テストレポート
Androidゲーム機「GPD XP Plus」試作機をチェック。性能向上でスマホゲームがより快適になった
今回,開発中の試作機を入手できたので,現段階での評価をお届けしよう。クラウドファンディングキャンペーンへの出資を考えている人は参考にしてほしい。
GPD XP Plusは,内蔵ストレージ容量が異なる2モデルをラインナップしており,それぞれの価格は以下のとおり(※早期割引キャンペーンの適用価格)。試用機は内蔵ストレージ容量128GBモデルだ。
- メインメモリ6GB,内蔵ストレージ容量128GBモデル:通常価格4386香港ドル(約7万7200円),早期割引価格2660香港ドル(約4万6863円)
- メインメモリ6GB,内蔵ストレージ容量256GBモデル:通常価格5173香港ドル(約9万1100円),早期割引価格2936香港ドル(約5万1700円)
なお,試作機の筐体には,技術基準適合証明(以下,技適)の印字があった。しかし,これはGPD XPの筐体を流用したからのようで,GPDに確認したところ,GPD XP Plusは技適の取得に向けて現在申請を行っているところだという。クラウドファンディングキャンペーン中,もしくはそれ以降にGPD XP Plusの国内版が発売される可能性が高そうだ。
外観はGPD XPと変わらない
まずは外観から。GPD XP Plusは,ゲームパッド機能を備えたAndroidゲーム機で,GPD XPと同様に,ディスプレイ右側のゲームパッドが着脱可能なモジュール式になっているのが見どころである。これもGPD XPと同じだが,GPD XP Plusには「Xbox Controller Module」「FPS Controller Module」「MOBA Controller Module」という3種類のモジュールが標準で付属しており,プレイするゲームに合わせて適したものを選べるという。
GPD XPの筐体を流用していることや,Indigogoのキャンペーンページにある製品写真からも推測できるように,GPD XP Plusの外観は,GPD XPと変わりがないようだ。
Xbox Controller Moduleを装着したGPD XP Plusの本体サイズを実測したところ,約233(W)×84(D)×40(H)mmであった。Nintendo Switch Liteや,以前に紹介したAndroidゲーム機「Odin Pro」よりも一回り大きい。
一方,重量は実測で約372gだ。現行の第6世代iPad miniが293〜297gなので,それよりやや重い。ただ,背面にグリップがあって持ちやすいので,1〜2時間ほどゲームをプレイし続けていても疲れにくい。
ディスプレイは,約6.81インチサイズで,解像度2400×1080ドット,
パネルの発色は少しビビッドな印象を受けるものの,ゲームをプレイしたり,動画を見たりするうえで気になる場面はなかった。
ちなみに,GPD XP Plusは,横持ちで使うのが基本のデバイスだが,本体を傾けると縦画面表示も可能だ。Webブラウザを使うときなど,縦画面のほうが見やすい場面もある。しかし,ゲームパッドがあるためか縦では持ちにくいので,素直に横画面で使うのが良さそうだ。
インタフェース類は,筐体の下側面にまとめられており,左から4極3.5mmミニピン端子,SIMカードスロット,USB Type-Cポートが並ぶ。GPD XP Plusでは,USB Type-CポートがDisplayPort Alternate Mode対応になったのがポイントで,外部ディスプレイやビデオキャプチャ機器への画面出力が可能になった。
また,下側面には2つのスピーカーがある。音量を上げなくても,そこそこ大きな音が出るため,スピーカーの出力は高い。ただし,音質面は低音域が細い印象なので,ちょっともの足りない印象だ。サウンドを重視するのであれば,ヘッドセットを使うべきだろう。
ちなみに上側面に音量調整ボタンと[電源/スリープボタン]がある。このうち,音量調整ボタンは,[+](音量アップ)と[−](音量ダウン)の向きが一般的なスマートフォンと逆になっているので最初は戸惑ってしまった。
アナログスティックを改善したゲームパッド
GPD XP Plusの特徴であるゲームパッドは,ディスプレイ左側が固定式で,奥側に左アナログスティックを,手前側にD-Padを配置する。D-Padの下には,Androidのナビゲーションバーにある[△](戻る)ボタンと[○](ホーム)ボタン,[□](アプリ履歴)ボタンが並ぶ。アナログスティックの右下にある小さな丸いボタンは,独自のキーマップツールを呼び出すボタンだ。また,上側面にはショルダーボタンとトリガーボタンを搭載する。
それぞれのボタンは,ストロークこそ浅いが,過不足なく使用できる印象だ。ただし,トリガーボタンが小さめなので,手の大きな人だと人差指と中指がきゅうくつに感じるかもしれない。
GPDは,GPD XP Plusにおける改善点として,ゲームパッドの品質が改善したと謳っている。具体的にはアナログスティックをホールセンサー式のものに変更したという。これによって,スティックのデッドゾーンを極力減らしたそうだ。
実際に試してみると,軽く触れただけでも鋭敏に反応する。ゲームパッドでFPSをプレイするゲーマーは,デッドゾーンを小さめに設定する傾向があるので,そうした人向けの調整だろう。
ディスプレイ右側に取り付ける3種類のモジュールをそれぞれチェックしていこう。1つめのXbox Controller Moduleは,右手前に右アナログスティック,奥側に[X/Y/B/A]ボタン,上側面にショルダーボタンとトリガーボタンを備えたモジュールだ。左側のゲームパッドと合わせて,Xbox純正ゲームパッドのボタンレイアウトとなっている。
スペースの都合上,しかたがない部分ではあるのだが,[X/Y/B/A]ボタンと右アナログスティックが上下に並んでいるので,[X/Y/B/A]ボタンを押すときに,親指の付け根あたりがアナログスティックに触れてしまうことがある。ただでさえ,スティックの反応が良いだけに注意が必要だ。
2つめのFPS Controller Moduleは,前面に5つ,上側面にショルダーボタンを1つ,背面にはトリガーボタンを1つという計7つのボタンを備えるモジュールだ。武器やアイテムの切り替えが多いFPSに適しているとのことなのだが,一般的なゲームパッドとかなりレイアウトが異なるため,少しとっつきにくいところがある。
ただ,既存のゲームパッドよりもうまくハマりそうなゲームもあるように思う。製品情報ページなどで,ゲームタイトルごとのレイアウト例があると,設定を詰める手助けになりそうなのだが。
最後のMOBA Controller Moduleは,モジュールという名がついてはいるものの,ボタンもなにもない。言ってしまえば,GPD XP Plus本体の接続コネクタ用のカバーだ。
使い始めたときは,「スキルの多いMOBAこそ,FPS Controller Moduleが適しているのではないか」と考えたのだが,たとえば「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」の場合,スキルを発動する方向やどのチャンピオンを狙うのかなど,スライドさせて指定しなければならない。スライド操作は,物理ボタンに割り当てられないので,目論見は崩れた。
それぞれのモジュールは,GPD XP本体とマグネットで固定する構造だ。磁力がかなり強力なので,かなり力を入れないと外れないようになっている。
装着するモジュールに合わせて,画面に表示されるボタンの内容も変化する。
なお,GPD XP Plusのゲーム向けユーティリティは,キーマップツールと,ゲームパッドの動作検証を行う「Joystick Test」くらいで,非常にシンプルなものだ。今どきのゲーマー向けスマートフォンに搭載するような豊富な機能群を想像すると,ちょっと肩透かしを食らう部分もある。ただ,ゲームをプレイするうえで,+αの機能がなくても困ることはないというのが正直な感想だ。
先代製品から大幅な性能向上を実現
ここからはベンチマークテストと,実際のゲームでGPD XP Plusの性能を検証したい。冒頭で触れたように,GPD XP Plusは,SoCをMediaTek製のDimensity 1200に変更している。Dimensity 1200は,2021年に登場した製品で,1世代前のハイエンド市場向けモデルだ。先代のGPD XPは,同じMediaTek製のミドルクラス市場向け製品の「Helio G95」を搭載していたのだが,これに比べるとスペックは大幅に向上している。
ディスプレイパネル | 約6.81インチIPSパネル,解像度2400×1080ドット |
---|---|
SoC | MediaTek製「Dimensity 1200」 ・CPU:Cortex-A78×1(最大3GHz),Cortex-A78×3(最大2.6GHz),Cortex-A55×4(最大2GHz) ・GPU:Mali-G77 MC9 |
メインメモリ容量 | LPDDR4X 6GB |
内蔵ストレージ容量 | 128GB,256GB+microSD(最大2TB) |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
有線LAN | 未搭載 |
Bluetooth | 5.2 |
対応LTEバンド | 1/2/3/5/7/8/12/17/20/26/28/34/38/39/40/41 |
対応3Gバンド | 1 |
インタフェース | USB Type-C×1,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子×1,, |
インカメラ | 約500万画素 |
バッテリー容量 | 約7000mAh |
ACアダプター | 定格出力30W(USB PD 2.0対応) |
公称本体サイズ | ・Xbox Controller Module装着時:約233(W) ・FPS Controller Module装着時:約216(W) ・MOBA Controller Module装着時:約205(W) |
公称本体重量 | ・Xbox Controller Module装着時:約370g ・FPS Controller Module装着時:約350g ・MOBA Controller Module装着時:約330g |
OS | Android 11 |
Xiaomiの「Xiaomi 11T」のように,国内でもDimensityシリーズを搭載したスマートフォンのラインナップが増えており,性能が気になっているというゲーマーもいるだろう。そこでDimensity 1200がどの程度の性能を発揮できるか試してみた。
ベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark v9.4」でテストしたところ,総合スコアが「676768」であった。
AnTuTu v9系のテストで60万台半ばから後半のスコアというと,「Snapdragon 865」と同程度といったところか。最新のハイエンドSoCからすると見劣りするのは確かだ。しかし,ミドルレンジクラスの「Snapdragon 780G」や「Snapdragon 778」の総合スコアは,50万台前半なので,これを踏まえると十分に高い性能を備えていることが分かる。
まずは「原神」をプレイした。Android版の原神は,ゲームパッドに対応していないのだが,キーマップツールを使うことで,問題なくスティックやボタンに操作を割り当てられた。
グラフィックス品質を「高」,最大フレームレートを「60」に設定したところ,カメラの操作や移動時のロードで,一時的にカクつくものの,基本的にはスムーズにゲームをプレイできる。グラフィックス品質を「最高」にすると,フレームレートの落ち込む頻度が少し増えたので,ある程度快適なプレイを求めるのであれば,グラフィックス品質をちょっと控えめにするといいだろう。
GPD XP Plusで特筆したいのは,長時間のプレイでも背面が熱くなりにくいことだ。
もともと,筐体に熱が伝わりにくい樹脂を採用しているとのことだが,1時間ほど連続で原神をプレイしていても,熱く感じたことはなかった。スマートフォンでプレイしていると,早い段階で「暖かくなってきたな」と思うことも多いので,
一方,ディスプレイ面はそれなりに温度が上がっていた。とくに空冷ファンや排気孔のない,ディスプレイ右側部分が熱い。ゲームパッドを使ってプレイする分には,影響は少ないが,タッチ操作中心のゲームだと気になる。
続いては「Fortnite」をプレイした。Fortniteは標準でゲームパッドに対応しているので,Xbox Controller Moduleの装着時には,ボタンの割当てが自動で行われる。一方,FPS Controller Moduleを使いたいときは,キーマップツールが必要だ。
設定メニューの「画面」にある「グラフィッククオリティ」から,「品質の自動設定」を利用して,画質設定を行っている。フレームレートは最大30fpsまでしか設定できないので,60Hzや90Hzに対応したデバイスを使う相手と戦うには分が悪いが,動作自体は問題ない。
ロビーから待機所に移動し,無事に1マッチを終えたときには少しホッとした。というのも,いくつかのAndroidゲーム機において,Fortniteを正常にプレイできないという報告が海外のフォーラムに寄せられていたからだ。
実際,筆者がOdin ProでFortniteをプレイしたときも,バトルバスから降下するタイミングで,エラーが発生して,マッチから除外されていた。また,先代のGPD XPでも似たような現象が発生していたようだ。GPD XP Plusでは,そういった問題は起こらずにプレイできている。FortniteをAndroidゲーム機でプレイしたいというゲーマーにとってはこれだけでもGPD XP Plusの価値があるというものだ。GPDがFortniteのプレイ動画を公開しているのも,ユーザーに安心してもらう意図があるのだろう。
最後に,本機のようなAndroidゲーム機は,クラウドゲームサービスを使うのにも便利だ。今回は「GeForce NOW」で,「DEATH STRANDING」をプレイしたが,動作は実にスムーズ。ただし,さすがに20:9といった極端なアスペクト比の解像度は,GeForce NOWで設定できないため,画面の両脇に黒い帯が入る。
なお,当たり前だが,GeForce NOWでは,FPS Controller Moduleへの操作割当に対応していないので,素直にXbox Controller Moduleを使おう。
性能が上がりさらに快適。積みゲーの消化にも最適な1台
とくに,Androidゲーム機の弱点になりがちな性能は,上位SoCの採用で大きく向上した。Androidゲーム機というと,
もちろん,クラウドゲームにも適している。ディスプレイ搭載ゲームパッドとして,手元においておけば,ちょっと時間が空いたタイミングでPCを立ち上げたり,ゲームパッドを準備したりせずとも,気軽にPCゲームをプレイ可能だ。対応ゲームに限られるが,SteamやEpic Games Storeで買ったきり積まれているゲームをコツコツ崩すの最適だろう。
気になるのは価格だ。Indigogoでのキャンペーン価格程度であれば,納得感はある。しかし,通常価格だと割高に思う。半導体不足に加えて,日本国内では円安も進行しており,なかなか厳しそうだが,一般販売が行われるのであれば,現行のGPD XP(税込4万2600円)と同じ水準を維持してもらえるとうれしいのだが。
IndigogoのGPD XP Plusキャンペーンページ
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GPD
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Android端末本体
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