プレイレポート
遠く離れた火星を舞台に描かれる宇宙的恐怖。H.P.ラヴクラフト作品にインスパイアされたSFアドベンチャー「Moons of Madness」を紹介
小説家のH.P.ラヴクラフトの作品群にインスパイアされたという本作は,一人称視点の“コズミックホラーアドベンチャーゲーム”。地球を遠く離れた火星の基地で,宇宙的恐怖を体験できる作品となっている。そんな本作を,2020年3月25日にリリースされたばかりのPS4版をとおして紹介しよう。
「Moons of Madness」公式サイト
火星を舞台に展開する,謎と恐怖に溢れる物語
ゲームの舞台となる火星は,炎や血を連想させる赤い色と,複雑に見える星の動きや軌道から,古代より「戦争の前触れ」や「凶兆」ととらえられることが多い惑星だ。タイトル名にある「Moons」とは,火星の衛星であるフォボスとダイモスで,この2つの語源となったのは,ギリシア神話に登場する,混乱や恐怖といった意味を持つ神の兄弟である。
このように火星とは,古くから「不確かなもの,未知のものへの不安」を感じさせる要素がある星で,コズミックホラー作品の舞台にはふさわしい場所とも言えるだろう。
主人公のシェーン・ニューハートは,火星調査基地「インヴィクタス」のエンジニア。基地の生活環境を保つため,発電パネルの調整や水漏れへの対応といった基地内のアクシデントに対処する任務に当たっている。
あるときシェーンは,自身の任務をこなす過程で,“信じがたいもの”を目の当たりにする。エンジニアである彼には知らされていなかったが,この基地では何か極秘の研究が行われているらしい。シェーンはこの出来事によって,現実と妄想,そして記憶の中の出来事の境目が曖昧な世界に足を踏み入れていくことになる。
チームは連絡船の着陸準備のために出払っており,基地内で行動しているのはシェーンひとり |
ホワイトボードに血のようなもので描かれた,重なりつつある2つのサークル |
よく見ると,シェーンの右手の甲にも似た形が……偶然だろうか? |
プレイヤーはシェーンを操作し,基地の内部や火星の地表を探索しながら,必要なアイテムを見つけたり,仕掛けや謎を解いたりしてゲームを進めていくことになる。周囲に何があるかスキャンすることで少しだけヒントを得られるが,基本的には手探りで解法を見つけるという,集中力が求められる場面が多い。
手がかりを探すために画面を注視していると,視界の端を「黒い何か」が動いたり通りすぎたりすることがある。「プレイヤーに集中させる」という点は,本作の演出の一部にもなっているようだ。
基地の外で行動する際は,気密服の酸素に気を配る必要がある。酸素の残量は視線を下に向けることで確認できるのだが,「探索や謎解きに集中しているうちに,いつの間にか残りわずかに……」という状況になることが少なくなかった。また,基地に戻った際,エアロック部で外気と内気を切り替える操作を忘れてしまうと,ヘルメットを外したときに窒息死しかけることになるので,酸素の残量と機器の操作手順には注意しよう。
不意の出来事があった直後などは,機器の操作手順が頭から抜けてしまいがち。冷静さを保ちつつ探索を進めよう |
酸素残量の管理はそれほどシビアではないのだが,切れてしまえば死を免れないだけになかなかの緊張感がある |
得体の知れない「何か」に襲われ迷路のような基地内を逃げ回るといった,直接的な危機に見舞われるシーンもある。主人公が心身ともにダメージを受ける描写,思いがけない形でのゲームオーバーなど,静と動のメリハリが効いた展開となっているので,常に緊張感を持ってプレイできるだろう。
ついに目の前に現れた「何か」 |
幽鬼のごとく立つ飛行士。そのヘルメットのバイザーはすでに割れている…… |
謎めいた洋館や異質な文明の遺跡,自身が子供時代を過ごした家と思しき場所。基地のトラブルに対処していたはずの主人公は,いつしか現実と虚構の境界が曖昧な世界に迷い込んでいく。自身の記憶や妄想のような場面では,端末を使ったスキャンや目的の確認などもできなくなるため,より手がかりの乏しい状態で謎解きに挑むことになる。
こういったホラーアドベンチャー作品に欠かせない要素となっているのが,物語の背景が見えてくるテキストだろう。本作もそこに抜かりはなく,未知の脅威に触れた人が,その恐怖に抗うも正気を失くしていく様などが記されたテキストが,手記やPCのデータといったさまざまな形で残されている。シェーンも彼らと同じく「未知の何か」の影響を受けていないとは言い難い。そういった状況を踏まえて読み進めると,背筋に冷たさを感じることになるだろう。
また,ラヴクラフトの名前やコズミックホラーという言葉に反応したプレイヤーの期待に応えるように,禍々しい祭壇や魔導書などの“いかにも”なオブジェクトも登場する。このあたりも見逃さないようにしよう。
地球から遠く離れた火星で,人知れず,取り返しのつかない事態が起きようとしている。そして,それに触れたらもう後戻りはできない……。そんな“宇宙的恐怖”が味わえるなかなかの雰囲気があり,ゲーム世界への没入感も高い。ミステリーやホラーが好きな人にはぜひ触れてみてほしいタイトルだ。
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