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印刷2019/04/24 21:46

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[NDC19]「FAITH(AxE)」の企画パートリーダーが自身の実務経験をもとに語った。ライブサービスのプランナーに必要なもの

ネクソンRED 『AxE』プロジェクト / XDユニットライブパート パートリーダー チョン・ウシク氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [NDC19]「FAITH(AxE)」の企画パートリーダーが自身の実務経験をもとに語った。ライブサービスのプランナーに必要なもの
 「Nexon Developers Conference 19」の初日となった2019年4月24日,「『AxE』サービスを通じて感じたライブ環境で必要なプランナーの力量:デザイン、コミュニケーション、そしてアティチュード」と題されたセッションが行われた。登壇したのは,ネクソンREDのチョン・ウシク氏だ。

 この講演では,スマートフォン向けMMORPG「AxE: Alliance vs Empire」(邦題は「FAITH - フェイス」。iOS / Android)の企画パートリーダーである自身の実務経験をもとに,プランナーに求められる能力とは何かを,チョン氏が語った。

 チョン氏によると,ライブサービスの企画書を制作するにあたって,目的と目標は明確にする必要があるという。達成したいことや方向性を目的とし,その目的に到達するための実用的な方法が目標とされた。

 目的と目標が明確な企画書は,他人を説得するうえで非常に重要となる。正確な情報を共有できないと,自分と他人で理解が変わってくるためだ。お互いの理解が異なってしまうと,結果的にコミュニケーションコストが高まり,理解の違いを合わせる労力も必要になってしまう。目的と目標が明確になって,ようやく企画は半分成功と言えるだろうとチョン氏は続けた。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [NDC19]「FAITH(AxE)」の企画パートリーダーが自身の実務経験をもとに語った。ライブサービスのプランナーに必要なもの

 次にチョン氏が重要としたのは,自分の主張を説明することだ。上司や同僚がプランナーの企画書に目をとおして,「何が言いたいんだ」と言われないようにしなければならない。長々と説明するのではなく,簡潔に主張を強調し,まとめる必要がある。明確な主張は,企画書の内容を理解するためにかかるコストが減り,プランナーと上司や同僚とのあいだで誤解も生まれにくくなる。主張を簡潔にかつ強調するという,シンプルなテクニックだが,身につけるべきだとチョン氏は語った。

 第3に重要とされたのはリファレンスである。ほかのゲームや媒体から得た情報を正確に伝えることが,企画や開発上で大きな助けになるという。具体例を挙げられれば,説明するコストも大きく減り,プランナーが意図していることをラクに伝達できるメリットもある。

 チョン氏いわく,10行の文章よりも単語のほうが伝わることもあるという。プランナーから正確な伝達を受けるために,開発者は,爆発的に人気がある,あるいは人気があったゲームを一度プレイしてみて,プランナーにとってのリファレンスのプールを増やすことも重要だとした。

 プランナーの業務では,自身や他人の考えを正しく理解し,伝えていくことが多い。互いの意図を把握し,相手と協力して仕事が進むようにすることが大切だとチョン氏は語った。

画像集 No.003のサムネイル画像 / [NDC19]「FAITH(AxE)」の企画パートリーダーが自身の実務経験をもとに語った。ライブサービスのプランナーに必要なもの

 なお,相手の役職に応じて何を重要視すべきかは変わるという。プランナーであれば企画書,アーティストであればクリエイティブの品質や統一性を,それぞれ大切にしているからだ。グループ自体の性質によっては,そもそも対話や協力が多くないこともあるが,代替となる方法はいくらでもある。例えばグループ内のメール,開発ノート,日報などが参考になるという。相手を理解することがコミュニケーションの基本的な要素であり,関心を持つことが第一歩だとした。

 そして相手を説得するうえで重要なのは,代案を用意することだ。企画書の制作にあたっては,プランナーが提示する内容に加えて,その方法をきちんと記載する習慣も必要だという。
 相手を一度で説得できることは基本的にない。説得の過程で代案がなければ,相手は強制されているという印象を受ける。代案を出すことで,相手に選択肢を与えられるだけでなく,回避策などの確認をとおして問題の本質がより把握でき,相手がこちらへの理解を深めやすいというわけだ。

 また,先述のリファレンスに関する話は,ここでも重要だとチョン氏は繰り返して述べた。プランナーの頭の中だけにあるアイデアを,文章としてアウトプットすることは大きなコストがかかる。相手も頭の中の考えをすぐに渡すことはできないので,互いの理解が噛み合わずに,別の問題発生につながってしまうケースもあるためだとした。

 コミュニケーションの手段としては,「オフィシャル」と「バッグドア」という表現が用いられた。メールや会議といった,いわゆる記録に残るのが前者で,記録に残らないのが後者というわけである。

 基本的には,正確に仕事を進めるためのオフィシャルコミュニケーションがもちろん良いとしたが,文章で説明することが難しかったり,緊急だったりした案件を処理しようとしたとき,バックドアコミュニケーションが有効なこともあるという。伝えたい内容を比較的に詳細,かつ簡単にすばやく伝達し,フィードバックも即座に返ってくる。短い時間で効率的に仕事を進められる長所があるとチョン氏は語った。

 加えてチョン氏は,「父や母を呼ぶ」という手段も有効だと紹介した。つまり上司を使って相手を説得するのである。あるいは自身の上司と相手の上司のあいだで意思決定をしてもらう。ただし,上司には自身の意図や考えを正しく共有できなければ,自分の代わりに説得する立場になったとき,信頼や関係にヒビが入るリスクを抱えると補足した。

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 講演の後半では,プランナーにおける心構えについてもチョン氏が語った。まず「ミスの発生は問題ではなく,ことを進めるのが重要だ」とし,ミスが発生したときは,手段と方法を選ばずに解決へと向けて取り組むべきだという。チョン氏は「ゲームは1人で作るものではない」を先のミスの話と合わせて強調し,ミスをどう直すか,他人にどう助けを求めるかという姿勢が正しいと語った。

 そしてプランナーは,企画に自信と責任感を持つことも必要だと続ける。その企画に誰よりも時間をかけて悩んだ人間は,自分であるということを自覚し,実務の発展を目指さなければならない。

 また,能動と越権の違いはきちんと理解すべきだと語った。プランナーにとって,積極的な姿勢は必要不可欠だが,一線を勝手に超えないよう注意する必要がある。目的と目標を変更したり,誰にも共有しないまま決定したりすることは,周囲の混乱を呼び,企画と開発の進行を妨げるため,非常に危険だ。「ゲームは1人で作るものではない」ということは,すなわち「複数の人が一緒に作っている」のである。そのことを念頭に置き,提案と説得の過程は必ず踏まなければならないとした。

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 最後にチョン氏は,プランナーの心構えとして,謙虚になりすぎないことも大切だと語った。うまくできたことは堂々と説明し,周囲に認められるべきだという。認めてもらえる人が多くなるほど自身の影響力は広がっていき,それが最終的に実力というものにつながると説明した。
 なお,チョン氏は今回の講演内容を,現役プランナーやプランナー志望者向けとしたが,他社を説得する能力や,説明の責任を負うことは,管理職に必要な能力であるともアピールし,講演を締めくくった。

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