インタビュー
「デビル メイ クライ 5」開発者インタビュー。3人目の主人公,魔獣を使役する謎の男「V(ブイ)」の誕生秘話に迫る
「デビル メイ クライ 5」公式サイト
悪魔の力を持たないデビルハンター“V”。盛り込まれた“距離による遊び”とは
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。はじめにDMC5におけるみなさんのポジションを教えてください。
伊津野英昭氏(以下,伊津野氏):
開発全般を担当しています,ディレクターの伊津野です。
マシュー・ウォーカー氏(以下,ウォーカー氏):
プロデューサーのウォーカーです。岡部さんと一緒にプロデュース業務に携わっています。
岡部眞輝氏(以下,岡部氏):
岡部です。開発の進捗管理から宣伝活動まで,いろいろとやっています(笑)。
4Gamer:
発売まであと1か月ほどになりましたが,開発状況はいかがでしょう。
伊津野氏:
コンシューマ版はほぼ完成していて,現在はPC版の調整を行っています。PCはグラフィックスカードから入力機器までさまざまな環境があるので,なかなか仕事が終わりませんね。
4Gamer:
昨年12月から全国各地のアミューズメント施設で体験版「Devil May Cry Xbox Exclusive Demo」を遊べるようになりました。反響のほうはいかがでしたか。
岡部氏:
ネロの義手型兵装「デビルブレイカー」という新システムをフィーチャーした体験版ですが,ポジティブな反応をいただいています。自分たちでも繰り返しプレイしているんですが,何回遊んでも飽きないですね(笑)。
伊津野氏:
体験した方がハイスコアのスクリーンショットをネットにアップロードしているんですが,これが僕たちがびっくりするようなものばかりなんですよ。
ウォーカー氏:
本日(2月7日),PS4とXbox Oneで配信する体験版「Devil May Cry Demo」は,ミッション2の一部を遊べるものです。ネロの相棒である「ニコ」のショップで,さまざまなスキルやデビルブレイカーを購入できるので,繰り返し遊んでみてください。また,東京ゲームショウ2018で初披露した,拳を打ち出すデビルブレイカー「パンチライン」も使えますよ。
4Gamer:
続いて,新キャラクター“V(ブイ)”について聞かせてください。風貌と戦闘スタイル共に,歴代の主人公とはまったく違う特徴を備えています。“病弱な男が魔獣を使役して戦う”キャラクター性と,“無力な本体に司令官的な役割をさせる”戦術要素は,どちらが先に生まれたアイデアなのでしょうか。
伊津野氏:
Vは悪魔の力を持たないデビルハンターになります。どちらが先だったかということはなく,キャラクターのデザインが固まったときには,すでにどちらの要素も備わっていました。
4Gamer:
アクションゲームとしての遊びとキャラクター性が不可分なわけですね。DMCといえば,超人的な身体能力を持つキャラクターが大暴れするシリーズですが,Vは本人が戦えるわけではなく無力です。これはなかなかに挑戦的な試みではないかと思うのですが。
伊津野氏:
これまでのシリーズに登場していたキャラクターは,ダンテやネロの発展型やアレンジといったプレイ感覚を持っていましたが,今回は攻撃を選ぶ際の判断基準が,ほかとまったく異なるキャラクターを作りたかったんです。結果的に“これまでとはまったく違った脳みそ”を使って戦うキャラクターになりました。
4Gamer:
使う脳みその場所が変わったという感覚はよく分かります。ダンテやネロなら,相対している敵のことと,次に連続技でつなぐべき技のことを主に考えて動かします。一方,Vの場合は周囲の状況を把握して魔獣を指揮し,脆弱な本体を守らなければならない。
伊津野氏:
ただし,Vはプレイ感覚こそ違いますが,操作自体はほかのキャラクターと同一のものになっています。遠距離攻撃と近距離攻撃の2つがあり,ジャンプで攻撃を回避し,ロックオンで特殊技が使えるようになる。運用だけ違うといった感じですね。
車に例えてもいいかも知れません。ネロとダンテはどちらもスポーツカーで,細かい違いしかなかったんですが,そこにオフロードカーのVがやってきた。スポーツカーとオフロードカーの走りはまるで違いますけど,いずれも運転にはハンドルとアクセル,ブレーキを使うので,どの車種でも苦労せず操作できますよね。
4Gamer:
さっそくプレイしてみましたが,サッカーゲームの司令塔のようなプレイフィールを感じました。
伊津野氏:
面白い表現だと思います。3匹の魔獣を効率よく働かせるために,画面を広く見ることと,マルチタスクな運用が求められます。多彩な武器とスタイルを切り替えるダンテ,デビルブレイカーをどこで使うかの判断が求められるネロとうまく差別化ができたと思っています。
岡部氏:
説明を聴くだけですと難しそうに感じるかも知れませんが,根本のシステムがすごくよくできているんですよ。ちゃんとシステムを理解した上で,やりたいことを1つ見つけると,そこを起点として楽しみが広がっていくようになっています。
4Gamer:
運用が重要になるというのはその通りですね。自分も慣れていないうちは,いずれかの魔獣がお留守番していることが多かったです。
岡部氏:
魔獣の運用を理解して連続技を決められるようになると,とても気持ちいいキャラクターになっています。
伊津野氏:
デビルトリガーを使うことで魔獣を自動で戦わせられるので,ぜひ試してみてほしいですね。
4Gamer:
魔獣を使役するキャラクターといえば,「ディアブロII」のネクロマンサーをはじめとする「ペット職」がポピュラーです。ただ,こういったキャラクターは本体もそれなりに戦えたりしますが,Vは徹底的に無力なのが面白いと感じました。
伊津野氏:
最初に決まったコンセプトをゲームに落とし込んでみると,なかなか面白くならないので苦労しました。「やっぱり,V自身にも攻撃させた方がいいんじゃないか」という案も出て,仕様を作る寸前までいきましたね。ただ,担当者ががんばってくれたおかげで,当初のコンセプトからブレることなく,面白いVをお届けできるようになったと思っています。
4Gamer:
構想通りにいかなかった部分には,どんなところがあったのですか。
伊津野氏:
こちらとしては“戦場全体を見渡した上で,魔獣とV本体の両方に注意をはらって遊んでほしい”と考えていました。しかし,Vを放っておいて魔獣だけを戦わせてもなんとかなってしまったり,適当に操作するガチャプレイになってしまったりですね。
また,使役する魔獣のシャドウとグリフォンに攻撃を出させた際に一体感を感じられなかったこともありました。グラフィックスのモーション自体はダンテやネロと同じように動かしているはずなんですが。
4Gamer:
特異な戦闘スタイルだけに,調整にはかなりの苦労があったわけですね。
伊津野氏:
試行錯誤を繰り返しましたが,担当者にも「V本体には絶対に攻撃させない!」というこだわりがあり,なんとかやり通してくれました。
ウォーカー氏:
さまざまな工夫をしましたね。守らなければならないV本体,そして攻撃を担当する魔獣たち。ふつうに戦うと,どうしても両者の距離が開いてしまって一体感と戦術性が失われるので,“距離による遊び”を盛り込みました。
4Gamer:
“距離による遊び”というのは?
ウォーカー氏:
Vと魔獣,そして敵の距離によるリスクアンドリターンです。例えば,魔獣がダメージを受け続けるとやがて体力が尽きて「ステイルメイト」(戦闘不能)になるんですが,この時にVが近くにいると回復が早くなります。また,魔獣は敵の体力を減らせますが,トドメだけはV自身が敵に近づいて杖を突き刺す必要があります。
伊津野氏:
今でこそVは面白いキャラクターに仕上がりましたが,苦戦している間にほかのキャラクターがどんどん完成していくことがプレッシャーでした。
岡部氏:
スタッフから「Vは本当に大丈夫なのか」とか,極端な意見では「実はVっていらないんじゃないのか」という声すら上がったこともありました。ただ,遊びの核はできあがっていましたし,シナリオ的にも重要なキャラクターですから,スタッフががんばってくれればなんとかなるハズだと信じて開発を進めました。
伊津野氏:
「絶対,面白くなるんや!」「今は難航してるけど,ゴールには絶対たどり着ける!」という信念の元で作り上げました。周囲は心配してましたけど(笑)。
岡部氏:
自分たちは実際に作って証明するしかないわけです。
4Gamer:
デザインで苦労されたところはありますか。
伊津野氏:
“病弱な男である”という部分は最初からまったくブレませんでした。デザインのどの段階でも常に病弱で,筋肉が少しつくたびに修正してもらっていたほどです。「これは違うんですよ。ガリガリじゃないけど,力で戦うような絵面にはしないでください」って(笑)。
コスチュームは,ロングコートに全身タトゥーで個性が出せたと思います。とくにロングコートは3Dゲームでアクションさせると画面映えがするので外せないところがありました。ダンテ,ネロのものとはデザインやシルエットを変化させて,初期段階からAライン(服を着たときのシルエットがアルファベットのAになる姿)を強く意識して差別化しました。
モーションアクターへの演技指導もなかなか大変でした。杖の長さを調整しつつ,どれくらい体重をかけるかを探ったりもしました。また,イメージ通りになった時に写真を撮影しておき,モーションアクターが変わった時にもイメージを共有できるようにしましたね。
4Gamer:
本作のコンセプトの1つに厨二感があります。Vでこれを表現するときに苦労したことはありましたか。
伊津野氏:
“本人は病弱だけど魔獣を使役する”“魔獣を召喚すると髪の毛が真っ白になる”というキャラクターコンセプトの段階でスタッフの食いつきがすごく,どんどん厨二っぽいアイデアが出てきたので,苦労はありませんでした。
例えば,“詩集を朗読してデビルトリガーゲージを溜める”という動きもアニメーターから出てきたアイデアです。当初,朗読中は動けなかったんですが,あまりに弱くなってしまったので,歩けるようにしました。ここにも先ほど言った“距離による遊び”が盛り込まれていて,敵との距離が近いほど,デビルトリガーゲージが溜まるのが早くなります。
4Gamer:
お話を聞けば聞くほど,キャラクター性と遊びが不可分であることが伝わってきます。話が変わりますが,2019年3月1日からは舞台「DEVIL MAY CRY - THE LIVE HACKER -」が上演されます。伊津野さんも監修として参加されていますが,こちらの手応えはどうでしょうか。
伊津野氏:
忙しい時期と台本チェックの時期が重なったので大変でしたね。ゲームとは少し違うDMCが見られると思います。
4Gamer:
こちらの上演も楽しみにしています。では,最後にDMC5の発売を待ちわびているファンにメッセージをお願いします。
伊津野氏:
まずは本日配信の体験版で,ネロのプレイフィールを試して,消費アイテムであるデビルブレイカーの予習をしてください。発売までは1か月ほどありますが,舞台や小説「Devil May Cry 5 -Before the Nightmare-」と共に本作を楽しみにしていただければ。
ウォーカー氏:
小説はDMCの3〜5でシナリオを担当した森橋ビンゴさんと伊津野が綿密に打ち合わせたうえで書いたものですので,ぜひ期待してください。これに加えて,設定資料集「デビルメイクライ 3・1・4・2 グラフィックアーツ」の改訂版,そして舞台などDMCファンは濃いほどに楽しめる1か月になると思いますよ。
岡部氏:
今日から配信される体験版を遊んでいただければ,1か月はすぐに過ぎると思います。「平成最後にして最高のアクション!」を心待ちにしていてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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