プレイレポート
[gamescom]「Chernobylite」のプレイアブルデモが公開。銃撃戦以上に探索やステルスに比重が置かれたサイエンスフィクションに
The Farm 51と言えば,2009年リリースのFPS「NecroVisioN」で本格的にデビューし,最近では2017年の「GET EVEN」や,2018年の「World War 3」などのシューティングゲームで多くのゲーマーにお馴染みとなっている。
ポーランド南西部のグリヴィツェに本拠を置いているということで,1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故は同社在籍者の多くに暗い影を落としており,2016年に事故現場を疑似体験できる「Chernobyl VR Project」というVRコンテンツを手がけたこともあった。
そんなThe Farm 51が2019年11月のリリースを目指して開発を進めている「Chernobylite」の主人公は,原発事故で恋人をなくしてしまったイゴール。彼が「ストーカー」と呼ばれている用心棒たちを雇い,事故から30年後のチェルノブイリへ潜入する過程で,超自然現象を体験するというストーリーが描かれる。
今回公開されたデモでは,イゴールがすでに雇用したアントン,そしてオリヴィエルという2人のストーカーに引率される形で,廃墟になった研究施設のような場所に向かう序盤のミッションがプレイできた。
ストーカーと聞くと,ゲーマーの多くは2007年にGSC Game Worldがリリースしたヒット作「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」を思い起こすかもしれない。
同作が当時の東欧のゲーム開発者たちに大きなインパクトを与えたのは疑いのないところだが,危険地帯を動き回るストーカーという職業については,アンドレイ・タルコフスキー監督による1979年の映画「ストーカー」や,さらにその原作となった1977年のストルガツキー兄弟による小説「路傍のピクニック/ストーカー」にまで行き着く。「Chernobylite」がよくあるアポカリプスものとは異なり,ジメジメとした世界観になっているのも,こちらの影響が大きいと思われる。
少々話がそれてしまったが,「Chernobylite」で興味深いのは,主人公自身はストーカーではなく,銃器を扱ったこともない科学者であるということだろう。敵勢力のピストルを奪って銃撃戦を繰り広げることもできるが,少なくとも冒頭の30分ほどのゲームプレイにおいては,基本的に味方のストーカーたちに指示して相手を始末してもらったり,しゃがんだ状態で背後から近づいてナイフで刺したりといったアクションが多いように感じた。
イゴールは,30年前に失った恋人であるタティアナの残像や幻聴に苦しみ,自分の半生に決着をつけるため,詳しいことが解説されていない何らかのデバイスを発明したうえでチェルノブイリに再び足を踏み入れた。今回のプレイで登場した研究施設も彼の記憶の中にあり,昔の仲間たちの残像や会話が時おり見えたり聞こえてきたりするという,少しホラーめいた味付けでゲームは進行していく。
プレイを進めると,やがて緑のオーラをまとった黒い金属性の物質に覆われた場所へと扉が開かれた。イゴールはやがてその金属の欠片を拾い上げることになるのだが,これが本作のタイトルでもある架空の物質「チェルノブリライト」であると,今回のデモを紹介してくれたThe Farm 51のコミュニティマネージャー,Krzysztof Wojdyla(クリシュトフ・ヴォイディラ)氏が解説してくれた。
緑のオーラは放射能を示していると思われるので,素手で触るのは危険なはずなのだが,どうやらこの場所は現実ではなく,パラレルワールドのような世界のようだ。
タティアナの“秘密”を知られたくない勢力が存在するという,より大きなストーリーが見え隠れしてきた。
前述した通り,本作では銃器によるアクションが中心にはならないのだが,銃の代わりに多くのシーンで使うことになるのが「エンバイロメントアナライザー」と呼ばれる特殊デバイスだ。これは,ガイガーカウンターとしての役割を担うだけでなく,ソナーのような信号を発して,周囲のマップ環境にあるオブジェクトを調べることができる。鉄くずなどの物資だけでなく,ハーブやマッシュルームのような薬品を調合するためのアイテムも探知することが可能で,これを頼りにさまざまなものを収集してクラフティングを行うなど,ゲームシステムはなかなか作り込まれている印象だった。
そもそも「Chernobylite」では,プレイヤーキャラクターに「ヘルス」という自身の体内の放射線レベルを示すパラメーターと,「サイキ」という正気レベルを示す2つのゲージが画面右下に表示されている。
放射線レベルが高いと除染するまで通してくれない,旧ソビエト連邦時代のセキュリティドアのような場所も数多く,それが1つのパズルとして機能する。放射線は,調合した薬品で除去可能だ。
また,サイキはクトゥルフ系ゲームによく見られる「SAN値」によく似たシステムであるが,おそらく本作においてはプレイヤーキャラクターの戦闘能力や,残像やパラレルワールドの出現に関係してくるものになると思われる。
さて,生き残ったストーカーとともに研究施設の上階層にまでたどり着くと,この場所が一種の拠点である「コンパウンド」となった。
ミッションの遂行具合を示す黒板や,集めた記念品のようなものを置く棚に加え,ベッドなどの住環境が備わっている。家具をどのように設置するかはプレイヤー次第になっているようで,さらに多くのストーカーや他の技能を持つ仲間たちを雇用して,彼らに必要な家具やアイテム,食料を探してもらったり,自分でミッションをこなしたりするうえでのハブになるとのことだった。
プレイ時間も残りわずかになったところで,ヴォイディラ氏はタラカンという人物に会いに行くミッションを見せてくれた。タラカンはチェルノブイリに長く1人で住んでおり,少々奇行の目立つ人物として描かれているが,タティアナについて何らかの情報を持っているという重要なキャラクターだ。
出会うのはそれほど難しくなかったが,そのロケーションは「モスクワの目」というあだ名で,「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズや「コール オブ デューティ ブラックオプス」などのゲームに登場したこともある旧ソビエト連邦時代のミサイル防衛施設「デュガ・レーダー」にほど近い建物だった。
会話の内容をフォローすることはできなかったものの,ここでプレイヤーはデュガ・レーダーを破壊するか,小型のレーダーデバイスを持っていくかの選択を迫られる。ヴォイディラ氏は巨大なレーダーを爆破するシーンを見せてくれた。
「Chernobylite」では,「Chernobyl VR Project」や「GET EVEN」と同様に,フォトグラメトリー技術(関連記事)を利用して開発が進められている。
廃墟の室内表現が驚くほどリアルになっていることは言うまでもないが,そこにレーダー爆破のような迫力のシーンが加わるとなれば,見た目にも面白いゲームになるのは間違いなさそうだ。
「Chernobylite」公式サイト
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