インタビュー
[インタビュー]鈴木達央さんが3年間で積み上げてきたこと。アニメ「ケンガンアシュラ」Season2への想いを聞く。Season1の振り返りもお届け
インタビューは,鈴木さんや制作陣たちの作品へのこだわりをたっぷり感じられる内容になっているので,Season2を楽しみにしている人は必見だ。さらに記事後半では,Season1の振り返りもお届けする。インタビューや振り返り記事はSeason1のネタバレを含むので,これから「ケンガンアシュラ」を観るという人はご注意を。
なお,鈴木達央さんより,直筆サイン色紙(1枚)を読者プレゼントとしていただいた。9月11日に掲載する記事「Weekly 4Gamer」でプレゼントの応募を行うので,そちらもお楽しみに。
アニメ「ケンガンアシュラ」Season1振り返りを読む
「ケンガンアシュラ」配信&ジャパンプレミア情報を見る
制作陣&声優陣全員が
切磋琢磨して作り上げた3年間
4Gamer:
待望のSeason2配信決定が去年発表されました。今,あらためてお気持ちをお聞かせください。
鈴木達央さん(以下。鈴木さん):
「やっと発表できた」という気持ちでした。実はSeason2の制作決定を,Season1の放送が落ち着いたくらいのタイミングで僕はもう知っていました。制作の皆さんと,僕自身が密にやりとりをさせていただいていたので,いろいろな意見交換をするなかで僕も(先の展開を)知っていることが多くて。
「9月にSeason2いけそうです」となってからは,Season2をより良い続きにするための“練る”作業に入っていきました。そうした過程を随所で聞いていたので,やっと発表できるという気持ちが強かったです。
4Gamer:
Season1終了後もスタッフの方々とは密にやりとりされていたんですね。割とよくあることなんですか。
鈴木さん:
ないと思います(笑)。脚本の話数とか,本当はこれくらいのボリュームだったとか……そこまで知っているのは,制作委員会以外の皆さんではおそらく僕だけです。
4Gamer:
「ケンガンアシュラ」の現場ならではなんですね。
鈴木さん:
そうです。「ケンガンアシュラ」をとおしてできた仲間たちとの絆もありましたし,それプラス”友情”みたいなものも育まれた場所でした。とても感謝していますし,つないでくれたご縁が非常に大きかった作品です。(制作側に)僕が座長だからこそ”この形”になった,と言っていただけたことにも救われ,多くの方々に支えてもらったからこそだと思いますので。皆さんのおかげです。
4Gamer:
とても結束力のある現場だったのですね。ちなみにSeason2が決まるまでの間には,十鬼蛇王馬を演じる機会はありましたか。
鈴木さん:
ありません! Season2が始まりますとなったときに,スタッフの方と別の収録でいろいろとお世話にはなりましたが。
4Gamer:
久しぶりの収録ということで,役に入る難しさを感じられたりは……?
鈴木さん:
まったくありませんでした。アフレコでいうと3年ぐらい空白期間がありましたが,その間に次はどうしようかなど,Season2に至るまでに自分で研究できることはなんだろう……と考え,実はこっそりと積み上げていました。Season1を見返したときに,「ここが足りなかった」という次の課題が明白だったので。
4Gamer:
課題といいますと?
鈴木さん:
“リアルさ”の追求です。Season1は,岸さん(監督の岸 誠二氏)を筆頭に,リアルを求めたい,ファンタジーではない世界観でいきたいという想いで作っていたため,“リアル”を重要視してシーンに合う息を入れるといったことにこだわりました。
しかし,リアルを突き詰めるあまり,“リアリティ”という言葉が抜け落ちてしまっていたな……というのが僕の反省点です。Season2では,リアルではなく,見ている方々に伝わる“リアリティ”というものを,作らなければならないと思いました。ですが,それには勉強が足りなすぎたため,この3年間でずっと積み上げていました。
4Gamer:
どういったことをされたのでしょう。
鈴木さん:
最初の2年間は座学から始めました。そこから実際の問題を変えていこうと。自分的に見つめ直す機会があったため,身体的にも全部変えるために残りの1年半は肉体改造をしていました。
自分のなかにさまざまな「trial and error」があり,トレーニングメニューをしっかり見直したことで,大きく変わりました。これはほかの仕事にも影響を与えられることですが,それが直結で大きく影響する作品が「ケンガンアシュラ」でした。
4Gamer:
座学は,やはり格闘技についてですか。
鈴木さん:
そうです。すごく助かるのが,今は動画サイトなどでいろいろな格闘技だったり,武術だったりに通ずる方々が解説されていることです。あとは一子相伝(いっしそうでん)みたいな動画もたまにあります。そういったものや当時の試合映像などを全部とりまとめて見ていくことで,さまざまな息づかいを研究することができました。それをどういうふうに当てはめていけば,良く聞こえるのか,それっぽく聞こえるのか。
Season1はリアルではあったかもしれませんが,伝わりづらいこともあり,リアリティのあるほうがより伝わるのではないか。そうであればそのリアリティに変換していく作業が必要なため,(座学で)リアルを学び,そのうえでリアリティを持たせるためにはどうしたら良いのか……と逆説的に考えていくことを一つひとつ意識していきました。
4Gamer:
役者さんが意識するリアルとリアリティにはどんな違いがあるんでしょうか。
鈴木さん:
例えば,ボクシングや柔術などもそうですが,手数が早い打ち方をしているときは,無音か破裂音が混ざった「スーッ」という音が出ます。それに動きがつくため「シュゥッ」という音になることが多いのですが,これだとマイクにはのらず,風切り音みたいになるんです。
4Gamer:
それがリアルですね。
鈴木さん:
その音を王馬で入れるとなると,音を少しのせてあげて破裂音を含ませる。「「「ッゼェェッ!!」」」……というような。
4Gamer:
おおおっ(空気が振動する感覚)。
鈴木さん:
「スーッ」という抜ける音と,破裂音を入れてあげれば,アクションとのコンビネーションが合い,“リアリティ”になります。……これを文字上で起こすのは大変だと思いますけど(笑)。
4Gamer:
頑張ります! それにしても生の音の迫力に圧倒されました。空気が震えるんですね。
鈴木さん:
それが王馬には必要なことでした。風切り音はリアルには聞こえるけども,そこにさまざまなSEの「バチィーン!」や「ドーォオン!」という音や,BGMが乗っていたりすると消えてしまいます。アニメーションのなかですべてを合わせると,意外とボリュームとしては小さく聞こえてしまいます。
ノイズキャンセリング(周囲の雑音を打ち消して低減させる機能)ってあるじゃないですか。打ち消される音の周波数帯と同じ周波数帯の音は消えてしまうため,声を出したとしてもBGMやSE,MEが混ざった瞬間に打ち消される音ができてしまう。ですので,打ち消されない音も入れないと際立って聞こえない……ということが,Season1で分かったことでした。だからこそリアルではなく,リアリティをとることが大事になります。
4Gamer:
Season2では音の違いにも注目なんですね。
鈴木さん:
そうです。王馬に関してはとても意識しながらやっています。それが本当の正解か,不正解かなどは分かりませんが,今のところ音響の方も含め,監督方からもそれに対してNOを言われたことはありません。逆に“こちら(制作)側としても勉強になっている”と言っていただいているので,良い作用にはなっていると思います。
4Gamer:
作品とお芝居への強い想いが伝わってきます。
鈴木さん:
そうしないと本当にあるかもしれないリアリティや,何かわくわくするような高揚感は出てきません。怖さやヒリつく感じ,練度だったり……自分たちの緊張感も含めて,そういう良い形を作り上げていかないと,と思っています。それが下がってしまうと,見ている人はすぐに気が付きます。視聴者の皆さんが作り手よりも実は感度が高かったりするため,気を付けるようにしています。
4Gamer:
Season1を拝見してめちゃくちゃ熱かったので,あれが完璧なものだと思っていたのに,Season2でさらに進化したものを見られるのかと思うと楽しみすぎます。
鈴木さん:
僕たち声優で言うとそういうところですし,岸さんをはじめとするチームの皆さんは,モデリングから全部変えていると思います。
4Gamer:
え! 変わるんですか。
鈴木さん:
岸さんはSeason1のときに,「ケンガンアシュラ」の監督なのに自分がだらしない体をしているのは許せないと,肉体改造をされ,それに影響されて周りの皆さんも肉体改造を始めていました。
ご自身が体を鍛え始めたことで,筋肉はこういう付き方をしていくのだと気付き,考えるところがあったのだと思います。Season1(Part2)の王馬 対 雷庵戦の前に岸さんが,「王馬の体を1からモデリングしなおしていい?」と,LAX(「ケンガンアシュラ」のアニメーション制作会社LARX ENTERTAINMENT)におっしゃったそうで……。頼むからやめてくださいと全員で止めたみたいです(笑)。
4Gamer:
そんなことが……。
鈴木さん:
そういうこともあり,ここに至るまでにモデリングにはすべて見直しが入っているはずです。ここが強い人だったらこの筋肉が発達してるはず,背中のほうにいびつさが出てるはず,といったように筋肉の付き方は調整されています。
本来見せたいものにどんどん変わっているため,絵の部分でもSeason2は全然違うと思います。とくに仕合シーンは,闘技者同士のぶつかり合いを次はどうするか,どう見せるかなど,見せ方や撮影の仕方も含めて変わっています。
4Gamer:
これは見どころだらけですね。鈴木さんは完成したぶんのSeason2をすでに観られていると思いますが,実際いかがでしたか。
鈴木さん:
Season1のとき,感覚的に「もう少し良くなるだろうな」と思っていたのですが,今回Season2を観て「(物足りないところが)何にもない!」となりました。観るのに夢中で,一瞬で終わってしまいます。
疑問に思うことがあると,人はそこで意識が遮断されます。それがないのは,あまりにすべてが滑らかに行き過ぎているということなので,一番理想的な形に仕上がっています。
4Gamer:
そうなんですね!
鈴木さん:
各セクションが,Season1で細かいところをしっかり見たうえで,Season2ではこうしたほうが滑らかに見える,こうしたら良くなる……という見直しを行い,次に進んでいるなと感じました。
Season2の制作チームには,Season1のときにはいなかったスタッフさんもいます。新しく参加したスタッフの方々が「Season1はどうでした?」とか,「僕たちの考え方は合っていますか?」などたくさん質問してくださって。Season1で培ってきたものをしっかりと受け継ぎ,Season2でより良いものに変えていこうとする姿勢が伝わってきました。
「ケンガンアシュラ」を良い作品にしようと考えている方々の集まりであることは変わっていないので,とてもうれしかったです。
4Gamer:
作品もですが,スタッフの方々も熱いですね。
鈴木さん:
アフレコのときも面白いです。
4Gamer:
アフレコの様子もぜひお聞かせください。
鈴木さん:
「殴り方が違うのでこの息にしてください」や「そういうパンチではないです……」といったディレクションがあります。
4Gamer:
リアルへのこだわりですね。
鈴木さん:
複数人で収録しているときは,僕自身も「ここに力が入ってるけど,こちらは抜け感が必要で……」のような話を,役者同士ですることもあります。
4Gamer:
例えばどんな感じですか。
鈴木さん:
今井コスモ戦では,グラップリング(組み技で闘う競技の総称)が出てくるのですが,グラップリングは骨盤と体幹,中丹田(胸の中央),下丹田(おへそから指3本分下あたり)を使って行うため,(息を収録するときも)そのあたりに力が入ります。
だからこそ芯のある状態でぐるっと相手をはねのけたり,相手の上に乗り動けなくすることができるんです。グラップリングをされたことがある人だと分かるのですが,重量級の人が,軽量級の人から押さえ込みをくらうことはよくあります。
4Gamer:
そうなんですか。
鈴木さん:
これは体幹や重力といったものを駆使して押さえ込んでいます。そういったものは息遣いに表れるため,ただ力んでいる息とは違うんです。
4Gamer:
それを理解していないと演じるほうも難しそうです。
鈴木さん:
そうなんです。それだと一生リテイクをもらうので,アドバイスをするのですが,僕もマニアックなので……。
4Gamer:
マニアックでお願いします。
鈴木さん:
例えば,「骨盤底筋の裏側のところに意識を入れ,締めた状態で上半身の力を一回抜いて」や,「力が入ると喉が閉まるから,喉は閉めずに(今言ったことを)全部コントロールしながら息を吐いてみて。これが表現にあたるところだから意識してね」……などとディレクションします(笑)。
4Gamer:
かなり具体的に指摘されるんですね。
鈴木さん:
これがどういうものかということを,全部かみ砕いて説明ができる程度には勉強しました。リアルと,リアリティを出すためにはどうしたらいいのか,バランスを頭で考えながら収録しています。
4Gamer:
格闘技の経験者が観たら,細かいところも気付きそうですね。
鈴木さん:
Season1のときにありました。アニメの3話で関林に投げられたとき,聞いたことのない呼吸音がしまして。プロレスリング・ノア(NOAH)所属の清宮海斗選手から,「あれ何でできたんですか? プロレスラーしか聞いたことのない音だと思うんですけど,実際に投げられたんですか?」と言われたことがありました(笑)。
※アニメ「ケンガンアシュラ」Blu-ray&DVD第1巻の特典として付属された雑誌「ケンガン」には,清宮選手のスペシャルインタビューが掲載されている
僕の想像だけでやりましたと伝えたら,「本当にあの音,鳴るんです」と言っていただいたことがとても印象に残っています。言い方は良くないですが,“プロもだませる”と自信を持てました。
4Gamer:
それはうれしいですね!
鈴木さん:
それくらい本気で収録しているので,収録後は軽く酸欠状態になります。この間,何も気にせずにグレーのシャツを着て収録に行ったら汗がひどくて,肺の下くらいまで汗がくっきり……。収録中はまったく気が付かず,「何でみんな,何も言ってくれないの!?」と言ったら,そうなって当たり前だよという反応でした(笑)。
4Gamer:
それは熱い現場で……。現場の楽しさが伝わってきました(笑)。
鈴木さん:
とても楽しんでいます。収録が終わってもなかなか帰らない人もいるくらいです。「ケンガンアシュラ」の現場は“ベテランの方がなかなか帰らない”で有名です。happyな現場です。
4Gamer:
あらためて王馬の魅力を教えてください。
鈴木さん:
王馬の魅力は,Season1とSeason2で少し違います。Season1は,王馬の野性味溢れるところや,若さゆえの尖った部分がありつつ,拳願絶命トーナメントをとおして彼の人間的な成長が描かれました。常人では考えられないような成長が王馬のなかでは行われています。
本能的なオスとしての魅力から,Season2では,いろいろなものを感じ,咀嚼しようとする知性的な魅力が加わっていきます。王馬はこのあとどう生きるのか,何を選択するのかが大きなポイントです。
4Gamer:
なるほど。確かにSeason1の王馬は,深く考えずに野性的な感じがありましたね。
鈴木さん:
僕としては,どう表現するのか……というところで。昔と今では,同じ言葉でも全然違うように聞こえることがあります。それは声色や言い方が変わっているからなんです。
4Gamer:
より実感がこもりますね。自信の有り無しも声に表れたりしますね。
鈴木さん:
ということは,声は成長できる起爆剤ということになります。それを僕たちは演じることができるため,Season2で王馬の魅力を倍増させることが課題の1つになっています。
4Gamer:
アニメならではの見せ方ですね。
鈴木さん:
岸組で作った「ケンガンアシュラ」でしか見せることができません。仕合シーンも,実は漫画の表現と変わっているところがあります。漫画原作があり,完結もしているけれど……今言ったことはアニメを観ないと分からないことです。逆にアニメを観てから原作を見ると,まったく違った面白さを感じられると思います。
4Gamer:
非常に楽しみです。最後に,Season2を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
鈴木さん:
満を持して皆さんにお届けできます。Season1が終わった直後くらいから動き始めていたこの作品を,やっと皆さんにお届けできることがとてもうれしいです。
そのうえで,ただ時間が経っていただけではないんだぞ,というところを,僕たちは見せないといけません。アフレコに入るまでに時間が必要だったことも,岸さんをはじめとする皆さんが仕合シーンの細かいところを何度もリテイクし,熱量を込めて制作していたからです。そのぶん良い作品になると,僕たちも信じています。
そして,脚本の話数にも意味があります。Season2のPart1がなぜ12話で終わるのだろう……と皆さんも感じると思うので,そういった反応も楽しみにしています。
僕たちがしてきたすべては,「ケンガンアシュラ」をより良くするためです。もし,このインタビュー記事を読んでワクワクしてくださったなら,その状態のまま9月に放送されるSeason2のPart1を,ぜひ楽しみに待っていただけたらうれしいです。
4Gamer:
ありがとうございました!
――2023年5月19日収録
アニメ「ケンガンアシュラ」
Season1を振り返りたい!
ここからは,Season2をもっと楽しむために,Season1の物語を振り返るとともに,アニメの魅力的なポイントをチェックしていこう。
アニメの概要をチェック
企業同士が巨額の利益を賭け,雇い入れた闘技者に格闘仕合を行わせる企業間の代理戦争“拳願仕合”を舞台にした「ケンガンアシュラ」。56歳のしがないサラリーマン・山下一夫が,謎の闘技者・十鬼蛇王馬と出会い,拳願仕合に参加することになる……というのが物語のあらすじだ。それぞれの想いを胸に戦う闘技者たちの仕合だけでなく,思惑渦巻く企業同士の駆け引きも見どころである。
原作は,サンドロビッチ・ヤバ子氏(原作)・だろめおん氏(作画)による漫画作品で,2012年4月から2018年8月まで裏サンデー(小学館)で連載され完結している。現在は,原作漫画の舞台より2年後を描く新章「ケンガンオメガ」が連載中だ。「ケンガンアシュラ」「ケンガンオメガ」ともに,コミックアプリ「マンガワン」でも配信されているので,気になる人はチェックしてみよう。
大規模なトーナメント参戦を描くSeason1
2019年7月31日よりNetflixで独占配信されたSeason1は全24話で,十鬼蛇王馬と山下一夫の出会いから「拳願絶命トーナメント」の2回戦第2仕合(十鬼蛇王馬 VS. 呉 雷庵)までが描かれた。2023年9月21日から配信予定のSeason2では,原作漫画「ケンガンアシュラ」の完結まで……つまりトーナメントの決勝戦までの物語が描かれる。その前にSeason1の物語をさくっと振り返ろう。
●山下一夫と十鬼蛇王馬
中年サラリーマン・山下一夫は,自身が勤める乃木グループの会長によって闘技者である十鬼蛇王馬の世話役に任命され,企業間の代理戦争「拳願仕合」に関わっていくことに。仕合を通じ絆を深めていく2人の関係性や,冴えない人生を送っていた山下が人間としてたくましくなっていくところも見どころだ。メインヒロイン的な立ち位置の癒しキャラでもある。●十鬼蛇王馬の戦う理由
王馬は,闘技者となった理由を“自分が一番強いことを証明するため”だと口にしつつも,自分の師匠である十鬼蛇二虎を殺した因縁の相手を探すために「拳願絶命トーナメント」への参加を希望していた。しかし,乃木グループの代表闘技者の座を初見 泉に奪われてしまう。王馬を絶命トーナメントに参加させるため,山下は1億円の借金とともに,半ば強制的に山下商事の社長にさせられるのだった……。闘技者のなかでも無類の強さを見せる王馬だが,苦戦することもある。そんなとき王馬は,身体能力を最大限に引き出すことのできる“前借り”を使い戦う。その姿はまさに“阿修羅”。
●「拳願絶命トーナメント」開始
「拳願絶命トーナメント」の開催地へ移動する船の中で,突如予選が開催されるも,無事通過して本戦へと進む王馬。予選から個性的な闘技者であふれており,なかには乃木グループの闘技者として初めて戦った相手・理人の姿もあった。そして,いよいよ拳願絶命トーナメントの本戦が始まり,強者たちによる熱き仕合が続々と展開されていく! 戦い方はもちろん,見た目もインパクトのある闘技者ばかりだ。
●“前借り”に頼らない王馬なりの“二虎流”
Season1のクライマックスは,絶命トーナメント2回戦第2仕合,“阿修羅”十鬼蛇王馬 VS. “禁忌の末裔”呉 雷庵だ。山下と王馬は,暗殺集団・呉一族の長,呉恵利央と雷庵から,仕合の勝敗に山下の息子,健蔵の命を賭けることを持ちかけられてしまう(実は健蔵はただのひきこもりではなかったのだ!)。雷庵は呉一族のなかでも“歴代最凶”と呼ばれ,異端視されている。残忍な性格で欲望のままに闘う雷庵を相手に,“前借り”を使ってもなお追い詰められていく王馬。“前借り”の副作用もあり,自身の身体への負担も相当なものだった。
そんな王馬を心配しつつも,大切に思うからこそ王馬を信じ,必死に声援を送り続ける一夫。戦いの最中,二虎の幻影から“武”とは何か。“技”とは何か。そして“二虎流”とは何かを説かれた王馬は,山下と二虎の想いを受け“二虎流”の神髄に気付く。そして……。一皮剥ける王馬の姿が見どころであり,Season2への期待がさらに高まるSeason1のラストであった。
十鬼蛇王馬(CV:鈴木達央)
所属 | 山下商事 | ||||
異名 | 阿修羅 | ||||
使用武術 | 二虎流 | ||||
年齢 | 不明 | 身長 | 182cm | 体重 | 85kg |
失伝したとされていた二虎流の技を駆使する謎の格闘家。鋭い眼力やまとったオーラは他を圧倒し,並大抵ではない人生を歩んできたことを物語る。金や権力には一切興味がなく,自身が最強である証のみを求め闘っている。戦いの場面以外では,負傷しても肉を食べれば治ると豪語していたり,自分へ好意を向ける女性の行動が理解不能で思考停止したりといった微笑ましい一面も。
関林ジュン(CV:稲田哲)
所属 | ガンダイ株式会社 | ||||
異名 | 獄天使 | ||||
使用武術 | プロレス | ||||
年齢 | 38歳 | 身長 | 196cm | 体重 | 141kg |
デスマッチから本格的なプロレスまでこなす超日本プロレスの不動のエースであり,拳願仕合でも上位に数えられる実力者。相手の攻撃をガードしないなど,拳願仕合の場でも,エンターテイナーに徹し,プロレスラーであることに誇りを持っている。実際のプロレスと同じく,相手の技を受けて勝とうとする姿は,プロレス好きならグッとくるはず!
若槻武士(CV:加瀬康之)
所属 | 古海製薬 | ||||
異名 | 猛虎 | ||||
使用武術 | 空手 | ||||
年齢 | 40歳 | 身長 | 193cm | 体重 | 193kg |
現役では最古参の闘技者で,歴代最多勝利を誇る,絶命トーナメントの優勝候補の最右翼。素手でコンクリートを砕くほどの怪力の持ち主で,“猛虎”の異名を持つ。闘技者仲間の今井コスモや関林ジュンとは親しい仲で,優しさが感じられる。室淵剛三と対戦して,圧倒的な強さを見せていたが,その姿は一瞬しか見られなかったので,Season2でのさらなる猛攻に期待!
今井コスモ(CV:榎木淳弥)
所属 | 西品治警備保障 | ||||
異名 | 絞殺王(キング・オブ・ストラングラー) | ||||
使用武術 | 柔術 | ||||
年齢 | 19歳 | 身長 | 171cm | 体重 | 68kg |
史上最年少(14歳)で拳願仕合デビューし,その後21戦無敗の天才格闘家。柔術をベースに,変幻自在の絞め技を駆使する“絞殺王(キング・オブ・ストラングラー)”の異名を持つ。フレンドリーでコミュニケーション能力が高く,裏・表どちらの社会においても交友関係が広い。こわもて揃いのなかで,柔らかな印象を受ける彼だが,仕合を見ると力強い締め技に圧倒されること間違いなし。
桐生刹那(CV:浪川大輔)
所属 | 皇桜学園グループ | ||||
異名 | 美獣 | ||||
使用武術 | 狐影流 | ||||
年齢 | 26歳 | 身長 | 180cm | 体重 | 75kg |
多数の相手を一蹴するなど,その実力は確かだが,ほとんどが謎に包まれている美青年。十鬼蛇王馬とは過去に因縁があるようで,彼に対し異常なまでの愛を見せる。随所で見られる王馬へのねっとりした絡みはもちろん,Season1のラストで見せた怒りの感情も印象的だ。
御雷 零(CV:小野大輔)
所属 | ゴールドプレジャーグループ | ||||
異名 | 雷神 | ||||
使用武術 | 雷心流 | ||||
年齢 | 26歳 | 身長 | 179cm | 体重 | 77kg |
1200年の歴史を持つと言われる謎多き暗殺拳・雷心流(らいしんりゅう)の現当主。そのスピードを活かした戦闘スタイルはまさに「雷」そのもの。クールで無愛想な反面,自身の雇用主であり,一目惚れした倉吉理乃への純愛を誓う一面も持つ。Season1ではクールに勝利した零。Season2での戦いぶりはもちろん,何か思惑を抱えていそうな理乃との関係からも目が離せない。
黒木玄斎(CV:玄田哲章)
所属 | モーターヘッドモータース | ||||
異名 | 魔槍 | ||||
使用武術 | 怪腕流 | ||||
年齢 | 51歳 | 身長 | 185cm | 体重 | 96kg |
沖縄発祥の殺人拳法・怪腕流(かいわんりゅう)の当主であり,暗殺者。苛烈を極める部位鍛錬の末に,槍と化した四肢“魔槍”を持ち,その威力は船の看板にやすやすと穴を空けたり,人体を貫くほど。堂々とした立ち姿は強者感たっぷりで,原作を読んでいるとSeason2での戦いぶりに今から期待が膨らむ
加納アギト(CV:大塚明夫)
所属 | 大日本銀行 | ||||
異名 | 滅堂の牙 | ||||
使用武術 | 無形 | ||||
年齢 | 不明 | 身長 | 201cm | 体重 | 128kg |
その実力は,拳願仕合史上最強と称され,前人未到の157戦無敗を誇る「拳願仕合の帝王」。技や型に囚われない柔軟なファイトスタイルは万能。対戦相手に絶対的な恐怖を植え付け,闘争心をへし折るため,そのほとんどを闘技者として再起不能に追い込んでいる。感情の起伏がなく,まるで戦闘ロボットのような人物だが,大久保直也との仕合で見せた表情は,闘いを楽しむ阿修羅にも見えた。オールバックヘアーがだんだん崩れていくところが,ワイルドで非常に良い!
3DCGでリアルに表現された“仕合”。
そして“音(声)”の表現に注目
アニメの最大の特徴は,3DCGアニメーションで表現された闘技者たちの美しい“筋肉”と,そんな筋肉たちをさらに美しく,キレよく見せる“仕合”シーンだろう。個性豊かな闘技者たちのさまざまなファイトスタイルを,滑らかに,迫力満点で描写している。気付けば,その美しさに目を奪われていることだろう。さらに,仕合での“音(声を含む)”にも注目してもらいたい。おそらく仕合中は,聞いたことのない音がたくさん聞こえてくると思う。その場所を殴られたことのある人にしか分からない音が再現されているからだ。音1つ1つまで,リアルに作り込まれている。音つながりで,闘技者たちそれぞれに用意された入場曲にも要チェックだ!
なお,Season1の8話から始まる拳願絶命トーナメントは,だいたい1話1仕合のペースで物語が進んでいく。闘技者の入場シーンでは,熱い実況と先述した入場曲もあり,エンターテイメント感満載でテンションが爆上がりすること間違いなし! 格闘技好きな人にもぜひ一度,観てほしい。
個性豊かな闘技者たちとそのやりとり
仕合シーンだけでなく,個性豊かなキャラクターたちの関係性と,やりとりも魅力の1つ。「ケンガンアシュラ」は,仕合のなかで闘技者たちがどんな想いで戦っているのかといったバックボーンを,過去を織り交ぜながら綿密に語っていくので,仕合が終わると両者を好きになってしまう可能性が非常に高いのだ。どちらにも負けてほしくないのだが,そこは勝負ごとの切ないところ。そんな壮絶な死闘を繰り広げている闘技者たちだが,例え負けたとしても相手を称えたり,次の仕合を観戦し応援したりする者もいる。これがケンカではなく,“仕合”だという決定的な違いで,お互いを認め合う“つながり”を感じられるのもうれしい。なかには分かり合えない闘技者もいるのだが……。
また,闘技者たちは人知を超えたとんでもない戦いをくり広げるので,首の骨を折られたり,大量出血だったり,「死んじゃう……!!」と思う場面が多々ある。しかし,安心してほしい。一部例外を除いてではあるが,帝都大学所属の闘技者であり外科医である英はじめの手にかかれば,どんな大けがでもだいたい回復させてしまうのだ! 闘技者自身のフィジカルと,はじめの技術は本当にすごい。
筆者が心打たれた名シーンは,世界最強のボクサーであるガオラン・ウォンサワットと,身体能力はそこまで高くないものの超一流の棋士ならではの先読みを駆使して闘う金田末吉の仕合。ボロボロになりながら何度も立ち向かう金田が放つ名セリフ「弱者が最強目指して何が悪いんだよ!?」にグッときた人は多いはず……! 勝者のガオランが,強い想いを持って戦い抜いた金田を称えるのも胸熱だった。
企業側の駆け引きも見逃せない!
闘技者たちが己の信念をかけて戦っていたとしても,企業側も同じとは限らない。やはり地位や名誉がかかっている以上は,企業の力を使った脅迫や,駆け引きが行われている場面も……。企業側の思惑もSeason2でどんな展開を見せていくのか,山下商事の代表としての山下一夫の成長からも目が離せない。いよいよ2023年9月21日からNetflixにて配信予定の「ケンガンアシュラ」Season2。「拳願絶命トーナメント」の決勝戦までが描かれていくこととなるが,いずれも怒涛の闘いと,波乱の物語が展開することになるだろう。熱き闘いの結末に要注目だ。
◆アニメ「ケンガンアシュラ」配信情報
・STAFF
原作:サンドロビッチ・ヤバ子/作画:だろめおん(小学館「マンガワン」連載)
監督:岸 誠二
シリーズ構成:上江洲 誠/キャラクターデザイン:森田和明/音楽:高梨康治(Team-MAX)
アニメーション制作:LARX ENTERTAINMENT
・配信
2023年9月21日よりNetflixにて独占配信
・CAST
十鬼蛇王馬:鈴木達央/山下一夫:チョー/
乃木英樹:中田譲治/秋山 楓:内山夕実/理人:金子隼人/関林ジュン:稲田徹/今井コスモ:榎木淳弥/桐生刹那:浪川大輔 他
「ケンガンアシュラ」 公式サイト
https://kengan.net/
「ケンガンアシュラ」公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/kengankai
「ケンガンアシュラ」公式YouTube
https://www.youtube.com/@user-nx4pi9gr5y
◆「ケンガンアシュラ」ジャパンプレミア
・日程:2023年9月10日(日)19時開演
・会場:TOHOシネマズ六本木 シアター2
(住所:東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズけやき坂コンプレックス内)
・出演:鈴木達央、中田譲治、チョー、稲田徹 司会:マシューまさるバロン
・料金:3000円
・チケット:チケットぴあにて好評発売中!
https://w.pia.jp/t/kengan/
アニメ「ケンガンアシュラ」公式サイト
- 関連タイトル:
ケンガン ULTIMATE BATTLE
- 関連タイトル:
ケンガン ULTIMATE BATTLE
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