プレイレポート
「グリムエコーズ」のCBTをやってみて――キャラクターのレアリティは,本当の本当に時短の意味しかないみたい
本作は,同社が提供している「グリムノーツ」のシリーズ第2作にあたる。しかし,ゲーム内容は広大なフィールドを歩いて探索し,町の住人に話しかけて物語を進め,独自解釈された数々の童話世界を冒険するなど――スマホ向けに最適化されたRPGという括りをゲームシステムからして飛び出した,“往年のRPGそのまんま”の作りになっていた。
以下,本稿ではCBTを遊んでみてのプレイインプレッションに加え,グリムノーツと本作のプロデューサーを務める石井諒太郎氏に聞いた話をまとめていく。
「グリムエコーズ」公式サイト
とりあえず知りたいグリムエコーズ
プロジェクト名「Project-Echoes」として発表された本作は,正式タイトルが公開されたとき,石井氏からこのようにコメントされていた。「続編のように地続きな物語ではない,独立したまったく別の物語」「ストーリーのテーマは,人生の岐路にある選択とその残響」。これらはCBTで体験できた「ヘンゼルとグレーテル」の世界でも,その一端に触れることができた。
ただ,CBT向けに調整された手応えたっぷりの難度や,いろいろと隠されているのだろう謎のほうに関心が向いてしまったため,コンセプトの前者はそのとおりであったが,後者については,成っていないというわけではなく,進行度合いもあってその全貌を受け取れたとは言い難い。なので,感想はちゃんと遊んでからのほうが誠実であるため,ここでは置いておこう。
ひとにはみな、生まれたときより定められた運命がある。
ある者は無辜の民として…
そしてある者は可憐なる王妃として…
授かった運命から、ひとは決して逃れることができない。
もしも、その運命に抗い、別の運命を望もうとすれば…
ひとは大いなる罰を、受けることになる。
僕らの過ちは、世界のシステムに気づいたことではなかった
世界から与えられた罰は世界からの拒絶
運命を受け入れられなかった僕たちは残された自分の人生を拒絶した
そう、それが僕らの犯した“罪”だった
罪深き死者を誘う贖罪の場は管理者たちの墓場
管理者により選ばれた罪人は“図書館”へたどり着く
そこは、救済ではなく贖罪の場
そこは、無限の中に作られた有限の記憶
与えられた運命を拒絶した僕らは新たな役目を与えられる
そのことに僕らは気づくことができなかった
「これは、忘れられた1ページに、確かに存在した物語」
シンボルエンカウントによるバトルは,ノンターゲティング方式とも言える3Dアクションバトルが採用されている。プレイヤーは3人編成のヒーロー(※キャラクターの意)のうち1人を操作し,移動,攻撃,回避,スキルを使い分けて敵と戦うのだ。
敵との戦闘は爽快感重視の軽快な挙動というよりも,攻撃のときは攻撃,回避のときは回避を意識して操作しなければならない,いわゆるRPGライクな攻防の切り分けを大事にしたものに感じられた。攻撃モーションをステップ回避でキャンセルすることは可能だが,いつでも自由にキャンセルできるわけではないので,状況に適したアクションを心がけなければ敵味方での叩き合いになりがちだ(※あくまでCBT時のゲームバランスを指して)。
しかし,それが悪いかというとそうでもない。人によっては“もっさり”と表現するかもしれないが,ゲームスピード自体はいたってスピーディである。今回は本当にただの話し合いの場であったので,写真のひとつも確保していないのが恐縮だが,石井氏によると「すべての敵は攻撃と回避のタイミングを完璧にすれば,ノーダメージでも倒せます」とのことでもある。挙動の速い遅いは問わず,戦闘のコンセプト自体が“じっくり”なのだろう。
ヒーローは攻撃特化の「アタッカー」,スピード重視の「ストライカー」,防御の要「ディフェンダー」,サポート役の「マジシャン」,遠距離系の「シューター」の全5職が存在する。そのうえで各職ごとに3つの武器種があり,それによって各々の特徴が変化する。端的に説明すると,アタッカーには両手剣,両手槍,両手斧のヒーローがいて,同職の中で武器種とスキル構成のバリエーションが存在するわけだ。
とはいえ,このゲームの作風で考えれば第一優先は「キャラクタービジュアル」で選ぶのが正義だろうか。
さて,ここからは石井氏にざっくりと聞いた話を紹介していく。本作は「良くも悪くもグリムノーツとは違うゲーム性」を目標に,シリーズ作品ではあるが,内容自体はまったく別のアプローチをとったという。それが今回の“RPGらしいRPG”と呼べる内容につながっているのだろう。なお,開発は前作と同様に「元気株式会社」が担当しているとのこと。
実際問題,グリムノーツの遊び方がどこでもポチポチ操作可能とすれば,グリムエコーズは腰を据えてプレイしたい内容だ。ゲーム性を切り分けるにいたった目論見はいろいろとあるようであったが,単純に考えても,ユーザーの移行による現行タイトルの衰退や,新規ユーザーへのアピールを踏まえると,真っ当な方針と言えるだろう。
それと当たり前だが,「グリムエコーズの登場によって,グリムノーツの展開が縮小される」といったことはないという。グリムノーツの現役プレイヤーはとりあえず安心しておこう。
ゲームの流れは,どこか影を背負った主人公たちが,さまざまな童話世界のステージを順に回っていくものだという。題材は「不思議の国のアリス」「白雪姫」「マッチ売りの少女」など,誰もが知るものばかりだ。ただ,童話モチーフの作品がここ数年でだいぶ増えてきたこともあり,石井氏にもその実感はあるようで,競合の多さに苦笑していた。
一応,マイナーな作品を取り上げないのかと尋ねたが,「童話は世界各国に無数にあるんですが,日本人が認知できているのはその中の僅かなんですよね」と返された。ぐうの音も出ないほど,そのとおりだろう。「おうさまの耳はロバの耳」「眠れる森の美女」「おやゆび姫」などを挙げられると,名称も内容も知っている人は,前者に比べて格段に下がってしまうことが明白だ。
いや,決してこれらをマイナーと決めつけているわけではないので,年代の違いによるクリティカルな思い出がある人なども,「世間じゃそういうイメージだよね」みたいな感じで,ちょっとだけでも納得してくれると助かる。なお,童話は海外のもののみならず,日本の「桃太郎」なども取り扱う予定があるという。
いくつか細かいこととして,「オート戦闘はあるけど,オート移動はないのか」と聞くと,なんとオート移動はすでに実装されていたらしい。気づいていた聡い人は笑ってくれて構わないが,マップ上で画面左上のアイコンを押すと,キャラクターがクエストの目的地まで自動で走ってくれるというのだ。
チュートリアルで教えてもらった覚えはないのだが,実際そのとおりで,「快適に遊んでもらいたいんですが,全部オートだとRPGっぽくないので」と石井氏は語っていた。オート移動でエンカウントし,戦闘後にオート移動が解除されるもの,完全自動化はしないという意図の仕様らしい。適切な体験のための,適度な不便さといったところか。
とはいえ,本作はいつでもどこでもローディングなしでホームメニューにアクセスでき,たとえダンジョン内であろうとガチャを引ける。このゲームを遊んだ人の大半は「すごい快適」と思ったのではないだろうか。でもストレスがない反面,マップで住人と会話できても,いろんなお店に寄る必要がないのはちょっと残念であった――と伝えたところ,「街で武器屋の人と会話すると,武器の画面に変遷するなども考えています。どう考えても手間でしかないんですが,その手間も面白みですからね」と話してくれた。
おそらく,グリムエコーズはこういう快適さと不便さを両立した,RPGらしいRPG体験の提供を目指してきたのだろう。
「回復薬は道端で草を拾って,合成しなくちゃいけないのか」とも聞いた。素材収集はアビリティ開放のためのAP取得も合わさって,能動的に拾いたくなる要素なのは確かだが,いずれは「拾うのめんどくせえ」となりそうだったからだ。
これに関してはCBTでは未開放であったショップ機能を通じて,ゲーム内通貨「ゴールド」で購入できるようにするらしい。とはいっても,ゴールドを貯めるのも結構大変なようなので,ほどほどに自給自足することを考えていたほうがいいのかも。
そして,キャラクターのレアリティについても言及した。今どきは「レアリティはあまり関係ない!」「限界突破で最高レアリティに!」といった売り文句をチラホラ見るが,その実態は最終的に埋められない差があったり,途方もない労力が要求されたりするからだ。しかし,石井氏は言った。「本当の本当にレアリティは関係ないですね。ただの時短ですから」。
レアリティの☆2〜☆4については,☆2のLVを上げて,ゲーム内ポイントで限界突破を重ねると☆3や☆4にできる。その際,イラストも同レアリティのものに変化する。一方,ガチャで☆4を手に入れると,限界突破をしなくて済む。☆2のアリスと☆4のアリスはステータスもスキルもすべて同様で,その違いは「イラストと限界突破をしてるかしてないか(最大LVの上限に影響)」だけらしい。当の限界突破にしても,そのためのキャラクターなどが無限に手に入るスタミナ制のダンジョン「ほこら」を周回すれば,ほどよく手に入るんだとか。
最大値までの限界突破には,言ってもそれなりの時間が要求されるのは確かだろうが,「本当の本当にそれだけですか?」と聞いても,「本当の本当にそれだけです」としか返ってこない。グリムエコーズのキャラクターのレアリティは,本当の本当に時短でしかないようだ。なんと言うのか「ありがたいです」と「それで大丈夫なんです?」が混在する感想しか口にできなかったが,“既存のありがちな構造”からキッパリと脱却しようとしているのはよく理解できた。事実,本作はガチャはあれど,それ以外のアプリ内課金も経験値の獲得量などに紐づく時短をメインにするとのことだ。
今後の予定について石井氏は,「年内はCBTで得た意見や感想のフィードバックに費やします」と答えた。だが,ファンをそれほど待たせるつもりはないそうで,2019年が明けてから遅くない時期に朗報を届けられるよう,今から準備しているという。
グリムエコーズは童話世界のRPGで,本格的なアクションバトルでと,分かりやすい魅力が前面に出ている。それでいて,ゲームとしての快適さとRPGとしての不便さ,大幅に手が入ったスマホゲームの構造と,その内面にわりとチャレンジが詰まっている。まだ一部のファンに向けたCBTが大好評で終わっただけの段階ではあるが,配信開始後に本作がより多くのプレイヤーにどのように届いていくのか,今から楽しみだ。
「グリムエコーズ」公式サイト
(C)2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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