インタビュー
「交響性ミリオンアーサー」配信後の反響や,今後の展望について聞いてみた。プロデューサー 岩野氏&山﨑氏へのインタビューを掲載
2018年10月4日に配信が開始されてまだ間もない交響性だが,その後の反響や,今後の展望について岩野弘明氏(「ミリオンアーサー」シリーズプロデューサー)と山﨑裕介氏(「交響性ミリオンアーサー」プロデューサー)に話を聞く機会が得られた。今回はその内容をお届けしよう。
敵や味方を持ち上げて投げる! アクション要素満載のキャラハントアクションRPG「交響性ミリオンアーサー」のプレイレポートをお届け
スクウェア・エニックスはスマートフォン向け新作アプリ「交響性ミリオンアーサー」の配信を,2018年10月4日に開始した。本稿では,アクション要素満載のバトルや,緩いつながりで楽しめるマルチプレイが特徴となっている本作のプレイレポートをお届けする。
交響性では騎士の魅力を高めていく
ガチャではなく,育成を重視したい
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「交響性ミリオンアーサー」の配信開始から少し経ちましたが,現時点での反響はどういった雰囲気でしょうか。
現状,両極端に分かれています。良い点と悪い点が明確に出ていますね。悪い点にフォーカスすると,基本オンラインでプレイする3Dアクションゲームであるにも関わらず,とくにAndroid端末では動作が重く,画質も悪いという意見をいただいております。
こちらについては,アプリ起動時に端末のスペックを判定して,場合によっては自動的に低スペックモードにする仕様を,良かれと思って搭載したことが裏目に出てしまった形です。
一応スペック判定のメッセージを表示する仕組みは入っているんですが,それを読み飛ばしてパフォーマンス優先設定のままゲームをスタートし,結果的にクオリティの低いゲームだと受け取られてしまったようなんです。
とはいえ,3Dアクションゲームということで,端末によるスペックの差が顕著に出てしまいました。App Storeに比べてGoogle Playのほうが低評価を受けており,スペックの問題はもう少し何とかしたかったところです。
4Gamer:
なるほど。
岩野氏:
端末スペックとは別に,アイテム販売のポップアップも反省点です。クエストに失敗した際に,お得な強化アイテムセットを販売していることを伝えるポップアップを出していましたが,設定ミスでホーム画面に戻るたびに表示されていました。この表示を見たお客様に「これは課金ゲームだ」と受け取られてしまったので,我々が事前にもっと確認すべきことだったなと思います。ポップアップはすぐに機能を削除しましたが,最初に課金を強いるゲームだという印象を与えてしまったのも反省点ですね。
4Gamer:
交響性の課金はキャラを手に入れるガチャではなく,時間短縮がメインの方針だと以前のインタビューでおっしゃっていましたね。
岩野氏:
従来の「ミリオンアーサー」シリーズはいわゆる“課金ゲー”だと認識されていましたので,交響性ではあえて課金施策は抑えています。お客様からすると,現状は課金どころか,無償のクリスタルでガチャを回していいのかも分からない状態だと思うんですよね。実際に“円卓の騎士ガチャ”というガチャが魅力的すぎて,ほかのガチャはあまり利用されていません。
強力な装備が手に入る“円卓の騎士ガチャ”についても,インフレが進まないようにあえて1回しかガチャを回せない仕様にしています。しばらく遊んでいただくと課金を強いるゲームではないと分かってもらえるはずですが,アイテム販売のポップアップも含めて最初の印象が悪くなってしまったのは,もったいなかったなと。
4Gamer:
逆に良かった部分としては,どういった内容が挙げられますか?
岩野氏:
従来の「ミリオンアーサー」シリーズと違い,キャラクターの入手方法がガチャではなく“キャラハント”になったことですね。ゲームをプレイすればキャラクターが入手でき,時間をかければ最大レアリティまで進化できるようになっています。実際にプレイしていただいた方からも,マルチプレイでワイワイ“キャラハント”をするのが面白いとご意見をいただきました。お客様の継続率などを示すデータを見ても,かなり良好な状況です。
4Gamer:
良い点,悪い点を振り返って今後の課題はどういった内容になるのでしょうか。
岩野氏:
最初に挙げた悪い印象によってお客様が離れてしまわないよう,難度の高い部分を緩和したり整備したりして,継続的に遊んでもらえるようにしたいです。手応え自体は感じていますし,悪い点も明確なので,今後の運営が目指すべき指針も見えてきました。
4Gamer:
ポップアップは早々に削除されましたし,ほかの問題点も今月中に修正されることが伝えられていますので,動向を追っているお客様は安心していると思います。
マネタイズの面では,1回しか回せない“円卓の騎士ガチャ”が目立っているような印象を受けましたが,運営側はどのように捉えていますか。
岩野氏:
キャラクターはすべて“キャラハント”で集められると伝えていたので,ガチャ以外の入手方法がないことについてご意見をいただいています。“円卓の騎士ガチャ”については,今後イベントやキャラハントで実装するものを「先行して手に入れたい」という人向けのものでした。
こちらについては我々の落ち度で,先行して入手するためのガチャというメッセージが抜け落ちていて,ガチャ限定のキャラクターに見えてしまっています。我々としても意図どおりのものではなかったのですが,お客様にうまく伝えられなかったので,もどかしい気持ちですね。
4Gamer:
現在ガチャで手に入らなくても,今後何らかの形で手に入るんですね。
岩野氏:
もちろん,手に入るようにはします。ただし,円卓の騎士はほかの騎士よりも一段強い存在ではあるので,元々入手が難しいレアな存在にしようとは思っていました。いきなり“キャラハント”で全員を出すというわけではなく,イベントボスといった形で一体ずつ登場する可能性は高いです。いち早く手に入れたい人は,“円卓の騎士ガチャ”の利用を検討いただければと考えていました。
本来,事前にお伝えしておくべき内容でしたし,ゲーム内でも入手方法の導線を用意しなかったのは,大きな反省点となっています。
岩野氏:
事前に“キャラハント”がキャラクターの入手方法だと伝えていたので,運営が嘘をついてお客様を裏切ったように見えてしまったと思います。本来は細心の注意を払うべき点でしたので,今後はより一層気を引き締めなくてはいけません。
4Gamer:
円卓の騎士はいずれも人気の高いキャラクターですので,誤解が解ければ安心ですね。ちなみに,開発時に従来の「ミリオンアーサー」シリーズで得た経験から交響性に反映された内容はありますか?
岩野氏:
乖離性ミリオンアーサーなどは,膨大な数のキャラクターをガチャで手に入れる仕様がお客様から不評でした。それがなぜ起こってしまったかというと,基本的に1枚のカードを手に入れてしまったら,それでオーケーなゲームだったことが理由として挙げられます。育成に時間もかからず,名声というやり込み要素はあったものの,それをやり込む必要性は薄くて……。モチベーションを長く維持してもらうことに反する仕様でした。
昨今のアプリでも,入手自体は楽にできて,そこから幅広い育成要素を楽しんでいただくというタイプが増えてきましたよね。交響性としても,そこは押さえておこうと決めていたんです。
岩野氏:
加えて,キャラクターが多くなるとそれぞれの魅力が分散されてしまいます。新しいキャラクターが登場すると,以前いたキャラクターが使えなくなるという風にはしたくありませんでした。一体の騎士に対する魅力を高めていこうということで,3Dモデルにも力を入れていますし,スキルツリーなどの育成要素を取り入れたり,セリフやモーションも成長に応じて増えたりするようになっています。各キャラクターの価値をより高めたいというのが,これまでの「ミリオンアーサー」シリーズを踏まえて心がけた点ですね。
4Gamer:
そういえば従来のシリーズですと,同じキャラクターでも第二型や炎夏型など,“型違い”が登場していましたが,本作でも別のキャラとして実装されるんでしょうか。
岩野氏:
当然,現在実装されているキャラクターが別の型になって登場する可能性は十分にあります。しかし現状は騎士の数自体が少ないので,同じキャラクターを増やすよりも別のキャラクターを増やすほうが優先度は高いと考えています。
4Gamer:
いずれはあるかもくらいの認識でしょうか。
岩野氏:
そうですね。まずはキャラクター数を増やすことを優先します。将来的には,お客様の意見を取り入れるアンケートなどを実施して,既存キャラクターの型違いの実装もしていければと思います。
ワイワイ遊べるのが交響性の魅力
ロビーを通じてさらなるコンテンツの提供を目指す
4Gamer:
配信から間もなく、ゲーム内のロビーを使った座談会を実施されていましたが,こちらは今後も続けていく予定でしょうか。
岩野氏:
不定期になるとは思いますが,今後も継続的にやらせていただきたいですね。
山﨑氏:
先日も座談会を開いた際,すぐにロビーが満員になってしまったので,今後は運用方法も考えていこうと思います。普段からゲームをプレイしてロビーを覗くこともあるので,もしかするとゲーム内で我々を見かけることもあるかもしれません。
岩野氏:
ミリオンアーサーシリーズは定期的に生放送をやっているので,放送内でロビーに入る試みもやってみたいですね。
4Gamer:
ロビーでお二人にメッセージを伝えられると,しっかり運営に届いている実感を得られますよね。
山﨑氏:
お客様と運営の距離が近いゲームを目指したいので,ロビーでいただいた意見も反映していきたいとは考えております。
岩野氏:
現状,ロビーでいただいた意見はこちらでも把握しているものが多いので,そこは早急に対応していきたいですね。
4Gamer:
クエスト開始時に,毎回オートボタンを押すのが面倒だといった意見はSNSでもよく見かけます(笑)。
岩野氏:
そちらは今度のアップデートで修正されます。紙の企画書から実際のアプリになって,初めて気づく不便な仕様や不具合というのは,アプリの開発側で毎回起こる現象なんです。
本来,それらをすべて修正したうえで配信をスタートさせるのがベストなのですが,さまざまな事情が重なってこのタイミングでの配信となりました。今後,最終的な完成度を高めていくために人を動かすのもプロデューサーの腕の見せどころだと思うので,精進していきたいです。
山﨑氏:
交響性はとにかく要素が多く,部分的なチェックは厳密にやっていても,最終的にそれらを組み合わせた際の総合的なチェックの甘さが目立ってしまいました。
4Gamer:
各ステージのクエストを全部足しただけでも150個近くありますが,大量に用意した狙いはどこにあったのでしょうか。
山﨑氏:
すでに最後のクエストまでクリアされている方がいますし,現状の量でも少なかったのかなと思っています。ゲームのコンテンツ消化スピードは想定よりも速いですね。
岩野氏:
元々は各ステージ50個ずつで計250個ほどクエストを用意するつもりでした。とはいえ,どれだけのコンテンツを用意しても,早期にすべてやり終える方は必ずいらっしゃいますので(笑)。
エンドコンテンツに到達するまで継続して遊べるクエストを用意する方針を採りましたが,ステージを作る開発の工数もあり,各大陸で30個,全部で150個という形が限度でした。
岩野氏:
これからの課題として,クエストをすべてクリアした方に向けて遊んでいただくコンテンツを提供しなくてはいけません。加えて,毎回新たな仕組みを提供する必要なく遊んでもらえるコンテンツの実装も考えています。しかし,現状問題視されている部分を直していかないと,新たなコンテンツを作ってもお客様がそこまでたどり着けません。まずは新コンテンツの実装を先送りにして,修正や改修にリソースを集中させています。新しいコンテンツは当然予定しているので,そこはご安心ください。
山﨑氏:
交響性は2段ジャンプやキャラクターの持ち上げ,ステージギミックなど,アクション要素が多く導入されているゲームです。それらをうまく組み合わせれば,バトル以外にも遊べる要素もご提供できるのではないかと考えています。
岩野氏:
少しだけお話しすると,マルチプレイで遊ぶワイワイガヤガヤ感が楽しいゲームなので,多人数vs.多人数で戦うフラッグ戦のようなものを考えています。ほかにも,このゲームならではの楽しさとしてロビーで遊べるようなイベントも用意したいですね。まだ決定していませんので,突拍子もない話なんですけど,ロビー内でアイドルのライブをやったり,サッカーをやってみたりするのはどうだろうかといったことも考えています。
いずれにせよロビーをイベント会場に見立てて,楽しんでもらえるコンテンツを提供したいとは思っています。バトル関連のコンテンツと並行して,そういったイベントも用意していきたいですね。
交響性でもコラボは実施予定
ミリアサシリーズキャラも続々追加
4Gamer:
今後のキャラクター追加に関してもお聞かせください。
山﨑氏:
そうですね。これからも期間限定のキャラクターを追加していきたいと考えています。次は10月24日から「ローエングリン」が登場する予定です。月に2体ほどの追加ペースでやっていけたらと。
岩野氏:
ただ騎士が出てくるだけのイベントが続くと,飽きられてしまう可能性もあります。クエストの道中に登場する形だと,目当てのキャラクターがいないとリタイアされてしまうので,そこも改善していきたいですね。たとえば,ボスとして騎士が登場して,それを倒すことで“キャラハント”できるようにしたほうが盛り上がるのではないかといった具合に,社内でも協議しているところです。
チュートリアルの「エヴェイン」のような形ですね。ボスキャラクターとして登場させて,倒すことではじめて“キャラハント”の機会を得るような形式を考えています。
岩野氏:
ほかには,騎士がたくさん出てきてもいいかなと思っています。基本は1体だけど,低確率で3体も登場するとか。あとは,超レア騎士として色違いのキャラクターが低確率で出てくるのもいいですし,“キャラハント”ならではの面白さを追求していきたいです。
同じことを繰り返しても飽きてしまうので,イベントのたびに新しいモチベーションで臨んでもらえるようにがんばります。
4Gamer:
ミリアサシリーズといえば,コラボも気になる人が多いと思います。お話しできることはありますか?
岩野氏:
当然,コラボも考えていきます。交響性の世界観をより厚くしていくことを重要視しているので,まずは既存の騎士を増やしてからだと考えています。乱発しようとは思っていませんが,やはりコラボは盛り上がるので,定期的にやりたいですね。
山﨑氏:
シリーズキャラの追加を優先しつつ,その合間にコラボも入れて新鮮味を味わってもらえたらと。
4Gamer:
具体的にお聞きしちゃうんですが,「傭兵アーサー」など過去作のメインキャラも実装される予定でしょうか。
岩野氏:
もちろん考えています。当然,出てくるものだと思っていただければと。
4Gamer:
乖離性の「ファルサリア」が実装されたら盛り上がりそうです。
岩野氏:
「ファルサリア」や「ウアサハ」,そして4人のアーサーは人気がありますからね。拡散性の3人のアーサーも根強い人気がありますので,いずれも登場させたいとは思っています。
山﨑氏:
どのキャラクターを実装するかはこちらで考えている部分ではありますが,アンケートなどを利用してお客様の声を優先する形でもやっていきたいですね。
たとえば交響性では女の子の「モードレッド」ですが,男性バージョンが欲しいという声があれば,検討していきたいです。
4Gamer:
テレビアニメがスタートしますが,「叛逆性ミリオンアーサー」のキャラクターの登場はありえますか?
山﨑氏:
せっかくアニメがスタートするので,それに絡めたイベントをできたら面白いですね。
円卓の騎士は今後も定期的に入手チャンスあり!
騎士育成の緩和も予定
4Gamer:
現状,騎士の育成面について難度が高いという印象を受けるのですが,緩和の予定はありますか。
岩野氏:
もちろん考えています。ただ,いまは騎士の数が少ないので,バランスをしっかりと調整しないと,既存の騎士がすぐに最高まで育ってしまう可能性があります。
“キャラハント”がつまらなくなることも懸念されますので,慎重にやらせていただくことになるかなと。もちろん,進化素材などを集められる場は設ける予定ですが,ゆっくりと調整させていただきたいです。
山﨑氏:
“金のUFO”についても,今後のアップデートで追加していく予定です。
とはいえ,すぐに騎士を進化できてしまうとゲームバランスが壊れてしまうので,課金を利用して購入できるとしても,制限は設けるかもしれません。探り探りではありますので,最初は渋めの設定になるかと。そこから調整を繰り返して,最適なバランスにしていきたいと考えています。
交響性は課金重視のゲームにはしたくないので,ミリアサシリーズの反省を踏まえて運営していきたいです。
4Gamer:
“円卓の騎士ガチャ”をもっと回させてほしいという意見も多く目にしますが,そこはどのようにお考えでしょうか。
岩野氏:
交響性では課金策を抑えて運営をスタートしていたので,あえてガチャも1回限りにしていました。時間短縮の手段がほしいという声が多くなるのであれば検討しますので,そこはご心配いただかなくても大丈夫です。円卓の騎士の入手経路についても,増やしていくことは予定しています。
4Gamer:
現状,目当てのキャラクターを手に入れられなかった人もいると思いますので,入手経路が増えるのは嬉しいですね。円卓の騎士については,ほしい人は長期間待つ必要ないと考えてしまってよろしいですか。
山﨑氏:
そこはご安心いただければと。ゆくゆく円卓の騎士が全員手に入る頃合いを迎えたら,バリエーションも増やしていきたいですね。衣装違いなども増やしていき,別のバージョンも楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
ちなみに現在のプレイヤー層は「ミリオンアーサー」シリーズファン中心でしょうか。
岩野氏:
印象としてはシリーズファンの方が多い印象ですね。それ以外の方にプレイしていただくのが,プロモーション面での課題です。この先,従来とは違ったアプローチでお客様を増やしていければと思います。本作は本質的に“キャラハント”を楽しむゲームですので,その魅力をもっとアピールできるようにしていきたいですね。
4Gamer:
では最後に,直近で予定されているゲーム内イベントなどの告知があればお願いします。
山﨑氏:
まずは,10月24日に諸々の不具合修正や育成の緩和をするアップデートの実施と,「ローエングリン」のキャラハントを予定しています。
岩野氏:
リリース後の反響も良好な状況ですので,今後もより早く,多くの施策を準備できるようにしていきたいと考えています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
―――2018年10月12日収録
「交響性ミリオンアーサー」公式サイト
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