プレイレポート
輸送事業で都市を発展させ,自分の鉄道王国を作り上げろ! 鉄道経営シム「レイルウェイ エンパイア」プレイレポート
「レイルウェイ エンパイア」公式サイト
鉄道会社の経営をメインにしたシミュレーションといえば,1990年にシド・マイヤー(Sid Meier)氏が発表した「Railroad Tycoon」がジャンルの嚆矢といえるだろう。2006年の「Sid Meier's Railroads!」まで,シリーズ5作品がリリースされている。また,鉄道輸送に限らない運輸会社経営シミュレーションとしては,1994年にMicroProseからリリースされた「Transport Tycoon」が有名だ。プログラマーのChris Sawyer氏は,「Transport Tycoon」のほか,「RollerCoaster Tycoon」のゲームデザインでもよく知られている。
本作もその流れにある新作タイトルで,シンプルなルールと分かりやすい「タスク」(ゲーム内の目標)などで,ビギナーでも始めやすい作りになっている。鉄道や企業経営に詳しくない人でも,気軽に楽しめるはずだ。今回は,そんなレイルウェイ エンパイアの魅力をお届けしたい。
駅を線路で結び,列車を配置しよう。ヒトとモノの輸送を担えば,カネは自然についてくる
まずは,基本的なルールを紹介しよう。プレイヤーは鉄道会社の経営者となり,都市に駅を建設して(都市に最初から駅が存在する場合もある)列車を配置し,都市間を移動する旅客や物資の輸送を担って利益をあげていく。
会社の規模を拡大して,「鉄道の時代」を到来させるため,地域の隅々まで鉄道網を広げていくことが目標だが,マップごとに決められた「タスク」を期限内に達成するのも重要だ。モード(詳しくは後述)によっては,必須のタスクをすべてクリアすることで,とりあえずの区切りを迎えることができるが,プレイ自体はその後も好きなだけ続けられる。オプションのタスクとなる「任意タスク」がクリアできれば,リザルト画面の評価がさらにアップするので,ハイスコアを目指した遊び方も可能だ。
ゲームはリアルタイムで進むが,ライバル会社がいるときもあり,マップの別の場所で同じように線路の敷設と事業の拡大を行っている。ライバル会社とまったく同じ場所に駅や線路は作れないので,なるべく早く,多くの都市に自社の駅を作りたいところだ。しかし,駅の建設や線路の敷設には莫大な資金が必要となるので,一気に路線を広げることは難しい。
かくして,限られた予算を元に,どの都市に優先的に駅を作り,どんなルートで線路を引いていくのか,まずはこれを考えていくことになる。
設定されたタスクは,すべてクリアまでの期限が決められており,「○○へ客を一定人数乗せる」といった鉄道会社として直接実行できるものもあれば,「ある都市の人口を○○人以上にする」など,間接的にしか関われないものもあり,クリアにはある程度の計画が必要になる。
ゲームの展開によっては,タスクで指定された都市にすでにライバルが進出していることもあるが,少し場所をずらせば(都市の場合は,中心部を少し外せば)駅や線路は建設可能になるため,手詰まりになってしまうことはまずないだろう。
とはいえ,同じ都市に駅が2つあるということは,旅客や貨物の奪い合いを意味するので,効率が悪い。そういうときは,あえて別の場所で事業を拡大し,十分に資金を稼いでから企業買収を仕掛け,丸ごと乗っ取ってしまうという手もある。あるいは,社債を発行して序盤から一気に資金を集め,とにかく敵に先んじて線路を広げてしまうのも良いだろう。ライバル会社は物理的に邪魔という以外にも,従業員の引き抜きや後述する新技術の窃取も行ってくるため,注意が必要だ。
舞台は1830年〜1930年の西部開拓時代のアメリカで,ニューヨークやワシントンなど,実在の都市に駅や線路を設置しつつ,鉄道による輸送力によって都市の発展を下支えしていくのだ。列車は時代に合わせたもので,ほとんどが蒸気機関車となっており,現在の視点で見れば,技術的にも未熟だ。したがって,毎月加算される「イノベーション・ポイント」を溜めて,新たな機関車や鉄道技術をアンロックしていく必要がある。
新しい機関車ほどパワーとスピードに優れ,より快適な列車の旅が提供できたり,貨物をより早く運べたりするし,新型の客車など,機関車以外の鉄道技術を手に入れると,チケット代や貨物代を値上げしたりできる。どれからアンロックしていくのかは,プレイヤーの大きな悩みどころだ。
上記のニューヨークやワシントンなどの都市は最初から一定の規模を持っているが,鉄道の力によってさらに大きくなる。地方のあまり有名ではない町なども,場合によってはそれらを凌ぐ勢いでグングンと成長していく。プレイヤーは直接都市の人口を増やしたりできるわけではなく,あくまで人と物の移動(と,場合によっては一部の産業)に携われるだけだが,鉄道の持つ影響力の絶大さがよく分かる。
ヒト,モノ,カネの流れが順調な都市は発展し,そうでない都市は衰退する。街が発展するのもさびれるのも,プレイヤー次第なのだ。
産業を活かし,雇用を増やして都市を拡大。自ら事業を所有して,さらに利益を増やせ
事業の基礎となる駅が設置できるところは大きく分けて2種類あり,1つは上記の都市で,もう1つは「地方ビジネス」がある場所だ。地方ビジネスとは,農場や牧場など都市や産業に必要な資源を生むもので,マップ上に野菜やミルクなどのアイコンで表示されている。
地方ビジネスと都市を線路で結ぶとその場所の特産品が運ばれ,貨物輸送で利益を得られる。もちろん,それらの特産品は都市の消費財や産業の原材料となる。
都市の規模によって最大3つの産業が生まれ,この産業をうまく活かすことで,都市に居住する人口が増えていくという要素もある。
例えば,ビール工場なら麦,製織工場なら綿といった材料を鉄道で運ぶことで工場が稼働し,労働者が雇用され,ビールや布といった製品が完成する。いつの時代も,仕事がある場所に人が集まるというわけだが,もちろん,製品が在庫として積み上がっていくだけでは商売にならないので,必要とするほかの都市に輸送する必要が生まれるわけだ。
これらの産業は最初から都市にあることが多いが,既存の事業を買い取ったり,都市の規模が拡大する過程で新たな事業を始めることも可能で,プレイヤー自身が事業主になれる。材料や製品の輸送だけでも利益になるが,製造まで手を広げた経営の多角化で,利益が上積みされると同時に会社の価値を高められるのだ。
駅間に列車を運行させるのは簡単で,メニュー画面の「新しい列車」から「路線」で駅を選択していけば,列車のルートが自動で作成される。つながった線路さえあれば,細かいダイヤなどを作る必要はなく,あとはどの機関車を使うか選択するだけだ。このあたりはかなり簡略化されており,「スジ屋」を目指す人には物足りないかもしれないが,ひとたび操作に慣れれば簡単に鉄道網を構築できる。
駅の選択ができない場合は,一見,つながってるように見えて,駅同士がつながっていない可能性が高いので,改めて線路を確認してみよう。とくに大きな駅はホームが多く,ホームが線路に接続されていないという場合があるのだ(経験談)。
各列車には雇った従業員を乗せられ,例えば,添乗員を乗せれば利益率が高まり,警備員を乗せれば列車強盗を防いだりできる。
また,客車や貨物車の一部は,チケット代が高くなる食堂車などにも変更可能で,観光列車っぽいこだわりの列車を走らせることもできる。すべての路線に人員を配置したり車両の変更を行うのはコストの面から難しいが,乗車率が高い,いわゆる「ドル箱路線」なら十分にやってみる価値はあるだろう。
説明が長くなったが,資源が眠る地方駅で原材料を積み込み都市まで運ぶ。そうすると都市では産業が動き出し人が増え,より多くの旅客や貨物,さらには完成した製品をほかの駅に輸送できるようになる。これがキモとなるゲームの進め方で,この流れを守っていれば会社に利益が流れ込み,都市は発展していくはずだ。シナリオやマップによってはさまざまなタスクが課されることもあるが,とにかく基本はこの形と覚えておこう。
資金があれば,上記のように生産,加工,輸送という流れをすべて自らの会社で行い,さらに大きな鉄道会社に育てられる。現実でも大きな鉄道事業者が不動産や宅地開発,百貨店経営などを行うグループ企業を保有していたりするが,それがゲームでもできるわけだ。
ゲームの基礎は「キャンペーン」で学ぼう。難度に大きな影響を与える「鉄道のネットワーク」
プレイの基本を分かってもらったところで,続いてモードの紹介をしよう。本作には,ゲームの基礎を学びながら大陸横断鉄道の建設を目指す「キャンペーン」,マップごとに決められたタスクの達成を目指す「シナリオ」,初期の資金やライバル社の数,さらに開始都市など多くの設定を好きに決めて始められる「フリーモード」,そして,無限の資金とライバルのいないマップで完全に自由な開発が行える「モデル・モード」という4つのモードがある。
どれをプレイするのも自由で,フリーモードやモデル・モードでは開始する場所や時代を任意に選べるが,初めて本作を遊ぶという人は,まずキャンペーンから始めることをオススメしたい。
キャンペーンモードの最初のマップでは,ゲームの基本操作やルールをテキストとボイスの両方で親切にレクチャーしてくれて,次のマップではライバル企業が登場するといった具合に,ステップ・バイ・ステップで要素が追加されていくので,一通りクリアするだけでゲームの基礎が学べる。シナリオをクリアするために必要なタスクも,必須のタスクは達成が簡単で,オプションのタスクは少しだけ面倒(難しい)といったレベルに収まっているので安心だ。
シンプルを選んだ場合,平気で列車同士が接触したり重なったりするのでリアリティが薄れるが,一方のリアルでは,大きな資金を使って複線化するか,側線を作って信号を設置する必要があるため,ゲーム全体の手間と難度が高まる。
とくに,鉄道事業が拡大して全容が完全に把握できないほど列車が増えた場合,列車がまったく動かないというトラブルが頻発して,身動きが取れなくなってしまうことがある。ゲームに慣れるまでは,シンプルでプレイしよう。
また,「ポーズモード」を「マニュアル」にすると,コントローラのタッチパッドを長押しすることで時間をいつでも止められる。こうすれば,ライバルなどを気にせずにじっくり計画が立てられる。
シンプルなルールで,鉄道に詳しくても詳しくなくても楽しめる鉄道シミュレーション
本作のマップは,全体が実際の地形を元にした3D空間で細かく再現されている。地形を拡大していくと,俯瞰視点では見えなかったものに改めて気がつくことも多い。
例えば,駅の近くには馬車が走り回っているし牧場にはちゃんと牛がいる,といった具合だ。「車窓」や「前面展望」モードが用意されているわけではないが,自由に拡大や縮小が可能だし,列車の先頭に視点を固定して走る姿を楽しむこともできる。自分が敷設した線路を列車が走り,山や谷を越えて駅に入っていく姿はまるで鉄道模型のようで,とても楽しい。
ゲームの機関車は実在のものが精巧に再現されており,アメリカの鉄道史が好きなら一層楽しめそうだ。列車にそれほど詳しくなかった筆者は,「蒸気機関車といえば黒」というイメージがあったので,昔のアメリカでこんなにカラフルな蒸気機関車が走っていたのかと,ちょっと驚いてしまった。初期の機関車は性能も低く本当にオモチャのようだが,時代が下ると高性能なディーゼル機関車が登場し,鉄道の歴史を自然に学べる。
ゲームは基本的に淡々と進み,派手な事件やドンデン返しが起こることもないため,はっきり言って全体的に地味かもしれない。操作に関してはコントローラに最適化されており,操作しにくさを感じることはほとんどないものの,画面の文字が小さめで少し読みにくかった。
また舞台がアメリカのため,「C62」や「D51」といった,日本人になじみ深い機関車が出てこないのも,ファンにとってはちょっと寂しいところだろうか。
線路の敷設,都市の拡大,産業振興,既存路線の修正など,やることは次々に出てくるため,一度始めたらなかなかやめるタイミングが見つからない,いわゆる「時間泥棒」な作品だ。筆者も寝る前にちょっとプレイするだけのつもりが,気がついたら明け方近くになっていた,なんてことも何度かあった。
ユーザーインタフェースを含めてテキストは完全に日本語化されており,ボイスもちゃんと吹き替えが行われている。さらにチュートリアルやヘルプがしっかりしているため,「洋ゲー」ではあるものの,とっつき難さはほとんどない。内容がテーマである鉄道経営に特化しており,それ以外の要素を大胆に削ってシンプルな作品になっているのも好印象だ。「A列車で行こう」のような企業(鉄道)経営,あるいは「シムシティ」のような都市開発系のゲームが好きならば,ぜひプレイしてほしい。
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