インタビュー
「三國志14 パワーアップキット」プロデューサーインタビュー。諸外国や異民族の登場でより戦略的なプレイが可能に
そんな今回のパワーアップキットについて,プロデューサーの越後谷和広氏に聞いた。
長期の取り組みが評価された三國志14
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,今年1月に発売された「三國志14」の反響についてお願いします。
想定した販売数を出せただけでなく,発売から時間が経った現在もご購入いただけています。ダウンロードで手軽に遊べるSteamで展開したのがプラスになっていますね。
シリーズ初の試みとなるシーズンパスについても,弊社としては長期間となる8か月にわたって展開してきました。これにより,サポートを続けているという安心感についても,評価をいただけています。
4Gamer:
三國志14は,原点回帰としてのヘックス制や「色塗り」で土地を奪い合うシステムを盛り込みましたが,そちらはいかがでしたか?
越後谷氏:
現在でこそ好評ですが,発売前は賛否両論でした。皆さんはRTS的なゲームに慣れておられましたし,「今更ヘックスなの?」というお声もありました。ただ,我々はヘックスでもっと面白いことができると考えていましたから,“最新のシステムにおけるヘックス”を念頭に置いて開発していました。
色塗りについては,私自身が初代「三國志」のヘビーユーザーだったことからテーマとしています。あの頃はよく孫堅でプレイしていたんですが,長沙から一気に空白地を塗っていくのがすごく楽しかったんです。ここに兵站の概念をはじめとしたスタッフたちによるアイデアが盛り込まれ,現在の形になりました。
4Gamer:
「三國志14」はChinaJoy 2019で中国メディア向けプレゼンテーションを行うなど,アジア展開にも力を入れていた印象ですが,海外の反応はどうだったのでしょう。
越後谷氏:
中国では日本と違った思い入れがあるという印象です。現在の中国では正史に注目が集まっているようで,これまである種の悪人とされてきた司馬懿を再評価する「三国志〜司馬懿 軍師連盟〜」のようなドラマも作られていますし。
能力値や個性についてお褒めいただくことは多いですが,一方で武将たちの服装や鎧という文化的な面についてのご指摘もあったりします。要するに,「三國志」の武将たちは派手な服装をしているけど,そうじゃないだろうということですね。
あとは,「地元の地形が違う」「ウチの近くにあるあの城が収録されていない」といったご当地的なご意見も多かったです。
4Gamer:
地元の地形(笑)。「信長の野望」で似たような話を聞いたことがありますが,どこの国のゲーマーも一緒ですね。
今作のシナリオコンテストでは,日本,アジア,欧米から約1000件の応募があったそうですが,国ごとの特色はありましたか?
越後谷氏:
そこは明確に違っていました。日本やアジアからは,英雄たちが集結する仮想シナリオの応募が多かったのですが,欧米からの応募は歴史のIFを描くケースが多かったんです。
4Gamer:
欧米の受賞作「河北の雄・公孫瓚」は,公孫瓚が易京の戦いに勝つという渋い着眼点でしたね。
越後谷氏:
欧米には「三国志」を歴史として捉えている濃いファンの方がいらっしゃるイメージがありますね。
ゲームを変化させるのがシーズンパス,拡張するのがパワーアップキット
4Gamer:
では本題に入って「三國志14 パワーアップキット」についてお話をうかがえればと思います。
「三國志14」はシーズンパスを展開してきて,その中にはこれまでのシリーズのパワーアップキットにあった「史実武将編集」や「勢力編集」も入っていました。そこからさらにパワーアップキットが登場することになりますので,まずは「三國志14」の展開について,どういった形で行っていくのか整理させてください。
越後谷氏:
シーズンパスは既存の「三國志14」の仕様をいじらずにバリエーションを豊かにするものとして位置付けています。料理に例えると“材料は同じで,味付けを変えていく”ようなものです。
一方,今回のパワーアップキットは,これまでになかった要素をプラスするアドオンとして切り分けていて,シーズンパスとは役割が異なります。後ほどお話しする「諸外国」「異民族」「地の利」など,ゲームを大きく変える新要素が追加されるんです。
4Gamer:
「史実武将編集」や「勢力編集」は,あくまでバリエーションというわけですね。切り分けたということは,シーズンパスはシーズンパスで,今後も続いていくんですか?
越後谷氏:
はい。シーズンパスは第2弾を準備しており,こちらはパワーアップキットの有無に関わらずご利用いただけます。一部パワーアップキットに関する要素も含まれるので,その部分を除いて,ということにはなりますが。
4Gamer:
シーズンパスとパワーアップキットで切り分けて展開することになったのは,なぜなのでしょうか。
越後谷氏:
既存データの調整と新要素の追加を同時に行うと,目指すべきものがブレてしまい,ゲームのためにならないと判断しました。これまでのシリーズの流れがあるので,分かりにくいかもしれませんが,ゲームを変化させるのがシーズンパス,拡張するのがパワーアップキットとお考えください。
州ごとに用意された「地の利」の奪い合い
4Gamer:
では,パワーアップキットで追加される新要素について教えてください。土地の奪い合い(マップの色塗り)を主軸にしたシステムに手は入るのでしょうか?
越後谷氏:
パワーアップキットでは「地の利」という新要素によって,色塗りがより戦略的ものになります。
4Gamer:
「地の利」とはどういうものなのでしょう?
越後谷氏:
州ごとに設定された特殊効果のようなものです。例えば「荊州」なら武将たちの経験値が溜まりやすくなるといったように,すべての州で何らかの効果が設定されていて,州にある都市を指定数保持していると,その効果を得られます。
これまでも,どのように勢力を広げていくかが戦略の要となっていましたが,1つ1つの州が持つ「地の利」を意識する必要が強くなるので,プレイヤーの戦略も州の制覇を重視するようになっていくのではないでしょうか。
4Gamer:
どの「地の利」を優先したい,みたいなプレイスタイルの違いも生まれそうですね。
越後谷氏:
AIも「地の利」を得るために動くので,敵勢力の色塗りを妨害するために派兵するようなことも起こると思います。どういう戦略でどこの「地の利」から奪っていくのか,また敵の「地の利」をどう解除していくか,といった思考が大事になってくるでしょう。
4Gamer:
では続いて,諸外国との交易についてお聞きします。交易では何を手に入れられるのでしょうか。
越後谷氏:
いろいろな文化,技術を教えてもらえます。諸外国には「大秦(ローマ)」「貴霜(クシャーナ。中央アジアから北インドの王朝。仏教美術で知られる)」「安息(パルティア。古代イランの王朝。ローマと激しく争った)」「天竺(インド)」の4つが登場します。彼らとの交易を経て,新戦法などが使えるようになるといった感じです。
4Gamer:
諸外国との関係は,どのようにして深めていくのでしょうか。
越後谷氏:
交易には「使節団」を送る必要がありますが,ここで外交を得意とする文官が重要になります。もちろん,パワーアップキットで追加される新たな「個性」の中には,外国との友好関係が深まりやすくなるものもあるので,そうした武将も外交で活躍できるでしょう。
諸外国とコンタクトするには,そのための「地の利」を持つ州を手に入れる必要があります。例えば,「交州」は南海交易で栄えた土地なので,天竺と交易できる「地の利」があるといった感じですね。どの諸外国との交易を目指すかで,手に入れるべき州も変わります。
4Gamer:
となると,敵勢力も手に入れた州によっては,外国と交易するんですか?
越後谷氏:
もちろんです。たとえば交州を放っておくと,どこかの勢力がこれを手に入れて天竺と交易します。そして,戦争で象兵が出てくるようなことになるかもしれません。
窓口となる州の中では,とくに「洛陽」が大秦と交易できるので,各勢力が奪い合うことになるでしょうね。
4Gamer:
洛陽を奪い合うというのも「三国志」っぽいですね。
強大な「異民族」と戦うのか,友好を結ぶのか
4Gamer:
「異民族」について教えてください。異民族という要素自体は「三國志IX」や「三國志12」でも登場しましたが,今回はどうなるのでしょう?
越後谷氏:
今作では「烏桓」「鮮卑」「羌」「山越」「南蛮」の5つが,中華を脅かした強力な勢力ということで登場します。「三国志」の異民族といえば匈奴も有名ですが,この時期はかなり弱体化していたので外れています。
異民族は,外交で交渉を行う相手のひとつでもあり,うまくいけば自軍の戦力を強化できるんです。
4Gamer:
諸外国とはどう違うんですか?
越後谷氏:
異民族は僻地に都市を持っており,各勢力を襲撃します。とはいえ,自国の勢力を広げる色塗りをしてくるわけではありません。異民族に攻められた土地は,塗った色が消えて無色に戻ってしまうんです。
4Gamer:
色を塗るのではなく,消していくんですか。彼らを倒さないと中国統一にはならないんですか?
越後谷氏:
いえ,倒さなくても統一は可能です。彼らに対しての選択肢は2つで,“力で叩きのめす”か外交で仲良くして“不可侵状態を保つ”ことになります。ただし,バランス調整はこれからですが,現時点ではかなり強いので,倒すなら相当な準備が必要です。
4Gamer:
「三国志」ものの小説やマンガを読んでいると,異民族たちは中国のパワーバランスを崩すほどの存在に思えますが,そのとおりの戦力を持っていると。外交で仲良くできると,やはり力を借りられるんでしょうか?
越後谷氏:
はい,その予定で鋭意制作中です。今までのシリーズにはない協力が得られますよ。ただ,異民族は基本的に強いのですが,「知力」が低いので計略や状態異常には弱いんです(笑)。
“南蛮一の知恵者”とされる朶思大王の知力が70で,異民族の武将の知力はこれより低くなっています。
4Gamer:
横山光輝氏のマンガだと,毒の泉を使って孔明を苦しめ,宴会で女兵士の踊りに見とれているうちに捕まった武将でしたっけ。「三國志IV」では知力31とか,とんでもない値だった記憶があります。
異民族とはどうやってコンタクトを取ればいいのでしょう? ほかの勢力よりも多く貢ぎ物を差し出すことで歓心を買うとかでしょうか。
越後谷氏:
「諸外国」との交易と同様,コンタクトできる「地の利」を持つ州を手に入れなければなりません。羌は涼州,烏桓は幽州というように,必要な州は異なります。
4Gamer:
曹操や馬超といった武将は異民族とのコネクションを活用して勢力を増していましたが,こうした部分も再現されていますか?
越後谷氏:
はい。ゲーム開始時点では,勢力ごとに「異民族」との外交関係が決められており,例えば潼関の戦い時点だと曹操の勢力は烏桓,馬超の勢力は羌との関係が最初から良好だったりします。
短時間で遊べる新モード「戦記制覇」が登場
4Gamer:
「地の利」「諸外国」「異民族」と,かなり戦略や遊び方が変わってきそうですね。パワーアップキットを買った場合,「三國志14」やシーズンパスに収録されていたシナリオを,新要素が入った状態で改めて遊べるんですよね?
越後谷氏:
もちろんです。初めて遊ばれた時とはプレイ感も変わると思いますね。
例えば,今年3月に配信された追加シナリオ「潼関の戦い」では馬超がフォーカスされています。パワーアップキット導入後に改めて遊んでいただくと,「異民族」の要素が追加されていて,馬超は羌との関係が良好な状態でスタートしますから,戦略も変化してくるはずです。
また,ほかのシナリオですと,呉は山越との関係が悪いので,北上に苦労することになるでしょう。蜀でプレイする際は,孔明のように南蛮をしっかり平定してからでないと,ほかの地方へ進出する気にはなれないと思います。
4Gamer:
「三国志」関連の作品では異民族の脅威に頭を悩ませる武将の姿が描かれますが,彼らの気持ちが分かるわけですね。
越後谷氏:
そうですね。当時の時代背景がよりしっかりと描かれることになります。
ただ,我々が目指しているのは“ロマンのあるシミュレーション”ですから,ただ時代背景に合わせて複雑化するのではなく,より楽しいプレイができる要素として,用意しています。
シナリオと言えば,パワーアップキットでは「戦記制覇」という新モードが楽しめるようになります。これは,限定されたマップを使い,「官渡の戦い」など「三国志」のクライマックスを,通常とは異なったクリア条件で,かつ短時間で楽しんでいただるものです。マップやコマンドが限定されるので,戦闘に集中していただけます。
4Gamer:
クリアまではどのぐらいかかるのでしょう?
越後谷氏:
長くても3時間前後を想定しています。これは「三國志14」に限らない話ですが,戦略級シミュレーションを遊んでいると,どうしても「戦略的に勝利し,大局が決まってしまうと,プレイへのモチベーションが失われてしまう」という現象が起こりますよね。
4Gamer:
もう勝ちが確定していて,残りは消化試合みたいな状態ですね。
越後谷氏:
ええ。それなら,面白い部分だけにフォーカスしてそこだけを遊んでもらうのもアリじゃないか,という考えで作られたのが「戦記制覇」です。短時間で遊べますし,クリア後にはスコアが出るので,スコアアタックに挑戦していただくのも楽しいかと思います。ぜひ,腕前を試してみてください。
4Gamer:
寝る前に1戦! みたいな遊び方もできそうですね。
越後谷氏:
はい。ほかにも細かな新要素として,これまで建設できなかった地形に建てられる建物や,初期都市がランダムになる「国替」機能,色塗りの様子も振り返ることができる年表,イベント編集機能などを盛り込んでいます。もちろん,新シナリオや新イベント,個性や固有戦法の追加もありますし,外交では自勢力の土地を交渉材料にできるようになります。土地を割譲するかわりに何か便宜を図ってもらったり,逆に、相手からの要求に対して土地の割譲を迫ったりと,土地の奪い合い(色の塗りあい)に新たな手が増えます。
また,「三國志14 with パワーアップキット」で,Nintendo Switchでも遊べるようになります。こちらはタッチパネルを使って操作できるうえにオートセーブも速くて,とても遊びやすいです。そのまま寝落ちしても大丈夫ですしね(笑)。個人的に, Switch版も買い直そうと思っているぐらいなので,こちらもオススメです。ほかにも未発表の要素がまだまだありますので,引き続きご期待ください!
4Gamer:
ありがとうございました。
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