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[GDC 2019]南アフリカの制作チームが考える,インディーズゲーム市場で成功する方法とは。「Squeezing into the Industry: How a Couple African Kids Made a Video Game」レポート
「Independent Games Summit」は,開発者のサクセスストーリーやゲーム制作の裏話,そしてフォーカスされつつあるディスカバラビリティ問題(関連記事)などが語られる,インディーズゲーム専門のセッションだ。GDC 2019の開幕日となった3月18日には,Cukia Kimani氏とBen Myres氏による「Squeezing into the Industry: How a Couple African Kids Made a Video Game」というセッションが行われた。
Ben Myres氏 |
Cukia Kimani氏 |
Cukia Kimani氏とBen Myres氏は,南アフリカのヨハネスブルグで制作チーム「Nyamakop」を立ち上げたインディーズゲームの制作者だ。独特の色使いのステージや,体当たりしてキャラクター自身を潰したり,地形を変えたりする仕掛けが特徴的なパズルゲーム「Semblance」(PC/Nintendo Switch)でデビューを果たしている。
そんな彼らが語ったのは,彼らがいかにしてインディーズゲームの世界に“侵入”し,そのうえで,どうやって“成功”するのかという話だった。
大きなファン層を築き,メディアが好意的なレビューを掲載し,アワードや展示会で賞を獲得してパブリッシャから声がかかり,有名なYouTuberがプレイ動画をアップする。リリース後は素晴らしい評価を得て,初週や初月で開発費が回収できるほど大きな利益を得る……。ゲームをリリースするものとしては理想的な展開だが,2人は「現実はそうはいかない」と自分達のこれまでの歩みを振り返った。
大学の卒業制作として「Semblance」の開発を始め,卒業後にあらためてNyamakopを結成した彼らは,国の制度もあって欧米のように資金を募ることができず,また,多くのアドバイスも南アフリカという土地でゲームを開発するのに適したものではなかったという。しかし,そういったハンデを乗り越え,ゲームショウやエキシビションへの出展を通して認知を得,オランダのGood Shepherd Entertainmentがパブリッシャとして決定。2018年7月に配信され,インディーズゲーム市場への“侵入”を成功させた。
発売された「Semblance」は,多くのメディアやプレイヤーの賞賛を受けるのだが,ここまで聞くと,上記の成功例のとおりに進んでいるように思える。しかし2人は,「セールスは悪くないものの,費用を回収するまでには至らず,まだ自分達は“リッチ”になれていない」と話し,侵入の先にある,成功を果たすための取り組みについて語った。
それは「成功する準備はもちろんだが,失敗したときの準備もする」「成功への指標を再定義する」「長期的なビジョンを持つ」「目につきやすく良い評判を得る」「すぐに学んで応用する」「文脈をもった行動」という6つを軸に,横への広がりを持ったゲーム制作活動を行うことだという。
それまでの経験で,ゲーム業界への見方を変える必要があると感じた2人は,今回のGDC 2019へ登壇したことはもちろん,インタビューやTwitterでのファンとの交流などにも力を入れていくという。
GDC 2019の会期中,業界関係者に新たなプロジェクトをアピールしていくというNyamakopの2人。ディスカバラビリティ問題など,インディーズゲーム市場の競争は過酷になっているが,個性的な経歴を持つ彼らが,今後どのようにゲーム業界で存在感を出していくか気になるところだ。