インタビュー
[インタビュー]「アークナイツ」と共に歩む。渡邉祐記監督,西川将貴副監督に聞く,アニメ第2期のテーマ「組織と個」
「アークナイツ」のアニメ新シーズンはどのように作られているのか。そして制作陣にとって,「アークナイツ」はどのような意味を持つ作品なのか。合同インタビューにて話を伺った。
[インタビュー]アニメ第2期「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」,黒沢ともよさんが傷つきながらも前に進むアーミヤに寄せる思い
現在,「アークナイツ」のTVアニメ第2期「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」が放送中だ。主人公・アーミヤを演じる黒沢ともよさんの合同インタビューに参加して,作品に寄せる思いを聞いてみた。
「アークナイツ」アニメシリーズ公式サイト
第1期の直後に新シーズンの制作を開始
――本日はよろしくお願いします。「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』は第1期の終了(2022年12月)から1年を待たずに,初回放送を迎えました。第2期の制作は当初から決まっていたのでしょうか。
渡邉氏:
ええ,当初から第2期がある前提でした。
西川氏:
第1期の作業が終わった次の瞬間には,第2期の制作を始めていました(笑)。
渡邉氏:
皆さんが第1期をご覧になっている最中には,しっかり準備していましたね(笑)。
――確かにそのペースでないと,このタイミングではスタートできないですよね。
西川氏:
スケジュールはキツキツでした。
――第2期の制作において苦労したことはありますか。
渡邉氏:
どの話数にどの内容を入れるのかは,かなり検討を重ねました。すごく情報量が多い作品なので,アニメから入ったお客様がアニメだけを見ても分かるように,と考えると何をどこまで見せるのかはかなり気を使うところです。
映像として出ているところに,削らざるを得なかった部分のストーリーを含む情報を仕込まなければいけなかったんです。
西川氏:
第2期はかなり登場人物が増えて,オペレーター以外にもモブキャラや敵キャラなど,とにかく集団のシーンが多いんです。描くのが物理的にも大変だし,描写する人間が増えれば増えるほど話もぼやけてしまいます。ちゃんと伝わるように情報を整理しなくてはいけないので,苦労したところです。
渡邉氏:
情報をちゃんと伝えるために状況の説明は大事なんですが,説明したら描写は終わりというわけにはいきません。前後の時系列がちゃんとつながる描写にしなければいけないんですが,各シーンがフックになるようにするのが難しかったですね。
西川氏:
お話の解像度を上げるために気を使っています。ゲームのシナリオを全部知っている人に対しては,テキストだけでは一瞬理解が遅れるところでも,音やキャラの表情があるアニメを見て「そういうシーンだったんだ!」と,自分の頭の中で映像をイメージして楽しめるようにすることを意識しました。
――「アークナイツ」は情報量が膨大ですからね。
西川氏:
原作のテキスト量が膨大なので,読み返すのも大変になってきています(笑)。
――情報の見せ方で実践していることを教えてください。
西川氏:
まずは原作のテキストをちゃんと読みます(笑)。そのうえで「そことそこはつながるんだ」というポイントを見つけたら,補完するようにしていますね。第1期だと,ミーシャを護送するシーンやスカルシュレッダーに関連するシーンが該当します。
渡邉氏:
補完するという意味では,かなりシーンを増やしていますが,情報の取捨選択も大事です。視聴者が映像を見たときに没入感を得られるように,端的に理解できるかを重視しています。
我々も「アークナイツ」の空間で見たときには,新たに見えてくるものがいっぱいあるはずなので,その場に入り込んだつもりで作っているんですよ。
西川氏:
気を付けているのは,リアル感と感情の流れですね。原作のテキストを読むと,「ここはそういうことを描きたいんだろうな」という意図が明確に見えてくるんです。その意図に対して,自分たちはアニメを作るんですが,ゲームを遊んでいる方の全員が映像制作をするわけではないでしょう。
そこで自分たちが「『アークナイツ』の世界って,こういうことなんじゃないでしょうか」と提示して,「アークナイツ」の世界観が伝わりやすくなればと思ってます。
渡邉氏:
ドクターにしても,皆さんの知っているドクターとは違う描写になっています。アニメで描かれる世界は,あくまでもアニメの「アークナイツ」です。
皆さん,それぞれに解釈があると思いますが,アニメが絶対的に正しいわけではありません。我々はシナリオを読んで,「こういう解釈をしました」と提示しているだけなんですよ。
――第1期でミーシャがグレネードランチャーを持って,よろけるシーンがありました。これも解釈の1つなんですね。
渡邉氏:
死にかけている人間がグレネードランチャーを持って,自分の全エネルギーを使わなきゃいけない状況です。自分に置き換えて考えたら,制作が立て込んできて身体ガタガタの状況が想像できたので,水を飲むコップを持つのもしんどい状態を思い出しながら作りました(笑)。
――細かい描写はゲームでは表現しにくいところかもしれません。
渡邉氏:
おそらく違う解釈をされる方もいると思いますが,アニメはあくまでも1つの解釈でしかないので,どれも正しいんです。
西川氏:
いろいろな解釈があるので,自分たちは高解像度で作品を見つめる必要があります。おこがましいですが,自分たちはドクターを代表して物語に触れたうえで,作品として仕上げている立場ですから。
渡邉氏:
責任感を持ってやっています。ゲームでは皆さんがドクターですが,我々は作っているときにすべてのキャラクターになりきらなければいけないと考えています。
――ゲームの画面をアニメのシーンに起こすときには,どのようにしているのでしょうか。
西川氏:
愚直に映像化するしかありません(笑)。ただ,世界設定の中でファンタジー要素が強いのは,アーツと鉱石病なんですよ。それだけが独立したファンタジーで,そのほかは現実的なテーマがたくさんありますよね。
ほかの芝居はリアルに考えているんですが,アーツに関してはなんとかゲームの要素を拾いたいので,音響と相談して生音を使わずにすべて電子音を使っています。
渡邉氏:
ちょっと演出が浮くくらいの感じでやっていますね。アニメの中でも戦術を意識してはいるんですが,じゃあ凄腕同士が戦っているかというとそうではありません。レユニオン兵はみんなが声を上げ始めて,その場でかき集められただけ。誰も戦闘訓練を受けていない烏合の衆です。
部分的にエリートが存在するかもしれないけど,大半はただの一般人が暴力を振るっているんですよ。そんなレユニオン兵にファンタジックなエフェクトが重なっている。この作品からすると,歪なところなんですけど他作品との差別化はできているかなと。
我々は戦闘のための戦闘シーンは避けています。ただの戦闘に見えても,そこには命がけで戦っている人がいて,戦う必要があるから戦っている。原作に則ってはいますが,「今回はあまり派手じゃないからドンパチを増やす」というのはありません。お客さんに刺激を与えるだけの戦闘は必要ないと思っています。
フロストノヴァは組織と個の狭間に
――第2期はフロストノヴァが登場します。人気のあるキャラクターですが,どのような描き方を意識しましたか。
西川氏:
10話ではフロストノヴァにしても,周りにいるスノーデビル小隊にしても,攻撃するときの掛け声,走っているときの息づかいを全部なくしました。本当に人なのか,理解ができない対象にして,完全に殺し合うしかない存在として描いています。これは今後のための仕込みでもあります。
渡邉氏:
第2期の前半で仕込んでいるのが,「じゃあ,そのとき彼らは何を考えて戦っていたのか」という点です。第2期のテーマに「組織と個」があるんですが,「アークナイツ」には多くのリーダーが出てきます。フロストノヴァもリーダーたる行動を取らなければいけないという考えのもと,戦っているんですよ。
10話の時点では「強い敵が出てきました。大変です!」ということでしかありません。しかし,声は消しても「このキャラはどういう意図で戦っているか。どういう心情なのか」は分かっています。
組織と個を追う中でキャラの印象にずれが発生していくのですが,とくにフロストノヴァはずれが大きいです。これがどのように埋まっていくのか,今後を見守っていただければと思います。
――お二人はずっと「アークナイツ」のPVを担当していますが,渡邉さんがTVシリーズの監督をされるのは第1期が初でした。監督になって変化した点はありますか。
渡邉氏:
組織と個というテーマに直結しますが,今までは誰かのディレクションに従っていたところを,すべて自分で結論を出さないといけなくなり,作品や作業内容について解像度が飛躍的に上がりました。
私がやらかしたら,みんながえらい目に遭ってしまうプレッシャーはキツイですが,それをしないとやれないこともたくさんあると気づけました。責任もこれまでとは次元の違うところに達していると感じています。
――最後に,お二人にとって「アークナイツ」とはどんな存在ですか。
西川氏:
価値観が現実世界とそこまで違わない中で生きている人が過酷な目に遭い,どう立ち向かっていくのか。人間は厳しい環境でどう結論を出して,どう人生を終えるのか。こうした課題に対する解像度が高い作品だと思っています。
自分は「アークナイツ」に関わるまで本を全然読まなかったんですが,テキストをしっかり読み込んだことで,文章を読めるようになりました(笑)。文字を読むことに対しても,解像度を上げてくれるきっかけになった作品だと思います。
渡邉氏:
暗い演出の引き出しを,全部引っ張り出しても構わない作品ですね。やりすぎて原作の方に怒られたりもしましたが,それくらいやってもちゃんと受け止めてくれる作品だと思います。
奥深い世界があるので,演出の受け皿が用意されていますし,全力を目一杯ぶつけても,ちゃんとそれだけのものが返ってきます。どこまで掘っていっても,まだ細かいところを考える余地がある,そんな大きな作品だと思います。
――本日はありがとうございました。
「アークナイツ」アニメシリーズ公式サイト
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