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聖杯戦争の“if”を楽しむボードゲーム「Dominate Grail War」開発者インタビュー。デザイナー・BakaFire氏の考える“世界観とメカニクス”の幸せな関係
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印刷2019/08/10 00:00

インタビュー

聖杯戦争の“if”を楽しむボードゲーム「Dominate Grail War」開発者インタビュー。デザイナー・BakaFire氏の考える“世界観とメカニクス”の幸せな関係

ゲーム内容を象徴したデザインを心がけたという本作のメインビジュアル。プレイヤーが各マスターを受け持つ作品なので,士郎のみならず,すべてのマスターが中心に描かれる。そのうえで,Fateの象徴としてのセイバーが配置されている。周りに散るクラスカードは,マスターとサーヴァントの組み合わせがランダムであることを表現しているとか
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 TYPE-MOONの伝奇活劇ビジュアルノベル「Fate/stay night」を題材とした新作ボードゲーム「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」が,ディライトワークスより2019年8月3日に発売された。

 今年で15周年を迎えた「Fate/stay night」を記念したプロジェクト「Fate/stay night 15th Celebration Project」の一環として発表された本作だが,そのゲームデザインは「桜降る代に決闘を」(以下,ふるよに)や「惨劇RoopeR」で知られるBakaFire Partyのボードゲームデザイナー・BakaFire氏が手がけており,アナログゲームファンからも注目度の高い作品となっている。

 そこで今回は,BakaFire氏ご本人と,ディライトワークスで本作のプロデュースを担当している宣伝担当の高嶋啓明氏に同席いただいたインタビューをお届けしてみたい。ゲームの詳しい内容については,先んじて掲載した先行体験会のレポートに詳しいので,そちらも参照いただければ。
 本作を開発することになった経緯から作品に込められたこだわり,さらにはクリエイターとしてのBakaFire氏のパーソナルな面にも迫るインタビューとなっているので,氏の作品のファンは,ぜひ最後まで読み進めていただきたい。

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 ディライトワークスは2019年7月17日,同社が8月3日に発売を予定しているボードゲーム「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」のメディア向け先行体験イベントを開催した。ついに明らかにされたルールを含むゲーム内容を,実際に遊んでみてのインプレッションを絡めて紹介していく。

[2019/07/18 16:17]

「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」公式サイト



「Fate/stay night」の“if”が楽しめるボードゲーム


4Gamer:
 本日はお時間をいただきありがとうございます。まず今作の「Dominate Grail War」についてお聞きしたいのですが,発売に至る経緯から聞かせていただけますか。

「The Last Brave」
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高嶋氏:
 ディライトワークス側の視点からお話しますと,Fateシリーズの原点である「Fate/stay night」(以下,SN)が,2019年に15周年を迎えるにあたり,15周年を記念したプロジェクト「Fate/stay night 15th Celebration Project」を弊社も一緒に盛り上げられるような企画を練っておりました。その頃にカナイセイジさんからBakaFireさんをご紹介いただき,その後,色々とご相談することができました。

4Gamer:
 カナイさんが発端なんですね。「The Last Brave」の初売りが2018年秋の「ゲームマーケット2018秋」でしたから,その開発時期ということでしょうか。

高嶋氏:
 そうですね。そこからやりとりが始まり,「Dominate Grail War」の企画がスタートしました。そうして最初に上がってきたプロトタイプを遊ばせていただいたのですが……。

4Gamer:
 とても面白かった?

高嶋氏:
 はい。最初にプレイしたときは,スタッフみんなで「すごく面白い!」って興奮しながら遊びました。シリーズのファンが盛り上がるポイントがたくさんあり,ボードゲームそのものとしてもとても楽しめたので,ぜひこれを世に出したい,というか世に出さない理由がないと思ったんです。

4Gamer:
 プロトタイプの段階で,それほどの完成度だったんですね。具体的には,どんなところが面白いと感じたのでしょうか。

ディライトワークス 「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」宣伝担当 高嶋啓明氏
画像集 No.009のサムネイル画像 / 聖杯戦争の“if”を楽しむボードゲーム「Dominate Grail War」開発者インタビュー。デザイナー・BakaFire氏の考える“世界観とメカニクス”の幸せな関係
高嶋氏:
 なにより,「SNの世界観を表現する」というコンセプトが素晴らしく,まさにそれを実現するデザインになっていると思いました。各マスターが持っている能力を活かそうとすると,自然にそのキャラクターらしい動きになるっていう。単に既存のゲームシステムにキャラクターを乗せただけではなく,ゲームシステムが根本からSNのために組み上げられているので,作品世界への没入感が凄まじいんです。

BakaFire氏:
 ありがとうございます(笑)。制作者として,そうありたいと思っていたところを汲み取っていただけて,嬉しい限りです。実際,本作のゲームデザインにあたって最初に行ったのは,自分がハマったSNという作品を振り返って,“どこに魅力を感じたのか”を掘り下げる作業でした。要素を分解して“イケてるポイント”を書き出していき,それらをボードゲームでどう表現するかを模索していったんです。

4Gamer:
 例えば,どんな要素ですか?

BakaFire氏:
 「真名を推測しながら読み進める謎解き感」とか,「宝具と共にサーヴァントの正体が明らかにされる爽快感」。それから「聖杯戦争という舞台装置が持つ拡張性」「二次創作が無限にできる自由度の高さ」といったあたりですね。

4Gamer: 
 なるほど。確かにどれも魅力的なポイントですね。

BakaFire氏:
 そして,このSNの要素リストから「最も近いゲームは何か」と自分のアナログゲーム体験から近似したものを検索してみました。その結論として導き出されたのが,「テキサスホールデムポーカー」です。

※テキサスホールデムポーカー……2枚の手札と,参加者で共有される3〜5枚の公開カードで勝負するポーカー。チップ(賭け金)をベットするタイミングが4度あり,その度に公開するカードが増えていく。日本でよく知られるドローポーカーよりも運の要素が少なく,ブラフによる熱い駆け引きが楽しめる。

4Gamer:
 テキサスホールデム!

BakaFire氏:
 テキサスホールデムってハンド(手札)を見てから戦いに“参加するか否か”を決断する仕組みなので,すごくバトルロイヤル感があるじゃないですか。Fate的に解釈するなら,手札が揃わないタイミングでは魔力を温存しておき,宝具ばりの勝負手が来たところで勝ちに行くイメージです。そこから発想して作ったので,最初期は言わば「Fateポーカー」のようなゲームだったんですよ。

4Gamer:
 あ,なるほど。言われてみれば,確かに“らしさ”があります。魔力がチップとして表現されるわけですね。しかし,製品版ではポーカーのようにチップをベットする要素はありませんね。

BakaFire氏:
 ええ。手札2枚を使って勝負するという部分は今も変わっていませんが,この段階ではまだポーカーに近い部分が残っている状態でした。この段階でもボチボチ面白かったんですが,やっぱり少し違うなと思いまして。そこで,根本を大きく変えることにしました。

4Gamer:
 根本から?

BakaFire氏:
 まずチップのベットという行動を,「戦場に行く/行かない」という判断に置き換えました。さらに,「2つのゲームが同時進行していて,どちらに参加するかを選べる」ようにしたんです。これはSNの主な戦場が,深山町と新都の二つの街を舞台にしていることから思いついた仕組みです。実際こうした方が展開が多様になり,SNっぽくって面白かったんですよ。

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4Gamer:
 「戦場に行く/行かない」だけでなく,「行くならどっちか」という判断が必要になるわけですね。

BakaFire氏:
 はい。そうしてポーカーの部分がだんだんと削ぎ落とされていき,さらに必要な要素――「地の利」であるとか,キャラクターごとの個性などが加わることで,現在の形にまとまっていきました。結果,初期案よりも“大きな”ゲームになってしまいましたけど。

4Gamer:
 日本産のボードゲームは,ルールもコンポーネントもコンパクトにまとめた――いわゆるミニマリズムを重視したものが多い印象がありますし,そうしたタイトルと比べると,確かに本作はなかなかの大作です。ゲームデザインの過程においても,無駄をそぎ落としていくスタイルが多いと聞きますし,反対に“要素を盛る”方向で作られたという本作には,なんというか独特のセンスを感じます。

BakaFire氏:
 そうかもしれません。大作になってしまったことに理由があるとすれば,それはやはり本作がSNをベースにしたタイトルだからでしょう。お話したように,Fateの世界を表現することが目的でしたので,まずそのためにFateの面白さの分析から入り,ゲームをデザインしていくという,オリジナルボードゲームの制作とは違う手順で制作しました。版権物のゲームをデザインするなら,やはり誰しもがその世界観を表現したいと思うので,表現にふさわしい要素を“盛る”という方法をとるのではないでしょうか。

4Gamer:
 少ない手札のやり繰りや,複数の能力の組み合わせなどは,「ふるよに」のプレイフィールに近いものを感じました。また隠匿されていた情報が少しずつ明らかになっていく構造なんかは,「惨劇RoopeR」や「終わった世界と紺碧の追憶」(以下,OWACON)を彷彿とさせる部分もあります。

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 2016年5月にリリースされ,大きな反響を呼んだ“眼前構築型”ボードゲーム「桜降る代に決闘を」のレビューをお届けする。「惨劇RoopeR」などで知られるヒットメーカー・BakaFire Partyが初めて挑んだリビングカードゲームは,いったいどんなものか。「にじよめ」でサービス予定のデジタル版に先駆け,人気を博しているアナログ版を紹介していこう。

[2017/10/23 15:00]

BakaFire氏:
 過去作の要素を意図的に再利用したわけではありませんが,僕自身が面白いと信じるものを突き詰めていくと,似てくる部分はどうしてもあるのでしょう。とくに隠されてた情報が明らかになっていく構造については,Fateという物語が持っている面白さ,格好良さの中心の一つでもあるわけですし。言い換えれば,そこが一致していたからこそ,僕自身がFateという作品を好きになったのかもしれません。

4Gamer:
 むしろBakaFireさんのエッセンスが詰め込まれた感じで,ますます楽しみになりました。(ボックスを見ながら)プレイ人数は最大7人とありますが,これもやっぱり原作に合わせたものなんですか。

BakaFire氏:
 そうですね。ただ僕自身は,このゲームが100%のポテンシャルを発揮するのは4〜5人で遊んだときだと考えています。だから本作も,“ボードゲームとしての”ベストなプレイ人数は4人ですね。とはいえ,聖杯戦争らしさを最大限に味わうなら,やはり7人のマスターと7騎のサーヴァントが必要じゃないですか。

4Gamer:
 確かにそうですね。

BakaFire氏:
 7人それぞれの思惑が交錯した状態こそが聖杯戦争ですから。だから,そうした没入感を楽しむために,7人プレイが可能になっています。

高嶋氏:
 プロトタイプでは最大6人だったんですよね。慎二と桜がワンセットで一人のマスターになっていて。

4Gamer:
 あっ,そうですね。原作どおりだと7人で遊ぶにはマスターが足らない。

BakaFire氏:
 プロトタイプの段階では“原作を忠実に再現する”ゲームでしたので。聖杯戦争そのものではなく,第五次聖杯戦争を再現することを念頭に置いていました。だから慎二と桜だけでなく,サーヴァントもキャスターとアサシンで一括りだったんですよ。

高嶋氏:
 7人プレイへの対応は,実はディライトワークス側から提案させていただいたことの一つなんです。原作に忠実であるより,“ifの体験”をより広げることで,このゲームの面白さがより深まると思ったからです。またTYPE-MOONさんから「キャスターとアサシンは切り離してほしい」との要望を受けたのも,その理由の一つです。それぞれのサーヴァントが活躍する姿を見せてほしいとのことでした。

BakaFire氏:
 そういった経緯で“if”の世界を広げる方向に舵を切りまして,さらにさまざまな調整を加えることで,今のこの「Dominate Grail War」があるわけです。



ゲームデザイナー・BakaFire氏の原点を探る


4Gamer:
 「Dominate Grail War」の細かい部分については,のちほどまたお聞きするとして,アナログゲームデザイナーとしてのBakaFireさんご自身ついて聞かせてください。「桜降る代に決闘を」「惨劇RoopeR」といったヒット作で知られるBakaFireさんですが,そもそもゲームデザイナーを志したのは,どんなきっかけだったんでしょうか。

BakaFire氏:
 記憶を遡ると,僕はどうも幼稚園の頃からカードゲームを作るのを好んでいたみたいです。当時よく遊んでいた翔企画の「モンスターメーカー」に触発されたようで。親が無地のブランクカードを買ってきてくれて,小学校の低学年くらいまでは,それでよくゲームを作っていました。
 実は,その頃に作ったゲームがまだ残ってまして。ルールを見ると,「モンスターメーカー」っぽさがあるんですよ。

こちらはリメイク版「モンスターメーカー」。現在はアークライトより発売されている
画像集 No.007のサムネイル画像 / 聖杯戦争の“if”を楽しむボードゲーム「Dominate Grail War」開発者インタビュー。デザイナー・BakaFire氏の考える“世界観とメカニクス”の幸せな関係

4Gamer:
 じゃあ,子供の頃からずっとゲームデザイナーになりたかったクチですか?

BakaFire氏:
 そうですね。就職もしましたが,結果的にあまり会社員に向いたタイプではありませんでした。だから「天性の能力を活かした仕事を選んだ」と言えば聞こえは良いですが,「ほかにできる事が少なかったからゲームデザイナーになった」というほうが正しいかもしれません。

4Gamer:
 デジタルゲームではなく,アナログゲームを選んだのには,何か理由があるのでしょうか。

BakaFire PartyのBakaFire氏
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BakaFire氏:
 スタート地点がアナログだったから,というのもありますが……僕はちょっとITオンチなところがありまして。「プログラミングを学んでデジタルゲームを作ろう」という方向には思考が働かなかった,というのが理由としては大きいかと思います。

4Gamer:
 ……とてもITオンチには見えませんけど。お話も論理的ですし,プログラミングにも向いてそうなイメージです。

BakaFire氏:
 大学では数学をやっていましたし,数字を扱うのが苦手というわけではないんです。プログラムの構造を組み立てるのも,やろうと思えばきっとできるんでしょう。ただ,プログラムはそれ以外に把握しておくべき情報が多すぎて,パニックになってしまうんですよね。とくにITの世界は変遷も激しくて……常にトレンドを追いかける必要があるじゃないですか。

4Gamer:
 そう……かもしれません。

BakaFire氏:
 僕は特定の一つを深く掘り下げようとする傾向があるみたいで,使っている技術が時代遅れになったとしても,新しい技術に対応できないと思います。それこそ,20年経っても同じコードを書いていそうな気がするんです。

4Gamer:
 ご自分で作ることはせずとも,デジタルゲーム自体は遊ばれるんですか。

トレード&バトル カードヒーロー(リンクはAmazonアソシエイト)
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BakaFire氏:
 小学生の頃から,普通に遊んでましたね。一番やり込んだゲームは「トレード&バトル カードヒーロー」(以下,カードヒーロー)で,ゲームボーイ版が出てから17年間遊び続けていました。

4Gamer:
 「カードヒーロー」は,今でも熱狂的なファンがいるタイトルですね。えっ,でも17年ですか?

BakaFire氏:
 発売された2000年以来,ゲームボーイのスロットには常に「カードヒーロー」が刺さっている状態でした。少なくとも1か月に1回は起動して遊びましたし,2007年にニンテンドーDS版が発売されてからも,移行して遊び続けました。仕事が忙しくなってしまって,最近は触れられてないんですけど。

4Gamer:
 それにしても,17年間とは。特定ジャンルを掘り下げるのが得意,という意味が分かった気がします。

BakaFire氏:
 あとは「DT Lords of Genomes」というゲームが好きで,よく遊んでいました。「ゼビウス」の遠藤雅伸さんが関わられていて,世界観がめちゃくちゃ面白いんですよ。何より感動したのがカードのフレーバーテキストです。300種くらいあるカードの1枚ごとに,ちょっとした小説くらいのテキストが用意されていて,それがすごいんです。「カードヒーロー」に次いで遊んだゲームじゃないかと思います。

4Gamer:
 なるほど。しかしやはりカードゲーム系の,アナログ要素の強いゲームがお好みのようです。

BakaFire氏:
 デジタルゲームでも,アナログ的な要素のあるゲームに心惹かれていたのは間違いないですね。「カルドセプト」「タワードリーム」も相当に遊びましたし。どちらかというと,デジタルはアナログでは面倒な処理を自動でやってくれるという位置付けだったのかも。

4Gamer:
 あれ……でもFateは遊ばれていたわけですよね。ノベルゲーム系はどうなんです?

BakaFire氏:
 ノベルゲームについて語ろうとすると……まず「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,M:tG)との出会いから話さなくちゃならないですけど,構いませんか?

4Gamer:
 それはぜひ。でも,そこからノベルゲームにつながります?

デュエルファイター刃(リンクはAmazonアソシエイト)
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BakaFire氏:
 小学生の頃にM:tGに触れて,当然のごとくメチャクチャハマったわけなんですが,そんなとき,風の噂から「M:tGの漫画が載っている雑誌がある」ことを耳にしまして。

4Gamer:
 ああ。当時のTCG好き小学生としては,順当な流れですね。

BakaFire氏:
 雑誌を買うようになったおかげで,TCG関連の情報が入ってくるようになったんです。そして忘れもしない小学6年生の1月,「リーフファイトTCG」の発売情報を目にしてしまったわけです。そしてルールを読んでみたら,超面白そうで,これは買うしかないと。当たり前ですが“リーフ”が何か,まったく知らなかったにも関わらずです。

4Gamer:
 絵もデフォルメされていて,可愛らしかったですものね。

BakaFire氏:
 あずまきよひこ先生の絵に騙されました(苦笑)。小学生的にも「まぁ,男キャラもいるし大丈夫だろう」ということで,抵抗もなかったんです。同時期に出ていた「アクエリアンエイジ」は恥ずかしくて買えなかったクチなので,原作に忠実なイラストだったら手に取っていなかったかもしれません。

4Gamer:
 いやしかし……つまり,そこから原作に遡っていったわけですか。

BakaFire氏:
 はい(笑)。最初に手を出したのは,PlayStation版の「ToHeart」でした。中学2年生だったと思います。「雫 -しずく-」「痕 -きずあと-」もプレイしたかったのですが,どうも僕は遵法精神が高かったみたいで。実際に遊んだのは,ずっと後になります。

4Gamer:
 「リーフファイトTCG」から入ったとすると,けっこうなギャップがあったのでは?

BakaFire氏:
 「雫 -しずく-」をプレイして,絶句しましたね(笑)。まさかこんなゲームだったとはって。TCGでは月島瑠璃子のカードが好きでよくデッキに入れていたんですが……まぁ原作をプレイしたあとも好きだったからセーフかな!

4Gamer:
 じゃあそこからノベルゲームにハマって,Fateにも手を出したわけですか。というか,「鍵(Key作品)」には行かなかった?

ひぐらしのなく頃に
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BakaFire氏:
 そっちには行かなかったですね。Fateに触れたのは大学の頃で,それよりも先に「ひぐらしのなく頃に」にハマってました。高校生の時分です。それはもう,シャレにならないハマり方で……その結果として「惨劇RoopeR」が後に生まれたわけですけど。

4Gamer:
 むむ,「ひぐらしのなく頃に」が先ですか。そうか,当時まだ高校生ですものね。

BakaFire氏:
 そもそも当時は遵法精神や気恥ずかしさもあって,成人向けのゲームからは距離を置いていましたからね。ノベルゲームというジャンル全体へのアンテナも高くありませんでしたし。Fateをプレイしたのは本当に偶然で……僕はジャンクな二次創作がけっこう好きで,匿名掲示板でよくある,キャラクターの対話で話が進むタイプの創作物をよく読んでいたんですね。

4Gamer:
 うん? 対話形式……って,いわゆる“やる夫スレ”のことでしょうか。それともSS(ショートストーリー)系とか?

BakaFire氏:
 ああ,まさにそれ,“やる夫スレ”です。ご存じのとおり,Fateの世界観やキャラクターは当時大人気でしたし,僕はそこでSNの存在を知ったんです。それで舞台設定の時点で感動して,これは二次創作を読む前に原作を読みたいなと感じたので,軽い気持ちで遊んでみたんです。そしたら,これがまたとんでもなく面白くて。感激して原作を徹底的に遊びつくしたあとは,そのまま二次創作も読み漁りましたね。

4Gamer:
 ああ,なるほど……というか,ちょっと変わったルートを辿ってますね(笑)。

BakaFire氏:
 僕自身がオタクコンテンツに広く精通しているタイプではなかったので。偶然出会ってハマった作品に熱中していった流れですね。

4Gamer:
 テーブルトークRPGはいかがです? RPGマガジンの読者だったら,少なくとも存在は知っていたと思うんですが。

BakaFire氏:
 まさに,RPGマガジンでテーブルトークRPGを初めて知りました。だけど,その当時は遊ぶ機会がなくて,強い憧れだけ持っていた感じです。それが昇華されるのは高校に入ってからで……TRPG部なるものを発見し,2秒で入部を決めました。

4Gamer:
 ああ,やっぱり通ってらっしゃるんですね。

BakaFire氏:
 入部してから大学生まで,ずーっとテーブルトークRPGを遊んでました。「ブレイド・オブ・アルカナ」「ダンジョンズ&ドラゴンズ 3.5版」「アリアンロッド」は読み込んでGMをやりましたし,プレイヤーとしてなら「GURPS」「ソード・ワールド」「トーキョーN◎VA」「ダブルクロス」あたりでしょうか。

4Gamer:
 しかし,本当に幅が広いですね。

BakaFire氏:
 そうでもないかと。これは完全に個人的な“好み”の話になりますが,僕はシーン制の仕組みや,世界観に対して強い規定が入っているタイプのシステムは,GMをやるうえでは窮屈に感じてしまうと気付きまして。なので,そっち系のシステムに手を出しませんでした。そこへ行くと,初期の「アリアンロッド」って,世界観の縛りが緩く,かつヒロイックな演出も盛り込めるので,僕にとって理想的なゲームだったんです。

4Gamer:
 あ,確かに。割とオールドスクールなタイプに偏ってますね。それでもそうとうなやり込みを感じますけど。なんとなく,「ゴブリンスレイヤー」蝸牛くも先生にも通じるものがある気がします。世代的にも近いですし。

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 蝸牛くも氏の原作小説をベースとしたアニメ「ゴブリンスレイヤー」がまもなく放送開始となる。古き良きTRPGの影響が色濃い同作だが,その原点はどこにあるのか。「ゴブリンスレイヤーTRPG」を制作中というグループSNEの代表・安田 均氏と原作者による対談をお届けしよう。

[2018/10/06 00:00]

BakaFire氏:
 あー,あの実は「ゴブリンスレイヤー」は掲示板投稿時代からの読者でして,実は僕もあのスレの住民の一人だったりするんです。だからそう言われると……なんかちょっと嬉しいですね(苦笑)。

4Gamer:
 なんと! じゃあ,やっぱり子供の頃から英才教育を受けたタイプなんですかね。小学生でM:tGというのもわりと硬派ですし。

BakaFire氏:
 父親は「ウィザードリィ」が大好きで,そういう本がよく転がってる家ではありました。とくにゲームボーイ版を相当にやり込んでいたようで,レベル130くらいのデータが入っている「ウィザードリィ外伝II」を指さして,「これだけは絶対に触るな」と言われていたのを覚えています(笑)。

4Gamer:
 やっぱり(笑)。じゃあ,とくに影響を受けたクリエイターといったら,誰になるでしょうか。

BakaFire氏:
 王道も王道ですけど,M:tGのRichard Garfield(リチャード・ガーフィールド)氏や,D&DのGary Gygax(ゲイリー・ガイギャックス)氏は外せないでしょうね。あるいはもっと根本の部分では,「モンスターメーカー」を作った鈴木銀一郎先生の影響が大きいと思います。今現在で一番尊敬している人なら,今もM:tGのカードデザインを担当されているMark Rosewater(マーク・ローズウォーター)氏を挙げたいですね。

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  • 関連タイトル:

    Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-

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