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「ファミ箏の模範演奏会」をレポート。「ポケモン」「モンハン」「大神」の楽曲に加え,箏の魅力を伝える名曲の数々が演奏された
今回の演奏会は,学校の箏曲部などで活動している人達が参考にできるものになることを目的としており,ゲーム音楽だけでなく,アニメソングやポップス,箏曲の代表的な楽曲の模範演奏が披露された。
本稿では,当日2回行われた公演のうち,夜の部の模様をレポートしよう。
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演奏会の第1部では,有名なアニメソングやポップスを箏×2と十七絃の三重奏向けにアレンジを施した楽曲の演奏が披露された。なぜ三重奏にこだわったのか。沖政氏によると,これは小学校〜高校の箏曲部で演奏することを意識したためであるという。大学では箏だけでなく三味線や尺八とともに演奏する機会も増えるが,高校までは設備の事情で箏の二重奏または三重奏に留まるケースが多いそうだ。また沖政氏は,アレンジにあたり技術的に弾きやすい譜面になるよう心がけたとも話していた。
今回,演奏が披露された楽曲は,実際に学校の箏曲部で生徒や学生が演奏しているとのこと。とくにアニメ「美少女戦士セーラームーン」のテーマソング「ムーンライト伝説」は,譜面をしっかり作ったところ,意外なほど反響があったのだとか。ちなみに沖政氏自身が人前でこの曲の演奏を披露したのは,この日が初めてだったという。
5曲めの「History Maker」は,アニメ「ユーリ!!! on ICE」のテーマソング。沖政氏は,フィギュアスケートのファンだそうで,この曲もアニメを観て「弾いてみたい」と思い,箏の四重奏向けにアレンジしたとのこと。会場では箏×4,十七絃×2による編成で,ひときわ華やかな演奏が披露された。
第2部では,箏曲の代表的な楽曲が演奏された。例えば2曲めの「さらし風手事」は,筆者のような門外漢が“箏の演奏”と聞いたときに思い浮かべる典型的な箏の二重奏で,いかにも“和”という楽曲および演奏だった。
しかし,会場で聴けたのはそうした“和”のイメージのものばかりではない。1曲めの「夢の輪」は,まるでギターのアルペジオを多重録音したミニマルミュージックのような響きが印象的。沖政氏によると,作曲者の沢井比河流氏はロックも手がけており,箏だけでなくギターも弾くとのことで,筆者も得心した次第である。
また3曲めの「箏と十七絃による 百花譜 -春、夏、秋、冬-」は,四季それぞれを表現した4楽章で構成される楽曲。沖政氏は,「箏と十七絃を合わせて30弦なのに,まるで100弦で演奏しているかのよう。想像力をかき立てられる」と説明していた。
この楽曲は沢井比河流氏の父にして,現代の箏曲界に多大な影響を与えた沢井忠夫氏が作曲したとのことで,「夢の輪」同様にギターのアルペジオ風の演奏に始まり,ときに繊細な奏法によって静謐に,ときに弦を叩くような奏法によって荒々しくと,ダイナミックな演奏が披露された。筆者はこれもまた“和”というよりは,1960年代末に西ドイツで台頭したクラウトロックを聴いているかのような感覚に陥った。
4曲めの「六段の調」は,箏の奏者が必ず通る,箏曲でもっとも有名かつ重要な曲とのことで,再び“和”テイストの演奏が披露された。一段を箏の二重奏,二段を箏と三味線,三段はそこに琴古流尺八,四段は都山流尺八を加えた三曲合奏という合奏形態で順次演奏されていった。
そして令和に改元されたことを祝う祝儀曲として古典の「八千代獅子」が,普段まず聴くことができないという琴古流尺八と都山流尺八という二つの流派の競演の形で演奏された。
第2部最後の「龍星群」は,高校の箏曲部を描いたコミック「この音とまれ!」の作中オリジナル楽曲を再現したもの。十七絃をフィーチャーした六重奏で,ダイナミックかつドラマチックな現代風の展開が,筆者のような箏の門外漢にも親しみやすい楽曲だが,だからこそ沖政氏は「まずいことになった。生徒達が弾きたいといい出したらどうしよう」と思ったそうだ。というのも,この曲を演奏するにはきちんとメンテナンスされた楽器が必要で,学校にあるような古い箏では少々厳しいからだそう。実際,沖政氏が講師を務める高校の箏曲部でもこの曲を演奏することになったようで,なかなか苦労したというエピソードが語られた。
1曲めに演奏された「ポケットモンスター 赤・緑」の「〜オープニング〜,戦い(VS トレーナー)」では,これから冒険が始まるという高揚感とバトルの緊張感を,尺八のメロディと,箏および三味線の刻むリズムで再現していた。
「モンスターハンタークロス」の「妖艶なる舞〜タマミツネ」は,原曲でも和楽器をフィーチャーしているので,「もともとこんな感じじゃなかったっけ?」というような,自然かつ華やかな仕上がりに。
第3部最後に演奏された「大神」の「太陽は昇る」は,この公演で2曲めとなる令和改元祝儀曲として演奏された。こちらも“和”テイストの曲で,篠笛と尺八の奏でるメロディを箏と三味線がリズミカルに支え,原曲の壮大なイメージを損なうことなく,より軽やかな雰囲気を作り出していた。
アンコールでは,沖政氏の思いつきにより,第3部と同じ編成で「千本桜」が披露されることに。第1部のメドレーでは箏のみの演奏だったので,尺八や三味線の奏者は戸惑っていたが,ファミ箏のメンバーはいずれも邦楽界の実力者。準備に多少時間を取られたものの,演奏自体は難なくこなし,満場の拍手の中,演奏会は幕を閉じた。
●公演名:ファミ箏の模範演奏会
●演奏:沖政一志,芦垣雪衣,神谷 舞,田辺 明,谷冨愛美(賛助出演),中嶋ひかる,大賀悠司,神永大輔,吉岡龍之介
●セットリスト(夜公演)
<第1部 アニメソング・ポップスを箏の合奏で!>
1.和のJ-POPメドレー:さくらさくら〜千本桜〜にんじゃりばんばん〜夏祭り
2.ムーンライト伝説
3.レット・イット・ゴー〜ありのままで
4.スタジオジブリメドレー:海の見える街〜さんぽ〜ネコバス〜君をのせて〜アシタカせっ記〜もののけ姫
5.History Maker
<第2部 箏曲の世界へようこそ!>
1.夢の輪
2.さらし風手事
3.箏と十七絃による 百花譜 -春、夏、秋、冬-
4.六段の調,八千代獅子
5.龍星群
<第3部 This is FAMIKOTO!!!>
1.「ポケットモンスター 赤・緑」より「〜オープニング〜,戦い(VS トレーナー)」
2.「モンスターハンタークロス」より 「妖艶なる舞〜タマミツネ」
3.「大神」より「太陽は昇る」
<アンコール>
1.千本桜
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