プレイレポート
「侍道」らしい“ノリ”は健在。シリーズの新たな挑戦となった和風ハクスラ「侍道外伝 KATANAKAMI」を紹介
なお本作はCEROレーティングZ(18歳以上)なので,購入の際などには気をつけてほしい。
「侍道外伝 KATANAKAMI」公式サイト
本作は,2002年に発売されたPS2用和風アクション「侍」から続く「侍道」シリーズの外伝作品だ。スピンオフ作品としては,2005年発売「サムライウエスタン 活劇侍道」(PS2)以来15年振り。シリーズ全体では2011年(※)発売のナンバリング最新作「侍道4」(PS3)からおよそ9年振りと,外伝とはいえシリーズファンが待ち望んだであろう久しぶりの「侍道」新作となる。
※完全版となる「侍道4 Plus」が2012年に,海外版をベースにしたPC(Steam)版が2015年にそれぞれ発売されている
制作の経緯については掲載済みのインタビュー(関連記事)に詳しいが,ここでも軽く触れておきたい。本作はもともと,ダウンロード専売の気軽に遊べるタイトルとして制作が始まった,和風の世界観を持った見下ろし型のハック&スラッシュだった。
それが制作を進めるうえでタイトル名が「侍道外伝」となり,プレイヤーが3つの勢力の力関係に関与するゲーム性や“チャンバラ”アクション,そして独特のノリといった「侍道」らしさが込められた作品になったという。
なぜ「侍道」の外伝だったのか。アクワイアのキーパーソンが語る,「侍道外伝 KATANAKAMI」誕生の経緯と“和風ハクスラ”制作に懸ける思い
2020年2月20日に発売予定の「侍道外伝 KATANAKAMI」は,スパイク・チュンソフトとアクワイアが展開する「侍道」シリーズ久々の新作となるスピンオフ作品だ。幻の「侍道5」構想ののちに生まれた“和風ハクスラ”である本作の開発経緯や,制作に懸けた思いをアクワイアの遠藤琢磨氏と齋藤哲志氏に聞いた。
シリーズ久々の作品は“和風ハクスラ”
大きく異なるゲーム性だが“ノリ”は変わらず
物語は,シリーズ第1作「侍」とそのリメイク作「侍道ポータブル」(PSP)の少し前の,政府による廃刀令の発布や社会の近代化により,侍たちの居場所は無くなりつつある明治初期。舞台も1作目と同じく,「宿場町」「赤玉党」「黒生家」という3勢力がにらみ合う六骨峠(ろっこつとうげ)だ。
黒生家の手下で,髪型と刺青が特徴の“坪八”こと坪内八郎。赤玉党に身を置く,赤いチャイナドレスがセクシーなイギリス人のチェルシー。武士道に傾倒する宿場町の“アフロ侍”ドナルド・ドナテロウズ。そして本作の重要人物である刀鍛冶の堂島軍二と,1作目のプレイヤーなら懐かしい顔ぶれが多数登場する。
主人公(プレイヤー)は,そんな六骨峠にやってきた流れ者の侍だ。ちょうどそこで,堂島の娘である七海が,父の借金のカタとして連れ去られるところを目撃する。
侍は,失意にある堂島に「その返済,手伝わせていただこう」と声を掛け,娘を取り戻すために商売と借金返済の手助けをすることになる。旅路で偶然困った人に出会い,助けようとするなど,「何てお人好しなのだろう」と好感度が上がりかけるが,実は堂島の娘を嫁にもらおうとしているというちゃっかりした部分もあり,時代劇の王道といえる始まりながら一筋縄ではいかない気配も感じられる。
堂島の借金返済を手助けする方法はなにか。それは「辞界」と呼ばれる魑魅魍魎が渦巻く異世界(ダンジョン)に潜り,現世で商売するための刀剣や材料を集め,それらで商売するというものである。
本作には昼夜の概念があり,夜は怪しく光る一本松から辞界に入って刀と材料を集め,昼になると拾った刀や材料で作ったもので商いをするというサイクルでゲームは進んでいく。
辞界は,入るたびに構造が変わる階層構造の自動生成ダンジョンとなっている。5層ごとに地上への出口が現れるが,そこには大量の化け物が待ち構える「祟リ場」や強力なボスが出現するので,気の抜けない探索が楽しめるだろう。
侍には,レベルにあたる「段位」,「体力」と「活力」という2つのパラメータがある。体力はいわゆるHPで,ゲージがゼロになると強制的に現世に戻され,そのとき持っていたお金やアイテム,刀などすべての所持品を失う。
活力は,攻撃や回避といったアクションや体力の自動回復の際にゲージが消費し,ゼロの状態が続くとプレイヤーの命を狙う「死神」が出現。うまく逃げ切るかアイテムなどで活力を回復させるかしないと,付け狙われたうえでとどめを刺されてしまう。レベルアップ時には全回復するので,これ含めて,体力と活力に気を配りながら深い階層を目指そう。
敵との戦いはアクション要素がかなり強く,さらに「侍道」シリーズらしい敵との駆け引きも楽しめるものとなっている。
剣術アクションには,刀で斬りつける「攻め手」,攻撃をガードやステップで防ぐ「受け手」,蹴ったり投げたりして敵のガードを崩す「崩し手」という3パターンがあり,それらが三すくみのような関係となっている。単独の雑魚敵相手にはそこまで気を遣うこともないが,強敵との戦いや大勢の敵を相手にする際は,その攻防のひとつひとつに重みが感じられるだろう。
また侍には抜刀と納刀の2つの状態がある。一見,攻撃に転じにくい納刀に比べ,すぐに攻撃を繰り出せる状態である抜刀の方が有利に見えるかもしれないが,納刀状態からの立ち回りこそが剣術アクションのキモ。しばらく納刀を続けると「抜符(ばふ)」の発動によって刀の威力が強化され,さらに抜刀時に広範囲に強力な一撃を与える「抜無(ばむ)」が使用できるのだ。
納刀時には体力が自動回復するメリットもあるので,探索時は敵の動きに気を付けつつ,なるべく刀を納めておいたほうがよいだろう。
装備する刀によって変化する「構え」も,剣術アクションの重要な要素だ。敵から受けるダメージを減少させる「中段の構え」や閃(クリティカル)の発生率が上がる「脇の構え」など,全部で9種類ある構えの特徴もさまざま。構えだけではなくアクションも変化し,それぞれに設定された刀の熟練度「刀級」が上がることで付加効果も発生する。
100種類を超える刀はそれぞれ使える技も異なるので,たくさん集めては斬り心地を試し,お気に入りの刀を見つけるといいだろう。敵のタイプに合わせて構えや刀を使い分けてもいいし,特定の種類をひたすら極めるのもアリだろう。それはプレイヤーが目指す“侍像”次第だ。
強力かつ爽快さを味わえるのが,「極見(きわみ)」と「刀刻(かたなたいむ)」という2つの特殊なアクションだろう。「極見」は,敵が攻撃してきた際にタイミングよくガードや回避を決めると「極」という文字が表示され,攻撃ボタンを押すと発生する,いわゆる「パリィ」ののちに繰り出される強力な反撃行動だ。
「極見」で敵を倒したときにほかの敵がいれば,タイミングよく攻撃ボタンを入力することで続けてほかの敵を攻撃する「連続極見」が使用できる。
「刀刻」は,敵を倒すと出現する謎の発光体「おうぶ」を入手し,「おうぶ溜(げーじ)」を溜めることで使える技だ。発動中は,活力や刀の耐久度が減少しない,移動速度が上昇する,敵の攻撃にのけぞらないといった強化状態になる。おうぶ溜は3段階あり,刀刻の効果が最大となる3段階目まで溜めれば,構えによって異なる必殺技「奥義」が使えるので,祟リ場での戦闘やボスとの戦いに活かそう。
いったん辞界を出ると段位は1に戻るが,刀級は引き継がれる。何度もダンジョンに挑んで強力な刀を手に入れ,そしてプレイヤーの腕前が上がることで,より深いところへと進めるようになるだろう。
探索後はリザルトも表示される。記録更新を目指そう |
深い階層に進むごとに,ストーリーも進展していく |
辞界から無事生還したら,大量に入手した刀で商売をしよう。ゲームを進めていくと,勢力争いを繰り広げている宿場町,赤玉党,黒生家の3勢力から堂島の店に注文が届くようになる。それらの注文に応じた刀を用意して発送し,報酬を得るのである。
注文の刀が不足している場合は,辞界で集めた材料を堂島に渡して刀を作ってもらおう。方針を設定すればオートで製作してくれるが,自身が使う刀の強化用に残しておきたい素材まで使われてしまうこともあるので,序盤は注文に合わせて手動で指示を出したほうがいい。
注文内容は,鍛冶屋に対する評価を表す「満足度」や峠の情勢を表す「緊張度」によって変化する。各勢力の満足度が上がると,鍛冶屋のそばに「出店」が開店。宿場町は道具,赤玉党は装飾品や衣装をそれぞれ販売し,黒生家は用心棒の仲介,刀やアイテムの所持数と保管数を拡張してくれる。
緊張度が高まると「抗争状態」となり,峠のあちこちで小競り合いが勃発。こうなると刀の注文も増え,さらに質もこだわらず「どんどん持ってこい!」となるのか検品も甘くなり“儲けどき”となるのだ。
今回のプレイでは赤玉党と宿場町との取引を優先して行ったため,追い込まれた黒生家のほかの勢力との緊張度が上昇。一触即発の構えを見せるようになった。そして抗争が始まり六骨峠は血で赤く染まるように……。
抗争が始まると主人公が戦いに巻き込まれることもある。自身が辻斬りを行い,各勢力の戦力を“コントロール”することも可能だ |
出店の店員同士の戦闘まで発生する。その間は買い物ができない |
なんだか,1人の娘を取り戻すためにしてはその犠牲がとんでもないことになっている気がしないでもないが,ともあれこの,睨み合う各勢力に刀を売り,さらに煽って商機を自らが演出して儲けたお金を借金返済に充てるという,その名も「戦が起これば鍛冶屋が儲かるシステム」が本作の特徴だ。“死の商人”的な要素も,ブラックジョークが効いた「侍道」らしさを感じられるポイントだろう。
発売前なのでオンライン要素は確かめられなかったが,「新・いま,斬りにゆきます」というシステムが搭載されているという。これは「侍道4」のシステムを進化させたもので,ほかのプレイヤーがリアルタイムで操作する同期型と,AIが操作する非同期型のいずれかとランダムでつながり,協力も裏切りも自由という緊張感あるマルチプレイが楽しめるとのこと。こちらも期待が高まるところだ。
本作は,一見これまでの作品とは見た目もゲームシステムも大きく異なるが,実際にプレイしてみると,隙あらば多彩な遊びとネタの要素を入れこんでくるところや独特のノリから「侍道」シリーズらしさが感じられた。
気付けば10時間以上プレイしていたが,まだまだ「底知れない作品」という印象を拭いきれない。シリーズファンはもちろん,“和風ハクスラ”に興味を持った人はプレイしてみていかがだろうか。
「侍道外伝 KATANAKAMI」公式サイト
- 関連タイトル:
侍道外伝 KATANAKAMI
- 関連タイトル:
侍道外伝 KATANAKAMI
- 関連タイトル:
侍道外伝 KATANAKAMI
- この記事のURL:
キーワード
(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd.All Rights Reserved.
(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd.All Rights Reserved.
(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd.All Rights Reserved.