プレイレポート
生還率7.6%! 絶望的な状況を仲間と共に覆すハードコアホラーFPS「GTFO」には,ハードルの高さに見合う重厚なプレイ感がある
2020年3月31日には,「10の新マップ」「2つの新武器」「新たなマップアンロック機能」「新モンスター」などが実装された大型アップデート,Rundown#002「Infection」が配信されたことから,新規プレイヤーも増えてきている。
公式発表によると,ベータテストでのクリア(生還)率は2.5%,その後のRundown#001でも7.6%だったという。その難しさに対する悲鳴(?)が聞こえてきている本作だが,実際のところ,ゲームの難度や質はどのようなものなのか? 絶望の中に無謀にも突撃してしまったプレイレポートをお届けしよう。
本作は日本語に対応しておらず,そのほかの面でもプレイのハードルが少々高めではあるのだが,このページを読んで手助けにしてもらえれば幸いだ。
なお,画面の一部が切れていたり,残像のような文字が写っていたり,全体的に歪んでいたりするのは,撮影の失敗ではなく,演出によるもの。本作はSEやBGMなどを含めて,こうした全体の雰囲気がやたらとかっこいいので,そのあたりにも注目してほしい。
「GTFO」公式サイト
最初のハードルは仲間集め? Discordと連携したパーティ募集システム
「GTFO」はゲーム自体の難度もさることながら,それ以上に現時点でプレイのハードルを上げている要素がある。それはマッチメイキングシステムが実装されていないこと。マッチングの仕様が少し変わっているとか,複雑だとか,使いにくいとかではなく,存在しないのだ。
本作では,Rundownに記されたマップを最大4人のチームで攻略していく。もちろん気の置けないフレンドたちがSteam上にいるなら,そのままワイワイと攻略に臨めばこれほど楽しいことはない。だが筆者のように,仲間が見つからないときはどうしたらいいのか?
「GTFO」が用意している方法は,VC(ボイスチャット)ツール「Discord」を通してのマッチングだ。
Discord上には,公式から非公式までGTFO関係のサーバがあり,そこでは世界中のプレイヤーたちが仲間を募っている。その中から自分の行きたい募集を探して参戦する,という形になるわけだ。また公式のTwitterアカウントも積極的にフレンド募集をサポートしており,ハッシュタグをつけてツイートすれば,RTもしてくれるようだ。
なお運営によると,本作に適したマッチング方法をアーリーアクセス期間中に開発予定とのこと。それを待つのもいいが,今なら外出自粛やリモートワークなどで,時間を持て余し気味の友人を誘ってみるとよさそうだ。
各マップのミッションは,4人での攻略を前提として作られているようで,3人以下での突撃は縛りプレイに近い難度。ゲーム内ではテキストチャットも使用できるが,協力・連携重視のFPSという性質上,迅速な意思疎通が攻略に大きく影響してくるので,VCを活用したい。“聞き専”でもなんとかなる場合はあるが,自分の状況をしっかり伝えることで,クリアの可能性は高くなるだろう。
筆者もVCに抵抗がないと言えば嘘になり,正直なところ参戦時には緊張するのだが,ぜひともこの機会にDiscordを活用して,VCで連携をとる攻略の楽しさを味わってみてほしい。きっと新鮮な体験が待っているはずだ。
なお,Discordについては,こちらの記事で詳しく紹介しているので,導入時の参考にしてほしい。
今すぐに使える! ボイスチャットツール「Discord」の導入方法をお届け。ダウンロードから使い方,初期設定などを紹介
無料かつ利便性に富むボイスチャットツールとして,オンラインゲーマーを中心に広く利用されている「Discord」。2015年のサービス開始から5年弱ほどが経過しているため,活用しているゲーマーも多いと思うが,本記事では導入方法や使い方,初期設定などを紹介したい。
不気味なモンスター,乏しい物資,暗くて広い複雑なマップ。プレイヤーの敵は“絶望という状況”
「GTFO」のプレイヤーキャラクターは,「スカベンジャー」と呼ばれる。彼らは軍人でも特殊部隊員でもなく,The Warden(ウォーデン)という未知の存在に囚われた者のようだ。そしてウォーデンの指示により,本意か不本意か,不気味な地下施設「The Complex」に放り込まれるという,いわば使い捨ての駒のような役割を担わされている。
このThe Complexで息を潜めて待ち構えているのが,グロテスクな肉食エネミー,「スリーパーズ」だ。ほとんどの場合「休眠」状態にあることから,総称として付けられた名前で,序盤から複数の種類が確認できる。
気をつけたいのは,スリーパーズたちを「覚醒」させないことだ。銃声を響かせたり,スリーパーズが敏感になっている「発光」「鼓動」状態のときに過剰に動いたり,ライトを当てたりすると覚醒してしまう。そうなると周囲の仲間も目覚めさせて,絶望するほどの群れを成して襲いかかってくるのだ。
どの個体の攻撃も強力で,ストライカーですら雑魚とは呼べない。仲間と息を合わせてスピーディに対処しなければ,あっという間にチームが壊滅してしまう。
そんなスリーパーズに対抗するためにスカベンジャーたちが携行する武器は,「メインウェポン」「スペシャルウェポン」「近接武器」「ツール」の4種。同じ武器でも,ミッション内容などによって向き不向きがあるので,使い分ける必要も出てくるのだ。誰がどの武器を持っていくのか,ロビーに入ったときからプランニングが始まっていると言ってもいい。
紹介したもの以外にも,弾薬を補充するAmmunition PackやTool Refill Pack,体力を回復するMedical Pack,一時的に霧を除去するFog Repeller,足場を明るくするGlow Stickなど,たくさんのアイテムが存在する。
ただ,このゲームはとにかく補給物資が乏しい。そもそもスカベンジャーたちの装備自体が,この施設内で拾った非常に粗末なもので整えられているという背景もあり,常に物資の節約を迫られることになるのだ。
これで探索する場所がシンプルだったり,それほど広くなかったりすればまだ救いがあるのだが,本作がそんなに甘いわけがない。現時点での主な舞台は鉱山や精錬関係の設備がある場所のようで,高低差のある広く複雑なマップが多いのだ。
また,全体的に暗いうえ,メイン画面にミニマップも表示されないため,非常に迷いやすい。筆者のような方向音痴泣かせだ。道中には当然セーブポイントなども存在しないため,進むべき道を間違えたばっかりにゲームオーバーとなり,最初からやり直し……ということにもなり得るのだ。
生還のカギを握るのは仲間との連携
ここまで半ば脅しに近いような感じで「GTFO」の難しさを紹介したが,本作の面白さは,こうしたいくつもの「過酷な条件」に「仲間との協力」がうまく絡み合うところではないかと思う。
敵1体に発見されると大群で襲われてしまうからこそ,仲間同士で声を掛け合い,タイミングを合わせて同時にステルスキルする必要がある。
また,補給物資が少ないうえに,1人が持てる数も限られているため,誰がどんな武器を持つのか,誰がHPを回復させるのか,場合によっては誰が囮になるのか……など,さまざまな役割分担も考えなければならない。
そして,キーアイテムを回収するために,広いマップをどのように進めばいいのか,限られた弾薬をどこで使うのが効率的かといったことついても,徹底的に話し合って戦略を練る必要がある。
スリーパーズを起こさないように近づいて倒す本作のゲーム性は,鬼ごっこの「だるまさんが転んだ」に例えられることも多い。だが「だるまさんが転んだ」と大きく違うのは,プレイヤーたちが協力していくうちに,寄せ集めの集団がひとつのチームへと変化していくきっかけが組み込まれているところだろう。
例えば,道中に仕掛けられた意地悪な仕掛けへの対処だ。開けるときにアラームが鳴り響く扉がある部屋では,強制的に大量のスリーパーズとの戦闘を強いられることになる。床にある赤い円の中にプレイヤーが入るとセキュリティが解除されるシステムなのだが,それまでは敵のラッシュが続くので,なかなかに苦労する。だが,そうした困難を共有する中でうまく連携が噛み合い,それによって難所を突破したときの達成感は,とても大きなものとなるのだ。
絶望しかないような状況下にあっても,仲間と協力して試行錯誤し,生還の可能性を少しでも上げていくプロセスは,このゲームならではの醍醐味ではないだろうか。
実際には,わずかな希望の光を消し去って仲間をドン底に突き落としたり,突き落とされたりする場合もある。と言うか,そのほうがずっと多いわけだが,それも含めての面白さだと感じる。
なんとかクリアまでたどり着いても,今のところ筆者が知る限りでは,より深い層の開放以外に報酬のようなものは見当たらない。また,敵の性質上,ダッシュ(Shiftキー)や武器の乱用はもってのほかで,基本的にしゃがみ移動がメインになる。ミッションに時間制限が設けられていないこともあって,1回のプレイ時間がどうしても長くなるのだが,こうした点は,「クリア」することではなく,そこに至るまでの「プロセス」の体験自体に重きを置いているからではないだろうか。
深く進めば進むほど,クリアできないことが当たり前になってくる「GTFO」。仲間たちと手探りで試行錯誤する時間をこそ楽しんでほしい,というメッセージが込められているのかもしれない。
プレイヤー全体がひとつのチーム。随所に協力というコンセプトが散りばめられた野心作
「GTFO」とは,「Get The Fuck Out」(消え失せろ)を意味するきつめのネットスラング。
近年,チュートリアルが充実していたり,あれこれ親切な作りになっていたりする作品が多い中で,タイトル名からして人を突き放しにきているようにも見える。だが実際のところは,プレイヤーを楽しませるための野心的・実験的な試みがいろいろと詰め込まれていた。そして,それは正式リリースに向けて,さらに充実していくはずだ。
2020年5月1日に開放された,Rundown#002の最終ステージであるR2E1は,プレイヤー全体のクリア率が一定に達することが開放条件となっていた。そんなところにまで徹底して「協力」というコンセプトを盛り込んできており,プレイヤー全体をひとつのチームとして捉えるシステムは非常に興味深い。
今後は,クラウドゲームサービス「GeForce NOW」への対応が決定しており,今夏にはRundown#003「The Vessel」が配信予定とのこと。次のアップデートではどんな仕掛けを放ってくるのか。この油断ならない作品の続報を,暗い部屋の中で息を潜めて待つことにしよう。
「GTFO」公式サイト
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