えて(Lトリガー/右クリック)・撃つ(Rトリガー/左クリック)といった2段階の操作が必要だ。本作は往年のサバイバルホラーに影響を受けていることが公言されているが,メニュー画面で見られる心電図風の体力表示や,キーアイテムの組み合わせ要素,アイテムを保管するボックスなどから,下敷き的な部分は初期の「バイオハザード」シリーズを踏襲していることが察せられる。
エルスターはパートナーとして紐付けられているパイロットのアリアネ・ヤンを探すのだが,探索する船内には奇怪なクリーチャーが複数存在する。デモで登場する個体は初期状態だと突っ立っているだけだが,視界に入ったり近づいたりすると,悲鳴のような絶叫と共に襲いかかってくる。クリーチャーは割と俊敏なので,交戦する場合は遠距離からの射撃が基本だ。
敵は武器さえあれば倒せるが,銃の弾数は限られているし,何よりSteamストアページに「本作において戦闘は最後の手段であり、限られた攻撃手段、強力な敵という状況を賢く判断し、戦うべきか否かという決断が必要となるでしょう」と書かれている。本作では,スニーキングアクション的な要素が大きいようだ。
道中,ロックされたドアを開けるため,動力炉を調整しなければならないのだが,こういった場面は一種のパズルとなっている。パズルやキャラクターが映らないシーンのグラフィックスは,「MYST」に代表される1990年代の3Dアドベンチャーゲームを彷彿とさせるテイストだ。
エルスターは船内にアリアネがいないことを確認すると,気密服を装備して船外の探索へと向かう。広大な雪原を進むうち発見するのが,地面に穿たれた不可解な穴だ。
穴の底に降り立ったエルスターは,さらに横穴を発見して潜り込む。その先にあったのは,古めかしい通信機が設置された小部屋だ。ここでエルスターが“黄衣ノ王”という書籍を手にすると,通信機が勝手に動き出し,エルスターは幻覚に苛まれて機能停止してしまう。本作はコズミックホラーの要素を汲んでいることが謳われているが,恐らく邪神・ハスターが関係しているのだろう(※)。
※詳細は長くなるので掻い摘んで説明すると,ロバート・W・チェンバースが短編集「The King in Yellow」(邦題:黄衣の王)でハスターの名前を用い,オーガスト・ダーレスがハワード・P・ラヴクラフトの著作を中心としたクトゥルフ神話体系を整理する中でハスターを旧支配者のひとつとしたことから,TRPG「Call of Cthulhu」で“黄衣の王はハスターの化身”とまとめられて,それが定着している。
One for Sorrow
ここまでがデモ版で体験できる内容だ。エルスターの当面の目的はアリアネを探すことだが,Steamストアページの紹介文には「冷戦時代のユーラシア大陸をレトロSFの舞台とした」や「ディストピア世界」などとあり,陰謀の気配が感じられるので,単なる遭難者の救出では終わらないだろう。三つ編みの女性や,PVで確認できる男性型レプリカがどのように関わってくるのかも気になるところだ。
近年,ローポリやピクセルアートのホラーゲームは散見されるが,低解像度の世界が恐怖感を強調することに“頼った”タイトルが多く,雰囲気作りに“活用した”と言えるものは少ない。その点,「SIGNALIS」はローポリやピクセルアートの持ち味をうまく吸収し,個性の発揮に成功していると感じられる。筆者はグチャドロ系SFホラーやサイバーパンクもの,クトゥルフ神話作品,レトロ風デジタルアートが好きなので,それらを含む本作に相当なバイアスがかかった目線を送っていることは否めないが(デモ版の雰囲気だけでも最高だ。エルスターもカッコカワイイし!),それを差し引いてもサバイバルホラーのファンなら要注目のタイトルだと言えるだろう。
本作の製作期間は,最初期のドキュメントから数えると8年以上におよぶという。それだけの熱意が込められたゲームがどのような仕上がりになっているのか,製品版に期待したい。
Today, it has been 8 years (2.923 days) since me and @antihelios_ wrote the first design documents for the game we'd soon call #SIGNALIS.
— Yuri Stern | SIGNALIS (@LastStarfarer) June 7, 2022
As we prepare for the final stretch to a release,
thank you all for your kind words, your wonderful artwork and your support on this journey. pic.twitter.com/pytZet9lTg
「SIGNALIS」公式サイト
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