インタビュー
「FFBE幻影戦争」FFIVコラボインタビュー。本作のキーマン広野Pと小倉D,FFIVの時田氏に,制作の裏側やコラボユニットの見どころを聞いた
スクウェア・エニックスがサービス中のスマートフォン向けアプリ「WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争」(iOS / Android:以下,FFBE幻影戦争)にて,2020年7月22日より同社のRPG「ファイナルファンタジーIV」(以下,FFIV)とのコラボイベントが開催されている。
本コラボイベントでは,すでに「FFIV」の主人公である「セシル」がURユニットとして登場し,印象的なボスであった「デモンズウォール」や,「ゴルベーザ」に挑めるコラボクエストなどにも期間限定で挑戦できるようになっている。そして,8月1日より新たにFFIVのメインキャラクターである「カイン」と「ローザ」がURユニットとして登場する。
今回4Gamerでは,「FFBE幻影戦争」プロデューサーの広野 啓氏と,ディレクターの小倉悠吾氏,そして「FFIV」のメインデザイナーを務めた時田貴司氏にインタビューを実施した。
広野氏,小倉氏も知らなかった「FFIV」開発・発売当時のエピソード,コラボイベント開催の経緯や内容,注目のコラボユニットの性能,1周年に向けた今後の展望など,さまざまな話を聞けたので本稿でお届けしていこう。
「WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争」ダウンロードページ
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「カイン」はシナリオ上で死亡もあり得た
29年越しに明かされる「FFIV」開発秘話
本日はよろしくお願いします。まずは「FFIV」コラボを開催することになった経緯を聞かせください。
広野 啓氏(以下,広野氏):
「FFBE幻影戦争」のリリース前の段階から「FF」シリーズとのコラボはぜひお願いしたいということで,各所で調整を進めていました。「FFIV」に関しては時田さんに快諾いただけたことが大きかったですね。
4Gamer:
7月20日の第3回公式生放送では,広野さんと小倉さんより「FFIV」は少年期にプレイした中でも,とくに思い入れのあるタイトルだというお話もありました。
小倉悠吾氏(以下,小倉氏):
初代「ファイナルファンタジー」(以下,FFI)から欠かさずプレイしてきた中で,実は「FFIV」は唯一発売日に買えなかった作品だったんです。近所のおもちゃ屋で売り切れていて……。当時スーパーファミコンのカセットは再出荷に時間がかかったので,自分がようやく買えたのは発売から1か月後でした。早くクリアして友達と語り合えるようにならないと……という使命感に駆られながらプレイしたのを覚えていますね(笑)。
広野氏:
僕は初めてシリーズに触れたのが「ファイナルファンタジーIII」(以下,FFIII)でしたが,「FFIII」は主人公や仲間たちがプレイヤーの分身で,どちらかというと主人公たちを取り巻く周囲のキャラクターたちの魅力が強かったと思うんです。
そんな「FFIII」からシリーズに足を踏み入れた自分としては,「FFIV」の主人公であるセシルだけでなく,主人公パーティのキャラたちのインパクトが強く,とても衝撃を受けましたね。ゲームの登場人物とはいえ他人の人生を垣間見るという体験は,とても新鮮なものだったなあと。
時田貴司氏(以下,時田氏):
それまでのシリーズでいうと,「ファイナルファンタジーII」も主人公のキャラが立っていた作品でしたが,「FFIV」もそれと同じ路線でありつつ,演出をさらに強化する,という方向性で作っていました。加えて,「FFIII」のジョブチェンジシステムの評判がよかったこともあり,「FFIV」ではジョブごとのイメージをさらに掘り下げていくような形で,キャラを肉付けしていったんです。
広野氏:
当時,ファンの間では,各作品のコンセプトについて「(ナンバリングタイトルの)奇数はバトルシステム重視,偶数はストーリー重視」なんて噂話も,まことしやかにささやかれていましたよね(笑)。
「FFIV」にはセシル,カイン,ローザの三角関係や,親と子,人と人ならざるもの,地球と月といったさまざまな要素がギュッと詰まっていて,終始ワクワクさせられっぱなしでした。
そんな「FFIV」がわずか14人のチームで,それも開発期間1年で世に送り出されたというお話には驚きましたが,時田さんは,当時の開発現場を振り返ったとき,印象に残っていることなどはありますか?
時田氏:
当時の僕は,ディレクターの坂口博信さんが書いた物語のプロットを,シナリオとして厚みを持たせて,キャラクターを配置したり,イベントの演出をしたりといった作業がメインでした。
そのほか,バトル中のキャラや召喚獣のドットといったグラフィックスも僕が描いていたので,「僕がしっかりしないとゲームが完成しない……!」という,やりがいとプレッシャーを同時に感じていましたね。
広野氏:
これまで開発現場で時田さんとご一緒する機会はなかったので,あくまで作品を通して受ける印象なのですが,時田さんの作るゲームは必ず“プレイヤーたちが感じたことのないであろう面白さ”を入れていらっしゃるなと。
時田氏:
どんな新しい要素を入れてプレイヤーをびっくりさせようか,ということは常に考えてますね。とくに「FF」はシリーズごとに“ノリ”が違うこともあり,関わった人なら誰しも悩み考える部分なのかなと。「FFIV」では「やるならとことんやろう」という考え方を重視した結果,カインがとことん裏切る展開になりましたが……(笑)。
広野氏:
確かに,衝撃的な裏切り方をしますよね(笑)。
時田氏:
実は裏切りの落としどころとして,最終的に“カインが死ぬ”というシナリオ案もあったんです。僕なんかは本当はカインを死なせたかった側なんですが,もしそうなっていたら,今ほどプレイヤーさんに印象的に感じてもらえるキャラクターにはなっていなかったと思います(笑)。
4Gamer:
そういった丁寧な人物描写が魅力となっている「FFIV」には,発売から29年が経ったいまなお根強いファンが多くいらっしゃいます。今回のコラボ発表時も「待ってました!」という声がかなり多くあがっていましたよね。
時田氏:
「FFIV」を作ったころは,まさかこれほど長く愛されるタイトルになるとは夢にも思いませんでした。「FFIV」は,「FFI」から「FFIII」までの良いところを集めて究極の「FF」を作る,という目標があり,色々な要素がバランスよく入っているのがよかったのかなと。
「セシル」「カイン」「ローザ」の強みは?
欠片の入手期間に関する仕様変更も検討中
続いては「FFIV」コラボイベントの内容について,詳しくうかがっていきたいのですが,まずは「デモンズウォール」戦をフィーチャーすることになった理由を教えていただけますか。
小倉氏:
今回の「FFIV」コラボイベントでは,プレイヤーさんに新しい遊びを提供したいという思いがあります。「FFIV」でインパクトがあったボスというと,やはり「デモンズウォール」であり,あのバトルを3Dマップ上で再現できれば,プレイヤーさんに新しい遊びを提供できるかもしれない,というところから構想を広げていきました。
もちろん,王道の「ゴルベーザ」も外せないですし,この2体と対決するようなタイミングであれば,セシルはすでにパラディンになっているだろう……というような順番で企画が固まっていきました。
4Gamer:
「デモンズウォール」を軸にコラボユニットのチョイスなどが決められていったというお話に関しては,時田さんも生放送内で驚かれていましたね。
時田氏:
まさか「デモンズウォール」にこれほどスポットが当てられるとは思いませんでしたからね(笑)。確かに「デモンズウォール」は話題になりやすいボスですが,取り上げられるのはほとんど「ゴルベーザ四天王」あたりなので,コラボイベントでここまでフィーチャーされたのは初めてだと思います。……この調子でフィギュア化なんかもしてくれないかな(笑)。
広野氏:
まずは「ゴルベーザ四天王」から,という形が多いですよね(笑)。しかし,自分たちのように幼少期に「FFIV」をプレイした人たちからすると,やはり「デモンズウォール」の印象は相当強く残っているはずです。「FFIV」以降のナンバリングタイトルでも出てくることがあるくらいですし。
4Gamer:
結果,いわゆる地底編をフィーチャーすることになり,「セシル」はパラディンでの実装となったわけですね。ユニットとしてはどのような性能になっているのでしょうか。
小倉氏:
「セシル」は,系統の近いユニットである「エンゲルベルト」や「光の戦士」と比べて,より攻撃力の高いタンクユニットという位置付けです。また,原作では味方をかばうアビリティを持っていたので,本作では味方へのバリア付与という形で再現を試みました。
4Gamer:
原作ファンも納得のアビリティですね。「カイン」のユニット性能に関してはいかがでしょうか。
小倉氏:
「カイン」は,竜騎士らしいジャンプ系アビリティが持ち味ですが,目玉となるのは,やはり治癒力ダウンという相手の回復力を下げるアビリティを習得する点ですね。
広野氏:
「カイン」は,火力が高めなのも魅力です。
4Gamer:
コラボユニット最後の1体となる,「ローザ」についても教えていただけますか。
広野氏:
プレイヤーの皆さんにとっては,恐らく待望の新たなヒーラータイプのURユニットですね。大変お待たせしました。
小倉氏:
「ローザ」は弓を使った射撃や,ホーリーなどの魔法を使った遠距離攻撃ができます。その点だけに目を向けるとSSRユニット「フィーナ」に近い系統とも言えますが,単純にURユニットとしてスペックが高いことに加え,リミットバーストも優秀な性能になる予定です。
4Gamer:
「セシル」については,3ステップアップで確定入手できる召喚も開催されていますが,「カイン」と「ローザ」についてはどうでしょうか。
広野氏:
「カイン」と「ローザ」は個別にピックアップ召喚を用意する予定です。詳しくはゲーム内お知らせをチェックしていただければと思うのですが,コラボユニットはプレイヤーの皆さまから「コラボ期間中に育てきれない」といったご意見も多くいただいていますので,今後の展開として,コラボ終了後も一定期間は,コラボユニットの欠片のみ手に入る仕組みの導入も検討しています。
4Gamer:
とくに今回の「セシル」はタンク兼アタッカーとして初心者におすすめしたい性能ですし,限界突破のハードルさえ下がれば入手を狙いたいというプレイヤーは増えそうですね。
広野氏:
そうですね。コラボユニットの欠片が手に入る期間が増えればプレイヤーの皆さんにも喜んでもらえると思うので,どうにか実現したいです。
今後の再コラボの暁には「リディア」ら実装の可能性も!?
8月下旬〜11月(1周年)にかけての展開も要チェック
4Gamer:
「デモンズウォール」がコラボの軸になっていたとはいえ,「セシル」のジョブを暗黒騎士にするか,パラディンにするかという部分は悩まれたのではないでしょうか。
広野氏:
やはり「セシル」の魅力は成長して殻を破りパラディンへと至る姿だと思うので,そういった二面性のような部分を表現したい気持ちもありました。バトル中に暗黒騎士とパラディンを使い分けながら戦う……といった形が理想だったのですが,その場合は新システムということにもなりますし,今回のコラボまでには開発が間に合わないだろうと。
4Gamer:
「FFBE」では2020年4月末に「ブレイブシフト」という,形態変化システムが一部ユニットに実装されましたが,「FFBE幻影戦争」でも今後そういったシステムが実装される可能性があるということでしょうか。
広野氏:
いずれは実装したいという想いはありますね。例えば「FFIV」コラボイベント第2弾を実施させていただく際には,FFIVで成長して見た目が変わる「リディア」や,双子の「パロム」「ポロム」が入れ替わりで登場するといった形で,そういったシステムを活用できたら面白いのではないかと思っています。
4Gamer:
「FFBE幻影戦争」にはジョブの要素もありますし,「ブレイブシフト」ともまた一味違う本作ならではのシステムになりそうですね。
広野氏:
そうですね。
4Gamer:
時田さんからは今後再コラボとなった暁には「このキャラを実装してほしい!」といった要望はありますか。
時田氏:
「リディア」「パロム」「ポロム」といった可愛い系のキャラたちも見たいですし,「エッジ」も面白い性能のユニットになりそうだなと思っています。あと,個人的には「フースーヤ」もぜひ! 3Dモデルで“どう潰れるのか”が気になります(笑)。
小倉氏:
「フースーヤ」を作るならば,やはり「ゴルベーザ」とセットで実装したいところですね(笑)。「Wメテオ」をどう落とし込むのかは悩みどころですが……。
4Gamer:
早くもコラボ第2弾の可能性に期待が膨らむところですが,そろそろお時間ですので最後に「FFBE幻影戦争」と「FFIV」のファンに向けて,メッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
時田氏:
iOS,Android向けアプリとして,「FFIV」本編,並びに「FINAL FANTASY IV: THE AFTER YEARS -月の帰還-」(iOS / Android)が配信中です。意外と続編を遊んだことがない方もまだ多いと聞きますので,このFFBE幻影戦争とのコラボを機に「FFIV」と合わせてぜひ楽しんでいただければと思います。
小倉氏:
半年以上運営を続けてきましたが,先ほどのコラボユニットの欠片の問題など,まだまだ課題点があることを把握しています。それらの課題を解消しつつ,新しい遊びの要素も追加していくことで,今以上に楽しんでもらえるゲームにしていきたいと常々思っております。リリース1周年となる11月には,どデカイお祭りもやりたいと思っていますので,ぜひ期待して待っていてください。
広野氏:
先日の生放送ではアドリブに任せてたくさんのプレゼントを配布しましたが,我々クリエイターとしては,ゲームとしての遊びや面白さという部分で,プレイヤーの皆さんにお返しするのが使命だと思っています。1周年のタイミングでは,あっと驚く仕掛けにご期待いただきたいですが,「FFIV」コラボ期間が終了するのは8月半ば過ぎなので,まだ夏は続いているわけです……。
小倉氏:
「8月もまだまだ何かあるんじゃないか?」と,ぜひ期待していてほしいところですね。
広野氏:
その後,10月は「FFBE」の5周年。11月が「FFBE幻影戦争」の1周年というところで。本当はオフラインイベントを大きく開催したい気持ちもあったのですが,昨今の情勢を鑑みたうえで,別の形でプレイヤーさんともっと深くつながれるような機会が作れるよう,引き続き尽力していきたいと思っています。今後とも,何卒よろしくお願いします!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
――2020年7月22日収録
「FFBE幻影戦争」4Gamer内サテライトサイト
「WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争」公式サイト
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LOGO ILLUSTRATION: (C) 2018 YOSHITAKA AMANO
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