イベント
[E3 2019]「Fallout 76」開発者インタビュー。アパラチア・ウェイストランドの新たな展開が始まる
簡単に説明すると,「Fallout 76」では,2077年に発生した核戦争から25年後,2102年のウェストバージニア州付近にあるアパラチア・ウェイストランドが舞台になる。シリーズでは初となるオンライン専用ゲームであり,1サーバーあたり32人のプレイヤーが1つの世界で協力してミュータント狩りや取引,基地(C.A.M.P.)の設営,さらには(かなり制限がかかっているが)PKなど,思うままに楽しめる作品だ。
シリーズ従来作のプレイヤーを中心に大きな注目を集めた作品だったが,発売当初からバグの多さが問題視され,また,発売から数週間後に大幅なセールを開始するなど,開発だけでなくビジネス面での問題などもあって,厳しい評価を受けることになった。
NPCが存在せず,点在するテープや文書から,これまで何があったかを読み取るだけというゲームデザインも,ストーリー好きな筆者のようなファンにとっては物足りなかった。
そうした「Fallout 76」を,Bethesda Softworksが「過去のもの」にしてしまうのは簡単だっただろう。例えば,カンファレンスで「The Elder Scrolls VI」のある程度具体的な発表を行えば,ゲーマーもメディアもそちらに注目したはずだ。しかし,それを行わなかったことに,Bethesda Sofworksの本作にかける意気込みのようなものが感じられる。今回のインタビューでも,開発者達の率直な意見を直接聞くことができたのだ。
「Fallout 76」公式サイト
4Gamer:
2019年2月に「Fallout 76」のロードマップが公開されたことから,E3 2019で何かが発表されるとは思っていましたが,まさか「ニュークリアウィンター」のプレビューの即日開始と,NPCが登場するDLC「ウェイストランダーズ」が出てくるとは思いませんでした。まさにリデンプション(約束の履行や償いの意)という雰囲気ですね。
トム・ムステイン(以下,ムステイン)氏:
リデンプションですか。いいですねそれ(笑)。
ジェフ・ガーデナー(以下,ガーデナー)氏:
ええ,リデンプションと呼ぶのにふさわしいかもしれません。トッド(トッド・ハワード氏)がカンファレンスで述べていたように,批判の中でもあきらめず,我々を信じてプレイし続けてくれたファンの皆さんに応えるため,アップデートを20回以上も繰り返してきました。「ウェイストランダーズ」は,本編の発売以前から開発を続けてきたんですが,具体的とは言えないまでも,僕らがやってきたことをようやく公表できて本当に興奮しています。
4Gamer:
トレイラーを見る限り,NPCが登場したことで,一気にFalloutらしさのようなものが感じられるようになりました。
ガーデナー氏:
「ウェイストランダーズ」の設定は,Vault 76から飛び出した勇敢なプレイヤー達の活躍で多くの危険なミュータントがアパラチア・ウェイストランドから駆逐され,さらに,良い資源が見つかったため,永住するのに最適なこの地の情報を聞きつけた人々が次々に入植してくるというものになっています。ゲーム的には,豊富な資源をどうするかということがNPCと関わってきます。
もちろん,アパラチア・ウェイストランドの新規入植者の中には,レイダーズのように善良ではない人々もいますし,ミュータントも完全にいなくなったわけではありません。しかし,C.A.M.P.に定住するNPCとか,複数のクエストを与えてくれるNPCとか,ゲームがさらに複雑になったことを感じてもらえるはずです。
4Gamer:
プレイヤーにとっては,物語に沿った目的が生まれるということですね。
ガーデナー氏:
そのとおりです。2つのNPCグループのようなものがマップを二分していて,プレイヤーはどちらの勢力に加担するかを考えられますし,どちらのミッションもこなしつつ,うまく立ち回っていくこともできます。詳細についてはお話しできませんが,やがては双方が衝突することになり,プレイヤーの行動に影響を与えていくのです。
4Gamer:
流れ的には,核シェルターに入れなかった人々が「Fallout 76」のスコーチになり,さらに100年以上経った頃にグールに変貌しているという感じですか。
ガーデナー氏:
うーん。スコーチになったのはウェストバージニア州が核攻撃の大きな被害を受けたからで,それ以外の地域で生き残った人々がグール……だったかな? このあたりはロアマスター(シリーズの歴史を担当する開発スタッフ)に聞かないとはっきり答えられないので,うかつなことを言うと怒られてしまいますが,「ウェイストランダーズ」のNPCは周辺で生き延びていたのではなく,アパラチア・ウェイストランドの話を聞きつけて遠くからやってきたという設定のはずです。
また,各地で新しいVaultが開き始めており,プレイヤーがそれらを探索できるようになります。それと同時期に大きなバランス調整を行って,レジェンダリーキャラクター(※シリーズ従来作のジェリコやアブラハム・ワシントンのような存在か)が登場する予定です。レベルが上がればそうしたキャラクターにコンタクトして,さらに興味深いミッションに挑めるようになります。
4Gamer:
「Fallout 76」にNPCを登場させるというのは,どの段階で決まっていたのですか。
ガーデナー氏:
正式に決定したのは発売後ですが,開発チームの中でも以前から意見が分かれていました。「Fallout 76」の世界観や方向性というのは間違っていなかったと思いますが,「ウェイストランダーズ」のようなビジョンを持っていたスタッフも少なくはなかったんです。リデンプションとは,その部分かもしれません。多くの批判に耳をふさぐのではなく,先ほどもお話ししたように,20回ものアップデートを繰り返してファンの要望に応えようと努めてきました。
4Gamer:
過去のBethesda作品では考えられないほどの批判でしたし,NPCの不在を不満とする声は多かったですね。
ガーデナー氏:
正直な話,ネガティブな意見やレビューを読んでいると気が滅入ってきますが,さまざまな批判があるのは,それだけFalloutを愛してくれているからでしょう。開発者は,ときにはリスクを採ってゲームを作らなければなりません。それが成功することもあるし失敗することもありますが,さらにより良いものに仕上げていくこともできます。それが,作ったゲームを見捨てていないということの唯一のアピールになりますし,それ以外にゲーム開発者ができることはないですからね。
4Gamer:
NPCからクエストをもらうために会話を選択している場合,仲間やほかのプレイヤーからはどう見えるのですか。
ガーデナー氏:
グループで行動しているとき,どのようなシステムが採用されるかといったことは,詳しく公表していませんが,シリーズ従来作のようなカメラワークを使って,基本的にはすべてのクエストや会話が個々のプレイヤーにカスタマイズされます。つまり,1人のプレイヤーとNPCとの会話を,そばにいるほかのプレイヤーが見聞きできるわけではありません。
すべてがインスタンス化されると言えばいいのでしょうか,ロードマップで公開した「Vault Raid」で登場するVault 96は,内部がインスタンスダンジョンのようなもので,プレイヤーの選択や活動によって内部が変化し,プレイヤー個々で異なる体験となるのです。
4Gamer:
会話には,カリスマやパーセプションなどのスキルが影響しますか。
ガーデナー氏:
ええ。そのあたりも大きな調整を加える予定で,NPCと会話を選択するうえで,S.P.E.C.I.A.L.(プレイヤーキャラクターの7種類の基本アトリビュート)はより大きな意味を持つようになるはずです。シリーズ従来作のようなRPGに立ち返ることを目的に,パークカードもリフレッシュされます。もちろん,会話の選択や行動がゲーム世界に影響を与えますが,このあたりもプレイヤー1人1人にとって異なるものになる予定です。
4Gamer:
「Fallout 76」を支えているコミュニティは協力的で,以前のようなトロール(いたずらをするプレイヤー)はかなり減っている印象ですが,故意にNPCが殺されたりするかもしれません。NPCがキルされてしまい,ストーリーを進められなくなったりはしませんか。
ガーデナー氏:
「ウェイストランダーズ」では,インスタンス空間ではない,パブリックエリアでストーリーを進めていくうえで重要なNPC達はキルできないようにする予定です。このあたりは,今までのシリーズとは異なるところですが,オンライン専用ゲームという性質上,こうしなくてはならないと思っています。実際,我々もいろいろと試してみたのですが,サーバーが1つなら,NPCをキルしても世界を維持することは可能ですが,異なるサーバーにプレイヤーの現在の状態を持ち込んだ場合,それは非常に難しくなるのです。
4Gamer:
「Fallout 76」をすでに止めてしまったプレイヤーも多いと思いますが,「ウェイストランダーズ」のリリースまでに戻ってもらう方法を考えていますか。
ガーデナー氏:
とりあえずは,現在プレイしているファンのニーズを満たすことが最優先ですが,「ウェイストランダーズ」は無料ですので,長らく遊んでいないという人にもぜひ試してほしいですね。
新しくプレイする人にとっては新鮮なはずですし,久しぶりという人にも,以前とはまったく異なる,よりFalloutらしいゲームを楽しんでもらえると確信しています。2020年以降を考えたとき,NPCや会話システムの導入は,新マップでのキャンペーンモードに道筋をつけることでもありますから,今後も長く楽しめるゲームになるのは間違いありません。プレイを始めるなら,今が最良の機会だと思います。
4Gamer:
では,改めて「ニュークリアウィンター」の設定を教えてもらえますか。
ムステイン氏:
Vault 51の監督官になる権利を得るため,52人のプレイヤーが最後の1人になるまで戦うというバトルロイヤルモードで,Falloutの世界観に非常にマッチしていると思います。扉が開かれたVault 51には52人いたという設定なのですが,4人1組のチームプレイも可能なので,4で割り切れる数字にしなきゃいけなかったんです。監督官になるための採用試験ってところですかね(笑)。アドベンチャーモードと違って,パークスはすべてトップレベルのものが用意されているので,じっくりカスタマイズするのではなく,20分くらいでゲームを終わらせることを目標にしています。
4Gamer:
バトルロイヤルモードで,ニュークはどのように発動するのですか。
ムステイン氏:
「Fallout 76」本編よりもコード収集が簡略化されており,マップ中にある4つのオレンジ色のスーツケースを見つければオーケーです。ただし,ニュークの発動権を手に入れれば必ず勝てるわけではなく,落下させる場所によっては自分達が被害を受けてしまいます。
4Gamer:
トレイラーを見る限り,そこら中で炎が燃え盛っていたり,爆風が迫ってきたりする様子は壮絶ですね。
ムステイン氏:
そうでしょ。世界観を表現するビジュアルアーティスト達は,本当にうまくやっています。「コール オブ デューティ」シリーズのキルストリークを連想させるという人もいますが,バトルロイヤル系のアクションゲームで,このように瞬間的にキルされるゲームメカニクスが存在する作品は確かに少ないと思います。すでに公開されているゲーム実況も,じっくり見ていますが,ファンが興奮して喜ぶ姿を見るのは楽しいです。1つのバトルロイヤルゲームではなく,Fallout世界を舞台にした物語の延長として楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
プレビューという形で公開されていますが,今後の予定はどうなってますか。
ムステイン氏:
無料で公開するゲームモードの1つですから,固定したスケジュールはなく,ソフトローンチする前のテストとして考えてもらえばいいでしょう。
※終了日の6月17日には,プレビューの無期限延長が発表されている。
4Gamer:
本日は,どうもありがとうございました。
4GamerのE3 2019記事一覧
- 関連タイトル:
Fallout 76
- 関連タイトル:
Fallout 76
- 関連タイトル:
Fallout 76
- この記事のURL: