Paradoxのファンイベント「PDXCON2019」が開催。SLG / ストラテジーファンにはたまらない空気に包まれたイベントの模様をレポート

　「Europa Universalis」シリーズや「Hearts of Iron」シリーズといった硬派なSLG / ストラテジー作品をリリースし，“パラドゲー”の呼び名でおなじみのParadox Interactive。同社が主催するイベント「PDXCON2019」が，2019年10月19日と20日（※）にドイツのベルリンにて開催された。

　PDXCONは，ゲーム業界関係者向けプレビューイベントとして始まり，2016年から一般参加者を招いて行われるようになった同社のゲームタイトルのファンイベントだ。4Gamerは，前身となる2013年のメディア向けイベントと，昨年（2018年）行われたPDXCON2018（関連記事1，2）に続いてPDXCON2019に参加してきたので，会場の模様を中心にレポートしよう。

※18日に関係者向けプレビューイベントを開催

PDXCON2019 BERLIN公式サイト

　会場となったのは，ベルリン南東部のケーペニックにあるFUNKHAUSという巨大な複合施設だ。1950年代に旧東ドイツのラジオ放送施設として建設されたが，ベルリンの壁崩壊後にはその音響の良さが注目され，有名アーティストのライブやコンサート，アート系の展示会，今回のPDXCONのようなイベントなどの会場として使用されている。
　ベルリン東部は，壁の崩壊後に廃墟同然となったビルや倉庫といった建物がクラブやライブハウスとして再利用され，アートや音楽といったインディペンデント・カルチャーが栄えた地域だ。FUNKHAUSはまさにそれを感じさせる施設で，建物内にはまるでクラブやアートミュージアムかのような風景が広がっていた。

エントランスはコンテナを利用しており，建物の入り口は装飾のない倉庫にのような武骨で大きな扉だ
建物は，ベルリン市内を流れるシュプレー川沿いにあり，カフェスペースでビールやお茶を買って優雅に風景を眺めることもできた

　建物は巨大な倉庫のような構造で，メインのフロアはとにかく広い。「Crusader Kings III」（PC / Xbox One）「Surviving the Aftermath」（PC / Xbox One）という新作2タイトルや，既存タイトルの新展開が発表された「PDXCON Announcement Show」（関連記事）が行われたメインステージのほか，ほぼすべての出展タイトルのブースが1フロアに収まっていた。

会場内は暗めで，ブルーやパープル系の照明によってクラブやバーのようにオシャレな雰囲気

　PDXCON2019で初公開となり，ブースにも多くの人が駆けつけていたのが，中世ヨーロッパを舞台とした「Crusader Kings」シリーズ最新作となる「Crusader Kings III」だ。国王や貴族となったプレイヤーが自身の一族を繁栄させてその血脈を後世へとつなぎ，歴史を歩む「Crusader Kings」のおよそ7年振りとなる新作は，当主や一族の考え方や方針をツリー状の「lifestyle」で管理できるようだ。また，ゲーム内のアドバイスやガイドは細かくそのテキスト量も膨大で，こちらも歴史好きにはたまらないものがあった。

王様気分を味わえる撮影スポットも

　Paradox Interactiveを代表するゲームシリーズの1つである，第二次世界大戦をテーマとしたストラテジー「Hearts of Iron」。その最新作である「Hearts of Iron IV」は，2016年の発売以降も多くのDLCが販売され，多くのストラテジーファンの注目を浴びている。
　今回も，「レジスタンス」をテーマに，自由フランスとヴィシー政権という新勢力やスペイン内戦に関するキャンペーン，エージェントを育成して特殊工作に送り出すスパイ要素などを追加する最新拡張パック「Hearts of Iron IV: La Résistance」が発表され，ブースは多くの人でにぎわっていた。


　初となる拡張パック「Revelations」が発表となった，ターン制のSFストラテジー「Age of Wonders: Planetfall」（PC / PS4 / Xbox One）。ブースの試遊台は日本語でもプレイ可能で，戦術性の高いターン制バトルや奥深い領土経営が体験できた。


　2018年4月に発売された，同名のボードゲーム（ウォー・シミュレーション）を題材としたターン制ロボットストラテジー「BATTLETECH」のブースでは，発表になったばかりの拡張パック「BATTLETECH: Heavy Metal」から新たなバトルメックと武器システムが体験できる試遊台が出展。使用感を確かめるプレイヤーが集まっていた。


　別室のようにベールで囲われていたのが，バンパイアをテーマにしたアクションRPG「Vampire_ The Masquerade - Bloodlines 2」（PC / PS4 / Xbox One）と，禁酒法時代のシカゴの裏社会を舞台としたストラテジー新作「Empire of Sin」（PC / PS4 / Switch / Xbox One）という，発売前の2タイトルのブースだ。
　「Bloodlines 2」は，初披露となるイントロダクションのムービーとキーアートをイメージした撮影スポット，「Empire of Sin」はgamescom 2019のバージョンと同内容らしきPC版のチュートリアル部分の試遊などが出展されていた。

Empire of Sin

Bloodlines 2

　その隣にあったSFストラテジー「Stellaris」（PC / PS4 / Xbox One）のブースでは，これも発表されたばかりの拡張パック「Federations」と種族パック「Lithoids」を，別々の試遊台で先行体験できた。


　なお，「Bloodlines 2」と「Stellaris」（PS4版）は，DMM GAMESから日本語版のリリースが予定されている。どちらの作品も現地でインタビュー（関連記事1，2）を行ってきたので，気になる人はチェックしてほしい。


　今回のイベントで個人的に一番興味深かったタイトルが，PC版とXbox One版が試遊出展されていた「Surviving the Aftermath」だった。
　本作は，文明がすべて崩壊した地球を舞台に，生存者たちに指示を出し，周辺を探索して資材を集めて施設を建築したり，井戸や畑を作って水と食料を確保したりしながら，コロニーを大きくしていく最新ストラテジーだ。“最悪の状況は抜け出したか。それとも未だ続いているか”という崩壊後の世界の状況や生存者数といった調整で難度を細かく設定でき，また，次にやるべきことがメッセージで表示されるので間口は広い印象だ。


　間口が広い一方で，一手間違えると資材が足りなくなってしまうというシビアさもある。試しに難度を最低レベルに調整して挑んだところ，居住スペース，水と食料の確保，集めた資材を加工する施設の建築となかなか順調に進むも，急激な気温上昇により芋畑が炎上して食糧難に陥ったり，隕石で施設が破壊され，資材不足で復興に時間がかかったりと，低難度でもしっかりと“世界の終わりの過酷さ”が体験できた。
　本作は2020年後半の発売予定で，試遊出展していたPC，Xbox One以外にもコンシューマ機版の展開も予定されているとのこと。また，PC版はEpic Games Storeで，Xbox One版はXbox Game Previewでアーリーアクセス版が配信中だ。


　SLG / ストラテジーゲーム，しかもパラドゲーのイベントと聞いて硬派で渋い印象を受ける人は多いと思うが，PDXCONは参加者おのおのがじっくりゲームを楽しんでいる，とてもリラックスした雰囲気のイベントだった。
　スタッフに説明を受けながら遊んでいる人もいれば，友人同士でドリンク片手に談笑しながらゲームをプレイしている人もいて，小学生のころに友人とああだこうだ言いながら遊んだ光栄（現コーエーテクモゲームス）のSFC版「三國志III」がSLG原体験である筆者は，そんな参加者たちを見て懐かしく，なんだか嬉しい気持ちになった。SLG / ストラテジーが好きな人なら，海を渡ってでも雰囲気を味わう価値があるイベントだ。

「『Crusader Kings』の新作がきたし，次は……」と新作への期待が高まる「Europa Universalis」。会場には，2013年に発売された現時点での最新作「Europa Universalis IV」が試遊出展されていた。今年4月に発売された「Imperator: Rome」のブースも
友人と会話しながら，深く腰掛けながら……おのおののスタイルでゲームを楽しむ参加者たち

1階のコミュニケーションルームや2階の専用スペースでは，「Cities:Skylines」や「Crusader Kings」といったパラドゲーに関連するボードゲームが試遊できた

物販や参加者向けプレゼントの受け取りコーナーは常に長い列ができていた
ゲームプレイやトーナメントの配信も

PDXCON2019 BERLIN公式サイト