インタビュー
[インタビュー]「Apex Legends」,新レジェンド“バリスティック”はどのようにして生まれたのか
新シーズン開幕に先立ち,新レジェンド「バリスティック」についてRespawn Entertainmentの開発チームへインタビューする機会を得た。本作の練り上げられたストーリーや,レジェンドのキャラクター性に惹かれるファンも多いと思うが,ぜひ本稿で,“バリスティックのバックグラウンド”について興味を持ってもらえれば幸いだ。
今回のインタビューで回答してくれたのは,「Apex Legends」開発チームのNarrative Leadを務めるSam Gill氏と,Senior Legend Designerを務めるJohn Ellenton氏。バリスティックの生みの親と言える存在である。
「Apex Legends」新シーズン“アーセナル”の最新情報。イケてるおじさん“バリスティック”登場。戦場にも数々のアップデートを予定
バトルロイヤルFPS「Apex Legends」の,新シーズンとなる「アーセナル」の情報が公開となった。本シーズンでは新レジェンド「バリスティック」が登場するほか,ワールズエッジの改変,射撃演習場のアップデート,ウェポンマスタリーの追加などが行われるというわけで,その詳細をお伝えしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
では早速,バリスティックについて聞かせてください。私は何度も本作の発表会に参加していますが,彼の姿を見たとき,個人的には過去最高にクールなレジェンドだと一瞬で感じました。ローンチにあたって,お二人の率直な感想をお願いします。
Sam Gill氏:(以下,Gill氏)
私も一番好きなレジェンドなんです。新しいレジェンドのプロモーションをするために,お世辞を言っているわけではありませんからね(笑)。本当に気に入っているレジェンドです。ゲーム内の会話も非常に面白いですし。そう,ヒューズのようにどこかコミカルで,ホライゾンのような情熱も持っている。ゲームをプレイすれば,お分かりいただけると思いますが,シェイクスピアを引用したりします。そういう部分も好きです。
John Ellenton氏:(以下,Ellenton氏)
私もバイアスが掛かっているかもしれませんが(笑),一番好きなレジェンドです。ユニークなキャラクター性はもちろんですが,ゲームプレイという面でも,非常に楽しめるレジェンドだと思います。“仕掛けられる”能力の持ち主ですし,味方との協力が噛み合えば,もう止まらずに攻撃を繰り出せますからね。ビギナープレイヤーにも使いやすいとは思いますが,本領を発揮するには高いスキルが必要かもしれません。いずれにせよ,多くの方に使っていただけるレジェンドになったと考えています。
4Gamer:
バリスティックの開発にあたって,ターニングポイントとなった瞬間はありますか。
Gill氏:
バリスティックのボイスアクターのオーディションは,さまざまな実績のある素晴らしい方を呼んで実施しましたが,Robin Atkin Downes氏(イングランド・ロンドン出身の俳優。過去にDestiny 2,トゥームレイダーなどに出演)との出会いが,バリスティックを生まれ変わらせました。私はバリスティックの台詞を書いていましたし,自分の中での“バリスティック像”のようなものも持っていたので,話し方のリズムや,特徴などをアクターに伝えていたんです。「このような演技をしてください」と。
I can’t wait to share this amazing character #Ballistic with you all! So happy to be a part of this amazing game @PlayApex
— Robin Atkin Downes (@Robin_A_Downes) April 25, 2023
Thank you @Respawn and @EA for the opportunity!!!!
And thank you Terri Douglas!!!!https://t.co/lhK3djWck2#AugustBrinkman #Ballistic #ApexLegends https://t.co/55t2kGl9wj
ですが,オーディションの最中に「自分が考えるバリスティックを試してみてもいいか?」とRobinから提案がありました。私は「もちろん」と返して,実際に演技をしてもらったんです。その瞬間に確信しましたね。「これこそがバリスティックだ」と。その後,彼の演技に合わせるために,1500行くらいの台詞を書き直しました。
4Gamer:
それはすごい。自分の中のイメージを上回る演技に出会ったわけですね。技術的な側面では,トレンチコートは難しく,実装に時間が掛かったと聞きましたが。
Ellenton氏:
キャラクターの着想を得たのが約1年前で,そこから制作に入りましたが,それ以前にも,「トレンチコートをやりたいね」という話はあったんです。ですが,バリスティックの開発が進むにつれ,「いつかやりたいね」から,「今やるしかない」へと変わっていきました。今回,このようなケースで実装できたので,今後はトレンチコートのように丈が長く,上手く流れるようなエフェクトを持つ服装のレジェンドが導入されるかもしれません。
4Gamer:
バリスティックの能力を見たときに「使っていて面白そう!」と直感的に感じました。彼はゲームチェンジャーにもなり得ますか。
Ellenton氏:
それは今後のシーンが証明してくれるでしょうが,実際にバリスティックの能力は,かなり効果的なものになると思いますし,彼の登場によって,シーンがより面白くなると考えています。「刺激を与え,新たな楽しみをもたらす」という点は,新たなレジェンドをデザインするにあたって,常に念頭に置いていることでもあります。
4Gamer:
彼の戦術アビリティは,「タイタンフォール」のスマートピストルを彷彿とさせる部分がありますよね。開発段階でも意識されていた事柄なんでしょうか。
Ellenton氏:
開発という側面で言えば,やはりインスパイアされた部分はありますね。一方で,彼が持つWHISTLERは,専用にカスタマイズされた一品ものです。「タイタンフォール」で見られたスマートピストルの能力でないのは,こうした背景の設定もあるのです。
4Gamer:
バリスティックが持つアビリティの数々は,どのようなプロセスを経て組み込まれたのでしょうか。
Ellenton氏:
アビリティは様々なバリエーションをテストしました。たとえば,パッシブアビリティのSLING“第3の武器”ですが,初期のバージョンは「純粋に携行数を増やす」というものでした。ただ,このバージョンは,武器が増えることによるアタッチメントの管理など,プレイヤーへ与えるストレスが大きかったんです。フルアタッチメントのウェポンであれば,ゲームバランス的な部分でも大きな影響を与えますからね。
その後,5〜6回のテストを経て,最終的に「装備できるのはベース武器のみ。アタッチメント装着不可」という,今の形に落ち着きました。ただし,“お楽しみ”は必要ですから,アルティメット中,SLINGで持つウェポンがアップグレードされるようになっています。
4Gamer:
ゲームプレイがとても楽しみです。ところで,バリスティックは英国紳士がモデルとうかがいました。架空の世界である「Apex Legends」に,現実の英国紳士を落とし込むにあたり,どのような点に気をつかって,作業に取り組んだのでしょうか。
Gill氏:
極初期のコンセプトは英国紳士ではなく,どちらかというと,スカンジナヴィア的な要素が大きかったんです。ただ,手を加えるにつれて,自然と「英国紳士の方が,コンセプトにより合うよね」とスタイルが変化していきました。インスピレーションを受けたのは英国紳士だけではなく,たとえば「ジョン・ウィック」の彼が持つ残虐性や,英国でいえば「007」のジェームズ・ボンドですね。彼の持つクールさ,カッコよさを参考にしました。
あと,これは初めて言うのですが,「ファインディング・ニモ」のマーリンも参考にしたんです。妻や多くの子供を失って,彼にはニモしか残っていないと。過保護になり,劇中ではそれがきっかけで親子の関係が崩れることになりますが,そうした“苦しむ父親像”もテーマにしています。
4Gamer:
なるほど。極初期のコンセプトのまま進んでいれば,彼は別のキャラクター性を持っていたかもしれない,というわけですか。
Gill氏:
英国紳士というコンセプトはありましたが,我々としては,「ストレートに英国紳士は安易すぎないか?」という懸念がありました。そのため,要素は残しつつも,できるだけ英国紳士から離れる方向性を進めていたんです。ただ,「紅茶が好き」「シェイクスピアを引用する」「冷静沈着な紳士」というキーワードは,どう考えても英国紳士のものですよね(笑)。そこからは自然と,“彼があるべき姿”に回帰していきました。
そして,先ほども触れましたが,Robin Atkin Downesとの出会い。これが本当に最高のタイミングでしたね。
4Gamer:
ということは,英国的な台詞回しなども登場するのでしょうか。
Gill氏:
はい。もちろんです。レジェンドを検討・開発するにおいて,現実世界をモチーフにした立ち振る舞い,言動を反映するようにしています。私が以前に取り組んだ作業はマッドマギーですが,彼女のモチーフはニュージーランド,そしてマオリ族です。マオリのコンサルタントからのサポートも受けたうえでリリースしています。
その点,バリスティックも非常に興味深いレジェンドですが,彼は年配なので,あまり現代的なスラングは使用しないかもしれません。シェイクスピアを引用するように,どこか古風なんです。こうした取り組みによって,世界中のプレイヤーが,まだ見ぬ世界,聞いたことがない言葉に触れてもらえれば嬉しいと思っています。
4Gamer:
ローンチトレイラーで使用されていた楽曲が,Beyond the Seaなのが印象的でした。非常にマッチしていて素敵でしたが,この曲はラブソングですよね。バリスティックにも恋する存在がいるんでしょうか。
Gill氏:
とても面白い質問をありがとう(笑)。今のバリスティックは孤独で,愛情というか,寄り添う相手を求める側面があると思います。自分にない愛情を概念的に求めているんです。
4Gamer:
トレイラーの質問でもう一つ。エーペックスレジェンズ | アウトランズ・ストーリーズ - 「アンコール」の冒頭で,彼はスムージーのような飲み物を飲んでいましたね。飲み物に何かを混ぜていましたが,英国紳士ということで,やっぱりスコッチとか,アイリッシュあたりのウイスキーを混ぜていたんでしょうか(笑)。
Gill氏:
あはは(笑)。私には,あれがお酒かどうかは分からないね。単にイチゴ味のドリンクかもしれないし,もっと“スペシャル”なドリンクかもしれません。
Ellenton氏:
夜に一杯やるワンシーン……的な感じだね(笑)。
4Gamer:
それは非常に興味深いです(笑)。それでは,最後に日本のプレイヤー,ファンに向けてのコメントをお願いします。
Gill氏:
本当に多くのファンの方に作品を愛していただき,とても嬉しく思っています。とくに日本では,素晴らしいアート,コスプレなどが多く発信されていて,我々も,とても楽しませてもらっています。引き続き,ゲームを楽しんでもらえたら嬉しいです。
Ellenton氏:
このゲームが,日本という国でとても愛されていることを嬉しく思います。Samと同じく,新たなレジェンドを世に送り出せることにとても興奮していますし,ワクワクしています。引き続き,ゲームを楽しんでください。よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Apex Legends」公式サイト
- 関連タイトル:
Apex Legends
- 関連タイトル:
Apex Legends
- 関連タイトル:
Apex Legends
- 関連タイトル:
Apex Legends
- 関連タイトル:
Apex Legends
- 関連タイトル:
Apex Legends
- この記事のURL:
キーワード
(C)2019 Electronic Arts Inc.
(C)2019 Electronic Arts Inc.
(C)2019 Electronic Arts Inc.
(C)2019 Electronic Arts Inc.
(C)2019 Electronic Arts Inc.
適用されるプラットフォームアカウントおよびプラットフォームのサブスクリプション(別売)が必要となる場合があります。永続的なインターネット接続およびEAアカウントが必要となります。年齢制限が適用されます。ゲーム内購入が含まれています。 条件および制限が適用されます。www.ea.com/ja-jp/legalでご覧ください。