25年超のジャニーズファンによる「JUDGE EYES：死神の遺言」プレイレポート。木村拓哉主演の貴種流離譚は“推しに転生”を叶える禁断の果実

　4Gamer読者の皆様，はじめまして。ライターのみきーると申します。25年超のジャニーズファンで，仕事でもジャニーズについて書くことが多いという，公私両面のジャニヲタ（ジャニーズオタクを自認する強火のファン）です。

　ゲームの記事はめったに書かない私が4Gamerに登場した理由は，木村拓哉さん主演の「JUDGE EYES：死神の遺言」（以下，「ジャッジアイズ」）。本日（2021年4月23日）「JUDGE EYES：死神の遺言 Remastered」（PS5 / Xbox Series X）が1980円（税込）で発売となり，販売中のPS4版も同価格に引き下げられました。


　ジャニーズをこよなく愛する筆者がジャッジアイズをプレイしたら，どうなってしまうのか!?　「ジャニヲタの私が転生したら木村拓哉だった件！」――そんな表現がしっくりきそうですが， ジャニヲタならではの視点で，本作をみっちりレポートします。この記事を読んで興味を持った方は，ジャニヲタでもそうでなくても，ぜひプレイしてみてください。
　なお，プレイにはPS4版を使用しており，記事中のスクリーンショットもPS4版のものとなっています。

木村拓哉には貴種流離譚がよく似合う

　ゲームをスタートさせてまず感じたのは，「うわ！ 私，木村さんになってる!?」という感覚だ。オープニングムービーが終わると，自分が主人公の八神隆之を動かすことになる。つまり主演の木村さんになっている……！　ゲームだから当たり前なのかもしれないが，ファンにとっては一大事だ。

　一瞬戸惑うも，ここは映画の撮影現場だと思い直した。「“木村拓哉”演じる“八神隆之”の人生を生きろってことか。オッケー，木村さんへの愛と敬意を損なわず，八神のミッションを遂行しなくっちゃ！」という使命感が，メキメキと湧いてくる。

　おそるおそる動かしてみると，なんですかこの美しいグラフィックスは。八神は“立てばキャプテン（※），座れば拓哉，歩く姿は木村さん”と歌いたいくらいカンペキに“キャスト：木村拓哉”であり，「私なんかが御身に“入らせてもらって”もったいねぇもったいねぇ」と手を合わせてしまうほど。別の表現をすれば，木村さんと神経接続して，一緒に“八神隆之”というキャラクターを動かす感じ？
　ともあれ，木村さんをカッコ悪い目に遭わせないよう，がんばるぞ！

※ラジオ番組「木村拓哉 Flow」での木村さんの愛称


　ここで，木村さんと私が共に“生きる”「ジャッジアイズ」の世界を見ておきたい。

　舞台は新宿の歌舞伎町をモデルにした「神室町」。
　主人公・八神隆之は，しがない事務所を営む35歳の私立探偵。デニムに革ジャン，スニーカーといういでたちで，探偵とはいっても浮気調査から迷い猫の捜索までこなす“なんでも屋”のような存在だ。

　街に溶け込み，細々と暮らす八神だが，かつては将来を嘱望される弁護士だった。彼は有罪率99.9％と言われる日本の刑事裁判で奇跡の無罪判決を勝ち取り，華々しい未来が開けていたのだが，彼の弁護で無罪となった被告が再び凶行に及んだため，弁護士として生きる自信を失ってしまったのだ。


　そんな折，八神の元に神室町で起こった猟奇殺人事件に関する証拠集めの依頼が舞い込んだ。これを機に，彼は巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく――。

　さっそくのせつない設定。これから挑むのは，八神が楽園を追われたあとの物語なのだ。
　木村さんの出演作品をひもとくと，八神の置かれた状況は，敏腕SPから民間のボディガードに転身する「BG〜身辺警護人」の島崎 章，パリの名店のシェフから無名店のスーシェフになる「グランメゾン東京」の尾花夏樹あたりが近いだろうか。いずれも主人公が一度手に入れた栄誉を失くして上界から離れ，新たな道に踏み出す「貴種流離譚」である。

　美しき男，木村拓哉には貴種流離譚がよく似合う。
　ヘビーな立ち位置なれど，気高くいかねば。

探偵のオンタイム

　まずは基本のキ。八神にとって探偵は大切な本業だ。自分で稼がねば，生活費もままならない。そのため，物陰に隠れながらの「尾行」や，逃げる容疑者を走って追いかける「チェイス」，さまざまな人物から情報を引き出す「聞き込み」，証拠写真を押さえる「スクープ」といった業務の達成はマストである。

　マストなのだが，問題は操作する私だ。たとえばチェイスでは，八神が「ちょ，待てよ！」と言いながら颯爽と駆け出してくれる……のだが，私の操作が悪いため，ビタ〜ン！　と転んだり，通行人に突っ込んだり，投げつけられた空き缶を食らったりと，踏んだり蹴ったりのあげく相手を見失うことが度々。八神に「やべっ，どこにもいねぇじゃん」と口惜しいひとことを漏らさせることの申し訳なさよ……。


　「極上のスポーツカーに若葉マークの初心者が乗っちゃってすみません！」と謝罪したい気持ちだったが，一度感覚をつかむと障害物を巧みにかわし，跳び，時には乗り越え，流麗なアクションで相手を追い詰める快感にジンジンシビれてしまう。だって，そのしぐさのすべてが，まんま木村さんなのよ？ 見ていて嬉しいし惚れるし酔う。

　八神にならなければ触れる機会がないであろう，さまざまなアイテムも操ることになった。キーピックや針金を用いた鍵開け，ドローンを操縦しての探索がそれだ。
　ピッキングと聞いたら被害，ドローンと聞いたら撮影映像くらいしか思い浮かばないので，“何かされる側，受け取る側”でしかないと思っていたが，八神と共に“やる側”を経験し，思わぬ社会勉強になった気がする。

　繊細な鍵開けに成功し，「フッ……よし！」とつぶやく拓哉ボイスもセクシーでまた一興。「ピッキングってこんなふうにするのか，気をつけないとな……八神なら歓迎だけど」と，防犯意識も高まった。

　ドローンの操縦も最初はおぼつかなかったが，何しろこの身は八神であり木村さん。揺れる機体を導くコツをほどなくつかみ，敵情視察や証拠撮影としゃれこんだ。“なんちゃってドローンパイロット”の体験もさせてくれて，ホントありがとう！

　さらなる必修科目は，本ゲームの醍醐味でもあるバトルだ。
　神室町は，任務中のみならず散歩しているだけでチンピラに絡まれる修羅の街。だが八神は亡き父からカンフーの手ほどきを受けており，そのスキルをケンカで磨いた抜群の格闘センスを持っている。
　青い光をほとばしらせてスピーディに技を繰り出し，複数の相手に攻撃できる“円舞”と，赤い光をまとった強烈な攻撃を1人の相手に打ち込む“一閃”のスタイルを使い分け，小気味よく敵を捌いていく。壁を蹴って三角飛びからキックを放つ，スライディングして脚を払う，ザコを飛び越えてボスを殴る，敵を蹴り上げてからパンチを決めるなど，華麗な技の連続にときめきすぎて，もう心臓はバクバク！　


　「でも，そういう技を出すのってムズいんでしょう？」と悩める奥様，ご安心を。本作は「誰でも，簡単に，カッコいいアクションバトル」なるコンセプトを掲げているだけあって，難解なコマンド入力など不要。ゲームに不慣れな人も適当にボタンを押すだけで，八神が素敵に戦ってくれるのだ。

　特に美しいスローモーションで表現されるハイライトシーンは，ヲタ必見の尊さ。敵をのしたあと，「……ったく，時間食っちゃったよ」とウザそうにする木村さんの声も必聴オブ必聴。で，操作に慣れたらよりなめらかに美技を出せるよう戦い方にこだわったり，バトルの難度を上げて八神とシビアな道を行ったりするのも，“アリ寄りのアリ”。

　このバトルをさらに派手にしているのが，バイオレンスタウン・神室町だ。街角の看板や自転車，ゴミバケツなどなど，そこらへんにあるものをブン投げたり振るったりできるので，まるで街全体が武器庫のよう。やっちゃえ，八神！ 道具を選ばぬ八神ファイトに，またまた惚れさせられてしまう。


　なかなかハードな探偵業だが，八神には心強い仲間もいる。
　八神探偵事務所の調査員・海藤正治がその人だ。海藤は東城会系松金組の元組員で，八神にとっては頼れる存在。見た目通りに豪放磊落な性格で腕っ節が強く，敵に出会えばともに闘ってもくれるので，八神が義経なら海藤は弁慶のイメージだ。その一方で意外に細やかさもあって，ドローンも器用に操り，調査のサポートをしてくれる。

八神のよき相棒，海藤正治

　彼といる八神はどこか楽しげで，安心した表情を浮かべているように思う。凶器を手にした大勢の男たちを相手にする激しいバトルでも，それは変わらない。海藤が「やっと俺の出番だな、ター坊！（八神の愛称）」と叫べば，八神は「ああ……給料分は頼むよ」と軽やかに応えるといった感じだ。胸のすくようなコンビネーションバトルの爽快さは，ストレスもふっ飛ばしてくれる。

　また，八神が弁護士時代に籍を置いていた源田法律事務所の所長・源田龍造や，同事務所の弁護士・城崎さおり，星野一生らも，親身になって八神を支えてくれる人たちだ。金欠の八神に仕事をまわしてくれることも非常に助かるのだが，見逃せないのは，この古巣が殺伐とした八神の毎日をほぐしてくれる場になっていることだろう。

　甘い物に目がないさおりや源田に取り入るべく「これね，どら焼き。限定もんだって」「あ，源田先生，どら焼きどうです？ 先生なら絶対気に入ると思って」と，手土産をぶら下げて営業する八神の姿は，可愛らしくてちょっとなごむ。
　気の置けない仲間たちを通して，八神本来の気立てのよさも垣間見られるのだ。


　一方で，八神を快く思わない者もいる。
　元先輩弁護士の新谷正道は八神への嫉妬心を隠そうともしないし，神室署組織犯罪対策課の刑事・黒岩 満は「3年前，お前の弁護で無罪になった男が何の罪もない女の子を焼き殺した」とのたまい，八神のせいで殺人犯が野に放たれたと思っている。東京地検の検事正・森田邦彦や検事の泉田圭吾も同じ理由で八神に冷淡だ。松金組の若頭・羽村京平は，組長が息子のように可愛がる八神が疎ましいようだ。事件を記事にしたフリーライター・服部 耕も，ねちねちと八神につきまとう。

　彼らに因縁をつけられ，時に古傷をえぐられる八神は声も苦しげで，思わずコントローラを持つ手が止まってしまうほど。
　特に，ある法廷で再会した服部に「あなたが野に放った殺人鬼にかわいい娘を焼き殺されたご遺族……彼らは今も苦しみ続けています。それなのにまた法廷に戻ってくるつもりじゃないでしょうね？」と迫られた八神が，顔も上げられずに「誰もそんなことは言ってない」とつぶやいたシーンは印象的だった。その無力感と諦観がないまぜになった声が，悲しく耳に残っている。それほど繊細な心の機微を，木村さんは見事に表現している。


　敵にしろ仲間にしろ，自分を取り巻く人々と丁寧に向き合うことで，八神は真実に近づいていく。彼らの話に耳を傾け，集めた情報を丁寧に精査して，真相にたどり着かねばならない。会話の“流れ”をつくることも重要で，順当なルートで話せれば，ゲームをスムーズに進められるが，道筋を誤ればご褒美はおじゃんなので，八神に見とれず冷静に臨むことが大切だ。

　相手に詰め寄る際，素っ頓狂な選択をしてしまうと，「はぁ？」という顔をされてしまうし，ましてや間違った証拠を突きつけたら，カッコ悪いうえに味方にも呆れられてしまう。……とはいえ，「オレが見せたいものはこれじゃなかった！」と慌てる八神も激カワなので，ミスはミスでヲタ的にはおいしい。

　ガッツで調査を進めていくと，ときおりカットシーンが挿入される。操作に気を取られることなく，役者・木村拓哉がインした八神を俯瞰して眺められるので，ヲタにとってはその魅力にどっぷり浸れるボーナスステージのようなパートといえよう。
　本作には，木村さん以外にも谷原章介さん，滝藤賢一さん，中尾 彬さんといった名優が出演しているので，彼らが会するさまは映画のワンシーンのようにゴージャスだ。美麗な映像からは，彼らの間にある温情や憎悪，また八神が抱く真相解明への熱が立ち上ってくるかのよう。刮目して見入るべし。

谷原章介さん演じる黒岩 満

滝藤賢一さん演じる綾部和也

中尾 彬さん演じる源田龍造

探偵のオフタイム

　八神には探偵の仕事だけではなく，神室町での日常もある。メインストーリーを進めつつ，彼の“暮らし”も見るのがおすすめだ。

●活動資金
　所持金が乏しくなれば家賃に困るし，傷を癒やすのもままならない。愛する八神にお寿司でも食べさせてあげたいけど，お金がないからラーメンでがまんしてもらう……なんてこともままあるので，資金のやりくりには十分に気をつけたい。
　もっとも紳士な八神はたとえディナーがラーメンだとて，おいしそうにたいらげてくれる。いただく前にきちっと手を合わせる上品さ，食べ終えて「気に入った！」と言ってくれる言葉の嬉しさよ。
　ギャンブルやクラウドファンディングなど，労働以外にも蓄財のすべはいろいろある。八神にひもじい思いをさせないよう，ちょいとチャレンジするのもいい。


●女性関係
　ヲタとしては八神の女性関係も気になるところ。
　弁護士時代の彼は，女性検事・藤井真冬と憎からず思い合っていたようだが，現在は距離を置いている模様。今は恋人ナシということで，なんとなくホッとする。だがそこはイケメンの性（サガ）。真冬以外にも女性と知り合うことがあり，八神は意図せずに彼女らの琴線をかき鳴らしてしまうのだ。

　このとき，「ちょっと！ 私のター坊に色目つかうのやめてもらえますかね？」と不快に感じるかと思いきや，芽生えたのは「わかる……！ だって私（八神），カッコいいもんなぁ……」という女性たちへの共感である。モジモジする彼女らを見て，「木村さんを前にしたら，私もこんな感じなんだろうなぁ」と，気恥ずかしいような愛しいような，大事にしてあげたいような気になってしまう。
　女性たちとはなんらかの縁があって出会うので，八神らしく親切に接したい。モテる男の困惑や照れくささを疑似体験できるのも，げにすばらしき。


●休息
　八神は，神室町の中通り裏にあるビルの2階に小さな事務所を構えている。仮眠用ベッドを兼ねたソファにデスク，冷蔵庫，ピンボールマシン，レコードプレーヤーなどを備え，こぢんまりとして居心地よさそうな空間だ。ここではレコードを聴いたり，部屋の飾り付けを変えたり，ピンボールで遊ぶこともできる。神室町には雑貨を買える場所もあるので，好みの品を買ってきて置いたり，レコードを集めてみるのもいい。

　そうやって，“自分仕様”に仕立てた部屋で八神にくつろいでもらうと，レコードの調べに包まれて，彼と同じ部屋にいるような気になってくる。ヲタならば何もせず，八神……木村さんとゆったり過ごすのもまた悪くない。
　ふたりだけの隠れ家で秘密の時を分け合うような，そんな甘い愉しみがあるのもとてもよき。


●神室町のよき住民として
　八神隆之＝木村拓哉ではないが，人に媚びず見下しもせず，相手が誰であろうと温かく平らかに向き合う八神の人となりは，間違いなく木村さんの人柄に通じると思う。
　八神が神室町を歩くと，さまざまな人が声をかけてくる。それはちょっとした雑談だったり，悩み事の相談だったり，何かへの誘いだったりもする。取り合わずスルーしても構わないが，プレイするうち自ずと“木村さんらしい選択”をして，人々の話に耳を傾ける自分に気づく。


　相手が飲食店の店員さんなら新メニューの感想を伝えたり，キャンペーンに協力したり……。嫌がらせをされている人がいれば，見過ごさず助けたい。
　また，広場でパフォーマンスをする人がいたら足をとめてみるなど，行きずりの人にもやさしく接する。「情けは人のためならず」というが，そうやって人との絆を大切に育んでいくことで，八神の人間関係は強く豊かに彩られ，やがては彼自身の救いとなって還ってくる。街の人と親密になってウィンウィンの関係を築けるのも，本作の小粋な仕組みのひとつだ。

八神と真実をつかむ

　先に，本作は貴種流離譚であると書いた。日本の貴種流離譚の代表作としては「源氏物語」が挙げられる。源氏物語の主人公・光源氏も，本作の八神も聡明な美男子で，彼を愛する者も，複雑な思いを抱く者もいる。「源氏物語・玉鬘の巻」には，光源氏が姫君たちに新年の衣装を見立てるシーンがある。艶やかなものもあれば清楚なものもあり，読者は源氏が選んだ衣を通して，女性たちの本質に触れるのだ。

　本作で八神を取り巻く男たちは，彼の瞳――まなざしを通して，その本性を白日の下にさらされる。いかついように見えても，そこにはそれぞれの正義がある。八神と共に彼らひとりひとりがこじらせた正義をほどいてやることが，事件を解決する糸口になっていく。
　明るみに出された“漢”にまみえる清々しさは，「龍が如く」から綿々と続く神室町ノワールのカタルシス。胸襟を開いてぶつかり合うことの大切さを，八神は教えてくれる。


　八神隆之。プレイを終えると，木村さんと共に生きたその名が特別なものに思えてくる。彼から離れがたく，「八神」の由来に思いを馳せると，古代エジプトの八柱の神々“オグドアド”につながった。オグドアドは四組の男女で構成された神で，「日の出が毎日繰り返されるようにし，ナイルの水が絶えないようにした」という。
　その姿は，プレイヤーと対になり，愛と正義で神室町の日常を守る八神と重なりはしないか。

　ジャッジアイズに散りばめられた愉しみは，一度プレイしたくらいでは味わいつくせない。ヲタならば，未見のエピソードを回収し，木村さんの表情をもれなく見たいと思うだろう。これは“推しに転生”を叶える禁断の果実。ひと度かじれば戻れない。

　木村さんと共に八神という船に乗り，何度でも神室町に漕ぎ出そう。
　さぁ，もっともっと！

「JUDGE EYES：死神の遺言」公式サイト