レビュー
「仁王2」レビュー。侍の技と妖怪の力で,高難度のバトルを生き抜け!
自分だけの主人公を作り,戦国時代へ
本作の舞台となるのは,前作より前,織田信長が生きている時代だ。野望に燃える霊石売りの商人・藤吉郎と主人公は,2人で1人の“秀吉”として,妖怪と人が入り乱れる戦場に赴くことになる。
入り組んだマップには,殺意溢れる配置で敵が待ち構えているが,本作の主人公は,前作以上にハイスペックであり,その力のすべてをもって難敵の撃破に挑む。
主人公は人間と妖怪の間に生まれた“半妖”だ。主人公がウィリアムで固定だった前作と違い,自由にキャラメイクできる。性別,髪型,身長はもちろんのこと,「肌質」に「筋肉質さ」,「スタンスの広さ」や「渋さ」(加齢表現)といったユニークな項目もあり,凝り性の人にはたまらないだろう。
また,半妖だけあって妖怪化も可能で,このときの髪型や角の形も決められるのは本作ならではと言える。人間の時は黒髪だが,妖怪化すると金髪になるといった設定も可能だ。
侍の技に妖怪の力。和の雰囲気が漂うシビアなバトル
本作のバトルは“死にゲー”らしい緊張感溢れるものだ。システムの大枠は前作を引き継いでおり,最も重要になるのが「気力」と間合いの管理だ。攻撃や回避,防御には気力というリソースが必要となり,これがなくなった状態で攻撃を受けると息切れを起こし,しばらく行動不能の大ピンチに陥ってしまう。この気力を管理するために,間合いを取って的確な攻撃や回避を行う必要がある。敵の攻撃も気力を使って防御するのではなく,後方に下がるなどして避けるのが理想だ。
気力切れを防ぐために使いたいのが「残心」だ。攻撃や回避の後にタイミング良く[R1]を押すと,心気を整えてある程度の気力を瞬時に回復させられる。残心とは武道や茶道で使われる考え方で,「技を決めた後にも油断せず,新たな事態に備える」ことにより,気力が保てるのだ。
接近戦用の武器を扱う際は構えも重要だ。攻撃の威力は高いが気力消費と隙が大きい「上段」,癖のない技を出せる「中段」,振りが素早く気力消費が少ないものの攻撃力も低い「下段」の3種が存在するので,状況に応じて構えを切り替えたい。
本作で使える武器は,前作の「刀」「二刀」「槍」「斧」「鎖鎌」「大太刀」「旋棍」「弓」「銃」「大筒」に,新しく「薙刀鎌」「手斧」を加えた12種類。薙刀鎌と手斧は,それぞれ特徴的な性能を持つ。
薙刀鎌は上段だと大鎌,中段は薙刀,そして下段は刃を折りたたんだ大鍘刀(だいさつとう)になる変形武器で,大鎌は攻撃力,薙刀は攻撃範囲の広さ,大鍘刀は手数に勝るのがウリだ。武技(武器を使った攻撃スキル)の中には大鎌から薙刀へと変形させつつ連続攻撃をかけるものもある。
一方手斧は,両手に小ぶりの斧を持つ武器だ。タメ攻撃で投げつけることができ,弓,銃,大筒といった遠隔武器と違って弾が必要ない。接近戦時は手数が多く,防御性能も高い。
前作の戦闘に新たな側面を付け加えるのが,妖怪の力による「妖怪化」「特技」「妖怪技」である。
妖怪化は,敵と戦っていると増加する「アムリタ」ゲージが満タンのときに[○]+[△]を押すと,一定時間妖怪の姿に変身できるというもの。前作における「九十九武器」と似たフィーチャーだが,こちらは装備している「守護霊」の種類に応じて「猛」「迅」「幻」という3タイプの妖怪になれる。パワフルな猛は[L1]+[△]で受けた攻撃をはじき返し,スピーディーな迅は回避の後にもコンボが継続,特殊型の幻は[L2]で構えた武器を投げ,当たった場所に瞬間移動する。九十九武器はいざというときの無敵モード的な位置付けだったが,こちらは妖怪化した後にもタイプに応じた立ち回りが要求されるのが面白い。
特技は,一時的に妖怪に変身して技を出すというもの。ここで重要なのが,敵が赤く光ったら出してくる大技に合わせて特技を出せば,カウンターできるということだ。猛の特技は攻撃が出るので,大技が出る前にこれを当てて潰す。迅の特技は特殊なダッシュを行うので,大技が出る瞬間にタイミング良く突っ込めれば追加攻撃が発動。幻の特技は特殊ガードで大技を受け止めると自動反撃が発生するという具合で,こちらもタイプによって発動する技と仕掛けるべきタイミングが異なる。
特技が決まれば敵に大きな気力ダメージを与え,バトルが一気に有利になる。ボスの大技を返す際はスリル満点で,うまくいけば爽快感抜群だ。
前作にも敵の攻撃を返す武技はあったものの,基本的に人間の敵用で,妖怪に対しては役に立たなかった。そのため,妖怪の攻撃は通常の防御でしのぐしかなかったが,今回はその対処法が増えたため,よりやりがいのあるバトルが楽しめる。
妖怪技は,妖怪を倒した際にドロップする「魂代」を装備すると,その妖怪の得意技を使えるというものだ。雑魚からボスまでさまざまな妖怪が魂代をを落とすうえ,飛び道具や広範囲攻撃など種類も豊富。「餓鬼」の妖怪技は餓鬼に噛みつかせて相手の体力を吸い取り,「煙々羅」は厄介だった竜巻を自分で発射でき,「馬頭鬼」は散々手こずらされたなぎ払い攻撃を出せる……など,バトルにバリエーションも生まれる。
ボス妖怪は初回討伐時に魂代が出現することが多いものの,雑魚妖怪の魂代はランダムドロップなので,妖怪を倒すたびに魂代が出るかどうかでドキドキすること間違いなしだ。
これらの技を使う際は,妖怪化は前述したアムリタゲージ,そして特技と妖怪技は,近接攻撃を当てると増える「妖力」ゲージという別のリソースを使用する。たとえ気力が尽きても,妖力が残っていれば特技や妖怪技で,アムリタゲージがあれば妖怪化であがけるというわけだ。中でも特技は,通常攻撃や武技の硬直を強制キャンセルできるうえ,消費する妖力はローコストなので,緊急回避に持ってこい。気力が尽きたところに攻撃され,息切れで行動不能に。あとはとどめを刺されるのを待つばかりだが,残っていた妖力を使って迅の特技でダッシュし,回復した気力で攻撃をかけて大逆転……などという立ち回りもあり得るので,うまく決まった時には存分に自分に酔える。
前作の九十九武器でも同じようなことはできたものの,アムリタゲージはそうそう溜まるものではないため,気力切れや息切れは死に直結することが多かった。一方,妖力はかなり溜まりやすいため,特技や妖怪技は気軽に使っていける。前作よりも単純にできることが増えたので,本作の主人公はかなり強くなったと言える。
それだけに,すべてのリソースを吐き出しても落命してしまった場合は,「これはもう仕方ないな」と納得できたりする。本作の難度は決して低くなく,中ボス級の妖怪がステージのあちこちに配置されており,まともに戦うと数発食らっただけで落命するようなこともある。それだけに,この納得によって,より快適にプレイできるようになった印象だ。
難度を上げている要因として,前作同様の殺意に溢れた敵の配置も忘れてはいけない。敵が背中を向けて座っているので大喜びで近づいていったら,実はそいつは囮で,本命の敵が横から襲いかかってくる。頭上の櫓から弓矢で撃たれまくるので避けようとしたら地面に穴が空いていて,落ちた先に怖い妖怪がいるなど,数々の罠が仕掛けられており,落命の回数が増えていく。
とはいえ,敵が何もない空間から湧いて出て来るわけではない。マップをよく見ると罠が仕掛けられていることは分かるので,初見の罠に気付いて引っかからずに対処できると気持ちがいい。
ステージ内には落命したプレイヤーの墓標である「血刀塚」(ちかたなづか)があり,ここから妖怪となった「屍狂い」(しぐるい)を呼び出して戦えるオンライン要素が盛り込まれているのは,前作と同様だ。
さらに本作では「苦境にある者を助けたいという義の心によってその場に残された刃塚」である「義刃塚」が登場している。ここに「お猪口」を供えると,NPC「すけびと」が登場し,倒されるまで主人公と一緒に戦ってくれる。今回は発売前のため体験できなかったが,自分で義刃塚を建てることもできるそうなので楽しみだ。
ステージを進んでいくと,もちろんボスが待っている。巨体の妖怪や,守護霊技を使って特殊な攻撃をしてくる武将など,恐ろしい者ばかりだ。為す術なくやられてしまい「どうすりゃいいんだ……」と絶望することも珍しくない。
しかし,何度も落命していくうちに動きのパターンが見えてくる。最初はおっかなびっくりで戦っていても,次第に気持ちも落ち着き,冷静に対処できるようになる。何とか倒すことができれば,無数のドロップ品が地面に散らばる。そして,いつの間にか「もう1回戦いたい!」と思っている自分に気づくのだ。
「鎌鼬」は木々の間を縦横に跳び回る |
「夜刀神」は巨体の這いずりと,手下のヘビによる連携が厄介 |
前作の魅力の1つだったハックアンドスラッシュ要素も健在で,宝箱や敵から手に入れた装備には,ランダムでオプションが付与される。特定属性のダメージを与えると体力を吸収する防具に属性武器を組み合わせたり,得られる妖力が増えるオプションを揃えて妖力アップに特化するなど,自分なりのビルドを構築するのが面白い。妖怪に対して効果の高いオプションもいろいろと登場しているため,対妖怪用の装備も揃えておき,状況に合わせて着替えるのもアリだろう。
さらに本作では,敵を倒してゲージを溜めるとパワーアップする「妖怪武器」が新たに登場し,コレクションがより楽しくなった。
歴史の陰に妖怪あり。仁王流の歴史解釈
ストーリー面については,「我々の知る歴史の陰に,妖怪やアムリタといった超常現象が関わっていた」というアウトラインは前作のままに,「桶狭間の戦い」「墨俣一夜城」「藤吉郎と竹中半兵衛の出会い」といった歴史的事件に主人公が関わるのが面白い。主人公は台詞こそしゃべらないものの,カットシーンにも自分がクリエイトしたそのままの姿で出てくるため,感情移入もひとしおだ。
本作には織田信長,前田利家,斎藤道三などそうそうたる武将たちが登場するが,中でも印象的なのが竹中直人さんの演じる藤吉郎である。腕っ節が強いわけではなく,妖怪が出たら主人公に丸投げ。出世するためならば目上の相手にとことんこびへつらうという辺りは,いかにも小人物的だ。しかし,暴れる妖怪を鎮めることができ,妖怪であっても無闇に殺すことなく味方にする器の大きさも併せ持っており,不思議な魅力を醸し出している。
個人的に印象深いのが,厨二感,言い換えれば伝奇系バトルマンガ的な派手さが前作以上に増しているところだ。主人公の劇的な生い立ちや切り札の妖怪化,変形する薙刀鎌,真の力を解放すると決め台詞を叫ぶ妖怪武器など,実に華がある。金髪ツインテールのロリ系キャラクターが巫女服姿で大鎌を背負うなんてセッティングも可能で,深夜アニメやラノベでもなかなか見られないぐらいの分かりやすい厨二主人公も作れる。それでいて,武具のデザインや歴史考証はコーエーテクモゲームスらしい本格的なものであり,そのマッチしているのかしていないのか分からない組み合わせが面白い。
本作は,アップデートを続けて熟成した「仁王」の良さをそのままに,妖怪関連のさまざまな新要素が加わった,正統進化の後継作だ。残念ながらオンラインプレイについては体験できなかったが,本作はクリアしていないステージであっても最大3人で遊べるので,協力プレイ好きとしても楽しみなところだ。
本作から「仁王」の世界に入る人は,プレイしていて行き詰まったり,イライラしたりすることもあるかもしれない。しかし,本作は“戦国妖怪死にゲー”だ。失敗したり,落命しまくったりすることもプレイの一環。難敵を倒す達成感を味わいたい人やハックアンドスラッシュ好きは,落命を繰り返しつつ,自分だけの主人公でじっくりと攻略に挑もう。
「仁王2」公式サイト
- 関連タイトル:
仁王2
- この記事のURL:
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.