紹介記事
「メガドライブミニ」発売記念。メガドライブと歩み,メガドライブに育てられ,これからは小さな経典 メガドライブミニとも歩もう
2019年9月19日,セガゲームスからドリームキャスト以来となる久しぶりの新ハード「メガドライブミニ」が発売される。既報のとおり,新作2タイトルを含む全42タイトルを収録するというから,セガらしい突っ走りっぷりだ。収録タイトルの発表からは,それなりに時間が経過しているものの,2019年に新作メガドライブ用ソフトが登場するというのは,いまだに不思議な感じがする。
メガドライブ版「ダライアス」は,なぜ「メガドライブミニ」に収録されたのか。キーマン4人にインタビュー
「メガドライブミニ」収録版の「ダライアス」は,当時リリースされたソフトではなく,SGDKというメガドライブ向けのCコンパイラを用いたファンメイド版がベースとなっている。本作がなぜ,どういった経緯でメガドライブミニへ収録されたのか,4人のキーマンに詳細をうかがった。
メガドライブミニの発売に際し,4Gamer編集部から「メガドライバーである貴殿は,今こそメガドライブとの思い出を解き放つべし」と打診があった。いい機会だ。いくつかの収録タイトルに触れつつ,メガドライブの思い出を綴ってみよう。
筆者とメガドライブとの出会いは,1990年11月21日だ。メガドライブの発売は1988年10月29日なので,2年遅れでメガドライバー化した形である。
さて,1990年11月21日とは,どういう日だったのか。4Gamer読者ならば分かる人もいるだろう。そう,スーパーファミコンの発売日である。スーパーファミコンを購入するつもりが,メガドライブを手にしていた。そもそもメガドライブの存在を認識したのも当日だったのだが,ステキなアイテムとの出会いは常に突然である。
というか,なぜメガドライブを手にしていたのか,いまだによく分からない。近年でも高垣 楓さんのお誕生日にiPad Proを手にしていたことがあったし,Intel CPUの発売日にAMD CPUを購入したこともあったし,筆者はそういう性質なのだろう。つまり,黄金の16bitの魔力にやられたという説が濃厚だ。
10代の頃にメガドライブに触れていた読者ならば想像に難くないと思うが,メガドライブを選んだことにより,ゲーマーとしては砂漠を独り歩く時代が始まった。
当時,筆者の周辺はファミコンとスーパーファミコンの天下であり,メガドライブユーザーは1人もいなかった(ついでに言えば,PCエンジンユーザーも)。ファイナルファンタジーだ,ドラゴンクエストだ,といったクラスの話題には縁がなく,メガドライブというものがまったく認識されていない環境だった。
思い出す。「メガドライブ? それゲーム機? ファイナルファンタジーあるの?」という同級生の台詞。布教活動はまったく効果がなかった。ここまで書いて思ったのだが,筆者はどうやって当時を乗り切っていたのだろう。結局,ドリームキャストのチャットルームを始めるまで,まともにメガドライブについて話す機会なんかなかった。ぼっちにもほどがある。
メガドライブの情報を入手する手段はひどく限られていた。頼りにしていたのは専門誌「メガドライブFAN」「Beep! メガドライブ」で,現在のようにインターネット上に情報が転がっているわけもない。新作タイトルの購入は慎重な英断であり,またギャンブルに近いものだった。
その頃,Beep! メガドライブではユーザー評価によるランキング企画「BEメガ読者レース」が行われており,未チェックのタイトルを購入するときの参考になった。「これホントかなぁ」と思いながら「ソード・オブ・ソダン」に手を出して,わりとえらい目に遭ったのも良い思い出である。
なお,メガドライブミニの発売日には,上記の2誌によるムック「BEEP! メガドライブFAN―2誌合体! メガドライブミニ総力特集号」が発売される。当時の空気を知りたいなら,いい資料になるだろう。往年のメガドライバーの共通見解が,どのような環境下において,どのようにして生まれたのかも感じられるはずだ。
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筆者以外のメガドライバーも,似たような境遇だったのではないだろうか。いかに「サンダーフォースIII」や「シャイニング・フォース」などが面白くても,それについて話す相手がいないのはつらいことだった。
そうなると思考は深く深く,ゲームソフトへと向かっていく。単純にストーリーを楽しむこともあったが,「なぜ,この操作体系になっているのだろうか」「こういうエフェクトで,こんな見せ方があるのか」といったことを考えながら,ゲームを遊ぶようになった。ある種の対話である。今になって振り返ると,現在の自分につながっているので,メガドライブに育てられたと言ってもいい気がする。
メガドライブ本体と一緒に購入したのは,「スーパー大戦略」「重装機兵レイノス」「時の継承者 ファンタシースターIII」だった。パッケージからの直感で選んだわりに,メガドライブのカオスなソフトウェア群のなかではかなり無難な3本だ。
ちなみに,メガドライブミニの収録タイトルもカオスな雰囲気ではあるものの,初めてメガドライブに触れる人にも優しいカオス度だろう。
さて,もれなくガンダムボーイだった筆者は,「重装機兵レイノス」のインパクトに直撃されてしまった。重厚感のある動きがたまらない。ジャンプして着地したときにサスペンションが衝撃を緩和していたり,宇宙空間ではアサルトスーツだけでなく,攻撃にもちゃんと慣性が働いていたりと,とにかく操作していて楽しい。
ステージの随所にドラマがあり,その演出パターンは以降の多くタイトルで見られるようになった。「ロボゲーでは“操作している感”が大事である」という認識は,後年にも引き継がれていると思う。
メガドライブミニに「時の継承者 ファンタシースターIII」は収録されていないが,続編の「ファンタシースター 〜千年紀の終りに〜」も重要なタイトルだ。ファンタシースターシリーズの完結編であり,壮大なサーガとして楽しめた。ファイナルファンタジーやドラゴンクエストと比べると,世界設定が少々異質で,それなりに人を選ぶあたりはセガ的であり,メガドラ的である。
「ファンタシースター 〜千年紀の終りに〜」のイベントシーンは,マンガのようなコマ割の演出がとても新鮮だった。また,戦闘ではコンビネーションバトルやマクロといった,当時としては先進的な仕様も印象に残っている。ファンタシースターシリーズは筆者が最も長く遊んでいるシリーズであり,現在も「ファンタシースターオンライン2」をプレイしている。そういえば,「ドラゴンクエストV」の“結婚”は話題に上がりやすいが,「時の継承者 ファンタシースターIII」のほうが先に採用している。ご存じでしたか?
「『スーパー大戦略』はないのか」「『アドバンスド大戦略』はないのか」と思っている読者は多いだろう。筆者もその1人なのだが,メガドライブミニには「ハイブリッド・フロント」がある。
メガドライブには名作と呼べるシミュレーションゲームが多かったと思う。その最たるものが「アドバンスド大戦略」であることに異論はないが,1994年に登場した「ハイブリッド・フロント」も不朽の名作だ。時期が時期だけにセガサターン登場の影に隠れがちで,メガドライバーでも未プレイの人が多いらしいが,ハードな世界設定やシビアな難度,硬派なシステムはメガドライブにおけるシミュレーションゲームの集大成と言っていい。
1992年にスーパーファミコン版「ストリートファイターII」が発売されたことで,メガドライバーである筆者は肩身の狭い思いをしていた。メガドライブに「ストリーファイターIIダッシュプラス CHAMPION EDITION」が登場したのは,ほかのハードに比べると遅かったのだ。
「ストリートファイターII」は1991年にアーケード版が登場し,大ブームを巻き起こした。当時のゲームセンターは生徒が入るべきではない場所という扱いだったため,善意のタレコミによって反省文を課せられた回数は覚えていない。
しかし,我々にはスーパーや駄菓子屋で勢力を伸ばしていたNEOGEOの格闘ゲームがあり,筆者の周囲も空前の格ゲーブームが起きていた。そこにタイミングよくやってきたのが,スーパーファミコン版である。ちゃっかり友人宅で対戦に明け暮れたのだが,メガドライブ版が登場した翌1993年は「格ゲー群雄割拠の時代」に突入しており,友人と対戦する機会は訪れなかった。筆者の周囲ではNEOGEO勢,なかでも「サムライスピリッツ」と「餓狼伝説SPECIAL」が強すぎたのが,なんとも悔やまれる。
そんな思い出しかない「ストリーファイターIIダッシュプラス CHAMPION EDITION」だが,コンシューマ版では最後の登場だけあり,完成度はやはり高い。オープニングがちゃんと再現されていたり,ケンのステージではちゃんと船が揺れていたりなど,いい出来である。また,「エキサイトモード」は「ストリートファイターIIダッシュターボ」とほぼ同等になるモードであり,ゲームスピードを10段階で変更可能だ。
本稿の執筆にあたり,友人と対戦をしてみた。26年越しとなる,筆者にとって初の2P対戦だ。よくよく考えると「ストリーファイターIIダッシュプラス」「ストリートファイターIIダッシュターボ」が両方遊べるわけで,さまざまな仕事をほったらかして遊んでしまった。当時,筆者と似た境遇だったメガドライバーは少なくないと思うので,メガドライブミニで存分に対戦してほしい。26年が経過しても,2P側の昇龍拳がどうも苦手だ。
ご存じのとおり,メガドライブには拡大縮小・回転のグラフィックス機能が搭載されていない。今でこそ,ごくごく当たり前の機能だが,ライバル機のそれを目の当たりにしたときは衝撃を受けた。
しかし,トレジャー開発の「ガンスターヒーローズ」は「拡大も縮小も回転もできないメガドライブとは?」という勢いで,これ見よがしに拡大縮小,そして回転する。これはどういうことか。つまり,メガドライブ本体の機能には存在しないものを,アイデアや手作業の積み重ねによって実現しているのだ。
一見,「ポップな魂斗羅かな」と思いきや,動きのクセや敵のブッ飛び具合に個性があり,根幹の部分は似ているものの,「ガンスターヒーローズ」にしかない味わいが楽しめるはずだ。
「難しそう」「マニアック」「メガドライブ,なにそれ?」といった状況を打開するべく,1991年に「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が誕生した。サンキュー,アレックスキッド。ハロー,ソニックだ。
もはや説明するまでもない爆速横スクロールアクションゲームだが,高速スクロールにもかかわらず,なぜか状況判断がしやすい点に驚かされた。メガドライブミニに収録されている「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」でも,それは体感できる。オブジェクトの形状や配色が絶妙なのだろう。ぜひCRTディスプレイを再現したモードで遊んでみてほしい。
当時,プレイしていないタイトルのなかでは「コミックスゾーン」が興味深い。1995年発売なので,ゲーマーはすっかりセガサターンにシフトしていたが,なかなかメガドライブっぽいアクションゲームである。
アメコミ調の世界を冒険するという設定で,コマからコマへと移動したり,コマをぶち破ったりと演出もマンガ的だ。もう1年早く登場していたら,めちゃくちゃハマっていただろう。なお,「いやこれアーケードだろう」というくらい高めの難度になっているので,メガドライブミニのセーブ機能を活用したいところだ。
メガドライブミニの全収録タイトルについて,細かいエピソードを交えつつ紹介しているとキリがないため,今回はこのくらいにしておこう。原稿を執筆しつつ,学生時代から現在に至るまでのゲーマー人生を振り返ってみたのだが,その2割程度はメガドライブによって形作られた気がする。
メガドライバーの読者にもそれぞれの境遇があったはずで,筆者と同じようにメガドライブに育てられ,助けられたのではないだろうか。かつてのメガドライバーとって,メガドライブミニは小さな経典と言える代物だ。これからはメガドライブミニとも歩んでいこう。
「メガドライブ ミニ」公式サイト
(C)extreme
監修:野田昌宏 協力:株式会社オニロ
ORIGINAL ILLUST DESIGNED BY SUEMI JUN
ORIGINAL WEAPON ILLUST DESIGNED BY KUNIO AOI
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 1991, 2019 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM CO., LTD. 1988, 2019 ALL RIGHTS RESERVED.
REPROGRAMMED GAME(C)SEGA
MUSIC(C)YUZO KOSHIRO
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メガドライブミニ
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