プレイレポート
「イースIX -Monstrum NOX-」プレイレポート。横方向だけではなく“上下”への広がりのあるフィールドの探索が楽しい
ゲームシステムやビジュアルを進化させながら“赤毛の冒険家”アドル・クリスティンの物語を描き続けている「イース」の最新作で,アドルはいったいどのような冒険を繰り広げるのか。“監獄都市と怪人”の奇妙な物語や怪人たちの異能を用いたアクションといった特徴とともに紹介していこう。
「イースIX -Monstrum NOX-」公式サイト
怪人たちの異能を駆使し,フィールドを探索し尽くそう
本作で描かれるアドルの冒険の舞台は,ロムン帝国の属州であるグリア・エルトリンゲンの主要都市で,エルトリンゲン地方の要衝として知られる「バルドゥーク」。かつてグリア人がロムン帝国に抵抗するため築いたと言われる要塞が特徴となっており,その要塞は,ロムン人が街の主となってからは監獄として使われている。
そんなバルドゥークにやってきたのが,各地を旅してまわるアドルとその相棒ドギだ。長旅の疲れを癒そうとやってきた2人だったが,ロムン帝国では追われる身であるアドルはすぐに見つかってしまい,監獄に収監されることに。
もちろん,アドルは大人しく捕まっているようなタマではない。隣の牢にいたパークスという人物の手助けを受けながら脱獄を試みたアドルは,脱出路を探す途中で封印された区画に行き当たる。どうやら単なる監獄ではなく,地下に何か秘密が隠された施設のようだ。
新たな冒険の始まりを予感するアドルだが,そんな彼の前に義手義足の女性・アプリリスが現れた。彼女がアドルに向けて放った「魔弾」により,怪人(モンストルム)の1人「赤の王」が出現。同じく魔弾に撃ち抜かれ力を得た5人の怪人たちと共に,邪霊(ラルヴァ)と戦うこととなる。こうして奇妙な“怪人たちの夜”の物語が幕を開けるのだ。
強い意志を宿した瞳が印象的なアプリリス。アドルを怪人にしたその目的など,その行動は謎が多い |
怪人となったアドルは,監獄都市と怪人にまつわる奇妙な事件に巻き込まれていく |
このように,シリーズの従来作とは異なり,ゴシックホラーやおとぎ話の原典のような,猟奇的で怪しげな雰囲気を漂わせる物語が展開していく。。シリーズをよく知る人は「本当に『イース』の最新作?」と思うかもしれないが,その驚きもしっかりストーリーに関係してくるので,安心してプレイしてほしい。
また,義賊として活動する白猫(WHITE CAT)や,天誅と称して辻斬りを行う鷹(HAWK)など,共に活動することになる怪人たちも個性的だ。異能もそれぞれ異なり,アドルは彼らの力を借りながらバルドゥークを探索し,邪霊との戦いに挑む。監獄都市と怪人の謎はもちろん,彼ら一人ひとりの背景にある物語も気になるところだ。
「星刻騎士団」のシャトラール団長(左写真)とイングリド尋問官(右写真)。怪人たちと敵対する彼らがどのように物語に関わるのかも気になるところ | |
“闇取引人”として活動するマクシム(左写真)と,不気味な仮面で顔を隠した謎の女性シルエット(右写真)。協力者として登場する人物たちもなかなかクセが強い |
要塞としての歴史を持つバルドゥークは,その街区の配置が防衛を考慮したものとなっている。折れ曲がり,そして入り組んだ,かつて侵攻側を大いに悩ませたであろうことを感じさせる路地。要塞に通じる抜け道や水路などが複雑に張り巡らされている街の下層部……そういった街の形状がゲームプレイに活かされているのが,本作のフィールドの特徴だ。
街の面積はそれほど広くはないが,建物をよじ登っていくと意外な場所にたどり着くといったように,さまざまな移動ルートとそれによる発見が楽しめる構造になっている。探索する際は,街区の横方向のつながりだけでなく,“縦方向のつながり”も意識してみてほしい。
街の各所にある地下通路や暗渠(あんきょ),洞窟といったダンジョンも重層的な構造となっており,壁を登った上の空間や,床の穴から降りた先にも探索できるスペースが広がっている。普通の人間なら移動だけでもひと苦労だが,怪人たちは「異能」を使えるため,スムーズに探索を行える。
また,仲間の怪人たちの力を借りることもできるので,仲間が増えるほどに探索の自由度が高まっていく。
たとえば,二段ジャンプで水路を飛び越え,白猫の力で水面から伸びる柱に飛びついてからよじ登り,登ったところから鷹の力で滑空して広い空間を飛び越えるといった,かなりアクロバティックな動きも簡単に行える。怪人たちの異能を使いこなすほどに,探索がより楽しくなっていくはずだ。
白猫の異能「天空散歩(ヘヴンズラン)」は,垂直の壁面も軽々と駆け上がれる |
鷹は,巨大な羽を広げることで長時間の滑空が可能となる異能「猛禽の翼」(ハンターグライド)を使う |
探索の心強い味方となるのはマップだ。冒険を進めて実際に歩いた範囲が表示されるようになる。
近くにある宝箱などの表示は「マップ上では見えているのに,画面上では見つからない」ということがよくある。そんなときは異能を使って詳しく探索してみることで,晴れて宝箱が見つかる。この仕組みが絶妙で,探索の意欲をそそられるものとなっていた。
ほかにも,眺めのいい場所「ロケーションポイント」を見つけて報告したり,さまざまな料理店で食べ歩きしつつ集めた料理を教会のシスターに寄付したりといった,「探索して,発見する」ことを軸とした遊びが多数用意されている。筆者と同じく「探索好き」だというプレイヤーには,まさにぴったりな要素だろう。
なお街は,怪人だけに影響しその行く手を阻む「結界」によって区切られており,最初からすべての街区を行き来できるわけではない。結界を解除し,移動範囲を広げるには「グリムワルドの夜」で邪霊たちと戦い,勝利する必要がある。グリムワルドの夜については,バトルの流れであらためて紹介しよう。
プレイヤーそれぞれが戦い方を選べるアクションバトル
ここからは本作のバトルについて紹介する。バトルの要となるのは,敵の攻撃をジャストタイミングで回避すると発動する「フラッシュムーブ」と,ジャストタイミングでガードすると発動する「フラッシュガード」だ。成功すると時間の流れがスローになったり,技(スキル)を使うためのSPの回復速度が上がったりする。これらを活かして敵に大ダメージを与えよう。
ボスは,攻撃を与え続けて相手のHPゲージの下に表示される「ブレイクゲージ」を溜めると,一方的に攻撃するチャンスとなる「ブレイク状態」となる。
さらに,一定時間戦闘能力をアップできる「ブースト」や,ブースト中のみ使える「EXTRAスキル」といった強力な技もある。こちらのゲージは簡単には溜まらないので,乱発せず「ここぞ」というときに使用したい。
強敵との戦いでは,まず相手の行動パターンを把握し,フラッシュムーブやフラッシュガードで相手の攻撃をしのぎつつ慎重にブレイクを狙う。そしてブレイクしたらブーストで一気に攻め,ブーストの効果時間が切れる寸前にEXTRAスキルを撃ち込む。このように,相手の動きを慎重に見ながら立ち回り,チャンスとなったら遠慮なく強力な攻撃を叩き込もう。
もちろんバトルにおいても,仲間の怪人たちの異能は頼りになる。攻撃の属性や使用できる技の性質も異なるので,相手に合わせてキャラクターを使い分けることも重要だ。
このあたりを意識しつつ戦えば,多少レベルが不足気味でも強敵を倒すことができるはず。大量の経験値得て一気にレベルアップが上がれば,さらにその先の難関へと進むことができるだろう。
バトルの新要素となるのが「グリムワルドの夜」だ。とある条件が揃うことで異空間への入口が出現し,そこへ入ることで邪霊との戦いがスタートする。パーティメンバー以外の怪人も戦闘に参加する総力戦となる「グリムワルドの夜」の勝利条件は,3度のウェーブで押し寄せてくる邪霊たちから柱(スフェン)を守りきること。邪霊たちを排除できれば,新たな街区へ移動できるようになる。
もしグリムワルドの夜で苦戦するようなら,まだその先に進むにはレベルや装備が不十分ということ。その場合はバトルを繰り返して経験値とお金を稼ぎ,レベルを上げたり装備を整えたりしよう。
パーティメンバー以外の怪人も戦闘に参加する。ともに戦い柱を守り抜こう |
戦闘の評価に応じて報酬アイテムが変化。気軽に再戦できるので,ランクSを目指そう |
本作はアクション“RPG”なので,アクションの腕はそれなりという人でも,しっかりキャラクターのレベルを上げて装備を整えれば,いずれボスに勝てるゲームバランスとなっている。また,ゲーム全体の難度はいつでも下げることが可能で,このあたりの親切さは,第1作で「今,RPGは優しさの時代へ。」を謳っていた「イース」らしさを感じられるところだ。
前作をプレイした人は気付くと思うが,本作の基本的なシステムに大きな変化はない。しかし,探索の舞台となる都市の構造や,異能を駆使するアクションの手触り,そして謎を孕んだ監獄や怪人に関連した物語などにより,「イース」の新たな魅力を打ち出す作品となっていることを感じられるはずだ。
とくに,海外のオープンワールドアクションとは一味違違ったものを感じさせる,フィールドやダンジョンを縦横無尽に探索し尽くす感覚は本作ならではのもの。シリーズのファンでなくとも,触れてみて損のない作品だろう。
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