インタビュー
「ゴブリンスレイヤー」原作者・蝸牛くも氏×グループSNE代表・安田 均氏対談。オールドスクールRPGの新たな潮流
ゴブリンスレイヤーの誕生
4Gamer:
そんな時代にいよいよ「ゴブリンスレイヤー」が世に出るわけですが,最初はいわゆる“やる夫スレ”で生まれた作品だったわけですよね。それを小説としてリライトして,出版社に持ち込んだとか。
蝸牛氏:
「ゴブリンスレイヤー」は,最初は富士見ファンタジア文庫さんの新人賞に送ったんですね。そうしたら,三次選考で落ちてしまいまして。
安田氏:
ええっ,本当に? 僕が選考委員やってたときだな。でも読んだ記憶はないから……読んでたら絶対票を入れてるから(笑)。選考委員も応募作品を全部読めるわけではないですから。いや惜しい,残念だなあ。
蝸牛氏:
その後は,あちこちに好きなものを書いては投稿していたんですが,時代小説を書いてGA文庫さんに送ったら最終選考まで行けたんです。でも時代小説はダメだという話で,結局入賞はできませんでした。でも,投稿履歴に「ゴブリンスレイヤー」のことを書いておいたら,それが編集さんの目にとまって,「もしほかで出してなかったら,この『ゴブリンスレイヤー』を出版しませんか?」と。
蝸牛くも“幻のデビュー作”「天下一蹴 今川氏真無用剣」
このとき蝸牛くも先生が応募した作品「天下一蹴 今川氏真無用剣」が,この度GAノベルから出版されることが決まっている。現在クラウドファンディングサイトのmakuakeで,同作の限定版プロジェクトが実施されているので,気になる人はチェックしてみよう。限定冊子や特製グッズが付属するコースも用意されている。
makuake内「天下一蹴 今川氏真無用剣」限定版プロジェクトページ
安田氏:
ああ,良かった。僕もいろいろ選考委員とかやってるけど,作家のデビューって本当に不思議なんです。たまたまうまくいってワーッと売れたりするし,あとで有名になったけど「あのときよくも落としやがって」みたいな話も割と聞くし。難しいですよ。
蝸牛氏:
僕もなんで今,こうなってるんだか(笑)。
安田氏:
いやいや,そらオモロイからや!
(一同笑)
4Gamer:
ちなみに,「ゴブリンスレイヤー」は「Halo」の影響も受けていると聞いたんですが,そうなんですか?
蝸牛氏:
そうですね。倒した敵の武器を奪って,また次の敵に向かっていくみたいな。ゴブスレさんの言う「敵は武器庫だ」というような概念は,「Halo」の影響を強く受けています。あと,見てのとおりアメコミも好きで,そういう要素とかもあります。
4Gamer:
じゃあ「ドラゴンクエスト」以降も,デジタルゲームは結構プレイされたのでしょうか。
蝸牛氏:
僕の場合,コンソールよりも先にPCゲームがあったんです。父が持ってた「サムライメック」から入って。江戸幕府が宇宙人の遺跡を見つけ,そのまま科学技術が発展して宇宙に植民したっていう設定で。
4Gamer:
おお,それはまたマニアックなところから……。
蝸牛氏:
その後はスーパーファミコン,プレイステーションと順調に遊んで,伝奇系のノベルゲームでまたPCに戻りました。それと「RPGツクール」を使ったフリーゲームがわんさか出てた時期には,あの辺を片っ端からやったりとか。最近はSteamで「Shadowrun Returns」とか「RUINER」あたりを大喜びで遊んでいます。
安田氏:
ファンタジーRPG一辺倒かと思ったら,クトゥルフやシャドウランみたいなホラーやSFの要素も入ってるし,デジタルゲームの影響もある。いろいろな流れが合流して,正統派の「ゴブリンスレイヤー」になったんですね。主人公もハードボイルドだし,顔も見せない。アニメでは見えるかもって期待しているんだけど(笑)。
蝸牛氏:
原作では顔を見せないですからね。ハードボイルドというわけではないですが,ゴブスレさんを書くときに意識してたのは,「七人の侍」の久蔵と勘兵衛※あたりです。でも言われてみると,レイモンド・チャンドラー,マーク・ショア,ダシール・ハメット※といったハードボイルド小説の影響もありますね。自分がネットで公開したほかの作品でも,主人公は顔を出さないことが多いから,きっと好きなんだと思います。
※久蔵と勘兵衛は,黒澤 明の映画「七人の侍」の登場人物で,前者は剣の達人,後者は指揮官となる浪人。レイモンド・チャンドラー,マーク・ショア,ダシール・ハメットは,いずれもアメリカのハードボイルド探偵小説作家。代表作に「大いなる眠り」(チャンドラー),「俺はレッド・ダイアモンド」(ショア),「血の収穫」(ハメット)など。
安田氏:
そうだろう? そんな流れをすごく感じます。昔のものをうまく使ってるよね。
蝸牛氏:
ただ僕の場合,オンラインゲームはまったく通らなかったんです。「ウルティマオンライン」とか「ラグナロクオンライン」,「ファイナルファンタジーXI」とか。「小説家になろう」に代表される今のネット小説って,オンラインゲームを下敷きにしたものが多いじゃないですか。
4Gamer:
ああ,確かにそうかもしれないですね。
蝸牛氏:
だけど自分はオンラインゲームをやってこなかったので,そういうのは書けない。否定するわけではなくて,安田先生がおっしゃっていたような,ゴブリンは雑魚の記号で,ひと山いくらで倒して経験値にする……というようには思えないんです。だから自分が好きなもの――TRPGでのゴブリンとの戦いはこうだよな,って感じで書くしかない。
4Gamer:
知ってることをそのまま書いたら,ああなったと。
蝸牛氏:
はい。一周まわって,それが新鮮……なのかもしれません。でも自分はそこまで新しいことをやろうとしてるわけではなくて。これを言うとみんなに首をかしげられるんですけど,あくまでスタンダードな話を書いてるつもりです。
安田氏:
僕に言わせたら,これがスタンダードですよ。ただ,これまでドラゴンスレイヤーを名乗る人はいっぱいても,ゴブリンスレイヤーを名乗る人がいなかったというだけでね。
「ゴブリンスレイヤーTRPG」はどんなゲームなのか
4Gamer:
現在制作が進んでいるというTRPGについてもお聞きしたいのですが,どんなシステムになるのでしょうか。
安田氏:
オーソドックスなものを,というリクエストをいただいていて,まさに「ソーサリー」と世界観を同じくする「ファイティング・ファンタジー」のような,正統なものを組み立てようと今,試行錯誤しています。ただ,「ゴブリンスレイヤー」らしさを盛り込んで遊びやすく,かつ新しいというのがなかなか難しくて,ちょっと時間がかかっているという。実は,一度は完成したんですよ。でも「ちょっとこれは」ってことで,もう1回やり直してるんです。
蝸牛氏:
いろいろ注文が多い作者で申し訳ありません(汗)。
安田氏:
いやいや,気持ちは分かるんですよ。最初「自由に作ってください」ってことだったので,「本当にいいの? 大丈夫かな」って思っていたんだけど。後から「やっぱりこうしてください」って言われて,逆にほっとしました(笑)。今は,原作者とデザイナーが格闘しながら作ってますよ。
蝸牛氏:
こちらでも,できるかぎりの協力はさせていただいていて。各種族の文化や世界の歴史,呪文の仕組みや神格の設定など,設定面のアイデアを出させていただいて,小説では詳しく触れられなかった背景なんかも分かります。全部載せられるかは分かりませんが,原作ファンにはそのあたりも楽しんでいただけるんじゃないかと。
4Gamer:
では,原作の冒険を再現するのではなく,あの世界を拡張するような方向性なんですね。敵がゴブリンばかり,というわけではなくて。
蝸牛氏:
そういうことはないです(笑)。グループSNEさんにも,ゴブリンをスレイするだけのRPGではなくて,原作の世界――四方世界そのものを描くものにしてほしいとお願いしています。
安田氏:
原作の物語を追うだけでは,面白くなりませんからね。
蝸牛氏:
だから原作に出てくる種族――人間・森人(エルフ)・鉱人(ドワーフ)・圃人(レーア)・蜥蜴人(リザードマン)はどれもプレイヤーキャラクターとして使えるようになっていますし。
TRPGのルールブックで,世界設定を読む面白さってあるじゃないですか。僕は「タイタン」がすごく好きだったんですけど,あれは著者の視点じゃなく,作中の人物の視点で世界が記述されているのがすごく面白かった。この世界の知識人であるはずの人が,とても差別的なことを書いていたりして,「この世界の人はこういう風に考えるんだ」って分かるとか。
安田氏:
そうそう,あれは街の学者が古文書を集めてきて書いてる体(てい)なんだよね。「突撃一辺倒のオークに比べ,生き延びようとするゴブリンのほうが小ずるくて手強い」とか。あと,本来書くべきことを,あえて抜いているのも素晴らしいんですよ。ドラゴンのことなんかほとんど書かれてなくて,そこは好きに決めていいことになってる。
蝸牛氏:
「ソーサリー」で自分が冒険した場所について読んでみたら,「七匹の大蛇」ってこういうやつらだったのかって分かったりとか。一介の冒険者には分からなかったことも,詳しい人が書くとこうなるんだって,視点の違いが面白かった。
安田氏:
視点の話で言うと,「ロードス島戦記」や「ドラゴンランス」もそうですけど,冒険者の視点って最初はすごく狭いところから始まるじゃないですか。それが冒険を通じて英雄になるにつれ,どんどん拡大していく。そこへ行くと「ゴブリンスレイヤー」は,まだ世界の大きな視点というのは出てないですよね?
蝸牛氏:
そうですね。あれは,あえて書かないようにしているんです。
安田氏:
ああ,意図的なんや。
蝸牛氏:
「ゴブリンスレイヤー」は,あくまで僕らがやってるTRPGのキャンペーンの話なんです。パーンやレイストリンの役目を担うのは勇者ちゃんであって,ゴブスレさんたちはあくまで裏方。そういう感覚です。
4Gamer:
ゲームシステム的には,蝸牛先生がこだわってお願いした部分はありますか。
蝸牛氏:
2D6(6面ダイス2個)を振って,1のゾロ目がファンブル(致命的失敗)で,6のゾロ目がクリティカル(決定的成功)っていうのは,やっぱりシンプルで分かりやすいなと。
4Gamer:
いわゆる上方ロール(ダイス目が目標値より大きい場合に成功とするルール)ですね。
蝸牛氏:
はい。実は最初は下方ロールという提案をいただいていたんです。あと変わったところでは……負傷度と疲労度が別なところでしょうか。原作でも「治癒の水薬」(ヒールポーション)と「強壮の水薬」(スタミナポーション)が別になってます。
4Gamer:
原作準拠ということでは,魔法はどうなんでしょうか。やっぱり回数制なんですか?
安田氏:
それねえ,どうしようかなと(笑)。
蝸牛氏:
原作でも,あれ実は回数制ではないんですよ。「ソーサリー」と同じで,唱えるごとに体力点を消費していくんですけど,作中の人物はステータスが見えているわけではないから,「あと何回使える」という感覚でしか分からない。じゃあそれをゲーム化するにあたって,どうしましょうかってところで,色々と検討していただきました。
安田氏:
個人的には,残り回数が見えないほうがドキドキしていいんだけど,ルール的に複雑になってしまうからねえ。
蝸牛氏:
でも,ゲーム的にはやっぱり回数制がいいのかもしれません。実はゴブスレさんのパーティにはスタンダードな魔法使いがいないんですが,呪文を唱えるときに,“真に力ある言葉”を発音すると頭の中から消えていく,とか書いてしまったので。
安田氏:
ああ,それは昔の「ダンジョンズ&ドラゴンズ」方式だね。言われてみれば。
蝸牛氏:
呪文の数も,「ソーサリー」にならって48種類は用意しないとって思ったんですけど,ちょっと多すぎたみたいで。そりゃそうだよなと(苦笑)。あとは「受付嬢さんジェネレータ」というのが……。
4Gamer:
受付嬢さんジェネレータ!
蝸牛氏:
自分達の町の冒険者ギルドの受付嬢さんが,どんな人かをダイスで決めるという(笑)。確か「ナイトウィザード」※だったと思うんですけど,「萌えヒロイン作成チャート」というのがあったんですよね。ランダムなのでひどいヒロインができたりもするんですけど,ああいうのが欲しいなと。チャートでダイス振っていろいろ決めるのは好きですし,生まれ表とかもあったほうが楽しい。
※2002年に発売されたファンタジーTRPG。影から世界を守る現代の魔法使い達の活躍を描き,2007年にはアニメ化も行われた人気作となった。(作・菊池たけし / F.E.A.R. / エンターブレイン刊)
安田氏:
生まれ表でキャラクターに基本的なバックボーンを与えることで,そこからひらめきが生まれるんだよね。
蝸牛氏:
ゼロからキャラクターを作れと言われても,誰もがポンポン考えられるわけではないのですし。そういうのはないとダメだよなって。
安田氏:
それはもう,30年RPGを広めてきて,ファンタジーなのに相撲の「貴乃花」みたいな名前をつける人は,世の中には本当にいっぱいいるんだって実感してますから(笑)。
蝸牛氏:
名前が思い浮かばない人って,いっぱいいますよね。自分もそうですから分かります。
4Gamer:
そう言えば,「ゴブリンスレイヤーTRPG」ではプレイヤーキャラクターの名前はどうなるんでしょう。原作では妖精弓手と鉱人道士という表記になってて,あえて名前を出さない方式ですけど。
蝸牛氏:
あの世界に名前が存在しないわけではないので,皆さんが好きに付けてくださればと思っています。もちろん,原作どおり種族+職業で呼んでもらっても全然構いません。むしろ初心者さんなら,そのほうがハードルが低いかもしれません。
メタルフィギュア付きの本格派。TRPG限定版の予約が開始に
冒頭でもお伝えしたとおり,本作「ゴブリンスレイヤーTRPG」の限定版予約がスタートしている。
完全受注生産となるこの限定版は,メタルフィギュアやダイス,オリジナルシナリオといった特典付で,さらにA4サイズの箱入りという豪華版だ。発売は2019年春とのことなので,欲しいひとは下のリンクからさっそく予約しておこう。
「ゴブリンスレイヤーTRPG 限定版【完全受注生産】」をAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
“オールドスタイル”の潮流
安田氏:
しかし「ソーサリー」は今度RPGシナリオ※が出るし,「ロードス島RPG」も30周年版が出ますから,あなたが遊んで育ったものが,今になってまた世に出るわけじゃないですか。そしてあなたは自身は今,この「ゴブリンスレイヤー」を書いているっていう。この流れは面白いよね。
※TRPG「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版」用に,「ソーサリー」の物語を再現したキャンペーンシナリオの日本語版が,2018年冬に刊行予定。
4Gamer:
安田先生とグループSNEは,そうしたいわゆる正統派のTRPGをずっと守ってこられた印象がありますが,最近の流行についてはどう感じてらっしゃるのでしょうか。
安田氏:
RPGって,今は大きく3つの流れがあるんですよ。「ゴブリンスレイヤーTRPG」は昔ながらのスタイル――さっきも話したオールドスクールなRPGになりますが,そのほかに,いわゆる“ロール系”※という役割に忠実になっていく流れと,“ナラティブ系”※という最近出てきたタイプがあって。これはプレイヤーがストーリーに深く関わって,マスターと協力して話を作るというような感じになってる。もはや僕はついていけてないんだけど(笑)。
※ロール系は,ここでは「天羅万象・零」(作・井上純弌 / F.E.A.R. / エンターブレイン刊)などのロールプレイ支援システムを搭載したものを指している。ナラティブ系という括りでは,「The Wander Roads to Lord」(門倉直人著 / エンターブレイン刊)や「Dungeon World」(Sage LaTorra & Adam Koebel / 未訳)などが代表的なものになるだろうか。
蝸牛氏:
インディーズのTRPGシステムにも,最近はそういうのが結構ありますね。でも正直,自分はそこまで分けなくていいんじゃないかと思うんです。自分のころは“ロールプレイ派”と“データ派”の2つしかなかったけど,そんなに変わったものが出てきたという感覚はなくて。ゲームマスターがプレイヤーキャラクターの設定に合わせてシナリオを作るってことは普通にあったわけですから。
安田氏:
ゲームというのはインタラクティブだから,どんどん進化しても全然不思議はないんだけどね。ナラティブ系を否定するわけでもなくて,それが楽しめる仲間がいるならドンドンやればいいと思います。でもそっちに行けない人は一定数いるだろうし,僕はおじいさんが子供達に話して聞かせるみたいな,昔ながらの楽しさが好きだっていう。自分が歳行ったからかもしれないけど(笑)。
蝸牛氏:
分かります。ランダム生成シナリオがダメって言ってるわけじゃないんですけど,僕はゲームマスターが用意してくれたお話の中に自分のキャラクターを投入するのが楽しいので。「ゴブリンスレイヤー」を書いてるときも,感覚としては自分がゲームマスターで,「こういう状況を用意したよ」ってポンと置いて,あとはゴブスレさんたちのパーティがどう動くかを追っかけて書いている感じなんです。
安田氏:
たぶん,7:3くらいの割合がいいと思うんですよ。元から7くらい作っておいて,プレイヤーから3が返ってきて,それを発展させて面白くできたら最高かなと。
個人的には,ほかの方がゲームマスターをやっている「ゴブリンスレイヤー」のセッションに,プレイヤーとして参加したいです。ほかの人が書いた「ゴブリンスレイヤー」の世界にすごく興味があるので。外伝がその機会になるかと思ったんですが,GA文庫さんからいただいた企画だと,それも自分が書くはめに(苦笑)。
安田氏:
「ロードス島」の頃からそうですよ。「ロードスの世界は水野 良が書かないと」って。でもリプレイだったら,いろんな人が書いていい。だから「ゴブリンスレイヤー」も,リプレイがあったらいいんじゃない? ゲームマスターは大変かもしれないけど(笑)。
4Gamer:
ああ,ぜひ読んでみたいです。
安田氏:
今はリプレイも動画が人気だったりしますけど,昔ながらの読むリプレイというのもいいじゃないですか。紙の本が厳しいっていう面も今はありますけど,「ゴブリンスレイヤー」ではその方面でも盛り上げていけたらなと。
4Gamer:
蝸牛先生がプレイヤーとして参加されたら,やっぱり洞窟を火攻め水攻めにするんでしょうか。
蝸牛氏:
自分がプレイヤーをやっても,魔法使いのくせに魔法を使いすぎてMPが足りなくなったり,MPポーションを5〜6本がぶ飲みしたあげくに,肝心な所でダイス目が腐って役に立たなかったりじゃないですかね。だから,あまりプレイヤーとして変なことを期待されても困ります(笑)。
4Gamer:
反対に,ご自身がゲームマスターの立場だったらどうされます? プレイヤーが火攻め水攻めしようって言いだしたら。
蝸牛氏:
それが可能かどうかを判断して,仲間がみんな楽しんでたらゴーサインを出しますね。これは友人に聞いた話ですけど,ダンジョンを水攻めしたばっかりに,その遺跡に祀ってあった干物のミイラが水を吸って甦って大惨事とか(笑)。その判断はGMとしてなかなか真似ができないなって感心しました。
安田氏:
さっきのナラティブ系の話もそうだけど,お互いに阿吽の呼吸で伝わるような仲のいいプレイヤー同士達だったら,そういうのは思い浮かんだらどんどんやればいいんです。そうしたアドリブがRPGの楽しいところですし,実際,僕らがそうでした。
“バブリーズ”とか,僕にとってはまさに伝説のパーティでしたよ。まさにデジタルのRPGではできないことだと思います。
安田氏:
ああいうリプレイばかりだと,初めての人にはハードルが高くなってしまうからダメなんだけど(笑)。でもそういうことですよ。RPGをやっていると,なんか全員が酩酊するような瞬間……本当に酔っ払ってるんじゃないんだけど,そういう空気になるときがあるんだよね。どんどん話がひらめくし,おもしろい展開になっていく。あとで振り返っても,どうしてあんなことを思いついたのか分からない。そうなると,RPGはやめられなくなる。「ゴブリンスレイヤー」も,そういうことができるRPGになったらいいなって思ってます。
4Gamer:
しかし2018年になって,オールドスクールがこんなに出そろうとは。「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版」に「トンネルズ&トロールズ完全版」,「ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版」もありますし,9月末には「シャドウラン 5th Edition」も日本語版が出ました。
蝸牛氏:
しかも,どれも今の時代に合わせて進化しているのがすごいですよね。
安田氏:
そういう波が来てるんじゃないかなと思います。「ゴブリンスレイヤー」も含めて,やっぱりスタンダードならではの良さがある。“新しいオールドスクール派”の旗頭として,僕達も頑張っていきたいと思っていす。アニメもぜひ楽しんでいただければと。
4Gamer:
アニメで「ゴブリンスレイヤー」を知った人,あるいは「ゴブリンスレイヤーTRPG」に期待しているファンに,蝸牛先生から何かメッセージはありますか。
蝸牛氏:
そうですね……台湾に行ったとき,現地のファンの方から,「『ゴブリンスレイヤー』は暗闇の中に差し込む一筋の光みたいな物語だ」という言葉をいただきました。自分としてもそういう話を書きたいと思っていますし,アニメもそういう話になると思います。ご期待ください。
安田氏:
光を描くための暗闇なんですよね。なので全滅から始まることに意味がある。
蝸牛氏:
はい。自分なりに精一杯やっていくつもりでいますので,どうか楽しんでいただけたら幸いです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
原作「ゴブリンスレイヤー」は,アニメ放送に合わせた最新刊,第8巻が10月15日に発売される予定となっている。“一周まわって新しい”オールドスクールの妙味と,スタンダードならではの魅力。この記事で興味を持った4Gamer読者も,小説・漫画・アニメ・ゲームとさまざまな媒体で,本作を味わってみてほしい。
GA文庫「ゴブリンスレイヤー」特設サイト
テレビアニメ「ゴブリンスレイヤー」公式サイト
コミック版「ゴブリンスレイヤー」特設サイト
「ゴブリンスレイヤーTRPG 限定版【完全受注生産】」をAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
- 関連タイトル:
ゴブリンスレイヤーTRPG
- この記事のURL:
キーワード
(c)2019 GroupSNE
(c)Kumo Kagyu / SB Creative Corp.